ORGANIZATION · COMPANY

ボスカリス

浚渫・内陸インフラ、洋上エネルギー、曳船・サルベージの3部門

Koninklijke Boskalis B.V.
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

ボスカリス(Koninklijke Boskalis B.V.)は、オランダの浚渫・海洋土木会社である。オランダの浚渫業発祥の地とされるスリードレヒトで1910年に生まれ、現在は浚渫と埋め立てに加え、洋上風力・石油ガス向けの海洋工事、曳船と海難救助までを扱う総合の海洋請負会社になっている。ベルギーのヤン・デ・ナルとDEME、オランダのファン・オールトと並ぶ世界大手「ビッグ4」の一角で、売上規模ではこの4社の先頭に立つ。

大カスピ海地域では、カザフスタン沖の北カスピ海でカシャガン油田の掘削人工島と氷壁を築き(2003〜2005年)、ジョージアの黒海側ではポチ港の主防波堤を改修した(2006〜2008年)。アゼルバイジャンのバクーには海洋工事の現地法人を置いている。

正式名Koninklijke Boskalis B.V.(英語表記 Royal Boskalis B.V.)。2022年の上場廃止までは Koninklijke Boskalis Westminster N.V.
創業1910年(オランダ・スリードレヒト)
本社オランダ・パーペンドレヒト(Rosmolenweg 20)
所有形態非上場。オランダの投資会社HALが2022年に全株を取得し、同年11月にユーロネクスト・アムステルダムの上場を廃止
事業浚渫・内陸インフラ、洋上エネルギー、曳船・サルベージの3部門
売上高45億ユーロ(2025年通期)
EBITDA13億ユーロ(2025年通期)
営業利益8億8,600万ユーロ(2025年通期、特別項目調整後)
純利益7億7,500万ユーロ(2025年通期)
受注残70億ユーロ(2025年末)、68億ユーロ(2026年6月末)
従業員1万1,000人超(2026年8月時点)
船隊約400隻の船舶・浮体設備(2026年8月時点)
大カスピ海地域の拠点Boskalis Offshore Subsea Contracting Azerbaijan LLC(アゼルバイジャン・バクー、100%子会社)

沿革

1910年、オランダ南部スリードレヒトで複数の家族が出資して設立された。設立当初から比較的大きな船隊を持ち、第一次大戦後はゾイデル海干拓に参加、1930年代には英国に進出してロンドンにウェストミンスター浚渫会社を設立した。この英国法人の名が、のちの社名「ボスカリス・ウェストミンスター」に残る。1953年のオランダ大水害を受けたデルタ計画で中心的な役割を担い、同年にはトレーリングサクションホッパー浚渫船「ジェームズ47」を欧州で初めて就役させた。

1971年に株式を公開し、1978年にオランダ王室から「Koninklijke(王室御用達)」の称号を受けた。1990年代にはエーレスンド海峡トンネルや香港国際空港の埋め立てなど大型案件を手がけ、以後は買収で事業領域を広げている。2010年に海難救助と曳船のSMITインターナショナル、2013年に重量物海上輸送のドックワイズと海底ケーブル敷設VBMSの50%持分(2016年に全株取得)、2014年に遠洋曳船のフェアマウント・マリン、2016年にドイツのSTRABAG Wasserbauの浚渫事業、2017年に海洋調査のガードライン、2019年にUAEのホライズン・グループの62.5%、2021年にレバー・オフショアの海中工事事業を取得した。2024年末にはターミナル向け曳船会社スミット・ラムナルコの残る全持分を取得している。

HALによる買収と上場廃止

2022年、株主構成が根本から変わった。同社株の46.2%を保有していた投資会社HAL(HALホールディング)が、2022年3月10日、1株32.50ユーロの現金による自主的公開買付けを行う意向を発表した。最低応募株数の条件は付けなかった。同年6月24日に買付けを開始し、8月29日には価格を1株33.00ユーロへ引き上げて経営陣の推奨を得た。9月7日に買付けは無条件で成立し、9月20日にはHALの保有比率が98.3%に達した。

保有比率が95%を超えたことを受け、9月30日にボスカリスとHALは連名でユーロネクスト・アムステルダムへ上場廃止を申請した。両社は、上場廃止を同年11月7日に開く臨時株主総会の直後に行うとした。会社形態もN.V.(公開会社)からB.V.(非公開会社)へ改まり、法人名は Koninklijke Boskalis B.V. となった。

