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ユーラシア・リソーシズ・グループ(ERG)

ルクセンブルクに持株会社を置く資源グループ。フェロクロムとコバルトの主要生産者で、カザフスタン唯一の一次アルミ生産者でもある。国家福祉基金サムルク・カズナが40%を保有する。

Eurasian Resources Group S.à r.l.
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

ユーラシア・リソーシズ・グループ(Eurasian Resources Group、ERG)は、ルクセンブルクに持株会社を置く資源グループである。日本での知名度は低いが、カザフスタンの重工業の骨格そのものと言ってよい規模を持つ。2024年末時点の従業員6万6,713人のうち6万1,433人がカザフスタン国内にいて、同年の同国での納税額は6億5,900万ドルにのぼる。高炭素フェロクロムでは世界有数の生産者であり、ユーラシアでは鉄鉱石とアルミナの主要供給者、そしてカザフスタンで唯一の一次アルミ生産者でもある。

グループの資本構成は独特で、カザフスタン政府が全株を持つ国家福祉基金サムルク・カズナが40%を保有する。残りは創業者の系譜につながる民間株主が握る。株式は非公開のため四半期開示はなく、外から数字を確かめる手がかりは、年1回の持続可能な開発レポートと、決算に関する会社発表に限られる。

カザフスタン国外では、コンゴ民主共和国のコバルト・銅事業が第二の柱である。テーリング(過去の選鉱かす)を再処理するメタルコルは世界最大級のコバルト生産拠点であり、EBITDAの4分の1近くをアフリカ事業が稼ぐ年もある。中央アジアの資源企業でありながら、収益はアフリカの電池金属の相場にも左右される構造になっている。

正式名Eurasian Resources Group S.à r.l.
本社ルクセンブルク。生産の中心はカザフスタン。ほかにコンゴ民主共和国、ザンビア、ブラジル
前身ユーラシア天然資源公社(ENRC)。ロンドン証券取引所に上場していたが、2013年後半にERGがその資産を取得した
事業フェロアロイ(フェロクロム、フェロシリコン、マンガン合金)、鉄鉱石、アルミナ・一次アルミ、石炭・電力、銅・コバルト。鉄道輸送と販売機能も内部に持つ
株主サムルク・カズナ(カザフスタン政府が全株を保有する国家福祉基金)40%、アリジャン・イブラギモフ氏の相続人20.7%、シャフムラト・ムタリプ氏39.3%(2026年5月22日の会社発表)
経営シュフラト・イブラギモフ取締役会長兼最高経営責任者(2024年10月にCEO就任)
売上高62億ドル(2025年通期、前年比2.5%減)。63億4,700万ドル(2024年通期)
EBITDA21億ドル、マージン34%(2025年通期)。18億6,700万ドル、同29%(2024年通期)
調整後純利益4億5,000万ドル(2025年通期)。2億7,000万ドル(2024年通期)
設備投資11億6,300万ドル(2024年通期)。14億4,000万ドル(2023年通期)
生産量フェロアロイ186万3,100トン、アルミナ153万トン、一次アルミ26万4,500トン、鉄鉱石ペレット・精鉱1,009万8,000トン、販売可能な銅(金属・精鉱)13万9,200トン(いずれも2024年)
従業員6万6,713人(2024年末、請負を含まない)。うちカザフスタン6万1,433人、アフリカ4,955人、ブラジル180人
納税額9億8,300万ドル(2024年、税・賦課金の合計)。うちカザフスタン6億5,900万ドル、アフリカ2億7,200万ドル、ブラジル800万ドル
主な事業会社カズフローム、SSGPO、カチャル・ルダ、アルミニウム・カザフスタン、カザフスタン電解工場、ユーラシア電力公社、シュバルコリ・コミル(以上カザフスタン)、メタルコル、フロンティア、COMIDE(コンゴ民主共和国)、BAMIN(ブラジル)
上場なし。株式は非公開。2025年にカザフスタン電解工場を通じて最大1億ドルの保証付きクーポン債を発行した

