GUIDE · 経済・金融2026年8月時点

イスラム窓口(исламское окно)とは

通常の商業銀行がシャリーアに適合する取引を扱うために設ける部門「イスラム窓口」について、キルギスの法令と免許の仕組み、銀行ごとに違う契約の種類、通常の銀行業務との違い、中央アジア各国の状況を整理する。

イスラム窓口は、通常の商業銀行の内部に置かれ、シャリーア(イスラム法)に適合する形で金融サービスを提供する部門である。キルギス国立銀行の方法論委員会が2025年10月3日に承認した用語の解説は、これを「相応の免許を持つことを条件に、イスラム銀行業および金融の原則に従ってサービスを提供する金融機関の部門」と定義している。ロシア語では исламское окно、キルギス語では ислам терезеси と呼ぶ。

銀行全体をイスラム銀行に転換するのではなく、既存の銀行に部門を一つ増やす形をとるのがこの制度の要点である。銀行は通常の預金と貸出を続けながら、別に免許を取り、シャリーア委員会の承認を受けた契約だけを使って、利子によらない資金の供与と受け入れを行う。既存の顧客基盤と支店網をそのまま使えるため、新たにイスラム銀行を設立するより参入の費用が低い。

キルギスはこの制度を持つ国の一つで、2026年8月14日時点で5行が窓口の免許を持つ。免許は銀行ごとに別の番号で交付され、扱える契約の種類も銀行ごとに違う。同じ「イスラム窓口を持つ銀行」でも、できることは同じではない。

定義相応の免許を持つことを条件に、イスラム銀行業および金融の原則に従ってサービスを提供する金融機関の部門(キルギス国立銀行方法論委員会、2025年10月3日承認の用語解説)
根拠法法律第93号「銀行および銀行活動について」(2022年8月11日)。第4条がイスラム原則、第14条第5項が免許、第15条第6項が商号、第19条第6項が免許の手続きと地位、第33条第3項がシャリーア委員会、第59条が会計、第75条第4項が経済基準を定める
準拠する基準AAOIFI(イスラム金融機関会計監査機構)とIFSB(イスラム金融サービス委員会)が定めるシャリーア基準
主な下位規則「イスラム銀行業および金融の原則に従って行われる操作に関する規程」(2009年9月23日付キルギス国立銀行理事会決定第38/8号)ほか、信用リスク管理、標準契約、会計方針、リスク管理、資産分類、外貨持高、自己資本充足の各規程・指示
免許の形通常の銀行免許の番号に「/1」を付した別免許(例 014/1)。全体がイスラム銀行である場合は「01-ИБ」のような別系統の番号
Mバンク(014/1)2021年10月13日交付。ムダーラバ、ムラーバハ、カルド。2024年5月30日にイジャーラおよびイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリーク、2025年8月13日にイスティスナーおよび並行イスティスナーを追加
オプティマ銀行(018/1)2025年8月25日交付。カルド、イジャーラおよびイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリーク、イスティスナーおよび並行イスティスナー、ムラーバハ
エルディク銀行(033/1)2022年8月10日交付。ムダーラバ、ムラーバハ、イジャーラ、カルド
バカイ銀行(043/1)2017年11月16日交付。ムダーラバ、ムラーバハ、カルド
Aバンク(048/1)2022年10月26日交付。ムダーラバ、ムラーバハ、カルド。2024年9月25日にイジャーラおよびイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリークを追加
エコイスラミック銀行(01-ИБ)2025年6月3日交付。窓口ではなく銀行全体がイスラム銀行。1998年3月10日登録・2017年6月22日付の免許第040号に代わるもので、イスラム銀行への転換にともなう交付
市場の規模イスラム原則による資金供与の残高は6,770万ドル、イスラム原則による資産は9,165万ドル、預金は4,450万ドル(いずれも2023年末、キルギス国立銀行の市場概観)
税制上の手当て付加価値税法上、ムラーバハ・サラム・イスティスナーによる銀行の物品の引き渡しと、シャリカ/減少型ムシャーラカによる物品の授受は非課税(キルギス税法第271条)。ムダーラバによる所得は所得税の非課税(第191条)

