解説 · 2026年8月時点
ガルルク・カリ鉱山選鉱複合体は、トルクメニスタン東部レバプ州クイテンダグ地区のガルルクにあるカリ肥料の生産設備である。トルクメニスタンで最初のカリ肥料の工業生産拠点で、塩化カリウムを細粒品と造粒品の形で生産する。設計能力は年140万トンとされる。国営のトルクメンヒミヤ国家コンツェルンの傘下にある。
この事業は、建設したベラルーシ企業との間で大規模な国際仲裁に発展したことでも知られる。2017年3月に両国大統領が出席して稼働式典が行われた一方、その後トルクメニスタン側が契約を一方的に解除し、双方が相手方に巨額の請求を行う事態になった。生産実績が公表されないため、設備が設計能力にどこまで近づいているかは外部から確認できない。
| 正式名 | Garlykdaky kaliý dag-magdan toplumy(ガルルク・カリ鉱山選鉱複合体) |
|---|---|
| 所在地 | トルクメニスタン・レバプ州クイテンダグ地区ガルルク |
| 建設根拠 | 2010年1月15日付の大統領決定第10802号 |
| 建設請負 | ベルゴルヒムプロム(ベラルーシ共和国) |
| 稼働開始 | 2017年3月31日 |
| 所管 | トルクメンヒミヤ国家コンツェルン |
| 主な製品 | 塩化カリウム(細粒品および造粒品) |
| 設計能力 | 年140万トン |
| 採掘方式 | 坑内採掘(シャフト方式) |
| 財務 | 生産実績・売上高・従業員数は公表されていない |
建設
ガルルク周辺のカリ塩鉱床は1960年代に発見されていたが、当時は開発に必要な技術が無かった。独立後の2009年、トルクメニスタンはベラルーシとの間で、ベルゴルヒムプロム(Belgorkhimprom)による鉱山選鉱複合体の建設に関する政府間協定を結んだ。
建設は2010年1月15日付の大統領決定第10802号に基づいて実施され、ベルゴルヒムプロムが元請けとなった。トルクメニスタン国営通信の2017年1月の報道によれば、工期を守るために地元企業の追加動員と労働力の増強が行われ、地上工事を2017年2月1日まで、地下工事を同月20日までに終える計画とされた。
複合体は2017年3月31日に稼働した。稼働式典と、それに先立つ起工式には、トルクメニスタンとベラルーシの両大統領が出席した。
設備と生産工程
カリ鉱石は坑内採掘(シャフト方式)で採取され、選鉱部門で処理・濃縮される。製品は細粒品と造粒品に分けられ、技術工程を経た完成品は複合体の倉庫に集積される。主力製品は塩化カリウムである。
鉱山選鉱複合体は高度な技能を要する設備であり、専門の高等・中等専門教育機関で学んだ技術者に加えて、ベラルーシの鉱山企業で研修と実務経験を積んだ人員が配置されている。
稼働の目的は、国内農業部門の鉱物肥料需要を満たしたうえで、カリ肥料の相当部分を輸出に回すことにあるとされている。
ベラルーシとの契約紛争
稼働の直後から、事業は請負代金の未払いと設備の稼働不良をめぐる紛争に入った。2017年5月にはベラルーシのアナトリー・カリニン副首相が、請負業者が工事代金を受け取っていないと述べた。2018年11月にはグルバングルイ・ベルディムハメドフ大統領が公式の演説で国際仲裁に持ち込む方針を表明している。
トルクメン系の独立メディアturkmen.newsが入手した文書によれば、トルクメンヒミヤとベルゴルヒムプロムの契約は2018年5月28日にトルクメニスタン側から一方的に解除され、同年12月にストックホルム商業会議所仲裁協会へ申立てが行われた。同社の報道では、SRKコンサルティングとプライスウォーターハウスクーパースによる技術・財務監査に基づき、法律事務所スクワイヤ・パットン・ボッグスがベルゴルヒムプロムに対して9億1,100万ドルを請求したとされる。建設契約の金額は10億ドルだった。
同じ報道によれば、ベラルーシ側は請求を退け、2020年12月21日に4億1,800万ドルの反対請求を行った。ベラルーシ側は、設備は要求どおりに建設されており、稼働の問題はトルクメニスタン側がベラルーシの技術者を使わずに自力で生産を立ち上げようとしたことに起因すると主張してきた。ベルゴルヒムプロムは、トルクメニスタンが同社の建設機材を不当に留置しているとも述べている。両社ともこの件について報道機関の取材に応じていない。
ベルゴルヒムプロムが2021年に公表した2020年の年次報告では、監査人のBDOが、多額の損失、債務、純資産のマイナス、トルクメニスタンとの法的手続きを理由に、継続企業の前提に関する重要な不確実性に言及したとされる。
公表情報の限界
同複合体については、設計能力(年140万トン)と製品の種類は公表されているが、実際の生産量、売上高、従業員数、稼働率のいずれも公表されていない。輸出量や仕向地も定期的な発表の対象になっていない。
紛争の経緯に関する具体的な金額と日付は、当事者双方が公式に確認していない文書に基づく報道である。読み手はこの点を念頭に置く必要がある。両当事者が確認しているのは、契約が終了し、仲裁手続きが行われたという事実関係にとどまる。
参考資料
- Garlykdaky kaliý dag-magdan toplumy — «Türkmenhimiýa» döwlet konserni(公式サイト、工場ページ) ↗
- Garlyk mining plant for the production of potash fertilizers would be commissioned on 31 March — トルクメニスタン国営通信(TDH) ↗
- Turkmenistan demands $911 million from Belarusian state company — turkmen.news ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。