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ジョージア・ヘルスケア・グループ(GHG)

ジョージア最大の医療サービス事業者。エヴェクスの名で病院、地域クリニック、外来ポリクリニック、臨床検査を全国展開する。ジョージア・キャピタルの中核保有事業。

Georgia Healthcare Group
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

ジョージア・ヘルスケア・グループ(GHG)は、ジョージア最大の医療サービス事業者である。高度医療を担う大型・専門病院から地方のコミュニティ病院、都市部の外来ポリクリニック、コーカサス最大の臨床検査ラボまでを一つの紹介体系でつないだ運営が特徴で、同社は国内人口の約75%をカバーし、国内の病床の14%を持つとしている。ロンドン証券取引所に上場する投資持株会社ジョージア・キャピタルが100%を保有する。

この会社を読むときに最も注意が要るのは、事業範囲が過去と現在で違うことである。かつてのGHGは病院・クリニックに加えて薬局チェーンと医療保険を抱える垂直統合型のグループだったが、2024年12月の再編で薬局は切り離された。現在のGHGは病院・クリニック・検査の三本柱であり、薬局と保険はジョージア・キャピタルの別の投資先である。古い資料に載る薬局の店舗数や保険加入者数は、いまのGHGの数字ではない。

正式名JSC Georgia Healthcare Group(2024年12月17日設立、登記番号405746634)
本社ジョージア・トビリシ(S・ツィンツァゼ通り24a)
親会社ジョージア・キャピタル(100%)
最高経営責任者イラクリ・ゴギア(2022年8月12日就任)
事業大型・専門病院、地域・コミュニティ病院、外来ポリクリニック、臨床検査
施設大型・専門病院7、地域・コミュニティ病院28〜30(資料で数え方が異なる)、ポリクリニック16、大型検査ラボ1
病床約2,460床(2026年6月時点)。国内の病床の14%(同社ESG開示)
医師約4,080人(2026年6月時点、同社サイト)
従業員1万1,788人(2026年6月時点)。2025年12月31日時点は1万1,152人
売上高4億7,349万ラリ(2025年12月期、純額)。2026年上期は2億7,082万ラリ
EBITDA9,348万ラリ(2025年12月期、IFRS16適用前、利益率19.5%)
上場歴2015年11月ロンドン証取プレミアム市場に上場、2020年8月上場廃止
主なブランドヴィアン(大型・専門病院)、ジョージアン・クリニックス(地域病院)、エヴェクス(外来)、メガラボ(検査)

いまのGHGに含まれるもの、含まれないもの

2025年12月期の監査済み連結財務諸表によれば、現在のJSC Georgia Healthcare Groupは2024年12月17日に設立された法人(登記番号405746634)で、旧法人JSC Georgia Healthcare Group(登記番号405098399)の病院・クリニック・検査の各セグメントを継承したものである。旧法人は2024年12月に再編され、JSC Georgia Pharmacy Group(ジョージア・ファーマシー・グループ)へ改称した。つまり薬局事業が旧法人の側に残り、医療サービス事業が新法人として切り出された形である。再編の前後で最終親会社(ジョージア・キャピタル)は変わっていない。

その結果、薬局事業と保険事業はいずれもジョージア・キャピタルの別建ての投資先になっている。薬局事業(同社が98.3%を保有)は2026年6月末時点でジョージアに444店、アルメニアに20店の計464店を展開し、2024年の売上高に基づく組織小売市場シェアは33.7%とされる。保険事業(同100%)は損害保険のアルダギと、医療保険のイメディLおよびアルディからなり、医療保険は2026年第1四半期の元受保険料でシェア約49%と推定されている。これらはGHGの数字ではない。

なお医療と保険の分離はさらに古くにさかのぼる。2014年の分割契約で、旧アルダギBCIの事業は3社に分かれ、医療・旅行保険はイメディL、医療サービスはメディカル・コーポレーション・エヴェクス、損害保険と年金はアルダギが引き継いだ。