制度の骨格 — 法律と規則

キルギスでイスラム金融を支える法令は二層になっている。上位にあるのは2022年8月11日の法律第93号「銀行および銀行活動について」である。第4条は、キルギスでは伝統的な銀行業と融資と並んでイスラム銀行業・金融の原則が適用されること、その原則とはシャリーア基準に従って銀行取引を行う原則と規則であること、シャリーア基準とはAAOIFIとIFSBが定めた規則の総体であることを定める。同じ日に成立した憲法的法律第92号「キルギス共和国国立銀行について」も、国立銀行の機能としてイスラム原則の実施とシャリーア基準に沿った取引規則の策定を挙げている。

第14条第5項は「イスラム銀行、または『イスラム窓口』を持つ銀行は、国立銀行の相応の免許にもとづき、イスラム銀行業および金融の原則に従って活動する」と定める。第19条第6項は、免許の取得手続きと、イスラム銀行および窓口を持つ銀行の地位を国立銀行が定めるとする。第15条第6項は、商号に「イスラム」の語を使えるのは免許を得てイスラム原則で営業する銀行だけだと制限する。窓口を持つだけの銀行は、商号にこの語を使えない。

下位にあるのが国立銀行の規程群である。中心は2009年9月23日付の理事会決定第38/8号で承認された「イスラム銀行業および金融の原則に従って行われる操作に関する規程」で、銀行はシャリーアに適合する事業にのみ投資すること、すべての標準契約が当該銀行のシャリーア委員会の承認を受けることを求める。これに、イスラム原則による取引の信用リスク管理と資産分類、標準契約の要件、会計方針、リスク管理の最低要件、外貨持高の限度、自己資本充足の算定方法を定める規程・指示が続く。

規則は動いている。2025年だけでも、1月22日に資産分類と信用リスク管理の改正、9月12日にシャリーア管理をめぐる行内の部門間の連携に関する改正、10月8日にイスラム原則で使える契約の一覧を広げる改正が、いずれも理事会決定として採択された。扱える契約が増えるのは、国立銀行が一覧を広げる改正を行い、各行がそれに応じて免許の追加を受けるという二段階で進む。

どの銀行が何の免許を持っているか

国立銀行の免許登録簿は、窓口の免許ごとに、交付日と扱える契約の種類を明示している。2026年8月14日時点の記載を並べると、最も早いのはバカイ銀行(043/1、2017年11月16日)で、ムダーラバ、ムラーバハ、カルドの3種である。Mバンク(014/1、2021年10月13日)も当初は同じ3種で始まったが、2024年5月30日にイジャーラおよびイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリーク、2025年8月13日にイスティスナーおよび並行イスティスナーが加わり、現在は最も広い。

エルディク銀行(033/1、2022年8月10日)はムダーラバ、ムラーバハ、イジャーラ、カルドの4種。Aバンク(048/1、2022年10月26日)は3種から始まり、2024年9月25日にイジャーラおよびイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリークを追加した。最も新しいオプティマ銀行(018/1、2025年8月25日)は、はじめからカルド、イジャーラおよびイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリーク、イスティスナーおよび並行イスティスナー、ムラーバハの4系統を得ている一方、ムダーラバは含まれていない。

ムダーラバの有無は実務上の差になる。ムダーラバは投資家が資金を出し、資金の受け手が事業を行って利益を分配する契約で、イスラム銀行が預金に相当する「投資口座」を組成する土台になる。この契約を持たない窓口は、資金の受け入れの側で使える手段が限られる。逆にイスティスナーは注文生産の契約で、建設や設備の製作に資金を出す用途に向く。免許の中身の違いは、その銀行がイスラム窓口で何を売ろうとしているかを示している。

窓口ではなく銀行全体がイスラム銀行になった例が1件ある。エコイスラミック銀行は2025年6月3日、イスラム銀行への転換にともなって免許第01-ИБ号の交付を受けた。1998年3月10日に登録された免許第040号に代わるもので、同行の支店は7である。窓口を持つ5行とは、適用される免許の系統も、扱える業務の一覧も異なる。

