解説 · 2026年8月時点
キルギス空港会社(Аэропорты Кыргызстана)は、キルギス国内の空港11か所を運営する株式会社である。首都ビシケク近郊のマナス国際空港を中核に、南部のオシュ国際空港、イシククル湖畔のイシククル空港など、国際空港6か所と地域空港5か所を持つ。かつては「マナス国際空港」という社名で、名称のとおり単一の空港会社だったが、国内の空港網を束ねる会社へ改組された。
キルギスは山岳国で、南北を結ぶ陸路が峠に依存し、鉄道も国内で分断されている。航空は、この地形を越えて国内を結ぶ数少ない手段であり、同時に内陸国の対外的な玄関でもある。会社の収益は空港使用料と旅客・航空機の取り扱い料に加え、給油、機内食、貨物、免税店といった周辺事業から成り、2023年に設立した国営航空会社アスマン・エアラインズを含む子会社群を通じて、路線そのものにも関わっている。
| 正式名 | Открытое акционерное общество «Аэропорты Кыргызстана»(ОАО «Аэропорты Кыргызстана»)。旧称は「マナス国際空港」(ОАО «Международный аэропорт «Манас») |
|---|---|
| 本社 | キルギス・ビシケク市720062、マナス空港内 |
| 事業 | 空港の運営、航空機の地上支援、旅客・手荷物の取り扱い、給油、機内食、貨物ターミナル |
| 運営空港 | 11か所。国際空港6(マナス、オシュ、ジャララバード、イシククル、カラコル、バトケン)と地域空港5(タラス、ナルイン、カラワン、カザルマン、ラザコフ) |
| 上場 | キルギス証券取引所(КФБ)のカテゴリーA。直近取引価格745.95ソム、時価総額262億6,269万ソム(同取引所の上場一覧、2026年8月時点) |
| 売上高 | 224億2,624万ソム(2025年通期、監査済み連結)。151億4,008万ソム(2024年) |
| 純利益 | 46億6,040万ソム(2025年通期、連結)。42億3,500万ソム(2024年) |
| 1株当たり利益 | 103.11ソム(2025年)、117.55ソム(2024年) |
| 総資産 | 541億4,448万ソム(2025年12月31日、連結)。自己資本は496億5,959万ソム |
| 納税・社会保険料 | 19億6,321万ソム(2025年、税・法人所得税9億6,638万ソム、社会基金9億9,682万ソム) |
| 旅客 | 580万人(2024年、同社の年次報告。マナス330万人、オシュ240万人) |
| 理事会議長 | マナスベク・サミジノフ(Манасбек Самидинович Самидинов) |
| 主な子会社 | アスマン・エアラインズ(2023年設立の国営航空会社)、アスマン・オイル・カンパニー(2003年設立、航空燃料)、マナス・マネジメント、マナス訓練センター |
空港網
社名が「マナス国際空港」から「キルギス空港会社」に変わったのは2025年1月である。同社広報は、国内のすべての空港を一つのブランドの下に統合して発展させるという方針を反映したものだと説明した。空港そのものの名称「マナス」は変わっていない。
同社が国際空港と位置づけるのは、マナス、オシュ、ジャララバード、イシククル、カラコル、バトケンの6か所である。地域空港はタラス、ナルイン、カラワン、カザルマン、ラザコフの5か所で、いずれも国内線の拠点となる。
中心はビシケク郊外のマナス国際空港で、2024年には同社の空港網全体の旅客580万人のうち330万人(57.7%)を扱った。次いで南部のオシュ国際空港が240万人(41.5%)である。イシククル空港は4万300人、カラコル空港は731人にとどまり、旅客の実態はマナスとオシュの2空港にほぼ集中している。貨物は空港網全体で3万2,800トン、うちマナスが3万1,400トン(95.9%)を占めた。航空機の発着は4万6,000便で、前年から6.8%増えている。
マナス空港の貨物ターミナルは年10万トンの処理能力を持ち、ボーイング747-400、An-124、Il-76級の機体2機を同時に荷役できる。2015年10月26日にキルギス政府と国際協力機構(JICA)の間で「マナス国際空港の技術設備改善」事業の無償資金協力契約が結ばれ、2018年6月29日に航法設備と地上特殊機材の引き渡し式が行われた。
米軍の輸送拠点だった時期
マナス空港は、2001年から2014年まで、アフガニスタンでの作戦を支える米空軍の輸送拠点「マナス・トランジットセンター」を併設していた。空港の民間ターミナルと滑走路を共用する形で運用され、賃料と燃料調達がキルギス政府の重要な外貨収入になっていた一方で、燃料契約をめぐる不透明さが国内政治の争点にもなった。
2013年6月にキルギス議会が協定を破棄し、2014年6月3日、米軍はトランジットセンターの鍵をキルギス国家親衛隊へ引き渡した。政府間協定では米側の退去期限が同年7月11日と定められていた。閉鎖時の説明によれば、13年の運用でアフガニスタンへ出入りする多国籍部隊の要員約530万人がここを経由し、給油機KC-135によるアフガニスタン上空での空中給油は3万3,000回に達した。施設と機材およそ3,000万ドル相当がキルギス側に残され、消防隊の設備や荷役機材の一部は空港へ引き継がれた。以後、マナスは純粋な民間空港として運営されている。
