解説 · 2026年8月時点
チャカン水力発電(ОАО «Чакан ГЭС»)は、キルギスの小水力発電を専門とする国有企業である。首都ビシケク近郊のチュイ渓谷を走る西大チュイ運河沿いに並ぶアラメディン水力発電所群と、ケミン近郊のブィストロフカ水力発電所を運営する。合計出力は38.5MWで、トクトグル水力発電所(1,200MW)を擁する発電公社「電力ステーションズ」とは規模が二桁違うが、キルギスの電力史はこの会社が引き継いだ設備から始まっている。
同社の名は、灌漑用の運河と発電を組み合わせた「水路式」の小水力を意味する。運河の落差を使うため大きな貯水池を必要とせず、その代わり出力は農業用水の流量に左右される。近年は新規建設にも乗り出しており、タラス州のキーロフ貯水池を使うバラ・サルー小水力発電所(25MW)が同社と国営持株会社ナツエネルゴホールディングの共同事業として進んでいる。
| 正式名 | ОАО «Чакан ГЭС»(Chakan GES OJSC) |
|---|---|
| 設立 | 2000年1月29日のキルギスエネルゴ分割に伴い発足。2000年5月22日にアラメディン水力発電所群を株式会社化 |
| 本社 | キルギス・チュイ州アラムドゥン地区GES-3集落、スヴォーロフ通り113 |
| 事業 | 小水力による発電、送電、電力販売 |
| 発電設備 | アラメディン水力発電所群8か所(合計29.8MW)とブィストロフカ水力発電所(8.7MW) |
| 授権資本 | 2億7,472万4,200ソム(100ソム額面の普通株274万7,242株) |
| 所有形態 | 国有財産基金(ФГИ)が普通株の100%を保有 |
| 従業員 | 219人(同社の登録情報) |
| 上場 | キルギス証券取引所(KFB)のカテゴリーB。時価総額2億7,472万ソム(2026年8月21日時点) |
沿革
同社の説明によれば、その歴史は1916年、ビシケク近郊にキルギスで最初の水力発電所を建設する礎石が置かれたときに始まる。1928年12月から1929年1月にかけて、ビシケクから15キロのモルダバノフカ村付近で小アラメディン発電所が運転を開始した。その後は西大チュイ運河沿いに建設が続き、1958年までにさらに7か所が完成して「アラメディン水力発電所群」としてまとめられた。
1990年代の統合電力会社キルギスエネルゴは、2000年1月29日の再編で分割された。ここから発電公社「電力ステーションズ」、送電会社「キルギス国家送電網(NESK)」、4つの配電会社、そしてチャカン水力発電が分かれて生まれた。小河川の水力資源を効率的に使う目的で、同年5月22日にアラメディン発電所群が株式会社チャカン水力発電に改組された。2009年5月にはブィストロフカ水力発電所が同社に編入された。
発電設備
アラメディン水力発電所群は合計出力29.8MWで、8か所の発電所から成る。内訳はGES-1が2.2MW、GES-2が2.5MW、GES-3が2.1MW、GES-4が2.1MW、GES-5が6.4MW、GES-6が6.4MW、レベジノフカ発電所が7.6MW、小アラメディン発電所が0.4MWである。いずれも灌漑と発電を兼ねる西大チュイ運河の上にあり、取水はチュイ川から行う。チュイ川の流量はオルト・トコイ貯水池で調節されている。
ブィストロフカ発電所は出力8.7MWで、ケミン市の近くでチュイ川中流の落差を左岸幹線灌漑水路によって利用する。水利構造物の建設は1952年から1954年にかけて行われ、1956年にブールダ第1発電所からブィストロフカ発電所へ改称された。
運転許可はエネルギー省付属の燃料エネルギー複合体規制国家局の執行評議会が交付する免許に基づく。設備は古く、毎年の秋冬期前に水車発電機の分解修理を回す必要がある。2026年夏には、GES-6の2号機とGES-3の1号機の大規模修理、ブィストロフカ発電所2号機の中間修理を完了したと発表している。
事業の性質
同社の主たる事業は電力の発電、送電、販売である。発電所群は西大チュイ運河という灌漑用の水路の上に置かれているため、発電に使える水量は農業用水の配分に従う。灌漑期に水が流れれば発電量が伸び、非灌漑期には落ちるという、貯水池を持つ大規模水力とは逆の季節性を抱える。
小水力の意義は出力の絶対量ではなく、需要地に近いところで電気を起こせる点にある。アラメディン発電所群とブィストロフカ発電所はいずれもビシケクとチュイ渓谷の人口密集地の近傍にあり、送電損失が小さい。キルギスが冬季の電力不足を輸入で埋めている状況では、小規模でも国内で確実に回る電源には一定の価値がある。
会社はキルギス共和国憲法、民法、「株式会社について」法、定款に従って運営される。株式会社の形をとってはいるが、株主は国有財産基金だけであり、経営陣の任免も国の側で決まる。
新規建設
バラ・サルー小水力発電所は、タラス州のキーロフ貯水池の下流側に発電機3台、合計25MWを据える計画で、年間発電量は9,200万kWhを見込む。同社によれば、この貯水池の水力エネルギーは建設以来使われてこなかった。事業はナツエネルゴホールディングとチャカン水力発電が担い、2021年8月29日に大統領ジャパロフが起工式を行った。財務省が20億ソムの予算融資を配分し、110kV送電線と閉鎖型配電装置の建設が進んでいる。
オルト・トコイ発電所の建設も進行中で、2026年8月には110kVの開放型配電装置と110kV架空送電線の建設を終え、容量2万5,000kVAの主変圧器を据え付けたと発表した。
資本と財務
授権資本は2億7,472万4,200ソムで、額面100ソムの普通株274万7,242株に分かれる。全株を国有財産基金が保有する。株式はキルギス証券取引所のカテゴリーBに上場されており、2026年8月21日時点の時価総額は2億7,472万ソムと表示されている。ただしこれは直近約定価格が額面と同じ100ソムであることの裏返しで、取引の薄い銘柄の評価としてそのまま企業価値と読むことはできない。
財務諸表と監査報告は公式サイトに掲示されているが、掲載は2022年度分までである。同社の登録情報に載る売上高は2011年に2億3,626万ソム、2012年に1億8,307万ソム、2013年に1億5,246万ソムで、純損益は2011年が5,126万ソムの黒字、2012年が2,794万ソムの黒字、2013年が1億1,779万ソムの赤字だった。いずれも10年以上前の数字であり、現在の水準を示すものではない。近年の売上高・利益は公表されていない。
参考資料
- О компании — ОАО «Чакан ГЭС»(公式サイト) ↗
- Уставной капитал — ОАО «Чакан ГЭС»(公式サイト) ↗
- Проект Бала-Саруу ГЭС — ОАО «Чакан ГЭС»(公式サイト) ↗
- Листинг — Кыргызская фондовая биржа(KFB、2026年8月21日時点) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。