解説 · 2026年8月時点
エコイスラミック銀行(ЗАО «ЭкоИсламикБанк»)は、キルギスで最初にイスラム金融の原則を導入した銀行である。2025年6月3日、キルギス国立銀行から「イスラム銀行」としての免許第01-ИБ号を受け、通常の商業銀行の登録簿とは別枠で監督される、同国唯一のイスラム銀行になった。
同行は利息の授受を禁じるシャリーアの原則に従い、ムラーバハ(売買差益)、イジャーラ(賃貸)、ムダーラバ(損益分担の出資)などの契約で資金を扱う。他行が「イスラム・ウィンドウ」として通常業務のなかに部分的にイスラム金融を組み込むのに対し、同行は業務全体をイスラム原則に切り替えた点で位置づけが異なる。
| 正式名 | ЗАО «ЭкоИсламикБанк»(EcoIslamicBank CJSC) |
|---|---|
| 創業 | 1998年。キルギス・ロシア合弁銀行「ロシースキー・クレジット」を母体にАК «ЭкоБанк»へ改組 |
| 改称 | 2010年5月14日にОАО «ЭкоБанк»からОАО «ЭкоИсламикБанк»へ |
| 免許 | キルギス国立銀行のイスラム銀行免許第01-ИБ号(2025年6月3日交付)。従来の免許第040号(2017年6月22日付)に代わるもの |
| 本店 | キルギス・ビシケク市ゲオロギチェスキー横丁17 |
| 支店 | 7(2026年8月14日時点、キルギス国立銀行の登録簿) |
| 特徴 | キルギスで初めてイスラム金融原則を導入した銀行。2008年に独立国家共同体(CIS)で最初のシャリーア評議会を設置 |
| 受賞 | 2025年6月16日、CIS Islamic Banking and Finance Awardsの「Best Islamic Bank」 |
| 財務 | 総資産・純利益は公表資料からは確認できない |
沿革
同行の説明によれば、その母体はキルギス・ロシア合弁銀行「ロシースキー・クレジット」で、1998年に株式会社「エコバンク(АК «ЭкоБанк»)」へ改組された。2023年1月23日には創立25周年を迎えている。
イスラム金融への転換は2005年から2006年にかけて始まった。2005年夏、大統領が住民向け融資の課題の解決策を検討するよう政府機関に指示し、その過程で、長期的には従来型の金融原則と並べてイスラム原則を導入することが最も有効だという結論が出た。エコバンクはこの試験事業への参加を決めた。
2006年5月16日、イスラム開発銀行、キルギス共和国、エコバンクの三者が「キルギス共和国におけるイスラム銀行業務・金融の導入に関する了解覚書」に署名した。この覚書は2006年7月12日付の大統領令第373号で批准され、国立銀行理事会の2006年12月18日付決定第41/1号で実施に移された。キルギスにおけるイスラム金融サービスの起点はこの日である。
2007年12月7日には、マレーシア国際イスラム大学のイスラム銀行・金融研究所のムスタファ・ビン・ハマット氏が政府庁舎でキルギス政府の閣僚に対し、イスラム銀行制度が経済発展を支える第二の柱として成り立ちうるかについて説明を行った。2008年からは、同行の業務がイスラム金融の原則に適合していることを保証する機関として、CISで初となるシャリーア評議会が置かれている。
2010年5月14日、行名がОАО «ЭкоБанк»からОАО «ЭкоИсламикБанк»へ改められた。同年12月31日、同行は従来型の預金受入と融資を完全に停止した。2016年初めまでに従来型金融の比重は最小限まで下がった。
イスラム銀行への転換
2025年6月3日、キルギス国立銀行は、同行がイスラム銀行へ改組されたことに伴い、国内通貨・外貨でイスラムの銀行業務・金融原則に従った業務を行う権利についての免許第01-ИБ号を交付した。これは2017年6月22日付の免許第040号に代わるものである。国立銀行の商業銀行一覧でも、同行は他の25行とは別の表に「イスラム銀行」として記載されている。
同じ日付で貴金属業務の許可も交付されており、国立銀行が発行する精錬済み計量地金と、他の発行体の精錬済み標準・計量地金を現金・非現金の双方の形で扱うことができる。
