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ACWAパワー

サウジアラビアの発電・海水淡水化事業者。ウズベキスタンとアゼルバイジャンの再生可能エネルギーで域内最大級の外資。

ACWA Power Company
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

ACWAパワー(Acwa、旧称ACWA Power)は、サウジアラビアの発電・海水淡水化事業者である。自らを「世界最大の民間海水淡水化事業者」と称し、2025年末時点で15か国に108件の資産を持つ。手がけるのは、政府や国営電力会社と20〜25年の長期契約を結んで発電所や造水プラントを建設し、そのまま保有して運営する独立系発電事業(IPP)という業態で、この分野では世界有数の規模にある。

日本での知名度は高くないが、中央アジア・コーカサスでは最も存在感の大きい外国企業のひとつである。ウズベキスタンでは同国最大級の風力・太陽光・ガス火力を次々に手がけ、2024年8月の会社説明では同国が投資額でサウジアラビア国内に次ぐ第2の市場であり、15件の案件で総額最大150億ドル規模になるとしていた。アゼルバイジャンでは同国初の外資による大型風力発電所(240メガワット)と、同国初の官民連携(PPP)案件である海水淡水化プラントを担う。

2025年12月期の連結売上高は74億1,350万サウジリヤル、純利益は20億6,060万サウジリヤルだった。同社は2026年1月26日に社名の呼称を「Acwa」へ改め、報道発表でも同年以降はこの表記を使っている。

正式名ACWA Power Company(サウジアラビアの上場株式会社)。2026年1月に対外呼称を「Acwa」へ改めた
設立2008年7月5日の閣僚決定第215号により設立、7月13日にリヤドで商業登記(登記番号1010253392)。設立直後に2004年から活動していたACWAパワー・プロジェクツを取得しており、会社は「2004年創業」とも説明する
本社サウジアラビア・リヤド
事業発電所・海水淡水化プラント・グリーン水素設備の開発、投資、運営・保守。長期の売電契約・売水契約にもとづく独立系発電事業(IPP)と独立系造水事業(IWP)
上場サウジ証券取引所(Tadawul)本市場。銘柄コード2082、ティッカーACWA、ISIN SA15CGS10H12。2021年10月上場
発行済株式数7億6,649万498株(2025年12月31日時点)
主要株主公共投資基金(PIF)44.16%、ヴィジョン・インターナショナル・インベストメント22.75%、取締役・上級役員3.53%、自己株式0.11%、浮動株29.44%(2025年12月31日時点)
売上高74億1,350万サウジリヤル(2025年通期、連結。前期は62億9,730万)
純利益20億6,060万サウジリヤル(2025年通期、連結)。親会社株主帰属分は約19億サウジリヤル、1株当たり2.47サウジリヤル
運用資産4,370億サウジリヤル(1,170億ドル、2025年末の会社発表)。2026年3月末は4,550億サウジリヤル
ポートフォリオ資産108件、総発電容量93ギガワット(うち再生可能52.3ギガワット)、造水日量920万立方メートル、蓄電5.6ギガワット時(2025年末)
稼働中の設備発電43ギガワット、造水日量630万立方メートル、グリーン水素年3,000トン(2025年末)
事業国15か国(2025年末)
従業員4,600人超(2025年)
域内での位置ウズベキスタンは投資額でサウジアラビアに次ぐ同社第2の市場(2024年の会社説明)。アゼルバイジャンでは初の外資系大型風力と初のPPP案件を手がける

沿革

法人としてのACWA Power Companyは、2008年7月5日付の閣僚決定第215号により設立され、同月13日にリヤドで商業登記された。設立の直後に、2004年から活動していた同名の事業会社ACWAパワー・プロジェクツ(APP)を取得しており、会社自身は創業年を2004年として説明することが多い。事業の出発点はサウジアラビア国内の発電・造水プラントで、産業都市向けに電力と工業用水をまとめて供給する事業から始まった。

2010年代に中東・北アフリカ、南部アフリカ、東南アジアへ広がり、モロッコのワルザザート太陽熱発電(ヌール)、ドバイのモハメド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥーム太陽光公園、南アフリカのボクポート太陽熱など、当時としては世界的に例の少ない大型案件を落札した。太陽光の入札で当時の世界最安値水準の落札価格を出したことでも知られる。