ENRCからERGへ

母体は、ソ連期に建設されたカザフスタン各地の鉱山・製錬所を独立後に集約した企業群である。1990年代にユーラシア産業協会としてまとめられ、2007年にユーラシア天然資源公社(ENRC)としてロンドン証券取引所へ上場し、FTSE100の一角を占めた。上場企業としての期間はおよそ6年にとどまる。

2013年後半、創業株主のグループとカザフスタン政府がENRCを買収して非公開化し、その資産を引き継いだのが現在のERGである。会社自身は「2013年後半に、かつてのFTSE100構成企業であったENRCの資産を取得した」と説明している。

上場をやめた背景には、英重大不正捜査局(SFO)による捜査があった。捜査は10年にわたって続き、2023年8月に打ち切られた。ENRCおよびその役職員に対する訴追は行われていない。ERGはこれを受けて「SFOが正式に捜査を終結し、いかなる訴追もなされなかった」と公表している。

コンゴ民主共和国では、国営鉱業会社ジェカミン(Gécamines)との間で、スワンマイン事業をめぐる紛争が国際商業会議所(ICC)の仲裁に持ち込まれていた。2025年9月11日、トカエフ大統領とチセケディ大統領のアスタナ会談に合わせて和解合意が成立し、ジェカミンの事業への参加比率を高める形で決着した。ERGは2009年以降、同国に90億ドル超を投じ、直接・間接に4,300人超を雇用、直近3年間で約15億ドルの税・ロイヤルティを納めたとしている。

2026年の株主交代

創業者のうちアリジャン・イブラギモフ氏は2021年に、アレクサンドル・マシケヴィチ氏は2025年3月22日に死去した。マシケヴィチ氏は2014年から2024年まで取締役会長を務めた人物で、カザフスタン電解工場の建設やアクトベ・フェロアロイ工場の増設が在任中の主な実績にあたる。

2026年5月22日、ERGは株主構成の変更を発表した。シャフムラト・ムタリプ氏が保有する Nature Energy Solutions Ltd. が、パトフ・ショディエフ氏の18.6%と、マシケヴィチ氏の相続人の20.7%を取得し、合計39.3%を握ったという内容である。残りはサムルク・カズナの40%と、イブラギモフ氏の相続人の20.7%になる。会社は「グループの事業の強靭性を高め、コーポレートガバナンスの実効性を高めるためのもの」と説明し、操業や雇用への影響はないとしている。

これに先立つ2025年4月21日には、グループ売却の観測報道に対し、イブラギモフCEOが「ERG売却の交渉は存在しない」と否定する発表を出していた。持分が動いたのは創業者側の3分の1強であって、政府の40%は動いていない。

カザフスタンの事業構成

カザフスタン国内は、原料から製品、それを支える自家発電までを一つのグループに収めた垂直統合である。クロム鉱の採掘・選鉱とフェロアロイ製造はカズフローム、鉄鉱石はSSGPOとカチャル・ルダ、アルミナはアルミニウム・カザフスタン、一次アルミはカザフスタン電解工場、石炭と電力はユーラシア電力公社とシュバルコリ・コミルがそれぞれ担う。フェロアロイ工場が使う鉱石・精鉱・ペレットは全量が自社産である。

2024年の生産は主要品目でおおむね増えた。フェロアロイは前年比14%増の186万3,000トンで、ドンスコイ鉱山選鉱コンビナートのクロム鉱産出が16%超増えたことが効いた。鉄鉱石のペレット・精鉱は3.6%増の1,009万8,000トン、アルミナは8.5%増の153万トン、一次アルミは1.4%増の26万5,000トンだった。

新規の生産拠点として、2024年12月11日にアクトベ州フロムタウでボラシャク鉱山が稼働した。ミリオンノエとアルマズ・ジェムチュジナの2鉱床を対象とし、坑道の総延長は21キロメートル超、設計能力は年間鉱石750万トン、雇用は1,800人、増産分を含めた総投資は20億ドルとされる。ただし2025年2月には同鉱山で水素の自然発火事故が起き、従業員1人が死亡した。ERGは2024年に12人の従業員が労働災害で死亡したことを公表し、2025年を「安全の年」と位置づけている。