2025年6月16日、タシケントで開かれたAlHuda傘下のイスラム銀行・経済センター(CIBE)主催の第4回CISイスラム銀行・金融フォーラムで、同行は「CIS Islamic Banking and Finance Awards」の「Best Islamic Bank」部門を受賞した。
イスラム金融の仕組み
イスラム金融は利息(リバー)の授受を禁じるため、資金の出し手と受け手の関係を売買、賃貸、共同事業の形に組み替える。同行の資料に現れる契約の型は、売主が原価に利益を上乗せして分割払いで売るムラーバハ、賃貸のイジャーラ、賃貸の末に所有権を移すイジャーラ・ムンタヒヤ・ビッタムリーク、損益を分け合う出資のムダーラバ、無利子の貸付であるカルド、注文生産のイスティスナーである。
預金にあたるものは「無制限ムダーラバ」の契約で扱われる。預金者が資金の出し手、銀行が事業の運用者となり、あらかじめ決めた比率で利益を分け合う。利率ではなく利益配分率が示されるため、同行は「無制限ムダーラバ契約に基づく利益率」を独立した開示項目として設けている。
こうした業務がシャリーアに適合しているかを審査するのがシャリーア評議会である。同行は2008年からこの機関を置いており、CISで最初の設置例とされる。適合の判断は評議会が下し、経営陣はその判断に従う。
キルギスのイスラム金融
キルギス国立銀行の集計によれば、2026年6月末時点でイスラム金融の原則によるサービスを提供する金融機関は6つある。イスラム金融による資金供与の残高は2026年上半期に35.4%増えて260億ソムとなり、銀行部門全体の伸びを上回る速さで拡大している。
他の銀行は「イスラム・ウィンドウ」の枠組みでイスラム金融を扱う。国立銀行の登録簿によれば、Mバンク(2021年10月13日)、エルディク銀行(2022年8月10日)、バカイ銀行(2017年11月16日)、Aバンク(2022年10月26日)、オプティマ銀行(2025年8月25日)が、それぞれムダーラバ、ムラーバハ、カルド、イジャーラといった契約の範囲で許可を得ている。イスラム・ウィンドウが広がるなかで、業務全体をイスラム原則で行うエコイスラミック銀行の立ち位置は独自のものであり続けている。
同行は総資産、資金供与残高、預り金、純利益といった数字を公式サイトでまとめて公表していない。年次報告、月次報告、国立銀行の基準遵守状況、無制限ムダーラバ契約に基づく利益配分率、ESG・持続可能性報告の各欄が用意されているが、規模を示す数字は掲示されていない。
転換の歩みと課題
同行の説明によれば、イスラム金融への転換は容易ではなかった。知識と経験が不足し、法制度も整っていなかった。シャリーアの規範に合致しない事業を営む顧客とは取引を終えなければならず、逆に、イスラム原則の経済的・道徳的な考え方に馴染みのない新規顧客には一から説明する必要があった。同行はこの過程を「茨の道」と表現している。
制度の側では、2006年の了解覚書と大統領令、国立銀行理事会の決定によって試験事業の枠組みが作られ、その後、イスラム・ウィンドウを認める規定、そして2025年のイスラム銀行そのものの免許区分へと段階的に整備が進んだ。20年をかけて、キルギスは中央アジアでイスラム金融の制度整備が最も進んだ国の一つになっている。
同行の本店はビシケク市ゲオロギチェスキー横丁17にあり、支店は7である(2026年8月14日時点)。規模を示す数字が公表されていないため、イスラム金融部門全体の残高260億ソム(2026年6月末)のうち同行がどれだけを占めるかは、公表資料からは確認できない。
参考資料
- История — ЗАО «ЭкоИсламикБанк»(公式サイト) ↗
- Список коммерческих банков Кыргызской Республики — キルギス国立銀行(2026年8月14日時点。イスラム銀行の免許登録を含む) ↗
- Активы банковского сектора Кыргызстана превысили 1.5 трлн сомов — Economist.kg(2026年8月17日、キルギス国立銀行のデータ) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。