上場と非公開化

GHGは2015年11月、ロンドン証券取引所のプレミアム市場に上場した。その後、筆頭株主だったジョージア・キャピタルによる株式交換の申し出が全面的に無条件となり、2020年8月にプレミアム市場での上場は廃止された。2022年8月にはジョージア・キャピタルが最終的に100%を保有するに至っている。

英国法人のGeorgia Healthcare Group Limited(会社番号09752452)は2022年11月12日に解散した。事業はジョージア法人として継続しており、投資家向け開示は親会社ジョージア・キャピタルの四半期決算の一部として、また同社サイトの投資家情報として続いている。上場企業ではなくなった後も四半期ごとの数字が公開されているのは、親会社がロンドン上場を続けているためである。

四つの事業区分

第一が大型・専門病院で、ヴィアン(Vian)のブランドの下に7病院を運営する。内訳はトビリシ4、クタイシ2、バトゥミ1で、コーカサス医療センター、イヴ・ボケリア大学病院、M・イアシュヴィリ小児中央病院、M・イアシュヴィリ・バトゥミ母子中央病院、カラプス・メドライン、西ジョージア医療センター、クリスティナ・キール腫瘍センターが含まれる。国内唯一の三次医療水準の総合小児病院を持つ。

第二が地域・コミュニティ病院で、ジョージアン・クリニックスの名で運営される。2023年12月の再編で地方病院がこのブランドに集約された。アジャラ、サメグレロ、イメレティ、シダ・カルトリ、サムツヘ・ジャヴァヘティ、カヘティなどに広がり、24時間の救急、外科、集中治療を地方で提供する。

第三が外来で、エヴェクス(EVEX)のブランドの下にポリクリニック15か所と小児神経発達センター「カラヴィ」の計16拠点を持ち、同社は外来市場の25%を占めるとしている。第四が検査で、メガラボ(Megalab)を運営する。2022年7月24日にJCI(国際的な医療機能評価)の認証をコーカサスの検査機関として初めて取得し、2024年7月11日には国内の認定機関からISO認証を受けた。旧ソ連圏で初のデジタル病理部門を持つ。

施設数の表記は資料によって食い違う。GHGの公式サイトは地域・コミュニティ病院を「30」と書き、同じサイトの事業区分の説明では「ジョージアン・クリニックスの28施設」となっている。親会社の2026年第1四半期資料は「30」、同第2四半期資料は「28」と書く。投資家向け資料でよく見る「約35病院」は、大型・専門7と地域28の合計である。どの数字も同じ実体を別の数え方で示したものだが、そのまま比べると合わない。

業績

2025年12月期の売上高(純額)は4億7,349万ラリで前期比18.1%増、IFRS16適用前のEBITDAは9,348万ラリ(利益率19.5%)だった。前期の4億77万ラリ、6,919万ラリ(利益率17.0%)からいずれも大きく伸びている。ただし純損益は429万ラリの赤字で、前期の1,069万ラリの赤字から縮小したにとどまる。減価償却と金利負担が重い資本集約型の事業である。

2026年上期は売上高2億7,082万ラリ(前年同期比15.9%増)、EBITDA5,658万ラリ(同20.4%増)、EBITDA利益率20.7%。部門別では地域・コミュニティ病院の伸びが最も大きく、上期の売上高は22.7%増の7,813万ラリだった。2025年12月に買収したゴルメド(Gormed LLC)の連結も寄与しており、前年同期比の押し上げは上期で860万ラリ、第2四半期で400万ラリだった。

収益構造の変化として、入院より利益率の高い外来へのシフトが続いている。大型・専門病院の売上に占める外来の比率は2026年第2四半期で37.5%(前年同期比0.7ポイント上昇)、上期で37.9%(同1.6ポイント上昇)。外来は医療材料の消費が入院より少ないため、材料費率の低下を通じて粗利率を押し上げる。2026年第2四半期には最大の病院で改修・拡張した外来部門が開業した。

2026年上期の純損益は1,166万ラリの赤字だが、これは第2四半期に計上した旧来の無形資産2,500万ラリの評価損(一部は業務改革で不要になったもの)が主因で、遊休不動産の売却益680万ラリが一部を相殺している。

