解説 · 2026年8月時点
アルメコノムバンク(ARMECONOMBANK、アルメニア経済開発銀行)は、アルメニアの商業銀行である。ソ連時代の住宅社会開発銀行(ジルソツバンク)のアルメニア支店を前身とし、1991年に同国の中央銀行へ登録番号1で登記された、独立後もっとも古い銀行のひとつである。総資産では国内17行のうち8位(2025年6月末)で、中小企業向け融資に厚みがある。
同行のもう一つの特徴は、株式が公開されていることである。アルメニアの銀行の多くは非公開の閉鎖型株式会社だが、同行は公開型株式会社として1,400人を超える株主を持ち、アルメニア証券取引所(旧NASDAQ OMXアルメニア)で株式が取引される数少ない銀行である。
| 正式名 | «ARMECONOMBANK» OJSC(Հայէկոնոմբանկ ԲԲԸ) |
|---|---|
| 前身 | ソ連ジルソツバンク(住宅社会開発銀行)のアルメニア支店(1988年) |
| 登記 | 1991年、アルメニア中央銀行に公開型株式会社として登録(登録番号1) |
| 本店 | アルメニア・エレバン(パプ・タガヴォル通り23/1) |
| 事業 | 商業銀行業務。中小企業金融と個人向け貸出が中心 |
| 総資産 | 6,045億ドラム(2025年12月末)。前年の5,277億ドラムから14.6%増 |
| 純利益 | 125億5,200万ドラム(2025年通期)、90億400万ドラム(2024年通期) |
| 登録資本 | 315億7,800万ドラム、自己資本832億5,700万ドラム(2025年12月末) |
| 主要株主 | スキアシャン家が払込資本の51.45%を保有(2025年6月時点) |
| 格付 | フィッチ B+(2024年2月に格上げ、見通し安定) |
沿革
1988年、ソ連の銀行制度改革でジルソツバンクのアルメニア支店が設けられ、同行はその法的承継者となった。1991年に公開型株式会社として中央銀行に登録され、1993年に改めて登記、1995年に外国為替業務の一般免許、1996年にSWIFT加盟とエレバン証券取引所への参加を果たしている。
1990年代後半から2000年代にかけては、国際機関の資金を国内の中小企業に流す窓口として成長した。1997年に世界銀行の中小企業育成事業の枠組みで免許を得て、1999年にはリンシー財団の中小企業向け融資に参加、2000年には国家保証なしで欧州復興開発銀行(EBRD)から100万ドルの融資を受けた国内初の銀行となった。同年にはアルメニアのカード決済基盤アルメニアン・カード(ArCa)の設立にも加わっている。
2001年から2002年にかけて西部連合(ウエスタンユニオン)の代理店網とEUROPAY加盟を整え、2002年には株式がNASDAQ OMXの「B」プラットフォームで取引される唯一のアルメニアの銀行になった。2021年にはアルメニア証券取引所から「最良の株式発行体」に選ばれている。
資金調達と中小企業金融
同行の資金調達は国際開発金融機関と社会的投資ファンドへの依存度が高い。2020年以降だけでも、アジア開発銀行(ADB)、EBRD、オランダ開発金融公社(FMO)、ドイツ投資開発会社(DEG)、フランス開発庁系のプロパルコ、黒海貿易開発銀行(BSTDB)、OPEC国際開発基金から中小企業向けの資金枠を受け入れている。加えて、スイスのシンビオティクス、レスポンサビリティ、ブルーオーチャードが運用するルクセンブルクの投資ファンドからの借入を繰り返している。
2025年には、BSTDBから2,000万ドル、DEGから3,000万ドル、FMOから3,000万ドル、ADBから約1,900万ドル相当の融資契約を結んだ。同年、ADBの貿易金融プログラムで「アルメニアの主要提携銀行」に選ばれている。
この結果、貸出は預金より速く伸びてきた。2025年6月末の貸出残高は3,778億ドラムで業界6位だが、預金は1,961億ドラムで11位にとどまる。総資産に占める貸出の比率は65.4%と業界平均より高い。
所有と業績
払込済み資本の51.45%(129億6,908万ドラム相当)をスキアシャン家が保有し、サリベク、エドゥアルド、ハチャトゥールの3氏が重要参加者として開示されている(2025年6月時点)。同家はアルメニアの実業界で知られる一族で、同行はその中核資産にあたる。
2025年12月末の総資産は6,045億ドラム、通期の純利益は125億5,200万ドラムで前年の90億400万ドラムから39%増えた。中央銀行の健全性基準に対する自己資本比率(総資本/リスク資産)は17.55%、基準の11%を上回る。フィッチ・レーティングスは2024年2月に長期発行体デフォルト格付をBからB+へ引き上げ、見通しを安定としている。
参考資料
- ARMECONOMBANK — Bank history(公式) ↗
- ARMECONOMBANK — Significant Participants(公式) ↗
- English Financial Reports and Notes Q4 2025(公式・PDF) ↗
- Report on Main Economic Standards 31/12/2025(公式・PDF) ↗
- Armenian Banking Sector Overview(2025年上半期)— KPMG Armenia ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。