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カズトランスオイル

カザフスタン国内の幹線原油パイプラインを運営するカズムナイガス傘下の上場企業。2025年の幹線パイプライン経由の輸送量は4,512万トンだった。

KazTransOil JSC
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

カズトランスオイル(KazTransOil)は、カザフスタン国内の幹線原油パイプラインを運営する会社である。国営石油会社カズムナイガスが90%を保有し、残る10%マイナス1株がカザフスタン証券取引所で流通する。同国で産出された原油を国内3製油所と国境の輸出点へ運ぶ動脈にあたり、四半期ごとに公表される輸送実績は、この国の石油がどこへ向かっているかを読む基礎資料になる。

2012年12月、サムルク・カズナの「国民IPO」プログラムの第1号として株式を公開した会社でもある。カザフスタンの資本市場史では、国有企業の株式が一般市民に初めて大量に配られた案件として記憶されている。

紛らわしいのは、カザフスタン最大の原油輸出路であるカスピ・パイプライン・コンソーシアム(CPC)とは別会社・別路線だという点である。同社はCPCの持ち主ではなく、CPCのカザフスタン区間の運転を受託し、自社の系統からCPCへ原油を引き渡す立場にある。

正式名KazTransOil JSC
設立1997年4月2日のカザフスタン政府決定第461号による(国営石油輸送会社カズトランスオイルとして)
上場カザフスタン証券取引所(ティッカーKZTO)。2012年12月から流通市場で取引
株主カズムナイガス90%(3億4,617万2,040株)、残る10%マイナス1株(3,846万3,559株)が流通
事業原油の幹線パイプライン輸送、石油・石油製品の積み替え、第三者パイプラインの運転受託、幹線水道による給水
幹線原油パイプライン5,197.347km(2026年1月1日時点)
付帯設備石油ポンプ場36か所、加熱炉61基、原油タンク容量144万6,000立方メートル、鉄道積込設備5か所、アクタウ港の海上出荷バース3
輸送量(単体)4,512万トン(2025年)
輸送・積替量(連結)4,703万3,000トン(2025年、過去7年で最大)
貨物回転量(連結)460億5,700万トンキロ(2025年)
2026年上半期の輸送量幹線パイプライン経由2,291万1,000トン(前年同期比64万3,000トン増)。連結では2,363万6,000トン(同56万2,000トン増)
売上高3,574億7,800万テンゲ(2025年通期、連結)
EBITDA1,241億9,100万テンゲ(2025年通期、連結)
純利益456億3,400万テンゲ(2025年通期、連結)
納税額661億テンゲ(2025年、連結)
従業員6,653人(2025年)
主な子会社バトゥミ石油ターミナル(100%、ジョージア)、ペトロトランス(100%)、メイン・ウォーターライン(100%)
主な共同支配会社ムナイタス北西パイプライン(51%)、カザフスタン・中国パイプライン(50%)
格付フィッチBBB(2024年6月に確認)、S&P BB+(2024年11月に確認)

沿革

1997年4月2日の政府決定第461号により、原油の輸送と輸出入に関する国家の利益を担う会社として、国が全額を出資する閉鎖型株式会社「国営石油輸送会社カズトランスオイル」が設立された。1998年12月には自然独占の国家登録簿に記載され、幹線パイプラインによる石油輸送と幹線水道による給水が規制対象サービスとなった。

2001年、同社の国有株はカザフスタンの石油ガス輸送国営会社の資本へ移された。2002年2月20日の大統領令第811号により、国営石油ガス会社カザフオイルと石油ガス輸送会社が合併してカズムナイガスが発足し、同社の唯一の株主となった。2004年5月、社名がカズトランスオイル株式会社へ変わっている。

2004年7月、カズムナイガスから合弁ムナイタス北西パイプラインの51%が移管され、同月、中国石油天然気集団の探査開発子会社と折半でカザフスタン・中国パイプライン(KCP)を設立した。KCPは2006年7月にアタス〜アラシャンコウ幹線を、2009年9月にケンキヤク〜クムコル幹線を稼働させ、中国向けの輸送路が完成した。

国外資産では、2008年2月にバトゥミ・インダストリアル・ホールディングスの株式100%を取得してジョージアのバトゥミ石油ターミナルを傘下に収め、バトゥミ港の運営権も得た。2012年10月8日の政府決定第1273号で幹線石油パイプラインの国家オペレーターに指定され、同年12月、KASEで流通取引が始まった。

