解説 · 2026年8月時点
アルティンケン(Altynken)は、キルギス北部チュイ州でタルディブラク左岸金鉱床を操業する中国・キルギスの合弁会社である。中国の資源大手である紫金鉱業系の企業が60%、キルギス国有のキルギスアルティンが40%を出資する。
クムトールに次ぐ規模の稼働中の金鉱山であり、中国資本による中央アジアの資源開発の代表例として引き合いに出される。ソ連期に見つかった鉱床が、オーストラリア、マレーシア、カザフスタンの投資家の手を経て最終的に中国資本のもとで開発された経緯そのものが、この地域の鉱業投資の変遷を映している。
| 正式名 | Altynken LLC(ОсОО «Алтынкен»、奥同克有限责任公司) |
|---|---|
| 設立 | 2006年4月5日 |
| 所在 | キルギス・チュイ州ケミン地区オルロフカ市クドリャショフ通り18番。首都ビシケクの東120キロ |
| 出資 | 中国の紫金鉱業(Zijin Mining)系が60%、キルギスアルティンが40% |
| 鉱山 | タルディブラク左岸(Талды-Булак Левобережный)金鉱床。坑内採掘 |
| 埋蔵量 | 金77トン(同社。キルギスで3番目の規模とする) |
| 処理能力 | 日量2,500トン。鉱山寿命19年 |
| 建設投資 | 約2億5,900万ドル(後年の新立坑1,289万ドルを含む) |
| 全面稼働 | 2015年7月29日 |
| 累計生産 | 金33.214トン、産出額18億5,780万ドル、納税4億2,090万ドル(2025年6月末時点) |
| 従業員 | 928人(中国籍56人、ロシア籍2人、現地870人)。現地化率93.97%、女性比率16.6% |
| 製品 | 金精鉱とドーレ地金 |
鉱床と操業
タルディブラク左岸鉱床は、チュイ州のオルロフカ集落から南へ12キロ、ビシケクから東へ120キロの天山山脈北麓にある。オルロフカの東6キロのケミンには鉄道駅があり、輸送の条件は比較的よい。
同社の説明では、金の埋蔵量は77トンでキルギスで3番目の規模にあたる。設計上の処理能力は日量2,500トン、操業年数は19年である。採掘は坑内式で、採掘跡を充填しながら上向きに水平層を掘り進める方式をとり、鉱石は無軌道運搬、坑道、鉱石落とし、ケージ立坑を組み合わせて運び出す。
選鉱工程は、破砕、粉砕、混合浮選、再粉砕、銅と硫黄の分離、硫化精鉱のシアン化からなる。製錬では活性炭からの脱着と電解採取、不純物の除去、精製を経てドーレ地金に鋳造する。出荷するのは金精鉱とドーレ地金の2種類である。合弁設立時の取り決めにより、産出した貴金属はキルギスアルティンのカラバルタ精錬所で処理される。
2025年6月末までの累計生産量は金33.214トン、産出額は18億5,780万ドル、納税額は4億2,090万ドルに達したと同社は説明している。従業員は928人で、うち中国籍が56人、ロシア籍が2人、残る870人がキルギス国内の採用である。
開発にたどり着くまで
鉱床はソ連期に発見され、1963年から1995年にかけて繰り返し地質調査が行われ、ソ連式の技術経済計算もまとめられていた。独立後の1995年から2001年にかけて、キルギス政府は複数の外国投資家を誘致した。1995年にはオーストラリアのプルトニック・リソーシズが選鉱と坑内採掘の設計検討を委託し、1996年にはマレーシアン・マイニング・コーポレーション・ベルハド(MMC)がSNCラバリンにM1・M2鉱帯の技術経済計算を発注した。2000年、MMCはミンプロク・リミテッドに再評価を依頼したが、当時の金価格の低迷を理由に投資家は事業性を否定し、資金拠出を取りやめた。
2001〜2002年に案件はキルギスアルティンへ移り、同社は現地の設計調査センター「ケン・トー」に投資向けの技術経済計算を作らせた。2003年にはオーストラリアのセントラル・アジア・ゴールド(CAGL)と合弁「タルディブラク・ゴールド・マイニング・カンパニー」を設立し、CAGLが作成した融資用の技術経済計算が2004年に国家埋蔵量委員会(ГКЗ)で承認された。2004年6月29日に承認されたC1+C2区分の埋蔵量は、金64.4トン(平均品位7.23グラム/トン)、銀はC2区分で45.2トン(同6.08グラム/トン)である。