2021年10月、サウジ証券取引所(Tadawul)に上場した。以後は上場企業として四半期ごとに業績と案件の進捗を開示している。2025年には71億サウジリヤル(19億ドル)の株主割当増資を実施し、同年に15件の案件でファイナンシャルクローズ(融資契約の成立)に達した。投資総額はあわせて700億サウジリヤルで、同社の年間の件数としては過去最多である。

2026年1月26日、対外呼称を「ACWA Power」から「Acwa」へ改めるブランド刷新を発表した。同時に、運用資産を2030年までに2,500億ドルへ倍増させる目標を掲げている。2026年3月1日付で最高経営責任者が交代し、2023年3月から務めたマルコ・アルチェッリ氏に代わり、サウジアラビア・中東地域の社長だったサミール・J・セルハン氏が就いた。

事業モデル

同社の事業は「開発・投資・運営・最適化」という言い方で説明される。まず政府や国営の電力・水道事業者を相手に長期の購入契約を取り付け、案件ごとに特別目的会社を設立し、プロジェクトファイナンス(案件そのものの将来収入を返済原資とする融資)で資金の大半を賄い、自らは少数の自己資金を入れて持分を保有する。完成後は子会社のAcwa Operations(旧NOMAC)が運営・保守を請け負う。

この形をとると、会社の収益は三つの層に分かれる。第一に、開発段階で受け取る開発報酬と建設管理報酬。第二に、稼働資産からの配当と持分法利益。第三に、運営・保守の役務収入である。同社が「1ドルの自己資金で10ドルを動員する」と説明するのはこの構造を指しており、連結売上高(2025年は74億サウジリヤル)と運用資産(同4,370億サウジリヤル)の桁が大きく違うのはこのためである。

案件の資金調達には国際開発金融機関が頻繁に加わる。中央アジアの案件ではアジア開発銀行(ADB)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、国際金融公社(IFC)、欧州復興開発銀行(EBRD)、スタンダードチャータード銀行などが並ぶ。2024年10月にはAIIBとの間で、カラカルパクスタンのクングラド風力3件に対する1億5,000万ドルの出資つなぎ融資(エクイティ・ブリッジ・ローン)の関心表明書に署名している。

株主構成

2025年12月31日時点の株主構成は、サウジアラビアの政府系ファンドである公共投資基金(PIF)が3億3,851万1,347株で44.16%、ヴィジョン・インターナショナル・インベストメント(Vision Invest)が1億7,437万1,335株で22.75%、取締役・上級役員が3.53%、自己株式が0.11%、浮動株が29.44%である。外国人保有比率は3.70%にとどまる。

PIFはサウジアラビアの「ビジョン2030」を担う政府系ファンドであり、同社が国内で受注する再生可能エネルギー案件の一部はPIFの再エネ計画の枠内で発注されている。発注者と大株主が同じ国家の枠組みに属する構図であり、読み手はこの点を念頭に置く必要がある。同社の年次報告書は、サウジ電力会社やサウジ国立銀行など複数の関連当事者との取引を個別に開示している。

ウズベキスタン

同社のウズベキスタン進出は2019年前後に始まり、最初の大型案件はシルダリヤ州シリン市のガス火力複合発電所(1,500メガワット、投資額約10億9,300万ドル)だった。国営送電会社である国家電力網(NEGU)を単一の売り先とする25年の売電契約にもとづき、2024年1月に918メガワット、同年12月に残る582メガワットが商業運転に入った。

その後は風力と太陽光へ軸足が移った。ブハラ州のバシュ風力(500メガワット、6億9,000万ドル)とジャンケルディ風力(500メガワット、6億5,800万ドル)はいずれも2025年3月に稼働した。タシケント州の200メガワット太陽光と770メガワット時の蓄電池を組み合わせたリバーサイド案件(5億2,900万ドル)は2024年11月に発電部分が稼働している。カラカルパクスタンのカラタウ(ヌクス)風力100メガワットは同国で初めて公開入札にかけられた風力案件で、2025年9月と10月に分けて全量が稼働した。

建設中・開発中の案件はさらに大きい。カラカルパクスタンのクングラド1・2・3は各500メガワットの風力に各326メガワット時の蓄電池を組み合わせ、約1,450キロの送電線をあわせて建設して完成後に売り先へ引き渡す構成で、事業費は3件あわせて30億6,846万ドルとされる。サマルカンド州ヌロバド地区のサザガン太陽光1・2は各500メガワット、蓄電池各334メガワット、送電線を含めて7億1,400万ドルと10億4,900万ドルである。カラカルパクスタンのベルニー風力(200メガワット、蓄電100メガワット、投資額2億6,000万ドル)は2024年8月に着工した。ブハラ州ギジュドゥヴァン地区のバシュII(300メガワット、4億300万ドル)は2026年5月7日、ADB年次総会の場でADB・AIIB・スタンダードチャータード銀行から総額2億2,600万ドルの融資契約に署名しており、事業費の3分の2超を賄う。商業運転は2027年後半を見込む。

