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クムトール・ゴールド・カンパニー

クムトール金鉱山の採掘と選鉱。産出物は金の含有率が最大80%のドーレ地金

Kumtor Gold Company CJSC
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

クムトール・ゴールド・カンパニー(KGC)は、キルギス最大の金鉱山クムトールを操業する会社である。国有のキルギスアルティンが全株式を保有する。金の輸出はキルギスの物品輸出の中で最大の項目であり、この一社の生産量と金価格が同国の輸出額、税収、成長率をそのまま左右する。

1990年代にカナダ資本の主導で開発された鉱山だが、2021年にキルギス政府が一時的外部管理を導入して経営権を握り、当時の親会社であるカナダのセントラ・ゴールドとの間で国際仲裁と米連邦破産法第11章の適用申請を含む争いになった。2022年7月、両者は保有株式を交換する形で完全に分離し、鉱山はキルギス側に残った。日本ではあまり知られていないが、資源をめぐる国家と外国投資家の紛争が実際にどう決着したかを示す事例として、中央アジアの投資環境を語るうえで繰り返し参照される。

正式名Kumtor Gold Company CJSC(ЗАО «Кумтор Голд Компани»)
所在鉱山はキルギス・イシククリ州、ビシケクから約350キロ。天山山脈の標高4,000メートル超の永久凍土帯にある。本社はビシケク
事業クムトール金鉱山の採掘と選鉱。産出物は金の含有率が最大80%のドーレ地金
株主キルギスアルティン(国有)が100%。2022年8月にキルギス側へ移った
従業員3,618人(2026年7月31日時点)。うち外国人技術者は8人
売上高14億3,462万ドル(2025年通期、監査済み。前年は9億8,913万ドル)
純利益7億608万ドル(2025年通期。前年は3億9,740万ドル)
総資産23億3,562万ドル(2025年12月31日)
金生産量12,081キロ(2025年)。40万3,558オンス=12.552トン(2024年)
配当3億ドル(2025年期。前年は1億5,130万ドル)
会計監査アーンスト・アンド・ヤング(2025年度財務諸表、2026年3月11日署名)

鉱床と操業

クムトール鉱床は天山山脈中部の東側、標高4,000メートルを超える永久凍土帯にあり、世界でも有数の高標高の金鉱山として知られる。行政上はイシククリ州に属し、首都ビシケクからの距離は約350キロである。金の存在は1920年代から探査の対象になっていたが、鉱床そのものが確認されたのは1978年で、旧ソ連の貴金属・ダイヤモンド総局が1989年に開発の技術経済計算をまとめた。しかし総事業費が9億9,540万ソ連ルーブルに上ると見積もられたため、ソ連時代には着工されなかった。

採掘は露天掘りで、ボーリング、発破、積み込み、運搬という一般的な工程を踏む。掘り出した鉱石は破砕・粉砕したうえで、シアン化物溶液と活性炭を使う炭素浸出法(カーボン・イン・リーチ)で金を回収し、現地でドーレ地金に鋳造する。ドーレの金含有率は最大80%である。

産出したドーレは、KGC・キルギスアルティン・キルギス政府の三者が結んだ金銀売買契約に基づき、キルギスアルティンが買い取ってカラバルタの自社精錬所で精製する。精製された金銀をキルギス国内外で販売する権利はキルギスアルティンが独占的に持つ。つまりKGCは鉱山の操業に専念し、精錬から販売までは親会社が握るという分業になっている。

カメコからセントラへ(1992〜2020年)

独立後のキルギス政府は複数の投資家の提案を検討したうえで、世界最大級のウラン生産者であるカナダのカメコを選んだ。1992年12月4日、トロントで「クムトールゾロト」プロジェクトの基本協定が調印され、事業会社としてクムトール・オペレーティング・カンパニー(KOC)が設立された。1996年に選鉱場の開所式が行われ、翌1997年に商業生産が始まった。