しかし2005年末、免許協定の条件を満たせなかったとして同合弁は採掘免許を失い、会社は清算された。2006年春、キルギスアルティン(持分40%)とカザフスタンのサマー・ゴールド(同60%)が共同事業協定に署名し、政府決定の承認を経てアルティンケンが設立された。同年4月、政府地質鉱物資源庁が採掘免許471-АЕと地質調査免許470-АПを交付し、2007年9月28日には採掘と選鉱場建設に関する免許協定第2号が結ばれて、設計段階から建設段階へ移った。
2008年に坑内採掘の技術経済計算がまとまったものの、世界金融危機で安価な資金が得られず建設は減速した。2008〜2009年は道路、電力、給水などの付帯設備と坑口の整備にとどまり、免許協定の不履行が問題になった。2010年末から2011年初めの交渉で新たな免許協定が結ばれ、鉱山の稼働期限は2014年初めまで延長された。このときサマー・ゴールドは520万ドルの違約金を支払っている。2011年8月から9月にかけて、同社はキルギス側の同意を得て持分を中国のスーパーB・パシフィックへ譲渡した。同社の親会社が紫金鉱業である。2015年7月29日、鉱山は全面稼働に入った。
出資者
60%を持つ紫金鉱業は、銅、金、亜鉛、リチウムなどの探鉱・開発を世界で手がける中国の資源大手である。株式は香港証券取引所(2899.HK)と上海証券取引所(601899.SH)に上場する。同社が公表する資源量は銅1億1,037万トン、金3,973トン、亜鉛・鉛1,298万トン、銀31,836トン、リチウム1,788万トン(炭酸リチウム換算)である。アルティンケンのサイトによれば、2024年のフォーブス・グローバル2000で267位、世界の金属採掘企業で5位、金採掘企業で1位に位置づけられ、フォーチュン・グローバル500では364位、中国企業500では91位である。
40%を持つキルギスアルティンは、1992年10月15日に設立された完全国有の企業で、金の精錬と販売、鉱山の持株を担う。クムトール・ゴールド・カンパニーの唯一の株主でもある。
地域との関係
同社はケミン地区の地域振興基金(マイクロクレジット機関「ケミン地区発展基金」、2006年11月設立)へ定期的に拠出しており、2025年6月末までの累計は330万7,100ドルである。ケミン地区政府とは人材の採用・育成に関する覚書を交わし、500人を超える専門人材を育て、関連産業で2,000人分を超える就業を生んだとしている。資材調達の8割を現地市場から行っているという。
環境面では、生態系修復のための基金を設け、これまでに47万ドルを拠出して約7万9,500平方メートルの植生を回復し、約5万400本の樹木や花を植えたと説明している。排水の再利用率は100%としている。
読むときの注意
同社は有限責任会社であり、財務諸表を公表していない。売上高、利益、配当は確認できず、規模を測る材料は同社が自社サイトで示す生産量、産出額、納税額に限られる。これらはいずれも独立に検証できない数字である。
納税額については、同社サイトの中に2025年6月末時点で4億2,090万ドルとする記述と、5,569万5,700ドルとする記述が併存しており、どちらが何を指すのかの説明がない。金額を引用するときは、どの箇所の記述かを確かめる必要がある。
また、埋蔵量の77トンという数字は同社の説明であって、2004年に国家埋蔵量委員会が承認したC1+C2の64.4トンとは基準も時点も異なる。国際的な分類(JORCやNI 43-101)による報告は公表されていない。
参考資料
- ОсОО «Алтынкен»(公式サイト) ↗
- О компании — ОсОО «Алтынкен»(設立、鉱床、生産量、従業員、ESG) ↗
- 奥同克有限责任公司简介 — 奥同克有限责任公司(中国語版。数値の確認に使用) ↗
- Участники — ОсОО «Алтынкен»(出資者の紹介) ↗
- ОсОО «Алтынкен» — ОАО «Кыргызалтын»(1995年以降の投資家交代と埋蔵量の承認) ↗
- Вклад в экономику — ОсОО «Алтынкен»(ケミン地区発展基金) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。