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アゼルシゴルタ

アゼルシゴルタ(Azərsığorta)は、アゼルバイジャンの国営保険会社である。ソ連期の国家保険制度に起源を持ち、同国で最も長い歴史を持つ保険組織にあたる。正式名称はアゼルバイジャン共和国国家保険商業会社で、「アゼルシゴルタ」は営業上の呼称である。

Azersigorta
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

アゼルシゴルタ(Azərsığorta)は、アゼルバイジャンの国営保険会社である。ソ連期の国家保険制度に起源を持ち、同国で最も長い歴史を持つ保険組織にあたる。正式名称はアゼルバイジャン共和国国家保険商業会社で、「アゼルシゴルタ」は営業上の呼称である。

2024年1月31日付の大統領令により、この会社は清算された。中央銀行が公表する保険会社別の統計では、収入保険料は2023年通期の2,886万マナトを最後に、2024年以降はゼロとなっている。中央銀行の保険会社登録簿にも同社の名前はない。国営保険会社が民間との競争のなかで役割を失っていった事例として読める。

正式名Azərbaycan Respublikası Dövlət Sığorta Kommersiya Şirkəti(アゼルバイジャン共和国国家保険商業会社)。「アゼルシゴルタ(Azərsığorta)」は同社が使ってきた商号
起源1921年10月21日、ソ連財務省の国家保険機構ゴスストラフの地方組織「アズゴスストラフ」として発足
現法人の設立1991年、財務省の下にあった国家保険を基礎に設立
本拠バクー市ナリマノフ地区ガラバフ通り31
管理2021年9月22日付の大統領令によりアゼルバイジャン投資持株会社(AIH)の管理下へ
現況2024年1月31日付の大統領令により清算。中央銀行の保険会社登録簿には掲載されていない(2026年8月時点)
収入保険料2,886万マナト(2023年通期)。2024年・2025年はゼロ(中央銀行集計)
支店地方22、バクー7(公式サイトの記載)

沿革

起点は1921年10月21日、ソ連財務省が管轄する国家保険機構ゴスストラフの地方組織として「アズゴスストラフ」が業務を始めたことである。当初の目的は勤労者の生活水準の向上に置かれ、一時的に働けなくなった者の賃金の全額支払い、奨学金、自宅療養やサナトリウム利用券の費用、住宅を建てた者への追加の資金配分、療養食の費用などを賄う仕組みとして設計された。支払いのための社会基金が設けられ、資金は国立銀行(ゴスバンク)から配分された。

1970年代には住民と国営・協同組合企業の支払能力が高まり、ソ連の国家保険機構の支店網が広がるなかで、住宅・非住宅の建物、各種農作物の作付地、自家用車などが保険の対象になった。

1991年、アゼルバイジャン共和国財務省の下にあった国家保険(アズゴスストラフ)を基盤として、アゼルバイジャン共和国国家保険商業会社が設立された。独立後も国営の保険会社として全国に支店網を維持し、保険法が定める損害保険の全種類を扱ってきた。強制保険局(ISB)とアゼルバイジャン保険会社協会(ASA)にも加盟していた。

国家保険としての役割の縮小

この会社の収益基盤は、長く軍人と法執行機関職員の国家強制人身保険にあった。財務省とアゼルバイジャン投資持株会社(AIH)が2024年に出した共同説明によれば、2022年にこの主要業務と権限が労働・住民社会保障省へ移管された。

業務移管の後も経営の立て直しが図られたが、競争の激しい国内保険市場で同社の比重は下がり、民間の保険会社に対して特別な優位を持たないなかで採算のとれる事業運営を確保することは難しくなった、というのが両者の説明である。

2020年11月5日付の大統領令によりアゼルバイジャン投資持株会社が設立され、2021年9月22日付の大統領令により、同社の管理はAIHの権限へ移されていた。

清算の経緯

財務省とAIHの共同説明によれば、経営陣が民法に沿った自主清算を取締役会とAIHに申し出て、AIHと取締役会がこれを検討・支持し、AIH監督理事会が大統領に上申した。これを受けて2024年1月31日付の大統領令が出され、会社は清算されることになった。

この大統領令は、2022年7月16日付の大統領令1751号「アゼルバイジャン共和国国家保険商業会社および『アゼルシゴルタ』開放型株式会社の活動の組織化について」を廃止するかたちを取っている。清算にあたっては財務省とAIHの代表からなる清算委員会を設け、保険業免許の取り消しを中央銀行に申請するとされた。

既存の保険契約にもとづく請求は清算手続きのなかで処理し、債権者に対する義務は自己資金と再保険の回収で賄うため、国家予算に追加の負担は生じない、というのが当時の説明である。中央銀行が公表する保険会社別の統計でも、2024年の同社は新規の収入保険料がゼロである一方、保険金の支払いは1,481万マナトを計上しており、既存契約の処理が進んだことが読み取れる。2025年は保険料・保険金ともにゼロとなった。

市場のなかでの位置

同社が退出した局面のアゼルバイジャンの保険市場は縮小していたわけではない。中央銀行の集計では、収入保険料の合計は2023年通期が12億2,254万マナト、2024年通期が13億5,319万マナト、2025年通期が15億471万マナトと伸び続けている。国営会社の比重が落ちた背景には、市場の停滞ではなく、パシャ系2社をはじめとする民間の伸長がある。

2023年通期の同社の収入保険料2,886万マナトは、市場全体の2%あまりにすぎなかった。同じ年、パシャ・インシュアランスは2億9,309万マナト、パシャ・ライフ・インシュアランスは5億1,747万マナトを集めている。強制保険の引受けを軸にしてきた国営会社が、任意保険を含む総合的な営業力で勝る民間大手に対して規模を確保できなかった構図である。

アゼルバイジャンでは国有企業の再編が続いており、この会社の清算もその流れのなかにある。中央銀行の登録簿に残る保険会社は2026年8月時点で16社で、うち生命保険が5社、再保険が1社、農業分野を扱う共同保険会社が1社である。

資料を読むときの注意

この組織は名称と法人格が何度も変わっている。「アゼルシゴルタ」という呼称は、国家保険商業会社そのものを指す場合と、2022年の大統領令で言及された開放型株式会社を指す場合があり、資料を読むときには時点の確認が要る。

公式サイトは現在、清算を告知する簡素な構成になっており、沿革などの詳しい記述は旧サイトに残っている。財務諸表は公表されていない。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

アゼルシゴルタとは | Caspian Intelligence