解説 · 2026年9月時点
中国中鉄(中国中鉄股份有限公司、英文名China Railway Group Limited)は、中国の鉄道建設を担ってきた最大手の建設・エンジニアリング企業である。国有の持株会社である中国鉄路工程集団有限公司(英文略称CREC)が47.08%を保有し、株式は上海と香港の両取引所に上場している。2025年通期の営業収入は1兆906億元、新規受注は2兆7,509億元、従業員は28万9,250人にのぼる。
同社の説明によれば、中国国内の鉄道総延長の3分の2超、電化鉄道の90%、高速道路の約8分の1、都市鉄道の5分の3を施工してきた。海外では1970年代のタンザニア〜ザンビア鉄道(タンザン鉄道)を起点に、現在は100を超える国と地域に事務所と現場を持つ。
ただし、この会社を扱ううえで最初に確認すべきは社名である。中国には「中国鉄路」「チャイナ・レイルウェイ」と訳される企業が複数あり、日本語でも英語でも見分けがつきにくい。中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道(CKU鉄道)のキルギス区間の施工者として名前が出る会社も、その一つである。
| 正式名 | 中国中鉄股份有限公司(China Railway Group Limited) |
|---|---|
| 支配株主 | 中国鉄路工程集団有限公司(China Railway Engineering Group Co., Ltd.、CREC)。2025年末の持株比率47.08% |
| 上場 | 上海証券取引所(A株、証券コード601390)と香港聯合交易所(H株、00390) |
| 本社 | 中国・北京市海淀区復興路69号。登記上の住所は北京市豊台区南四環西路128号院1号楼918 |
| 事業 | 鉄道・道路・市政・都市鉄道・建築の施工、設計コンサルティング、設備製造、不動産、資産運営、資源利用、金融物流貿易、水利水電やクリーンエネルギーなどの新興事業 |
| 海外部門 | 中鉄国際集団有限公司(China Railway International Group Co., Ltd.、CRIG)。登録資本3億4,600万ドル、従業員700人超、39の国・地域で事業 |
| 営業収入 | 1兆906億2,600万元(2025年通期、前年比5.77%減)。営業総収入は1兆934億9,400万元 |
| 純利益 | 228億9,170万元(2025年通期、親会社株主帰属、17.91%減)。純利益は263億4,700万元 |
| EBITDA | 708億2,300万元(2025年通期、2.03%減) |
| 新規受注 | 2兆7,509億元(2025年通期、1.3%増)。うち国外2,573億7,000万元(16.5%増) |
| 従業員 | 28万9,250人(2025年末) |
| 番付 | フォーチュン世界500社43位、フォーチュン中国上場企業500社9位(いずれも2025年、同社の年次報告)。20年連続で世界500社に入る |
| 大カスピ海地域での実績 | ウズベキスタンのアングレン〜パプ鉄道のカムチク・トンネル(同社が主要な海外案件として挙げる) |
紛らわしい社名を仕分ける
中国の鉄道に関わる大企業は、大きく分けて運営主体が1つ、建設会社が2つある。
運営主体は中国国家鉄路集団有限公司(China State Railway Group Co., Ltd.)で、中国の鉄道網を保有し列車を走らせる国有会社である。英語では単に China Railway と呼ばれることが多い。研究部門として中国鉄道科学研究院を持ち、キルギス鉄道は2025年7月にこの2者の代表団を受け入れている。
建設会社の一つが本項の中国中鉄(中国鉄路工程集団、CREC)で、海外部門は中鉄国際集団(China Railway International Group、CRIG)である。もう一つは中国鉄建股份有限公司(China Railway Construction Corporation、CRCC)で、こちらも別会社である。
CKU鉄道の資料に出てくる社名は、この3つのいずれとも一致しない。キルギス鉄道が2025年12月5日に公表したマナス市での会議の記録は、EPC(設計・調達・建設)の請負者を「キルギス共和国における『チャイナ・レイルウェイ・インターナショナル』有限会社の支店」と記している。英語で書けば China Railway International であり、中鉄国際集団の英語名 China Railway International Group とは Group の一語だけが違う。中鉄国際集団が自ら主要な海外案件として列挙する一覧に、CKU鉄道は含まれていない。