グリーン水素にも入っている。タシケント州チルチクの案件は52メガワットの風力と電解設備を組み合わせ、年3,000トンのグリーン水素を生産する構成で、2025年5月に発電部分、同年9月に水素部分が稼働した。ウズベキスタンで初めての商業規模のグリーン水素設備である。2024年11月にはCOP29の場でウズベキスタンエネルギー省と、国内で最大2ギガワット時の独立型蓄電設備を開発する実施協定を結んでいる。

アゼルバイジャン

同社は2019年からアゼルバイジャンで活動している。中心はアブシェロン・ヒズィ風力発電所で、アブシェロン地区とヒズィ地区にまたがる37基の風力タービン(アブシェロン側12基、ヒズィ側25基)で構成し、設備容量は240メガワットである。同国で初めて外国投資を基礎に開発された独立系発電案件にあたる。2024年11月23日に最初のタービンを設置し、2025年8月に78メガワット、同年12月に残る162メガワットが稼働して全量が動いた。売り先は国営のアゼルエネルジである。年間の発電量は最大9億700万キロワット時を見込む。

2025年1月17日には、アゼルバイジャン政府が実施した入札で、同社とトルコのIC İÇTAŞ İNŞAATの企業連合が「カスピ海水淡水化案件」の落札者に選ばれた。スムガイト化学工業団地に日量約30万立方メートルの逆浸透膜式海水淡水化プラントを建設し、バクーとアブシェロン半島の飲料水需要に充てる。投資額4億1,800万ドル、契約期間は27.5年で、期間の終了後にアゼルバイジャン国家水資源庁へ移管する。同国で初めての官民連携(PPP)の枠組みで実施される案件であり、カスピ海地域で初の大規模海水淡水化設備でもある。ADB、AIIB、IFCが投資家として名を連ね、EPC(設計・調達・建設)はパワーチャイナ華東勘測設計研究院が担う。

このほか2023年2月にはアゼルバイジャンエネルギー省との間で陸上風力1ギガワットと洋上風力1.5ギガワットの実施協定、蓄電設備に関する覚書、国営石油会社SOCARとの協力協定に署名した。2024年11月14日にはCOP29の場で、アラブ首長国連邦のマスダール、SOCARグリーンとともに、カスピ海のアゼルバイジャン水域で3.5ギガワットの洋上風力を検討する覚書に署名している。いずれも検討段階の合意であり、着工した案件ではない。

業績と数字の読み方

2025年12月期の連結売上高は74億1,350万サウジリヤル、営業利益(減損損失等の計上前)は35億9,390万サウジリヤルで前期比20%増、当期純利益は20億6,060万サウジリヤル、親会社株主に帰属する純利益は約19億サウジリヤルだった。2026年第1四半期は純利益3億4,500万サウジリヤルで前年同期の4億2,700万サウジリヤルから減った。同社はこれを、前年同期に大型案件の開発報酬・建設管理報酬が集中していた反動と説明している。

この会社の数字を読むときは、いくつか区別が要る。第一に、公表される発電容量93ギガワットや造水日量は事業の総量(グロス)であって、同社の出資比率で按分した数字ではない。案件ごとの持分は100%のものもあれば25%前後のものもある。第二に、運用資産(AUM)4,370億サウジリヤルは同社が関与する案件の総投資額であって、貸借対照表上の資産でも売上でもない。第三に、サウジリヤルは米ドルに固定されており、公式の換算では1ドル=3.75サウジリヤル前後になるが、同社がAUMをドル表示するときは3.735前後で換算している。

四半期の利益が案件のファイナンシャルクローズの時期に左右される点も、この業態に固有の特徴である。開発報酬と建設管理報酬は融資が成立した時点でまとまって計上されるため、案件の少ない四半期は利益が落ちる。稼働資産からの配当・持分法利益が積み上がるにつれてこの振れは小さくなるが、2026年時点ではまだ開発段階の収益が全体を動かしている。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。