扱う契約の種類

イスラム金融が避けるのは、シャリーアが禁じる利子(リバー)と、取引の結果を不明確にする要素(ガラル)である。利子を取らずに資金を融通するために、実物の売買や賃貸、共同事業といった別の法律関係を挟む。国立銀行の用語解説と規制の概観は、キルギスで銀行が別免許にもとづいて行える取引として次のものを挙げる。

ムダーラバは、一方(投資家)が他方(ムダーリブ)に資金を渡し、ムダーリブが事業を行って、生じた利益を契約に定めた比率で分配する契約である。ムラーバハは、銀行が顧客の申し込みに応じて購入した物品、または申し込みの時点で銀行が所有する物品を、分割払いで顧客に売る契約で、売値は仕入値に銀行の上乗せ(ナーツェンカ)と輸送費・保険料などの第三者への支払いを加えたものになる。イジャーラは物件の賃貸契約、イジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリークは賃借人が契約の条件に従って物件を買い取ることを約する契約である。

カルドは、貸し手が借り手に資金を渡し、その対価を取らずに返済を受ける契約で、返済期限を定めない場合は請求があり次第返す。イスティスナーは、製作者が注文者の指示にもとづいて一定の作業を行い、期限までに成果を引き渡し、注文者があらかじめ合意した価額を支払う契約で、並行イスティスナーは同一人が一方で受注者、他方で発注者になる二つの契約の組み合わせである。このほか、シャリカ/ムシャーラカ(共同事業)、減少型ムシャーラカ、商品ムラーバハ(タワッルク)、サラムと並行サラム、保証契約、荷為替信用状、ワディーア・ヤド・アマーナ(信託的保管)とワディーア・ヤド・ダマーナ(保証付き保管)が制度上の対象に含まれる。

通常の銀行業務との違い

第一に、統治機構が一つ増える。法律第93号第33条第3項は、イスラム原則で活動する銀行にシャリーア委員会を置くことを義務づける。この委員会は、銀行の方針と標準契約がシャリーア基準に適合しているかについて責任を負い、イスラム原則による取引に関する事項を検討して勧告を出す。委員は労働契約を結ばず労働法の適用も受けない一方、取締役会の委員に課される制限が原則として適用される。同じ人が2行以上の銀行のシャリーア委員会を兼ねることはできず、非銀行金融機関では2社までに限られる。

第二に、会計と規制の基準が別立てになる。法律第59条は、イスラム原則で活動する銀行がイスラム金融機関向けの会計基準に従って会計を行い財務諸表を作成すると定める。第75条第4項は、イスラム原則で取引を行う銀行について、国立銀行が経済基準その他の義務的な要件・規範・限度を定めるとする。自己資本の充足率も、イスラム原則で活動する銀行向けの指示で別に算定方法が定められている。

第三に、税制の手当てが要る。ムラーバハのように物品の売買を挟む契約は、そのままでは通常の物品売買として付加価値税の対象になり、利子付きの融資より不利になる。キルギスの税法は第174条第60項でイスラム原則の契約による資金の受け入れと供与を金融サービスと位置づけ、第271条でムラーバハ・サラム・イスティスナーによる銀行の物品の引き渡しと、シャリカ/減少型ムシャーラカによる顧客と銀行の間の物品の授受を非課税の供給と定めている。第191条はムダーラバによる所得を所得税の非課税所得に挙げる。制度を作るには銀行法だけでなく税法の改正が要る、という点はイスラム金融を導入する国に共通する論点である。

第四に、リスクの所在が変わる。ムダーラバやムシャーラカは損益を分け合う契約なので、事業が損失を出せば資金の出し手も損失を負う。銀行が物品を購入して売るムラーバハやイジャーラでは、銀行が一時的に物件の所有者になり、物件そのもののリスクを負う場面がある。国立銀行が信用リスク管理と資産分類について通常の銀行業務とは別の規程を用意しているのは、この違いのためである。実際、2023年末のキルギスでは、イスラム原則による資金供与の分類比率は9.56%で、銀行部門全体の9.2%と同程度だった。

