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アリフ

タジキスタン発のフィンテック企業グループ。イスラム金融の原則にもとづく分割払いと決済を、タジキスタンとウズベキスタンで展開する。

Alif
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

アリフ(Alif)は、タジキスタン発のフィンテック企業グループである。2014年にドゥシャンベでマイクロクレジット機関として始まり、2020年に銀行免許を得て「アリフ銀行」となった。現在はタジキスタン、ウズベキスタン、パキスタンで、決済アプリ、分割払い、電子商取引、事業者向け金融を組み合わせた事業を営む。同社は自らを「イスラム金融のフィンテック」と位置づけ、利息ではなく分割払いの取引にもとづく商品設計を掲げている。

この会社が注目に値するのは、中央アジアで最も小さな経済のひとつであるタジキスタンから、国境を越えて広がった数少ない技術企業だからである。基幹の銀行システム、顧客管理システム、決済アプリ、電子商取引サイトをいずれも自社で開発しており、外部のベンダーから買っていない。タジキスタンでは支店をわずか4か所しか持たないまま、発行済みカード148万枚(2026年6月末)と国内3位の規模に達した。

ウズベキスタンでは2019年に2つの法人を登記し、2021年から決済アプリと分割払いサービスを本格展開した。同社サイトの掲載値では、ウズベキスタンの顧客は300万人、提携店は5,000か所を超える。日本語で読める情報がほとんどない企業だが、中央アジアのイスラム金融とデジタル決済の交差点にいる事業者として、両分野を追ううえでは避けて通れない。

創業2014年、タジキスタン。同年4月に国立銀行からマイクロクレジット機関の免許を取得して営業を始めた
事業決済アプリ、分割払い、電子商取引、事業者向け銀行サービス、IT教育。イスラム金融の原則にもとづく商品設計を掲げる
事業国タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタン(会社の公表による)。サウジアラビア、バングラデシュ、エジプト、インドネシアを検討先として挙げる
グループ規模従業員1,430人超、顧客440万人超(同社サイトの掲載値)
タジキスタンの中核会社OJSC「Alif Bank」。2020年1月に国立銀行から銀行免許(第0000114号)を取得し、現在の商号になった
銀行の株主JSC「Alif Capital Holdings Limited」が100%(タジキスタン国立銀行の開示、2025年12月31日時点)
銀行の登録資本金2億5,730万ソモニ
銀行の総資産32億6,050万ソモニ(2026年6月末)
銀行の通期利益1億5,370万ソモニ(2025年通期)。自己資本利益率は40.2%
銀行の店舗・カード支店4、銀行サービスセンター19、ATM 468台、発行済みカード148万3,836枚(2026年6月末)
ウズベキスタンの法人Alif Tech LLC(ソフトウェア開発)とAlif Moliya LLC(金融・商取引)。ともに2019年に登記
ウズベキスタンの規模顧客300万人、提携店5,000か所超、従業員300人超(同社サイトの掲載値)
ウズベキスタンの免許中央銀行免許第000010号(2020年7月23日付)ほか
主な出資者・資金の出し手スイスの民間銀行CBH Bank、実業家ホフィズ・シャヒディ氏、国際金融公社(IFC)、米アクシアル・キャピタル、英カー8キャピタル、イスラム開発銀行グループのITFC(いずれも同社の公表による)

沿革

2014年4月、タジキスタン国立銀行からマイクロクレジット機関の免許を得て営業を始め、最初の中小企業向け融資を実行した。2015年に自社の顧客管理システムの開発に着手し、2016年3月にはマイクロクレジット・預金機関の免許へ格上げして、預金の受け入れと為替業務が可能になった。

2017年が転機になった。1月に自社開発の基幹銀行システムを稼働させ、3月に国内の決済処理センターへ接続して国民カード「コルティ・ミリ」の発行を始めた。6月には分割払いで消費財を買える国内初のオンライン店舗「アリフショップ」を開き、11月にはコルティ・ミリで公共料金などを支払えるオンライン決済基盤「アリフペイ」を立ち上げた。同社によれば、この仕組みは後に他行にも広く採用された。

