解説 · 2026年8月時点
ユーラシアネット(Eurasianet)は、中央アジアとコーカサスを中心にユーラシアを報じる米国の非営利報道組織である。2000年に開設され、当初はオープン・ソサエティ財団のユーラシア事業の一部として運営されていたが、2016年に分離して免税資格を持つ非営利の報道組織となった。拠点はコロンビア大学ハリマン研究所に置かれている。
この地域を英語で継続的に扱う独立系の媒体は少なく、ユーラシアネットはその代表格である。政府発表の要約ではなく、現地の記者による取材と分析を柱にしている点が、国営通信との大きな違いである。
| 正式名 | Eurasianet |
|---|---|
| 開設 | 2000年 |
| 法的地位 | 米国の非営利報道組織(2016年にオープン・ソサエティ財団のユーラシア事業から分離して独立) |
| 拠点 | 米国。コロンビア大学ハリマン研究所に置かれる |
| 対象地域 | 中央アジア、コーカサス、ロシア、南西アジア |
| 言語 | 英語(一部の記事は他言語でも提供) |
| 資金源 | 助成。オープン・ソサエティ財団、全米民主主義基金、英外務・英連邦・開発省、グーグルなどの助成機関 |
| ロシアでの扱い | 2026年4月2日、ロシアの「望ましくない団体」の一覧に加えられた |
成り立ちと資金
ユーラシアネットは2000年に開設された。運営の母体はオープン・ソサエティ財団のユーラシア事業で、2016年に分離して独立の非営利報道組織となった。以後はコロンビア大学ハリマン研究所を拠点としている。
資金は助成にもとづく。公開されている資金提供者には、オープン・ソサエティ財団、全米民主主義基金(NED)、英国の外務・英連邦・開発省(FCDO)、グーグル、コロンビア大学のアーノルド・A・ザルツマン戦争と平和研究所などが挙げられている。
助成を受けて運営される報道組織であるため、資金提供者の性格は読み手が念頭に置いておくとよい点である。オープン・ソサエティ財団と全米民主主義基金は、いずれも民主化支援を目的とする組織である。
非営利の報道組織であるため、購読料ではなく助成と寄付で運営される。記事は原則として無料で公開される。
報道の体制
ユーラシアネットは、対象各国の現地記者と、米欧の編集者・寄稿者を組み合わせた体制で運営されている。記事は英語で出され、一部は他の言語でも読める。
扱う主題は、資源開発と歳入の使途、公共事業の入札、労働移民と送金、水資源と環境、国境と外交、報道の自由と司法といった範囲に及ぶ。経済の記事では、統計の読み方そのものを検証する内容が出ることもある。
国営通信が伝えない論点を扱う一方、対象国の政府から取材の便宜を得にくい立場でもある。記事に匿名の情報源が使われるのは、この事情による場合がある。
域内での位置づけ
中央アジア5か国と南コーカサス3か国を、同じ編集体制のもとで継続的に扱う英語媒体は限られる。ユーラシアネットはそのうちの一つで、国別の担当記者を置いて日々の出来事と長めの分析の双方を出している。
国営通信が政府の発表を伝えるのに対し、ユーラシアネットは政策の帰結や実施状況を取材する。同じ出来事について両者の記述を並べると、発表と実態の差が見えることがある。
一方で、現地当局の協力を得にくいことから、公式の数字や文書を独自に入手できる場面は限られる。統計や法令に関する話題では、発表主体の資料が依然として一次の出所である。
報道の範囲
対象は中央アジア5か国と南コーカサス3か国を中心に、ロシアと南西アジアにも及ぶ。政治、経済、社会、環境、エネルギー、人権を横断して扱い、現地の記者による報道と、研究者による分析記事の双方を掲載する。
記事の性格は、政府の発表を伝えるものではなく、資源開発、汚職、労働移民、環境問題、地域の外交関係といった主題を独自に掘り下げるものが中心である。国営通信が扱わない論点を扱うことが多い。
報道賞としては、キルギス革命に関する特集で2007年のEPPY賞、月間訪問者25万人未満の最優秀ニュースサイト部門で2011年のEPPY賞を受けたと記録されている。ウェビー賞でも複数回の言及を受けている。
各国での扱い
ロシア連邦は2026年4月2日、ユーラシアネットを「望ましくない団体(нежелательная организация)」の一覧に加えた。この指定を受けた組織は、ロシア国内での活動が禁じられ、ロシア国内の個人が関与すると刑事責任を問われうる。
同社はロシアの国内政治を主たる対象としていないが、指定によりロシア国内からの取材と配信は事実上できなくなる。中央アジア・コーカサスの報道においても、ロシアに関わる部分の取材条件は影響を受ける。
域内の各国でも、政府の立場と対立する報道をめぐって取材上の制約が生じることがある。記事に匿名の情報源が使われている場合、その背景にはこうした事情がある。
出典として使うときの性格
ユーラシアネットは独立した編集判断のもとで記事を出す報道組織であり、政府発表の公式な配信経路ではない。政府の説明と異なる見方が示されることがある。
一次資料に当たれる話題(統計、法令、決算)については、同社の記事を手がかりに発表主体の資料へ遡るのが確実である。
同社の記事の著作権は同社に帰属する。引用の際は出典を明示する必要がある。
同社は域内8か国の出来事を長期にわたって記録してきた。過去の経緯を確認する用途では、記事の蓄積そのものが資料になる。
記事には署名がある場合と、安全上の理由から署名を伏せる場合がある。署名の有無は取材環境を示す手がかりになる。
参考資料
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。