電力面では、2025年9月3日にアクトベ州でフロムタウ風力発電所(出力15万キロワット、風車24基)を稼働させた。投資額は1億4,200万ドル超で、カザフスタン開発銀行が資金を出した。年間5億キロワット時超を発電し、二酸化炭素を最大44万トン削減する計画である。

2025年の業績

ERGは2026年4月16日に2025年通期の実績を公表した。売上高は62億ドルで2.5%減った一方、EBITDAは21億ドル(前年18億6,700万ドル)へ増え、マージンは29%から34%へ改善した。調整後純利益は4億5,000万ドルで、前年の2億7,000万ドルから伸びた。

減収の理由として会社は、価格環境の複雑さと供給網の制約を挙げている。とくにコンゴ民主共和国が2025年の大半にわたってコバルトの輸出を禁じたことが響いた。他方で利益が増えたのはコスト削減による。生産コストはフェロクロムで8%、銅精鉱で最大15%下がり、節減額は約2億6,000万ドルとされる。地域別のEBITDAは、カザフスタン事業が16億ドル、アフリカ事業が5億ドル超(全体の24%)である。

資金調達では、2024年6月に中国銀行ロンドン支店とグレンコア・インターナショナルとの間で1億5,000万ドルの銅プレエクスポート・ファイナンス(輸出前金融)を組成し、2025年4月に借り換えたうえ枠を2億1,500万ドルへ拡大した。同じ2025年には、カザフスタン電解工場を通じて最大1億ドルの3年物保証付きクーポン債を初めて公募し、カザフスタン開発銀行の保証を得てムーディーズからBaa1の格付けを取得している。

重要鉱物と日本企業との接点

2025年12月、トカエフ大統領の訪日に合わせてERGは日本企業3社と契約・覚書を結んだ。もっとも具体性が高いのは三菱商事RtMジャパンとのガリウム長期供給契約で、パブロダル・アルミナ工場の工程液からガリウムを回収する設備を2,000万ドル超かけて建設する。生産能力は年15トン、雇用約70人、生産開始は2026年第3四半期の予定である。実現すればカザフスタンはガリウムの生産国として世界2位になるとしている。

同時に、三井物産とは鉱山・選鉱・冶金設備の更新や電動ダンプトラックの導入、日立建機とはEH4000型ダンプトラックのハイブリッド化やAIによる設備稼働の安定化について、それぞれ覚書を交わした。

このほか2025年10月20日には、コスタナイ州ルドヌイに年産200万トンの熱間ブリケット鉄(HBI)工場を建設する契約を、プライメタルズ・テクノロジーズと米ミドレックスの企業連合と結んだ。総投資は12億ドル超、稼働は2029年の予定で、SSGPOが作る酸化鉄ペレットを原料に、コークスではなく天然ガスで還元する。カザフスタン初のHBI工場になる。

数字を読むときの注意

従業員数の「約6万7,000人」は請負業者を含まない自社の雇用契約者の数である。請負を含めた総数は公表されていない。

生産量は原則として100%基準(グループが支配する事業の全量)で示されており、持分に応じて按分した数値ではない。売上高やEBITDAが地域別に示されるときも、カザフスタンとアフリカの区分であって、法人単位ではない。

事業会社ごとの財務は、カザフスタンの各社が現地基準で個別に開示する数字と、グループがドル建てでまとめる数字が併存する。テンゲ建てとドル建てを並べると為替の影響で増減の向きが逆に見えることがあるため、どちらの通貨で比べているかを確かめる必要がある。

なお、グループ本体の監査済み連結財務諸表は一般には公開されていない。上に挙げた数字は、会社の年次レポートと決算に関する発表に基づく。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。