2004年、プロジェクトは再編され、カメコの金部門を切り出す形でカナダのセントラ・ゴールドが設立された。投資協定は同年6月22日に発効し、キルギスアルティンはセントラの大株主として株式を保有することになった。2009年には新条件に関する協定が署名・批准され、2012年には生産設備の増強に3億8,520万ドルという当時の最高額が投じられた。2016年には操業主体がKOCからKGCへ移り、2017年にはキルギス政府、セントラ、KGC、KOCの四者が環境保護と投資に関する戦略協定を結んでいる。

この間、クムトールの操業は繰り返し政治問題になった。氷河の上に廃石を積み上げたことによる環境影響、税負担、契約条件の見直しが争点になり、2012年には議会の国家委員会が設置されて包括的な和解に至った経緯がある。

2021年の外部管理

2021年2月、キルギス議会が新たな国家委員会を設置し、クムトールの操業と過去の税務・環境上の主張を洗い直した。セントラが同年3月に開示した税の請求額は利子と加算税を含めておよそ3億5,200万ドルだったが、その後キルギス側は10億ドルを超える額を主張したとされる。さらにキルギスの裁判所は、氷河上への廃石の堆積による損害としてKGCにおよそ31億ドルの支払いを命じる判断を下した。セントラはこれらの請求をいずれも否認している。

同年5月、議会は企業に対する一時的外部管理を可能にする法律を可決した。セントラの説明では、この法律は接収の数日前に急いで通されたもので、5月15日にキルギス政府が鉱山、事務所、人員、コンピューター、書類の掌握に動いた。キルギス側の記録では、内閣の2021年5月17日付命令第2-r号によりKGCに一時的外部管理が導入されたとされている。外部管理者に就いたテンギズ・ボルトゥルクは、その直前までセントラの取締役だった人物である。

セントラは5月14日に国際仲裁を申し立て(のちにキルギスアルティンも相手方に追加)、6月1日にはKGCとKOCが米ニューヨーク州南部地区連邦破産裁判所に連邦破産法第11章の適用を申請した。世界規模の自動的停止によってキルギス側のさらなる強制執行を抑える狙いだった。またセントラはオンタリオ州上級裁判所にボルトゥルクの忠実義務違反を訴え、2022年2月15日に同社の機密情報の使用・開示を恒久的に差し止める命令を得ている。会計上、セントラは2021年第2四半期に鉱山の支配を失ったと判断してKGCを連結から外し、支配喪失に伴う損失9億2,635万ドルを計上した。

2022年の和解と株式交換

2021年末から交渉が始まり、2022年4月4日にキルギス共和国、キルギスアルティン、セントラ・ゴールドの三者が包括的な和解合意(グローバル・アレンジメント・アグリーメント)に署名した。骨子は、キルギスアルティンが保有するセントラ株を全てセントラに引き渡して消却させ、その対価としてセントラがキルギスの子会社2社(KGCとKOC)の全持分、すなわち間接的にクムトール鉱山をキルギス側へ渡すというものである。復元義務と環境上の債務は、キルギスアルティンとキルギス共和国がすべて引き受けることとされた。

対象となったセントラ株は7,740万1,766株で、持株比率にしておよそ26.0%、2022年4月1日のトロント証券取引所の終値12.56カナダドルで換算して約9億7,200万カナダドルに相当した。これに加えてセントラからおよそ3,600万ドルの現金が支払われることになった(一部はキルギスアルティンが負担するカナダの源泉税として留保)。さらにセントラとKGCの間の会社間債権債務については、閉鎖時にセントラが5,000万ドルをKGCへ支払い、残額はKGCが直前に宣言する配当と相殺する形で整理された。