近年は路線の更新と設備投資が続く。2020年にケンキヤク〜アティラウ線の逆送(リバース)プロジェクトの第1期が完成し、2021年10月にはムナイタスのアマン石油ポンプ場に加熱炉が入って、西部カザフスタンの原油を年600万トンまで逆送できるようになった。2024年12月にはアマン石油ポンプ場の第3期が稼働している。

路線と事業

同社が運営する幹線原油パイプラインは2026年1月1日時点で5,197.347km、これを36か所の石油ポンプ場、61基の加熱炉、容量144万6,000立方メートルのタンク群が支える。積み替えは鉄道の積込設備5か所と、アクタウ港の海上出荷ターミナル(現用3バース)で行う。

輸送の方向は大きく4つに分かれる。第1が国内製油所向けで、アティラウ製油所(AOR)、シムケントのPKOP、パヴロダール石油化学(POCR)、カスピ・ビチューム、アティラウ・ガス化学(AGPZ)に原油を届ける。第2がロシア領を経由する輸出で、ウゼン〜アティラウ〜サマラ幹線を使う。第3がアクタウ港でのタンカー積み出し。第4がほかのパイプライン会社への引き渡しで、KCP(アタス〜アラシャンコウ、ケンキヤク〜クムコル)、ムナイタス(ケンキヤク〜アティラウ)、CPCのカザフスタン区間を運営するCPC-Kが相手になる。

共同支配会社のうち、KCPはカズトランスオイルと中国石油天然気集団系が50%ずつ出資し、アタス〜アラシャンコウ幹線(965.1km)とケンキヤク〜クムコル幹線(794.26km)を保有する。2025年の純利益は270億3,100万テンゲで前年比26%減った。ムナイタスは同社が51%、CNPCの探査開発子会社が49%を持ち、ケンキヤク〜アティラウ幹線(455.10km)を運営する。2025年の純利益は65億7,800万テンゲで、料金改定と輸送量の5.8%増により前年の約2.9倍になった。

水事業も持つ。100%子会社のメイン・ウォーターラインが、西部カザフスタンの無水地帯に水を送るアストラハン〜マンギシュラク幹線水道を運営する。この水道はアティラウ州とマンギスタウ州の唯一の集中給水源で、年間の供給量はアティラウ州向けが1,060万立方メートル、マンギスタウ州向けが1,530万立方メートルにのぼる。給水料金も自然独占の規制対象で、住民・予算機関向けは2025年5月から2026年4月末まで1立方メートル30テンゲ、2026年5月からは247.52テンゲへ引き上げられる予定になっている。

2025年の輸送実績

2025年の同社単体の輸送量は4,512万トン、バトゥミ石油ターミナルを含む連結ベースでは4,703万3,000トンで前年比0.6%増え、過去7年で最大となった。連結の貨物回転量は460億5,700万トンキロで1.9%増えている。

方向別の内訳(同社の幹線パイプライン経由、単位はトン)は次のとおりである。国内製油所向けはアティラウ製油所(AOR)が534万5,000トン、シムケントのPKOPが622万6,000トン、パヴロダール石油化学(POCR)が577万8,000トン、カスピ・ビチュームが69万6,000トン、アティラウ・ガス化学(AGPZ)が7万1,000トンで、合計1,811万6,000トンだった。前年から増えたのはPKOP(49万2,000トン増)とPOCR(31万9,000トン増)である。

輸出と引き渡しでは、ロシア領を通るアティラウ〜サマラ幹線が1,113万4,000トン(前年比75万6,000トン増)、アクタウ港でのタンカー積込が322万6,000トン(同13万4,000トン減)。ほかのパイプライン会社への引き渡しは、KCPのアタス〜アラシャンコウ幹線が1,108万6,000トン、KCPのケンキヤク〜クムコル幹線が853万6,000トン(同92万2,000トン増)、ムナイタスが585万9,000トン(同35万トン増)、CPC-Kが355万9,000トン(同64万9,000トン減)だった。

