解説 · 2026年8月時点
バカイ銀行(ОАО «БАКАЙ БАНК»)は、1998年に設立されたキルギスの商業銀行である。総資産は2026年6月末時点で1,383億ソムと国内第4位で、イブラギモフ家が過半の株式を持つ同族経営の銀行として知られる。取締役会長と頭取をこの一族が占めており、株主構成と経営体制がほぼ一致している。
近年は「BAKAI」の名で決済アプリを中核に置き、事業者向けのBAKAI Business、旅行のBAKAI Travel、保険のBAKAI Страхование、電子商取引のBAKAI Storeを並べる生態系型の展開をとる。国立銀行の登録簿に載る支店は19だが、同行は顧客100万人超、法人顧客10万社超、従業員3,000人超と説明している。
| 正式名 | ОАО «БАКАЙ БАНК»(Bakai Bank OJSC) |
|---|---|
| 設立 | 1998年 |
| 免許 | キルギス国立銀行の免許第043号。免許登録簿への記載は1998年12月29日 |
| 本店 | キルギス・ビシケク市ミチュリナ通り56 |
| 支店 | 19(2026年8月14日時点、キルギス国立銀行の登録簿) |
| 株主(5%以上) | セルゲイ・イブラギモフ氏 40.1265%、ステラ・イブラギモワ氏 12.3955%、バティルベク・ウール・アルムベク氏 7.34471%、ガリーナ=ヴィクトリヤ・イブラギモワ氏 7.09659%、キラ・イブラギモワ氏 6.28233%(2026年6月30日時点、同行の情報開示報告) |
| 総資産 | 1,383億ソム(2026年6月30日時点、Economist.kgの集計) |
| 普通株式 | 130億ソム(2026年6月30日時点、同行の情報開示報告) |
| 第1級資本 | 118億6,959万ソム(同) |
| 純総資本 | 155億6,773万ソム(同) |
| 貸出残高 | 554億8,433万ソム(同) |
| 取締役会長 | セルゲイ・イブラギモフ氏(2026年1月12日選任) |
| 頭取 | ティムール・イブラギモフ氏(2026年1月12日選任) |
| イスラム窓口 | 免許第043/1号(2017年11月16日) |
| 自己申告の規模 | 顧客100万人超、法人顧客10万社超、従業員3,000人超(同行の記載。基準日は示されていない) |
沿革と資本
同行は1998年に設立された。同行の記載では、当初は伝統的な銀行サービスから出発し、信頼性と利用しやすさを重視してきたとされる。キルギス国立銀行の免許登録簿によれば、免許第043号の登録日は1998年12月29日である。
2026年第2四半期の情報開示報告によれば、発行済株式の5%以上を保有する株主は5名で、いずれも自然人である。セルゲイ・ムハメドヴィチ・イブラギモフ氏が40.1265%、ステラ・ニコラエヴナ・イブラギモワ氏が12.3955%、バティルベク・ウール・アルムベク氏が7.34471%、ガリーナ=ヴィクトリヤ・ユーリエヴナ・イブラギモワ氏が7.09659%、キラ・セルゲエヴナ・イブラギモワ氏が6.28233%を持つ。最終受益者の一覧も同じ5名である。イブラギモフ姓の4名を合わせると65.9%となり、一族が支配的な持ち分を握っていることになる。
経営陣も同じ構図をとる。取締役会長はセルゲイ・イブラギモフ氏(2026年1月12日選任)、頭取はティムール・セルゲエヴィチ・イブラギモフ氏(同日選任)で、取締役会にはキラ・イブラギモワ氏も名を連ねる。株主・取締役会・執行部が重なる同族経営であり、読み手はこの構造が意思決定の速さと同時に統治上の論点にもなりうる点を念頭に置く必要がある。
事業
個人向けにはデビットカード、クレジットカード、プレミアムカード、給与カード、年金カード、仮想カード、預金、現金融資、担保付き融資、自動車ローン、住宅ローン、商品の分割払いを扱う。国内外への送金、Visaカードあての送金、貸金庫も提供する。法人・事業者向けにはBAKAI Businessの名で口座開設、法人カード、POS端末、融資、預金をまとめている。
アプリを中心に非金融のサービスを束ねる構成をとっており、同行は自らの「エコシステム」として、資金管理の中心となるBAKAI、事業者向けのBAKAI Business、航空券の購入と旅行計画のBAKAI Travel、健康・財産・事業の保障を扱うBAKAI Страхование、分割払いに対応する電子商取引の場BAKAI Storeを挙げる。24時間のセルフサービス区画や非接触決済も整備している。
イスラム金融には比較的早く参入した。国立銀行の登録簿によれば、イスラム窓口の免許(第043/1号)は2017年11月16日付で、ムダーラバ、ムラーバハ、カルドの契約を扱える。金の計量地金の取り扱い許可は2016年6月15日付で、2017年8月30日と2020年11月18日に対象が広げられている。電子マネーの発行許可は2017年4月26日付である。
財務と健全性
同行が国立銀行の情報開示規則にもとづいて公表した2026年第2四半期の報告書によれば、2026年6月30日時点の第1級資本は118億6,959万ソム、純総資本は155億6,773万ソムである。資本の構成では普通株式が130億ソムを占める。貸出残高は554億8,433万ソムで、2025年12月31日の492億4,616万ソムから半年で13%増えた。
健全性の指標では、基本的な第1級資本の充足率が13.6%(規制の下限8%)、純総資本の充足率が16%(同14%)、レバレッジが8.5%(同6%)、資本バッファー指数が17.0%である。流動性比率は62.2%(同45%以上)で、流動資産が総資産に占める割合は48%と高い。分類貸出(要注意以下)の比率は8.4%で、2025年6月末の14%から改善した。
収益性では、純金利マージンが9.7%、営業収益の年平均資産に対する比率が17.0%である。外貨建て貸出の比率は32.2%で、1年前の40%から下がっている。
経済専門紙エコノミストの集計によれば、2026年6月30日時点の総資産は1,383億ソムで、エルディク銀行、Aバンク、Mバンクに次ぐ第4位である。1年で393億ソム増えた。同行が開示する第1級資本118億6,959万ソムをこの総資産で割ると8.6%となり、同行が示すレバレッジ比率8.5%とほぼ一致する。
読み方の注意
同行は月次の財政状態計算書、四半期の情報開示報告、年次の監査済み財務諸表を自社サイトで公開しており、開示の水準は高い。ただし月次の書類は走査画像で提供されるため、機械的に数値を読み取ることはできない。四半期の情報開示報告はテキストとして読める形で提供されている。
同行が掲げる「顧客100万人超」「法人顧客10万社超」「従業員3,000人超」といった数字には、基準となる日付が添えられていない。ウェブサイトの記述は随時更新されるため、いつ時点の値なのかは外部からは判断できない。
同行はS&Pグローバルの企業サステナビリティ評価(CSA)のスコアと、ムーディーズによる信用格付を得ていると自社サイトで説明している。格付の記号と見通しは、同行の公表資料からは確認できない。
参考資料
- О банке — ОАО «BAKAI»(公式サイト) ↗
- Отчет ОАО «БАКАЙ БАНК» по раскрытию информации за 2 квартал 2026 года ↗
- Финансовая отчетность — ОАО «BAKAI»(公式サイト) ↗
- Список коммерческих банков Кыргызской Республики и реестр лицензий(キルギス国立銀行、2026年8月14日時点) ↗
- Рейтинг банков КР за I полугодие 2026 года — Economist.kg(2026年7月31日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。