2018年1月に決済アプリ「アリフモビ」を投入し、国際送金を始めた。同年8月には分割払い専用の「サロム(Salom)カード」を出し、あわせて一般のスマートフォンをPOS端末として使えるソフトウェアを開発して加盟店に配った。端末機器を配らずに分割払いの取扱店を増やす設計であり、店舗網の薄い国での展開に適していた。

2019年11月、モナコ在住のタジク人実業家ホフィズ・シャヒディ氏から追加の資本を受け入れ、同氏が株式の25%を取得して取締役会長に就いた。これにより完全な銀行免許の申請が可能になり、2020年1月に国立銀行から銀行免許(第0000114号)を得て「アリフ銀行」へ商号を変えた。同年2月にはスイスの民間銀行CBH Bank(Compagnie Bancaire Helvétique)が株主に加わっている。

2020年には国際金融公社(IFC)と戦略的協力協定およびコーポレートガバナンス改善の協定を結び、ウズベキスタンで電子マネー・決済の免許を取得した。2021年5月にはIFCのフィンテック部門とプライベートエクイティから1,000万ドルを調達し、同年9月には評価額1億ドルで株式800万ドル・借入5,000万ドルを調達したと公表している。2023年11月には証券のブローカー、ディーラー、ポートフォリオ管理の3免許を取得した。

商品の設計

同社の中心にあるのは「分割払い」である。タジキスタンではサロムカード、ウズベキスタンでは「アリフ・ナシヤ(Alif Nasiya)」の名前で提供されている。ウズベキスタンのナシヤは、頭金0%、期間3〜24か月、限度額3,300万スムまで、提携店5,000か所超で使える設計で、同社は「分割払いはシャリーア(イスラム法)の原則に適合する」と説明している。手続きは全て携帯端末で完結し、審査は30分以内をうたう。

イスラム金融では利息の授受が認められないため、消費者金融は一般に、金融機関がいったん商品を買って利益を上乗せして分割で売る形(ムラーバハ)などに組み替えられる。同社の商品説明も、貸付に利息を付けるのではなく、商品の売買と分割払いを組み合わせる形を取っている。ただし、同社の商品がシャリーアに適合するかをどの機関がどのように審査しているかは、公表資料からは確認できない。外部から確かめられるのは商品の契約条件と規制上の位置づけまでである。

この設計は財務指標にも表れている。タジキスタン国立銀行が各行別に公表する指標のうち、利息収支を示す純金利マージンは、アリフ銀行では2021年以降おおむねマイナスで推移している(2025年通期はマイナス0.5%、2026年6月末はマイナス0.4%)。一方で自己資本利益率は2025年通期に40.2%、2026年上半期も年率換算で30%台に達している。利息の収支がマイナスでありながら高い収益を上げているという、通常の商業銀行とは異なる収益構造になっている。

このほか、決済アプリ「アリフ」を軸に、国際送金、通貨両替、航空券の購入、公共料金の支払い、事業者向けの「アリフ・ビジネス」、電子商取引の「アリフショップ」を束ねている。2025年7月にはVisa Direct Accountを使った事業者向けの海外送金を、同年8月には中国のアリペイ・ウィーチャットへの送金を始めた。2026年7月にはApple Payに対応している。

タジキスタンでの位置

タジキスタン国立銀行の開示では、アリフ銀行の株式はJSC「Alif Capital Holdings Limited」が100%を保有する(2025年12月31日時点)。登録資本金は2億5,730万ソモニである。同社の説明ではシャヒディ氏やスイスのCBH Bankが株主に名を連ねるが、これは持株会社の段階での出資であり、銀行の直接の株主は持株会社1社である。

