解説 · 2026年8月時点
ギラン・ホールディング(Gilan Holding)は、アゼルバイジャンの非石油部門で最大級の位置を占めた複合企業グループである。建材と建設、ガバラを中心とする観光・宿泊、食品加工と農業、繊維、物流、小売、スポーツクラブまでを傘下に抱えた。
この法人は2023年5月に「ヘズリ・ソリューションズ」へ改称し、同年8月に自主清算の公告を出した。同じ時期に、この一族に連なる企業の再編が進んだと調査報道は伝えている。アゼルバイジャンの大企業グループの所有構造と、その再編の速さを示す事例として参照されることが多い。
| 正式名 | Gilan Holding LLC。2023年5月に「Xəzri Solutions(ヘズリ・ソリューションズ)」へ改称 |
|---|---|
| 納税者番号 | 1400725191 |
| 本拠 | バクー |
| 事業 | 建設・建材、観光・宿泊、農業・食品加工、繊維、物流、小売、スポーツクラブ |
| 現況 | 2023年8月、自主清算の公告を出した(債権者の申出期間60日) |
| 所有 | 2013年時点でドバイ登記のSahra FZCO(51%)とShams Al Sahra FZCO(49%)が保有していたと調査報道は伝える |
| 財務 | 資産・売上高ともに公表されていない |
事業の構成
グループの公式サイトは、事業を建設、観光、農業・物流・日用品の三つの柱で説明していた。建設部門のギラン・コンストラクションは、原材料から部材、設計・施工、インフラ関連サービスまでを手がけると位置づけられ、傘下にガバラのアスファルト工場、ガバラ建材工場、ガラダグ煉瓦工場、ギラン・セラミック工場、石膏ボードのギラン・クナウフ、施工管理のインスペクション・ディベロップメント・モニタリング(IDM)、ギラン・パシフィック・インシャートなどが並んだ。
観光部門は、ガバラの遊園地ガバランド、イェンギジェ温泉の保養施設、ガバラのヘイダル・アリエフ記念コングレスセンター、バクーのケンピンスキー・ホテル・バダムダル、カフカズ・バクー・シティ・ホテル&レジデンスなどを運営した。ガバラを山岳リゾートとして売り出す動きの中心にいたのがこのグループである。
産業部門は農業、繊維、食品、化学、技術の各分野の企業からなり、ガバラの製菓・ヘーゼルナッツ加工工場、ガバラとレンコランの缶詰工場、皮革加工、ピアノ製造のベルトマン、光ディスク製造などが挙げられていた。関連企業としてはAFB銀行、AZファイナンス・インベスト、アルテン・グループ、アズシゴルタ、BMトランスポート、ガバラFC、ガバラ射撃クラブ、マスター・ティボット、カヤ不動産、UEIが列挙されていた。
農業・食品への投資
同グループは農業と食品加工にも広く投資した。公式サイトは、レンコランに整備した「ギラン・アグロ・シトラス」農場、複数の食品工場を集めた「ギラン・キダ村」、アグダシュ地区に設けた飼料加工工場を挙げ、いずれも大統領が視察や開所式に臨んだと紹介している。石油に偏った経済の多角化という国策と、グループの投資分野が重なっていたことがうかがえる。
ガバラでは、缶詰工場やヘーゼルナッツ加工工場といった食品加工と、ホテルや遊園地などの観光施設を同じ地域に集めた。国内有数の観光地としてのガバラの姿は、このグループの投資と切り離せない。
起源と規模
グループの公式サイトは、アゼルバイジャンで大規模な事業に投資を始めた時期を、版によって1987年あるいは1992年としていた。調査報道団体ザ・セントリーは、ギラン・ホールディングの設立を2005年としている。持株会社としての法人の設立と、傘下事業の起点が異なることが、この食い違いの背景にあるとみられる。
グループは資産規模や売上高を公表していない。ザ・セントリーは、公表がないなかで少なくとも数十億ドル規模と推定されるとしている。推定である以上、数字そのものを断定的に扱うことはできない。
所有と再編
同グループは長く、非常事態相カマラディン・ヘイダロフの一族に連なるグループとみられてきた。ザ・セントリーの分析によれば、2013年時点でギラン・ホールディングはドバイに登記された2社、Sahra FZCO(51%)とShams Al Sahra FZCO(49%)が保有していた。2023年3月時点で、Sahra FZCOの実質的保有者は大統領イルハム・アリエフの娘であるレイラ・アリエヴァとアルズ・アリエヴァ、Shams Al Sahra FZCOの実質的保有者はカマラディン・ヘイダロフの息子タレ・ヘイダロフだとしている。
2023年、この法人は再編に入った。独立系の通信社トゥランによれば、納税者番号1400725191の「ヘズリ・ソリューションズ」有限責任会社は、同年5月まで「ギラン・ホールディング」有限責任会社と称しており、7月に再編を公告したのち、8月に自主清算を公告して債権者に60日以内の申出を求めた。公告は税務当局の登記情報で公開された。
同じ時期に、ヘイダロフ家に連なる複数のアゼルバイジャン企業が清算され、パシャ・ホールディング系の企業へ統合されたとザ・セントリーは指摘している。企業グループの帰属が短期間で組み替えられる点は、この国の事業環境を読むうえで押さえておきたい特徴である。
資料を読むときの注意
ここに挙げた傘下企業の顔ぶれは、解散前の公式サイトの保存版にもとづく。したがって解散前の状態を示すものであり、個々の事業の現在の所有者は別に確認する必要がある。
所有構造に関する記述は、企業登記の情報を用いた調査報道に依拠している。当事者側からの公表や反論は確認できていない。読み手はこの点を念頭に置く必要がある。
参考資料
- Network Insight: Gilan Holding(The Sentry、2024年9月) ↗
- Announced the liquidation of the former “Gilan Holding”(Turan、2023年8月30日) ↗
- Gilan Holding 公式サイト(2016年時点の保存版。傘下企業の一覧) ↗
- About(Gilan Holding 公式サイトの保存版、2019年) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。