規模と担い手

キルギス国立銀行が公表した市場概観によれば、イスラム原則による資金供与の残高は2019年末の2,360万ドルから2023年末の6,770万ドルへ、同じ期間にイスラム原則による資産は2,480万ドルから9,170万ドルへ、預金は3,330万ドルから4,450万ドルへ増えた。純利益は90万ドルから590万ドルになっている。伸びは大きいが、2023年末の銀行部門全体の貸出28億9,370万ドルと比べれば、なお数%の水準である。

担い手は銀行だけではない。同じ概観は、イスラム窓口を持つ小額貸付会社としてMブラクとバイルィク・フィナンスを挙げ、この2社がムラーバハ、ムダーラバ、ムシャーラカ、イジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリーク、サラム、カルドを扱っていると記す。ほかに全体がイスラム金融の小額貸付会社が5社、イスラムの信用組合が1つ、イスラム窓口を持つ小額貸付機関が1つある。国立銀行は、窓口の開設を求める投資家からの申請が増えていると述べている。

銀行別の残高は各行の財務諸表で追える。Mバンクは2026年6月30日時点でイスラム金融による資金供与が78億655万ソム、イスラム金融で受け入れた顧客資金が53億764万ソムである。エルディク銀行は2025年12月31日時点でイスラム原則による資金供与が32億2,717万ソム、免許を得たばかりのオプティマ銀行は同時点で法人向け5,133万ソム、個人向け1,720万ソムだった。免許の取得から残高が積み上がるまでには時間がかかる。

近隣国の状況

イスラム金融の国際基準を定めるIFSBの加盟名簿を見ると、この地域の当局の関与の度合いが分かる。カザフスタンの金融市場規制開発庁とウズベキスタン中央銀行が準会員(Associate Member)、キルギス国立銀行、タジキスタン国立銀行、そしてアスタナ国際金融センター(AIFC)がオブザーバー会員(Observer Member)として名を連ねる。アゼルバイジャンとトルクメニスタンの当局は名簿にない。

カザフスタンは、国内の制度に加えて、英米法にもとづく別法域であるAIFCに独自の枠組みを持つ。AIFCの規制当局AFSAは、イスラム銀行業(Islamic Banking Business)、イスラム金融の供与(Providing Islamic Financing)、タカフル(イスラム保険)、制限付き損益分配投資口座の運用(RPSIA)を、それぞれ独立した業務区分として免許の対象にしている。国の銀行法の枠内に窓口を置くキルギスの方式と、金融特区に別の法域を作って業務区分を並べるカザフスタンの方式は、同じ目的に対する別の設計といえる。

この地域でイスラム金融の制度がどこまで整っているかは国によって差が大きく、法律の有無、免許の実際の交付、市場の規模はそれぞれ別に確認する必要がある。キルギスの場合、法律・下位規則・免許・税制・実際の残高がいずれも公開資料で追える点が、比較の出発点として使いやすい。

読み方の注意

免許の内容は随時変わる。国立銀行の登録簿は交付日と追加された契約の日付を併記しているので、ある銀行が「イスラム窓口を持つ」という記述だけでは、その銀行が何を扱えるかは分からない。契約の種類と追加の日付まで確認する必要がある。

市場規模の数字は更新の間隔が長い。国立銀行の市場概観は2019年から2023年までを対象としており、2024年以降の部門全体の残高は同じ形では公表されていない。直近の状況を知るには、窓口を持つ各行の財務諸表に載るイスラム金融の科目を個別に見ることになる。

用語の表記はゆれる。ロシア語の資料では мурабаха、иджара、истиснаа のように書かれ、日本語ではムラーバハ、イジャーラ、イスティスナーのほかムラーバハをムラーバハ、イジャーラをイジャラと表記する例もある。原資料にあたるときは、キルギス国立銀行が2025年10月3日に承認した用語の解説が、キルギス語とロシア語の対訳で定義を示しており、基準として使える。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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