国立銀行の四半期指標によれば、2026年6月末の総資産は32億6,050万ソモニ、貸出は15億3,630万ソモニ、預金は20億8,973万ソモニ、自己資本は3億9,408万ソモニだった。2025年12月末の総資産は28億253万ソモニ、通期の利益は1億5,370万ソモニで、自己資本利益率は40.2%である。

この銀行の特徴は、店舗網の薄さと利用者数の多さの落差にある。2026年6月末の支店は4か所、銀行サービスセンターは19か所にとどまる一方、ATMは468台、発行済みカードは148万3,836枚に達する。カードの発行枚数は1年前の98万枚から5割増えた。支店30前後の中堅行と比べても桁が違う伸び方で、非対面での顧客獲得に依存した業態であることが数字に出ている。

同社はIT人材の育成にも投資している。2015年から無料のプログラミング講座を開き、後に「アリフ・アカデミー」として制度化した。2026年時点の同社の説明では、2,000人以上がこの講座を経て職を得たとしている。人材の流出と離職率の高さが国内のIT産業の制約になっているという問題意識にもとづく取り組みである。

ウズベキスタンでの展開

2019年、ソフトウェア開発を担うAlif Tech LLCと、金融・商取引を担うAlif Moliya LLCがウズベキスタンで登記された。Alif TechはIT公園(IT Park)の入居企業の資格を得ている。2020年7月23日付で中央銀行の免許(第000010号)を取得し、電子マネーと決済の業務が可能になった。

2021年にアリフのスーパーアプリ、アリフショップ、加盟店向けのアリフ・マーチャントをウズベキスタンで立ち上げ、同年に機械学習を使った与信スコアリングの初期版を投入した。2023年にはウズカードのフォーラムで同国のフィンテック発展への貢献に対する表彰を受け、同年にアリフ・アカデミーをウズベキスタンでも開講した。

同社サイトの掲載値では、ウズベキスタンの顧客は300万人、提携店は5,000か所超、従業員は300人超である。グループ全体では従業員1,430人超、顧客440万人超としている。タジキスタンとウズベキスタンの人口規模の差(約1,000万人と約3,700万人)を考えると、同社の成長の重心はウズベキスタンへ移りつつある。

資金調達も国際化している。同社の公表によれば、2024年に米アクシアル・キャピタル(Accial Capital)から2,000万ドル、英国のイスラム金融ファンドであるカー8キャピタル(Cur8 Capital)から500万ドル、2025年にイスラム開発銀行グループの国際イスラム貿易金融公社(ITFC)から300万ドルの資金を得ている。

数字の読み方

この会社の数字を扱うときは、まず範囲を確かめる必要がある。タジキスタン国立銀行が公表する総資産・貸出・預金・利益は、あくまでOJSC「Alif Bank」という単体の銀行のものである。一方、同社サイトが掲げる「顧客440万人」「従業員1,430人」はタジキスタン・ウズベキスタン・パキスタンを合わせたグループの数字で、監査を経た財務諸表の裏づけがある性格の数字ではない。持株会社であるAlif Capital Holdingsの連結財務諸表は公表されていない。

顧客数についても定義が明示されていない。国別の顧客数(ウズベキスタン300万人)と全体(440万人)が並記されているが、複数の国やサービスをまたぐ利用者の重複がどう処理されているかは示されていない。銀行単体の発行済みカード枚数(2026年6月末で148万3,836枚)は国立銀行が集計する数字で、これは定義が明確である。

収益指標では、前述のとおり純金利マージンがマイナスで推移する。利息収支だけを見て収益力を判断すると実態を見誤る。逆に、手数料と分割払いの値差が収益の中心であるということは、消費の落ち込みや加盟店網の縮小に対して収益が敏感である可能性も意味する。

通貨にも注意が要る。タジキスタンの数字はソモニ建て、ウズベキスタンはスム建て、資金調達はドル建てで示される。ソモニもスムも対ドルで下落が続いており、現地通貨建ての伸び率とドル建ての伸び率は一致しない。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。