上場廃止後も、同社は年次決算と半期決算をプレスリリースと年次レビューの形で公表し続けている。非上場になった後も主要な数字が開示されるため、外部から業績を追うことができる。

事業と船隊

事業は3部門からなる。浚渫・内陸インフラ部門は港湾と水路の建設・維持、埋め立て、海岸防護、河岸保護を担い、2025年の売上高は19億ユーロだった。洋上エネルギー部門は洋上風力と石油・ガス向けの輸送・据え付け・海底ケーブル・海洋調査・海中作業を扱い、同21億ユーロで最大部門となっている。曳船・サルベージ部門はスミット・ラムナルコによるターミナル曳船とSMITサルベージによる海難救助で、同4億ユーロだった。

船隊は約400隻の船舶・浮体設備からなり、トレーリングサクションホッパー浚渫船、カッターサクション浚渫船、バックホウ浚渫船、海底捨石設置船に加え、半潜水式の重量物輸送船、重量物吊上船、ケーブル敷設船、潜水支援船、外洋曳船を持つ。2025年の設備投資額は5億6,400万ユーロで、そのうち大きいのが31,000立方メートル級のトレーリングサクションホッパー浚渫船シーウェイ(オランダIHCのクリンペン造船所で建造中)と、2024年末に取得した船を改造して積載量45,500トンの海底捨石設置船とするウィンドパイパー(2026年就役予定)だった。

カシャガン油田の人工島と氷壁(カザフスタン)

北カスピ海のカシャガン油田は、水深が浅く、冬季には海面が凍結する。このため掘削装置は船ではなく人工島の上に置かれた。ボスカリスは、当時の操業会社アジップ・カザフスタン・ノース・カスピアン・オペレーティング・カンパニー(Agip KCO)の発注で、まず225メートル四方の人工島と水中の土手を築き、その4年後の2003年から2005年にかけて掘削島と氷壁の建設を担当した。施工主体はボスカリスとアーキロドンの共同事業体ボスカリス・アーキロドンVOF(BAVOF)である。

工事の内容は、長さ450メートル・幅20メートルの通路と550メートル超の通路の2本、原油を陸へ送るパイプラインの起点となる550メートル×90メートルの「ライザー島」、掘削島を守る主氷壁(南バリア)、および水深8メートルの離れた海域を含む水中の土手2基の建設だった。

難しさは工事そのものより物流にあった。11月から3月末までは氷で海が使えず、夏は気温が40度に達する。資機材はオランダから海路でジブラルタル海峡と地中海、黒海を経てヴォルガ・ドン運河に入り、アストラハンから北カスピ海へ運ばれた。総航程は8,500キロにおよぶ。矢板は北海とバルト海からサンクトペテルブルクを経てヴォルガ川を下る別ルートで運ばれた。石材はバウティノ港から積み出したが、現場までは280キロ、片道2日の航海だった。

ポチ港の防波堤改修(ジョージア)

ジョージア最大の河川リオニの河口に位置するポチは、19世紀から黒海側の交易港として整備されてきた。港を守る主防波堤は1850年代に着工したもので、その後も20〜60トンのコンクリートブロックを被覆層に積み増して維持されてきたが、構造物の沈下によって天端が下がり、越波が増えて港の稼働が止まる日が増えていた。

ボスカリスは2006年から2008年にかけて、この防波堤の改修を発注者ポチ・シーポートのもとで実施した。設計は同社の技術部門ハイドロナミックが担当し、既存のコンクリートブロックの斜面をまず数層の石材で覆い、その上に2立方メートルのXblocという単層の被覆ブロックを並べる方式を採った。投入量は濾過材5万トン、石材10万トン、Xbloc 6,000個である。石材は現場から鉄道で120キロ離れたクルセビ地区の採石場から運んだ。

事業費の調達もボスカリスが組み立て、オランダの途上国向け輸出促進補助金ORETと、INGバンクの低利融資を組み合わせている。ポチは現在もジョージアのコンテナ取扱いの中心だが、水深の制約から大型コンテナ船を受け入れられない。この制約こそが、より北のアナクリアに大水深港を造る計画の出発点になっている。

バクーの現地法人

アゼルバイジャンの首都バクーには、洋上エネルギー部門の100%子会社ボスカリス・オフショア・サブシー・コントラクティング・アゼルバイジャンLLC(Boskalis Offshore Subsea Contracting Azerbaijan LLC)が置かれている。2021年の年次報告書の連結対象会社一覧に記載があり、2026年8月時点でも同社の拠点一覧に掲載されている。この法人が担った個別の工事の内容は公表されていない。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。