セントラの株主総会は2022年7月25日にこの取引を承認し、7月29日に取引が完了した。同社の発表によれば、支払われた現金の合計はおよそ8,500万ドルで、7,740万1,766株が買い取られて消却された結果、発行済株式数は2億2,008万3,541株になった。当事者は互いにクムトールに関する一切の請求を最終的に放棄し、キルギスアルティンが指名していた2人の取締役はセントラの取締役会を辞任、両者の株主間協定も終了した。国際仲裁は当事者の共同申立てにより2022年第4四半期に終結している。キルギス側では、2022年8月23日付の内閣命令第446-r号により一時的外部管理の手続きが終了し、同日、唯一の株主となったキルギスアルティンの決定でKGCの取締役会が新たに構成された。

国有化後の業績

キルギス側に移った後のKGCは、監査済みの財務諸表を自社サイトで公表している。2025年12月期の売上高は14億3,462万ドル(前期9億8,913万ドル)、営業利益6億7,769万ドル、当期純利益7億608万ドル(前期3億9,740万ドル)だった。同年末の総資産は23億3,562万ドル、自己資本は21億5,850万ドル、現金及び現金同等物は4億785万ドルである。監査はアーンスト・アンド・ヤングが担当し、2026年3月11日付で意見が付されている。関連当事者との取引額が大きいことが強調事項として記載されている。

2025年の金生産量は12,081キロだった。2024年は40万3,558オンス(12.552トン)で、平均販売価格は1オンスあたり2,460ドルである。2025年の増益は生産量ではなく金価格の上昇によるところが大きい。2026年1〜6月の売上高は7億3,273万ドル、純利益は4億1,894万ドルだった。

国家財政への寄与は同社と政府が繰り返し公表している。2022年1月から2026年6月までの累計で、税と義務的支払いとして12億3,322万ドルを納め、売上高は49億9,196万ドル、純利益は21億9,668万ドル、唯一の株主であるキルギスアルティンへの配当は7億4,130万ドルに達した。2026年上半期だけで190億ソムを国庫に納めている。ジャパロフ大統領は2026年2月の演説で、2021年から2025年までのクムトールの売上高が51億1,500万ドル、税と義務的支払いが11億7,600万ドルに上り、1994年以降の配当が1億ドルにとどまっていたのに対し直近4年間で4億4,100万ドルになったと述べた。

鉱山の将来と関連事業

露天掘りの深部化が進むにつれて剥土量が増え、氷河への影響も批判されてきたため、同社は坑内採掘への移行を進めている。2025年8月27日、ジャパロフ大統領が出席して坑内採掘プロジェクトの起工式が行われた。同氏の説明では、このプロジェクトの操業期間は17年、国の埋蔵量登録に計上された地質学的埋蔵量は金147トンで、廃石の過剰な掘削を避けられる点が環境上の利点とされる。露天採掘は既存の採掘場で並行して続けられる。

選鉱後の堆積物(テーリング)から金を回収する事業も準備されている。キルギスアルティンの説明によれば、既存のテーリングには121トンを超える金が含まれており、環境改善と資源回収を同時に狙う位置づけである。2025年12月に住民説明の手続きを終え、2026年3月にはパラメータ確認用の設備を導入した。

KGCはクムトール以外の案件にも資金を出している。イシククリ州ジェティオグズ地区のトゴロク金鉱床は1978年に発見された鉱床で、KOCが2023年8月8日に開発免許を取得し、KGCの資金で埋蔵量確認の作業が再開された。40地点で9,500メートルの掘削を行い、約1万1,000点の試料を採取している。アクシイラク村から35キロの送電線を引き、サリベリ地区に10メガワットの変電所と年間50万トンの処理能力を持つ選鉱場を建設する計画で、2026年に初出鉱、翌年に最初のドーレ地金の産出を見込む。国家埋蔵量委員会の登録には金19,928.5キロが計上された。周辺のジャンガルト地区でも1万6,000メートルを超える掘削が進んでいる。

2026年5月25日には、それまでキルギスアルティンが唯一の株主だったKOCの株式100%がKGCへ移された。トゴロクの開発とジャンガルトの探査を担うKOCについて、KGCが機動的に判断できるようにするための措置と説明されている。このほか、大型鉱山機械のタイヤを再生するトクモクの工場も同社の関連事業として運営されている。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。