解説 · 2026年8月時点
アゼルバイジャン・カスピ海船舶会社(ASCO)は、カスピ海最大の船会社である。タンカー、貨物船、鉄道車両やトラックを積むフェリーを運航する輸送商船隊と、洋上の石油・ガス開発を支える特殊船からなるカスピ海石油船隊の二つを抱える。中間回廊でカスピ海を渡る貨物は、事実上この会社の船に乗る。起源は1858年の「カフカスとメルクーリィ」社にさかのぼり、南コーカサスで現存する最古の企業とされる。
| 正式名 | Azerbaijan Caspian Shipping Company CJSC(ASCO) |
|---|---|
| 起源 | 1858年設立の「カフカスとメルクーリィ」社。南コーカサスで現存する最古の企業 |
| 本社 | アゼルバイジャン・バクー |
| 事業 | カスピ海およびカスピ海外での海上貨物輸送、石油・ガス開発向けの海洋支援サービス |
| 輸送量 | 900万トン超(2025年) |
| カスピ海外での輸送 | 140万トン超(2025年) |
| 船隊 | 輸送商船隊と、海洋支援を担うカスピ海石油船隊の二本立て |
| 所有形態 | アゼルバイジャン国有(AZCONホールディング傘下) |
二つの船隊
一つ目は輸送商船隊で、タンカー、乾貨物船、フェリー、ロールオン・ロールオフ船などからなる。カスピ海を横断してカザフスタンやトルクメニスタンとアゼルバイジャンを結び、鉄道貨車ごと積み込めるフェリーは、中間回廊の鉄道輸送を海で継ぐ役割を果たす。近年は新型のロールオン・ロールオフ旅客船(Ro-Pax)の建造が進んでいる。
二つ目はカスピ海石油船隊で、クレーン船、支援船、曳船、パイプ敷設船、消防船、潜水作業船、浚渫船など多数の特殊船を持つ。アゼリ・チラグ・グナシリ油田やシャフデニズ・ガス田といった洋上開発の施工と保守を支える部隊であり、この分野の役務を域内で担える事業者は限られる。
カスピ海の外へ
近年の方針として明確なのは、カスピ海の外での事業拡大である。乾貨物船やタンカーを黒海・地中海などの外洋に配し、ハンディサイズやアフラマックスといった船型で国際航路の輸送を手がけている。2025年のカスピ海外での輸送量は140万トンを超えた。
カスピ海は閉じた内海であり、船を外洋へ移すことも外洋から持ち込むこともできない。したがってカスピ海内の船隊と外洋の船隊は別々に構成する必要がある。この制約のもとで外洋事業を育てるという選択は、カスピ海の荷動きだけに依存しない収益源を作る狙いと読める。
中間回廊での位置
2025年の総輸送量は900万トンを超えた。中間回廊の貨物は、カザフスタンの鉄道からアクタウ港またはクリク港へ、そこからASCOの船でバクー国際海上貿易港へ、さらにアゼルバイジャン鉄道へと渡る。船の便数と積載能力が回廊全体の制約になりやすいため、同社の船隊増強と運航頻度は回廊の実力を測る手がかりになる。
参考資料
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。