解説 · 2026年8月時点
ユーラシア貯蓄銀行(ОАО «Евразийский Сберегательный Банк»、ESB)は、1997年に「キルギスクレジット銀行」として発足したキルギスの商業銀行である。2016年に現在の名称へ改められた。支店は2つと少ないが、2026年上半期には資産が1年で440.1%増と、キルギスの銀行のなかで2番目に速い伸びを示した。
経済専門紙エコノミストの区分では、2026年6月末時点で資産200億〜800億ソムの階層に入る。同じ階層にはデミル・キルギス・インターナショナル銀行、コンパニオン銀行、O!バンク、FINCA銀行が並ぶ。同紙は、この急伸が前年の低い基準によるところが大きいと注記している。
| 正式名 | ОАО «Евразийский Сберегательный Банк»(Eurasian Savings Bank OJSC、略称ESB) |
|---|---|
| 設立 | 1997年にАКБ «КыргызКредит Банк»として法務省に登記。授権資本は500万ソム |
| 改称 | 2016年にОАО «Евразийский Сберегательный Банк»へ再登記 |
| 免許 | キルギス国立銀行の免許第041号。免許登録簿への記載は1998年11月17日 |
| 本店 | キルギス・ビシケク市イブライモフ通り40/1 |
| 支店 | 2(2026年8月14日時点、キルギス国立銀行の登録簿) |
| 授権資本 | 11億6,213万7,860ソム(2025年) |
| 資産規模 | 200億〜800億ソムの階層に属する(2026年6月末、Economist.kgの集計) |
| 資産の伸び | 2026年6月末までの1年間で440.1%増(同) |
沿革
1997年、キルギス共和国法務省が新しい商業銀行「キルギスクレジット銀行(АКБ «КыргызКредит Банк»)」を登記した。授権資本は500万ソムだった。翌1998年には国立銀行から国内通貨・外貨での業務免許を受けている。国立銀行の免許登録簿では、免許第041号の登録日を1998年11月17日としている。
2000年から2003年にかけて、同行は住民向けに住宅の購入・建設資金を貸し出す最初の銀行の一つとなった。また、国立銀行を通じて発行される国債市場のプライマリー・ディーラーの資格を得て、自己名義と顧客名義の双方で取引を行うようになった。授権資本は3,500万ソムまで増えた。
2004年から2005年にかけて、キルギス証券取引所での上場手続きを経て公開型株式会社「キルギスクレジット銀行」へ再登記された。中央百貨店「アイチュレク」内に初の支店「キルギスクレジット・ツム」を開設し、耐久消費財購入向けの「即時融資」を投入した。キルギス銀行協会に加盟し、授権資本は1億1,000万ソムに増えて配当の支払いも始まった。
2006年から2007年にかけて、銀行間処理センターに加わって国内決済カード「エルカルト」の発行と取扱いを始めた。授権資本は2億ソム、貸借対照表の総額は6億ソムを超えた。2008年には新しい基幹システムを導入し、中央アジア証券取引所での上場手続きも経た。授権資本は3億ソムに増えた。
2016年、同行は「ユーラシア貯蓄銀行」へ再登記された。授権資本はその後も積み増され、2024年に10億1,108万1,380ソム、2025年に11億6,213万7,860ソムとなった。
名前の変遷が示すもの
この銀行は30年足らずの間に二度、名前を変えている。「キルギスクレジット銀行」から2016年に「ユーラシア貯蓄銀行」へ、という流れである。名称に「ユーラシア」を冠したのは、2015年にキルギスがユーラシア経済連合(EAEU)に加盟した時期と重なる。
キルギスの銀行では商号変更が珍しくない。株主の交代、事業の方向転換、ブランド刷新のいずれかがきっかけになる。キルギスコメルツ銀行は「キルギスアフトバンク」から「カザコメルツバンク・キルギスタン」を経て現在の名になり、O!バンクは「ハルィク・バンク・キルギスタン」から改称した。KSB商業銀行も「キルギズディイカンバンク」から二度の改称を経ている。
国立銀行の免許登録簿では、免許番号と登録日は改称や株主交代を越えて引き継がれる。したがって、免許登録日の古さは、その銀行が同じ名前・同じ資本で長く続いてきたことを意味しない。
事業
個人向けには、事業向け融資、消費者ローン、自動車ローン、無担保の「ブリッツ」ローン、住宅ローンを扱う。預金は個人向けと法人向けの双方を用意している。決済・現金業務、外国為替、送金、決済カード、公共料金その他の支払い、貸金庫、インターネット・アクワイアリング、加盟店決済が主なサービスである。
2025年には貸金庫サービスを前面に出した広報を行っており、規模の小さな銀行として、預金と決済に加えて資産保管という切り口を打ち出している。
国立銀行の登録簿によれば、同行は2024年7月31日付で貴金属業務の許可を得ており、国立銀行が発行する精錬済み計量地金を扱うことができる。2025年5月23日には、他の発行体の精錬済み標準・計量地金を現金・非現金の双方で扱う権限が追加された。
急成長の読み方
エコノミストの集計によれば、2026年上半期にキルギスの銀行部門の資産は26行合計で1兆5,773億ソムに達し、年初から30.2%増えた。このなかで同行の資産の伸びは440.1%で、7倍以上に増やしたケレメト銀行(627.1%増)に次ぐ2位である。同紙は、この二行の高い伸び率は前年の基準が低かったことによると説明している。
支店が2つのままで資産だけが数倍になるという形は、店舗網を通じた個人預金の積み上げではなく、法人取引や国債・銀行間市場での運用が急に膨らんだ可能性を示す。ただし、資産の内訳、預金の構成、収益源は公表されていないため、外部からは確認できない。
同行は総資産、貸出残高、預金残高、純利益の絶対額を公式サイトで公表していない。「Финансовая отчетность(財務報告)」の欄はあるが、規模を示すまとまった数字は掲示されていない。エコノミストの集計は各行の公表財務諸表を集めたもので、順位表では階層の区分と伸び率だけが示されている。
参考資料
- О банке(沿革)— ОАО «Евразийский Сберегательный Банк»(公式サイト) ↗
- Список коммерческих банков Кыргызской Республики — キルギス国立銀行(2026年8月14日時点) ↗
- Рейтинг банков КР за I полугодие 2026 года: 51% активов — у трех крупнейших — Economist.kg(2026年7月31日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。