解説 · 2026年8月時点
アゼルポスト(Azərpoçt)は、アゼルバイジャンの唯一の国営郵便事業者である。全国に800か所を超える郵便局網を持ち、郵便・小包の配達に加えて、年金や社会保障給付の支払い、公共料金の収納、国内外の送金、両替といった金融サービスを担う。国有100%で、2024年に設立された運輸通信持株会社AZCONの傘下にある。
郵便局が金融サービスの窓口を兼ねる構造は、銀行の支店が届かない地方で決済インフラの役割を果たしている。2010年に中央銀行から金融サービスの免許を得て以降、SWIFT、マスターカード(2011年)、ビザ(2022年)や国内の決済システムに接続し、収入に占める金融サービスの比重を高めてきた。
| 正式名 | “Azərpoçt” Məhdud Məsuliyyətli Cəmiyyəti(アゼルポスト有限責任会社) |
|---|---|
| 設立 | 1999年9月23日付の通信省令151号により国営企業として設立。2009年8月31日付の通信情報技術省令145号で有限責任会社へ改組 |
| 登記番号 | 9900037711 |
| 本拠 | バクー市ウゼイル・ハジベヨフ通り36(AZ1000) |
| 事業 | 郵便・小包・EMS、国内外の送金と金融サービス、電子商取引の配送、切手の発行 |
| 所有 | 国有100%。AZCONホールディングの傘下 |
| 売上高 | 5,488万マナト(2022年通期。前年は4,035万マナト) |
| 税引前利益 | 450万マナト(2022年通期。前年は556万マナトの損失) |
| 従業員 | 5,000人超(2022年12月末) |
| 拠点 | 郵便局800か所超(2025年、AZCON) |
| 国際加盟 | 万国郵便連合(UPU)1993年、地域通信共同体(RCC)1991年、経済協力機構(ECO)1992年 |
沿革
アゼルバイジャンの郵便の歴史は古く、公式サイトの説明ではサファヴィー朝期に遡り、近代的な郵便局としては1818年のギャンジャが最初とされる。1826年にバクー、1828年にナヒチェバンに郵便部門が置かれ、1830年代にはシュシャ、シャマフ、バクー、ナヒチェバンに第一級郵便局が設けられた。鉄道による郵便輸送は1883年のバクー〜トビリシ間で始まった。1918年10月6日には郵便電信省が設置されている。
現在の法人は、通信省が1999年9月23日付の命令151号「郵便通信分野における改革の継続と機構の改善について」により設立した国営企業アゼルポストを起点とする。同社は生産合同「アゼルポスト」を基礎に設立され、その法的承継者にあたる。2009年8月31日付の通信情報技術省令145号により組織形態が有限責任会社へ改められ、定款は同年9月15日に法務省が承認した。
2021年4月27日付の大統領令1325号にもとづき、切手の発行などを担っていたアゼルマルカ有限責任会社が同年9月1日にアゼルポストへ統合された。両社とも政府の共通支配下にあったため、資産と負債は統合時点の純資産の帳簿価額で引き継がれている。
事業
伝統的な郵便サービス(書状、電報、小包)に加え、同社は収入基盤を広げるための事業を重ねてきた。年金・社会保険の給付や国庫との資金のやりとり、公共料金の収納、国内外の送金、電話・ファクス・複写などの窓口業務、SIMカードや新聞の販売がこれにあたる。
2022年の監査済み財務諸表によると、顧客との契約から得た収入5,488万マナトの内訳は、金融サービス2,325万マナト、郵便サービス2,035万マナト、その他1,128万マナトである。金融サービスでは外貨残高の再評価益1,038万マナト、国際送金の手数料562万マナト、カードによる現金取引240万マナトが大きい。郵便サービスでは切手の販売699万マナト、国際郵便交換441万マナト、小包238万マナトが並ぶ。その他ではガス料金の収納345万マナト、電気料金190万マナト、税の収納132万マナトが中心である。
2021年に始めた転換のなかで、電子商取引と貨物の取り扱い、集荷・受取拠点(PUDO)、24時間稼働の宅配ロッカー「ポスタマト」を導入した。AZCONの公表では、2025年の配達数は書状・小包が900万件超、金融サービスの取扱件数は9,000万件超である。金融サービスの件数が郵便物の10倍に達している点に、この会社の実態がよく表れている。
財務
国際会計基準にもとづく2022年の財務諸表では、収入は前年の4,035万マナトから5,488万マナトへ増えた。税引前損益は450万マナトの利益で、前年の556万マナトの損失から黒字に転じている。法人税費用は17万マナトだった。従業員は2022年12月末で5,000人を超え、63の郵便支店、7の地域通信拠点、4のEMS拠点を持つと記載されている。
2022年時点の所有形態は、経済省傘下の国家財産問題サービスが代表する国有100%だった。その後、運輸通信分野の国有企業を束ねるAZCONホールディングの傘下に移っている。
同社は年次の財務報告を公式サイトで公開しているが、近年の報告書は画像として取り込まれた文書で、数値を機械的に追うことはできない。時系列で比較する場合は、本文が文字として残る2022年までの報告書が使いやすい。
国際関係
アゼルバイジャンの郵便主管庁は1991年に地域通信共同体(RCC)、1992年に経済協力機構(ECO)、1993年に万国郵便連合(UPU)へ加盟した。2000年1月には欧州郵便電気通信主管庁会議(CEPT)にも参加している。
2004年のブカレスト大会でUPU管理理事会の理事国に初めて選ばれ、2008年のジュネーブ大会では管理理事会と郵便業務理事会の双方に選出された。2016年のイスタンブール大会では郵便業務理事会に再選されている。
同社は173か国と国際郵便のやりとりを行い、126か国の郵便事業者と書留郵便の相互取り扱いを実施している。1998年からUPUのEMS協同組合に加盟し、追跡システムIPS.light(2001年)、国際送金システムIFS/STEFI(2005年)、グローバル・モニタリング・システム(2013年)、IPS.Post(2016年)を導入してきた。2013年にはUPUの品質管理でゴールドレベル認証、2015年にはS42住所標準の認証を受けている。
参考資料
- About company(アゼルポスト 公式サイト) ↗
- International relations(アゼルポスト 公式サイト) ↗
- “Azərpoçt” MMC 2022年 国際会計基準にもとづく財務諸表と監査報告(アゼルポスト 公式サイト) ↗
- Azerpost(AZCONホールディング 公式サイト、2025年の主要指標) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。