ロシア領を経由した輸送は、仕向け地別に見るとノヴォロシースクが454万トン、ウスチルガが261万8,000トン、ポーランドのアダモワ・ザスタワが214万6,000トンで、パヴロダール石油化学向けの180万3,000トンもロシア領を通っている。ウスチルガ向けは2023年の420万7,000トンから2年で4割近く減り、ノヴォロシースク向けとアダモワ・ザスタワ向けが増えた。

ロシア産原油の通過輸送も同社の収入源である。2025年は中国向けに1,000万トンを運び、ウズベキスタン向けは3万7,600トンで、2025年12月から輸送が再開された。キルギスへの供給も再開されている。

2026年上半期は幹線パイプライン経由の輸送量が2,291万1,000トンと前年同期を64万3,000トン上回り、石油製品の積み替えを含む連結ベースでは2,363万6,000トン(同56万2,000トン増)となった。関連会社では、カザフスタン・中国パイプラインの輸出向け輸送が43%、ムナイタス北西パイプラインが36%それぞれ増えている。同期間に同社が納めた税は365億テンゲを超えた。中国向けの大動脈であるアタス〜アラシャンコウ幹線は2026年に稼働20年を迎えた。

2012年の国民IPO第1号

サムルク・カズナ傘下企業の株式を段階的に市場へ出す「国民IPO」プログラムで、最初に選ばれたのがカズトランスオイルだった。2012年10月31日の政府決定第1376号でサムルク・カズナ取締役会の決定が承認され、売り出し規模は3,846万3,559株(発行済株式総数3億8,463万5,600株の10%マイナス1株)、価格は1株725テンゲと決まった。調達額は約279億テンゲである。

応募は売り出し量の2倍に達した。購入したのは3万3,989人の国民と、加入者800万人を抱える10の年金基金で、企業や機関投資家ではなく一般市民が中心だった点が当時強調された。12月25日にKASEで流通取引の開始式が行われ、同日、同社は企業の社会的責任に関する国内表彰「パリズ2012」の大賞を受けている。

この構図は現在まで変わっていない。2025年12月31日時点でもカズムナイガスが90%を保有し、10%マイナス1株が市場で流通する。2025年末の株価は1株950テンゲで、年間で15.9%上がった。2024年通期の配当は総額330億7,801万6,514テンゲ、1株あたり86テンゲで、前年より32%多かった。

CPCとの違い

カザフスタンの原油輸出を語ると必ず出てくるカスピ・パイプライン・コンソーシアム(CPC)は、カズトランスオイルとは別の会社であり、別の路線である。混同されやすいので整理しておく。

CPCはロシアとカザフスタン、国際石油会社が参加する国際コンソーシアムで、テンギス油田近くのカザフスタン西部から黒海のノヴォロシースク近郊ユジナヤ・オゼレエフカの海上ターミナルまで、1,511kmのパイプラインを保有・運営する。株主構成はロシア連邦(トランスネフチが受託管理)24%、カズムナイガス19%、シェブロン・カスピアン・パイプライン・コンソーシアム15%、ルクオイル・インターナショナル12.5%、モービル・カスピアン7.5%、ロスネフチ・シェル・カスピアン・ベンチャーズ7.5%、IC CPCカンパニー7%、BGオーバーシーズ2%、エニ2%、カザフスタン・パイプライン・ベンチャーズ1.75%、オリックス・カスピアン1.75%である。輸送能力は2018年の拡張で年6,700万トンに、2019〜2025年のボトルネック解消計画で年8,300万トン超に引き上げられた。

カズトランスオイルとCPCの関係は3つある。第一に、同社はCPCのカザフスタン区間を運営するCPC-Kと保守・修理・緊急対応の契約を結び、他社パイプラインの運転受託という事業区分で収入を得ている。第二に、自社の幹線からCPCの系統へ原油を引き渡す。2025年の引き渡し量は355万9,000トンで前年比15%減った。第三に、親会社のカズムナイガスがCPCの株主である。同社自身はCPCの持ち分を持たない。

したがって、CPCの輸送量や事故のニュースは、カズトランスオイルの業績にそのまま置き換わるものではない。ただしCPCが止まれば行き場を失った原油が同社の系統に回るため、両者は代替関係にある。

料金と規制

国内向けの原油輸送は自然独占サービスで、料金はCRNM(自然独占規制委員会)が承認する。2015年5月の自然独占法改正で、通過輸送と輸出向けの輸送は自然独占の範囲から外れ、これらの料金は会社が自ら定める方式に変わった。

