解説 · 2026年8月時点
バルキ・トジク(Barqi Tojik)は、タジキスタンの国有電力会社である。同国の電力の9割以上を水力が占め、その発電設備の大半をこの会社が持つ。長く発電から小売まで垂直統合された独占企業だったが、2019年の政府決定を起点に送電会社と配電会社が分離され、現在は発電を担う会社になっている。財務難と滞納債務の処理が長年の課題であり、電力部門の改革は国際金融機関の融資条件にもなっている。
| 正式名 | OJSC «Barqi Tojik» |
|---|---|
| 所在地 | タジキスタン・ドゥシャンベ |
| 事業 | 発電。かつては送電・配電・小売まで一体で担っていた |
| 所有形態 | 国有 |
| 分社 | 送電はシャバカホイ・インティコリ・バルク、配電はシャバカホイ・タクシモティ・バルクが担う3社体制 |
| 位置づけ | 国内で唯一の電力買い取り主体(エネルギー・水資源相の説明) |
| 財務 | 監査済みの企業単体の財務諸表は公表されていない |
垂直統合の解体
かつて発電から小売まで一体で担っていた同社は、送電を担うシャバカホイ・インティコリ・バルクと、配電を担うシャバカホイ・タクシモティ・バルクに事業を切り出し、現在は発電会社として3社体制の一角を占める。世界銀行が2020年2月に承認した「タジキスタン電力部門再建プログラム」は、当初からこの3社の財務健全性、供給信頼性、企業統治の改善を目的に掲げていた。
同プログラムは2025年に再編され、送配電2社が事業実施主体としてバルキ・トジクに加わったことで資金の20%が解放された。世界銀行の進捗報告(2025年11月)によれば、この過程で料金の引き上げ、同社の財務省向け債務の再編、3社それぞれへの監督理事会の設置が進んだ。エネルギー・水資源相の説明では、同社は現在も国内で唯一の電力買い取り主体である。
債務の整理
同社の経営を圧迫してきたのは、発電事業者への電力購入代金の滞納である。2025年4月にモスクワで、ロシアとタジキスタンがサングトゥダ第1水力発電所の事業条件の見直しで合意し、これに基づいて運営協定が改定された。同社が同発電所に負う債務は2025年1月1日時点で2億9,700万ドルあり、その後の電力代金を期日どおり全額支払うことを条件に、2025年から2033年まで年2,500万ドルずつ償却される。あわせて2025年から2032年までの購入電力料金が引き下げられ、単価はおよそ2.5分の1になった。
建設中のログン水力発電所からの受電分についても未払いが残る。2026年7月13日の記者会見で同社会長は、発電所への債務を削減しつつあると説明し、ログン向けの債務が半年で約1,400万ドル減ったと述べた。同社の財務再建は、タジキスタンの電力輸出構想とログン完成後の資金循環を成り立たせる前提条件でもある。
開示の水準
同社は上場企業ではなく、外貨建て債券も発行していないため、監査済みの企業単体の財務諸表は公表されていない。外部から数字を確認できるのは、世界銀行など国際金融機関のプログラム文書と、記者会見で断片的に示される数字に限られる。
参考資料
- OJSC «Barqi Tojik» Power Utility Financial Recovery Program — Special Purpose Financial Statements(世界銀行、2024年公開) ↗
- Program for the Recovery of the Electricity Sector in Tajikistan — Implementation Status & Results Report(世界銀行、2025年11月) ↗
- Tajik energy company debt to Sangtuda HPP-1 to be written off gradually until 2033 at $25 mln per year — Interfax ↗
- Barqi Tojik reports lower debts and improved financial position — Asia-Plus(2026年7月14日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。