業績
同社は監査済みの連結財務諸表を公表している。2025年12月期の連結売上高は224億2,624万ソムで、2024年の151億4,008万ソムから48%増えた。売上原価の増加も大きく(97億9,246万ソムから160億31万ソムへ)、売上総利益は64億2,593万ソムだった。連結純利益は46億6,040万ソムで、前年の42億3,500万ソムから4億2,540万ソム増えている。1株当たり利益は103.11ソム(2024年は117.55ソム)で、純利益が増えたにもかかわらず低下した。2025年に73億4,792万ソムの増資が行われている。
子会社を除いた単体では逆の動きになっている。2025年の単体の総収入は107億7,892万ソムと前年から5億4,728万ソム増えた一方、営業費用が62億8,600万ソムへ膨らみ、営業利益は34億3,518万ソムと前年から5億4,694万ソム減った。単体の純利益は、同社の説明では約36億4,100万ソムで、前年から3億5,912万ソム減った。連結の伸びは、燃料や航空事業を担う子会社の寄与が大きいことを意味する。
単体の航空事業収入89億6,450万ソム(2025年)の内訳は、旅客取り扱い33億6,806万ソム、空港使用料24億754万ソム、飛行場役務19億3,610万ソム、駐機場での機体支援5億8,448万ソム、航空保安5億4,515万ソム、国内線1億2,317万ソムである。
財務は健全で、2025年12月末の総資産541億4,448万ソムに対し負債は44億8,490万ソム、自己資本比率(自己資本/総資産)は0.9である。現金及び現金同等物は75億3,636万ソムある。税と社会基金への支払いは2025年に19億6,321万ソム、直近5年間の累計で81億5,672万ソムだった。
配当は、2021年以降、純利益の25%を配当に充てる方針が続いている(2020年度分のみ75%)。2024年度分として1株29.91ソム、総額10億5,875万ソムが支払われた。直近5年間の配当総額は51億2,687万ソムである。
子会社
アスマン・エアラインズ(ОсОО «Авиакомпания Asman Airlines»)は、2023年に同社の100%子会社として設立されたキルギス初の国営航空会社である。2024年9月に運航を開始し、ビシケクからオシュ、タラス、ジャララバード、バトケン、ラザコフへ、同年11月からはケルベン、ナルイン、カラコル、カザルマンなどへも路線を広げた。機材はカナダ製のデハビランド・カナダ ダッシュ8-Q400で、短い滑走路でも運用できることが地方空港との相性で選ばれた理由とされる。
アスマン・オイル・カンパニー(ОсОО Asman Oil Company)は2003年設立で、航空燃料の受け入れ、貯蔵、給油を担う。国内すべての空港で内外の航空会社に給油しており、2024年に貯蔵能力を拡張した。このほか、マナス・マネジメント、マナス訓練センター、地上支援(ハンドリング)部門が同社グループを構成する。
読むときの注意
数字を比べるときは、連結と単体の区別に注意が要る。同社は連結(子会社込み)と単体の両方を公表しており、2025年は連結の売上・利益が伸びる一方で単体の営業利益と純利益が減った。給油子会社の売上は燃料価格に左右されるため、連結売上高の伸び率をそのまま空港事業の成長と読むことはできない。
株式数の表示にも幅がある。キルギス証券取引所の上場一覧は普通株35,206,820株としているが、同取引所の発行体カードは27,869,044株(発行価格17.8412ソム)と記している。2025年には73億4,792万ソム分の増資も行われており、公表時点によって株式数が異なる。1株当たりの指標を扱うときは、どの時点の株式数かを確認する必要がある。
旅客数は2024年の数字が最新の公表値である(同社の年次報告に基づく)。2025年の旅客実績は、2026年8月時点で同社サイトの財務資料からは確認できない。
参考資料
- Финансы — ОАО «Аэропорты Кыргызстана»(公式サイト。監査済み連結財務諸表と主要財務指標を掲載) ↗
- Дочерние компании — ОАО «Аэропорты Кыргызстана»(公式サイト) ↗
- ОАО Аэропорты Кыргызстана(キルギス証券取引所の発行体情報) ↗
- Листинг(キルギス証券取引所の上場銘柄一覧) ↗
- Пассажиропоток в аэропортах Кыргызстана достиг 5.8 млн человек — Economist.kg(2025年5月29日、同社年次報告に基づく) ↗
- Кыргызстан получил ключи от ЦТП «Манас» — Вечерний Бишкек(2014年6月3日) ↗
- ОАО «Международный аэропорт «Манас» сменило название — 24.kg(2025年1月27日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。