政府依存という構造

ジョージアは2013年にユニバーサル・ヘルスケア(UHC)制度に移行し、公的資金が医療需要の大きな部分を賄うようになった。GHGの2025年12月期の連結財務諸表は「グループの収入の50%超が国家から得られている」と明記している。ただし同社は、実際の顧客は医療を受ける患者であって支払者ではないとして、単一の外部顧客で総収入の10%以上を占めるものはないという整理をとる。

この構造は資金繰りに直接効く。同財務諸表によれば、医療サービス債権の約65%はジョージア政府と自治体に対するものである。政府からの入金には季節性があり、親会社の開示ではEBITDAの現金転換率は2026年上期に62.3%(2025年通期は85.5%)まで落ちた。上期に弱く、下期に政府の未払い分が解消して回復するという説明が繰り返されている。

債権の劣化も無視できない。2025年12月31日時点の医療サービス債権は総額1億6,585万ラリで、うち180日超の延滞が5,605万ラリあり、これには98.7%の予想損失率が当てられている。90〜180日の延滞も3,842万ラリある。制度設計や診療報酬の変更が業績に直結する点は、親会社もリスク要因として挙げている。

2025年のソーシャルボンド

2025年9月、GHGは3億5,000万ラリのソーシャルボンド(担保付き)をジョージア市場で発行した。5年一括償還で、クーポンはトビリシ銀行間金利(TIBR)に375ベーシスポイントを上乗せする変動利付。償還期日は2030年9月17日である。担保として本社、病院・クリニックの建物、一部の医療機器が差し入れられており、2025年末の担保資産の帳簿価額は3億8,747万ラリだった。

調達額の大半は既存の長期借入の借り換えに充てられ、一部が将来の設備投資に配分された。IFC(国際金融公社)は約1億3,000万ドル相当のこの起債にアンカー投資家として4,000万ラリを引き受け、コーカサスの医療分野で初のソーシャルボンドであり、地域最大のソーシャルボンド、かつジョージアで最大の現地通貨建て社債だとしている。アジアインフラ投資銀行(AIIB)も最大3,000万ドル相当を引き受け、2025年8月28日に承認した。AIIBの投資分は新設の腫瘍センターと地方病院向けの医療機器調達などに充てられる。

発行に先立ち、GHGはICMAのソーシャルボンド原則(2023年版)とジョージアのGSSボンド分類に沿ったソーシャルボンド・フレームワークを整備し、2025年6月にスコープ・レーティングスからセカンドパーティ・オピニオンを取得した。スコープはフレームワークに「Transformative」の評価を付し、債券自体にはBBの格付けが付されている。現地の商業銀行と年金基金も引受に参加し、ガルト・アンド・タガートとTBCキャピタルが引受幹事を務めた。

市場の文脈

ジョージアは2000年代に病院の民営化を大規模に進め、公立病院の多くが民間の手に渡った。IFCによれば、同国の病床の86%は民間が所有しており、外来と検査でも民間が中心である。人口370万人規模の国で、入院医療の相当部分を一つの民間グループが担っているという事実は、この国の医療制度を理解する前提になる。

GHGの規模を示す運営指標としては、2026年上期の入院受け入れが89万8,600件(前年同期比13.1%増)、外来クリニックの受診が100万2,800件(同1.5%増)、検査部門の患者数が51万4,000人(同15.8%増)である。稼働率は大型・専門病院で75.7%、地域・コミュニティ病院で64.4%(いずれも2026年上期)。地方病院の稼働率が下がる一方で売上が伸びているのは、収益性の高いサービスへの構成変化によるものだと親会社は説明している。

同社は2026年6月時点の登録患者を約84万人、対象人口カバー率を約75%とし、国内の3大都市以外に住む人(人口の約60%)向けに定期的な専門医の巡回と無料検診を行っていると開示している。2025年には10件の無料スクリーニング事業を実施し、約1万3,679人が対象になった。小児がんについては国内で唯一の提供者として、国の資金で無償の治療を行っている。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。