CKU鉄道の事業会社である有限会社「鉄道会社『中国・キルギス・ウズベキスタン』」は、中国国家鉄路集団、キルギス鉄道、ウズベキスタン鉄道の3社が設立したもので、中国側の出資者は建設会社ではなく鉄道の運営主体である。EPC請負者の親会社が誰かは、キルギス側の公表資料には書かれていない。CKU鉄道の施工者を「中国中鉄」と書いている資料を見たら、根拠となる一次資料を確かめる必要がある。
沿革と上場
同社は120年を超える歴史を持つと自ら説明する。中華人民共和国の鉄道建設を担った政府部門の施工部隊を源流とし、鉄道部の解体・企業化の流れのなかで中国鉄路工程集団(中鉄工)となり、その事業を継承する株式会社として中国中鉄が設立された。株式はA株が上海証券取引所(601390)、H株が香港聯合交易所(00390)に上場している。
国内での位置づけについて同社は、中国の鉄道総延長の3分の2超、電化鉄道の90%、高速道路の約8分の1、都市鉄道の5分の3を施工してきたと説明する。高速鉄道、重量物輸送用鉄道、長大橋、長大トンネル、鉄道電化、橋梁用鋼構造、シールドマシン、高速鉄道用分岐器、自動車試験場の各分野で技術を蓄えてきたとしている。これらは同社の自己申告であり、母数の定義は示されていない。
国際部門の整理は段階的だった。2008年に国際事業の資源を集約して中鉄国際経済合作有限公司を設立し、2013年11月に4つの国際事業子会社を統合して中鉄国際集団を発足させた。2014年から2020年にかけての再編では、中国海外工程集団(COVEC)を取り込んだのち手放している。中鉄国際集団の登録資本は3億4,600万ドル、従業員は700人超で、うち300人超が上級以上の技術資格を持つ。子会社のTRANSTECHインターナショナルは1980年代から海外で労務輸出と工事に携わってきた。
規模と受注の構成
2025年通期の営業収入は1兆906億2,600万元で前年比5.77%減、利益総額は335億3,982万元で13.72%減、親会社株主に帰属する純利益は228億9,170万元で17.91%減だった。EBITDAは708億2,300万元で2.03%減である。中国国内の建設市場が縮んだ影響で、収入と利益はともに前年を下回った。
一方で新規受注は2兆7,509億元と1.3%増えた。内訳を見ると、国内が2兆4,935億3,000万元でほぼ横ばい(0.03%減)だったのに対し、国外は2,573億7,000万元で16.5%増えている。国外の伸びが国内の停滞を補う構図である。
事業別では、工事施工が1兆8,505億4,000万元で全体の3分の2を占める。このうち建築が9,428億3,000万元と最大で、鉄道は3,162億6,000万元、市政1,798億4,000万元、道路1,390億5,000万元、都市鉄道644億8,000万元と続く。鉄道会社という社名から受ける印象と違い、受注額では建築のほうが鉄道の3倍近い。
伸びているのは「新興業務」と分類される分野で、2025年は4,724億8,000万元と11.0%増えた。内訳はクリーンエネルギー1,250億7,000万元、水利水電1,083億元、生態環保978億1,000万元、空港・航路280億7,000万元、都市運営193億4,000万元である。生態環保は58.6%増、空港・航路は31.5%増と伸び幅が大きい。
同社の年次報告によれば、2025年のフォーチュン世界500社番付では43位、フォーチュン中国上場企業500社では9位で、世界500社入りは20年連続である。上海証券取引所の上場企業評価では17年連続でA類(優秀)の評価を得ている。海外部門の資料では、2024年の世界500社番付35位、米ENR誌の世界建設請負トップ250で2位と説明している。
海外での実績
同社が主要な国際案件として挙げるのは、インドネシアのジャカルタ〜バンドン高速鉄道、中国ラオス鉄道、エチオピアのアディスアベバ〜ジブチ鉄道とアディスアベバのライトレール、ハンガリー・セルビア鉄道のハンガリー区間、バングラデシュのパドマ橋・鉄道連絡事業、イスラエルのレッドライン軽軌、アンゴラのセケレ新市街住宅、コンゴ民主共和国のシコマインズ銅・コバルト鉱山、そしてウズベキスタンのアングレン〜パプ鉄道のカムチク・トンネルである。中鉄国際集団はこれまでに1,000件超の中大型の海外案件を手がけたとしている。
橋梁、トンネル、都市鉄道の施工技術と鉄道電化の技術が同社の核であり、自社開発のシールドマシンはフランス、イタリア、UAE、シンガポール、イスラエルなど32か国へ輸出されている。設計、施工、設備製造を垂直統合して一括で請け負える点を、同社は競争力の源泉として説明している。
大カスピ海地域との関わり
この地域で同社の名が最も明確に残っているのは、ウズベキスタンのアングレン〜パプ鉄道である。フェルガナ盆地は山脈で隔てられており、鉄道で本土とつなぐにはカムチク峠を抜ける必要があった。同社はこのカムチク・トンネルを自らの主要な海外案件の一つとして挙げている。フェルガナ盆地と首都圏を国内の鉄道だけで結ぶという課題は、この路線の開通によって解決された。