国内向けの料金は2025年1月1日から10月22日まで1トン1,000kmあたり4,461.76テンゲ、10月23日から年末までは4,915.21テンゲだった。2020年から適用されてきた5年間の料金が2025年で切れるため、CRNMは誘因型(インセンティブ)方式で2026年に6,777.76テンゲ、2027年に6,960.9テンゲ、2028年に7,270.83テンゲ、2029年に7,564.99テンゲ、2030年に8,018.58テンゲという水準を承認した。ただし2025年の投資計画が縮小されたことを受け、同社はCRNMと調整のうえ2026年分を自ら4,963.25テンゲへ引き下げている。

輸出向けの料金は2025年1月1日から1トン1,000kmあたり1万1,300テンゲである。通過輸送は、TON-2幹線のカザフスタン区間が1トンあたり2.10ドル、ウズベキスタン向けが27.9ドル。中国向けのロシア産原油は、2025年5月1日からロシア国境〜アタス区間が1トンあたり7.24ドル、アタス〜アラシャンコウ区間が7.76ドルという配分に改められた。区間の長さに比例させるという考え方に基づく変更である。

投資計画も2026年から仕組みが変わった。2021〜2025年の5年計画が終わり、2026年分として491億4,000万テンゲの投資計画がエネルギー省とCRNMの共同命令で承認された。同社は5年一括の承認から年次の承認に移行し、誘因型料金規制の枠内で毎年の投資額を見直す。

業績

2025年通期の連結売上高は3,574億7,800万テンゲで前年比14.6%(455億7,800万テンゲ)増えた。原油輸送収入が367億4,600万テンゲ増えたことが最大の要因で、貨物回転量の増加、輸出料金の引き上げ、中国向けのロシア産原油の通過料金の改定が寄与した。

売上原価は2,864億4,400万テンゲ(9%増)、売上総利益は710億3,500万テンゲ(46%増)、営業利益は426億5,100万テンゲ(21%増)だった。共同支配会社からの持分利益は168億7,000万テンゲで13%減っている。連結純利益は456億3,400万テンゲで7%増え、EBITDAは1,241億9,100万テンゲ(26.5%増)、EBITDAマージンは34.7%となった。

2025年に国庫へ納めた税とその他の義務的支払いは連結で661億テンゲ、従業員向けの社会的支出は44億7,000万テンゲ(14.6%増)、労働安全への投資は62億1,600万テンゲ(8%増)だった。

論点

第一に、輸出路の集中である。カザフスタンの原油輸出は大半がCPC経由で黒海へ出るため、この1本が細ると国全体の生産に響く。2025年はCPCの操業に制限がかかる局面があり、同社は荷主や国外の相手と調整して輸出量の一部をノヴォロシースクとウスチルガの港、アダモワ・ザスタワ受渡点、バクー〜トビリシ〜ジェイハン(BTC)、アタス〜アラシャンコウへ振り替えた。CPCへの引き渡しが15%減り、アティラウ〜サマラが増え、ケンキヤク〜クムコルが12%増えたのは、この振り替えの結果として読める。欧州市場では2025年にポーランドに支店を開設した。

第二に、ロシア経由への依存である。振り替え先として実際に機能した経路の多く(サマラ、ノヴォロシースク、ウスチルガ、アダモワ・ザスタワ)もロシア領を通る。CPCから離れても地理的な依存が消えるわけではない、という点は押さえておく必要がある。純粋な代替路はアクタウ港からのタンカー輸送(2025年は322万6,000トン、前年比4%減)とアタス〜アラシャンコウの東向き(1,108万6,000トン)に限られる。

第三に、料金と投資の関係である。国内向けの料金は誘因型方式に移り、承認された投資計画の額に応じて水準が決まる仕組みになった。実際、2026年の国内料金は投資計画の縮小に伴って6,777.76テンゲから4,963.25テンゲへ下がっている。料金のニュースを読むときは、値上げ・値下げの方向だけでなく、その裏にある投資計画の増減を合わせて見る必要がある。

第四に、輸送量の頭打ちである。国内製油所向けは3社合計で年1,700万〜1,800万トン前後で推移し、大きくは伸びない。増加分は輸出と通過に依存するため、テンギスの拡張やカシャガンの生産量、そしてCPCの稼働状況が同社の取扱量を左右する。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。