ただし、同社の2025年年次報告には中央アジア・コーカサスの国名は一つも出てこない。海外の受注は国別に開示されず、2,573億7,000万元という総額だけが示される。同社が現在この地域でどれだけの工事を抱えているかは、年次報告からは分からない。個別の案件は、発注者側の政府や鉄道会社の発表で確認するしかない。
CKU鉄道で何が起きているか
中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道(CKU鉄道)のキルギス区間は、キルギス法に基づいて設立された事業会社が建設・運営・移管(BOT)方式で担う。事業会社の出資者は中国国家鉄路集団、キルギス鉄道、ウズベキスタン鉄道の3社で、2024年10月11日にビシュケクで第1回参加者総会が開かれ、取締役と執行機関の人事が決まった。区間は304.94キロ、橋48、トンネル27で、橋とトンネルの合計延長が区間の39.3%を占める山岳路線である。
この工事のEPC請負者が、キルギス鉄道の発表に出てくる「チャイナ・レイルウェイ・インターナショナル」のキルギス支店である。2025年12月5日、キルギス鉄道の総裁アザマト・サキエフはマナス市で事業会社とEPC請負者の代表を集めて協議した。請負者側は工事が承認された基準と工期に沿って進んでいると報告し、キルギス側は同国法の順守、発破作業の安全確保、施工現場への監視カメラの設置、公用語による表示、労働安全と環境規制の順守、地元企業と住民の参加拡大を求めている。
2026年6月24日にビシュケクで開かれた第5回参加者総会と取締役会では、2025年の実績と2026年の方針が確認され、「建設における誠実性確保に関するイニシアティブ」が署名された。透明性と汚職防止をうたう文書である。同じ会議でキルギス側からは、環境規律の徹底、工事現場と工事回廊沿いの標識を中国語だけでなくキルギス語でも表示すること、キルギス国民の雇用比率を段階的に引き上げることが提起された。
施工者の名前が争点になるのは、責任の所在が契約上どこにあるかという問題に直結するからである。発注者は3か国の鉄道当局が作った事業会社、施工者は中国側の1社の在外支店という構図で、労働安全や環境の苦情がどの法人に向かうのかは、社名を取り違えると追えなくなる。
数字を読むときに
第一に、通貨と単位である。同社の財務諸表は人民元建てで、金額はしばしば「億元」で書かれる。1億元は1万万元であり、日本語の「億」と桁は同じだが、報道では「万元」「億元」「兆元」が混在する。年次報告の主要データの表は千元単位で、本文は億元単位である。
第二に、「営業収入」と「営業総収入」が別の数字として並ぶ。2025年はそれぞれ1兆906億2,600万元と1兆934億9,400万元で、約29億元の差がある。前年比の減少率はどちらも5.8%前後だが、額を引用するときは対象がどちらかを確かめる必要がある。
第三に、受注額と売上高は別の指標である。新規受注は契約を結んだ時点の総額で、工事の進捗に応じて数年かけて売上高に変わる。2025年は受注が増えて売上が減っており、この2つが逆を向くことは珍しくない。
参考資料
- 中国中鉄2025年年度報告(公式・PDF) ↗
- 定期報告の一覧(中国中鉄公式) ↗
- CRIG | China Railway International Group Co., Ltd(海外部門の会社概要と主要案件) ↗
- В городе Манас обсудили ход строительства железной дороги Китай – Кыргызстан - Узбекистан(キルギス鉄道、2025年12月5日。EPC請負者の名称) ↗
- В Бишкеке состоялось первое собрание участников ОсОО «Железнодорожная компания «Китай-Кыргызстан-Узбекистан»(同、2024年10月11日。事業会社の設立主体) ↗
- Церемония начала строительства ключевых объектов железной дороги Китай-Кыргызстан-Узбекистан(同、2025年4月29日。区間の延長と構造物) ↗
- 5-е Собрание участников и 5-е заседание Совета директоров(同、2026年6月24日。誠実性確保のイニシアティブ) ↗
- ГП «НК «Кыргыз темир жолу» приняло делегацию представителей China Railway и Академии железнодорожных наук(同、2025年7月23日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。