解説 · 2026年8月時点
キルギス・トー・タシュ(ОАО «Кыргыз Тоо-Таш»、「キルギスの山の石」の意)は、チュイ州トクモク市にある建材メーカーである。自社の採石場から花崗岩、大理石、石灰岩(貝殻石灰岩)を採り、切断・加工・研磨して外装タイルにする。磁器質タイルや砂利・砕石も製造する。イタリア製の設備を導入した石材加工が中核で、鉄道の引き込み線と自社トラック隊を持つ。
工場の歴史は1960年代のソ連期にさかのぼる。当時は全ソ連的な位置づけを持ち、ソ連各都市に石材を供給していた。ビシケクの公共建築の6割以上が同社の石材(花崗岩、大理石、貝殻石灰岩、砕石)を使って建てられたとされる。生産は近代化され、輸出にも向けられている。
| 正式名 | ОАО «Кыргыз Тоо-Таш»(Kyrgyz Too-Tash OJSC) |
|---|---|
| 所在地 | キルギス・チュイ州トクモク市工業地区(郵便番号724976) |
| 事業 | 建設用資材の製造。天然石の切断・加工・研磨(花崗岩、大理石、石灰岩)、磁器質タイル、砂利・砕石 |
| 設立 | 工場の起源は1960年代のソ連期 |
| 所有 | 2025年4月に国有財産管理国家庁の管理下に移されたと国家安全保障委員会(ГКНБ)が発表 |
| 上場 | キルギス証券取引所(KFB)に2015年9月15日上場。2021年2月26日にカテゴリーCへ移行。時価総額2億5,878万ソム(2026年8月21日時点) |
| 発行済株式 | 517万5,553株(直近約定価格50ソム) |
| 財務 | 売上高・利益は公表されていない。証券取引所への提出書類は2024年第3四半期分が最新 |
事業
証券取引所への届出では、業種は「製造」、事業内容は「建設用資材の製造」とされている。所在地はトクモク市の工業地区で、ビシケクから東へおよそ60キロ、チュイ渓谷の東寄りに位置する。ここはソ連期に工業都市として整備された土地で、鉄道と幹線道路の双方に近い。
石材の加工は、原石の切断、表面の研磨、規格寸法への裁断という工程を踏む。イタリア製の石材加工機を備え、月産で3万平方メートルを超える外装タイル(大理石、石灰岩、花崗岩)を出せるとされる。原料は自社の採石場から供給され、洗浄砕石やスクリーニング材も製品に含まれる。
販売は国内にとどまらず、カザフスタン、ロシアをはじめとする独立国家共同体(CIS)諸国への輸出も行っているとされる。石材は重量あたりの単価が低く輸送費が効くため、鉄道の引き込み線を持つことが輸出の前提になっている。
立地
トクモクはチュイ州東部の都市で、ビシケクから東へおよそ60キロ、カザフスタン国境にも近い。ソ連期には工業都市として整備され、ガラス、繊維、建材の工場が置かれた。周辺の山地から石材と骨材を採り、鉄道でチュイ渓谷の各都市へ送る配置になっている。
石材業は原料の産地に立地が縛られる。花崗岩、大理石、貝殻石灰岩の採石場を自社で持ち、そこから工場までの距離が短いことが同社の基本的な条件である。加工した外装タイルは重量物であるため、鉄道の引き込み線とトラック隊の有無が輸送費を左右する。
キルギスの建材市場では、セメントは南部のカント工場や南キルギス・セメントなどが供給し、石材と骨材はチュイ渓谷の複数事業者が分け合う。同社は天然石の加工という比較的付加価値の高い分野に位置し、住宅の外装、公共建築の内外装、記念建造物に製品を出している。
所有権の移転
2025年4月22日、キルギス国家安全保障委員会(ГКНБ)は、トクモク市にある同社の工場を国の管理下、具体的には国有財産管理国家庁の帳簿に移したと発表した。同委員会の説明によれば、これは違法に民営化された産業・社会施設を摘発して国有に戻す取り組みの一環であり、犯罪収益の合法化(資金洗浄)を理由に登録された公判前手続きのなかで行われた捜査・作戦活動の結果だという。
この発表は複数のキルギス媒体が同日付で伝えた。移転後の株主構成、国が保有する持分の比率、経営体制の変更については、公表資料からは確認できない。
証券取引所の開示欄には、2026年3月25日付で「取締役会構成の変更」が登録されている。所有権の移転後に経営陣が入れ替わったことを示唆するが、届出の中身は公開されていない。
上場と開示
株式は2015年9月15日にキルギス証券取引所へ上場された。当初はより上位の区分にあったが、2021年2月26日に普通株が公式リストのカテゴリーCへ移された。カテゴリーCは上場基準がもっとも緩い区分で、格下げは開示や財務要件を満たせなくなったことを意味する。
2026年8月21日時点で、直近約定価格は50ソム、上場証券数は517万5,553株、時価総額は2億5,878万ソムと表示されている。ただし取引はごく薄く、この数字を企業価値として扱うことはできない。
証券取引所の情報開示欄に置かれた貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、監査報告書は、いずれも2024年第3四半期(2024年10月31日掲載)が最新である。2025年以降の財務情報は公表されていない。したがって売上高、利益、従業員数は確認できない。
読み方の注意
同社について公開資料から確認できるのは、所在地、事業内容、上場の履歴、そして2025年4月の所有権移転の発表である。生産量、売上高、利益、従業員数は現在いずれも公表されていない。月産3万平方メートル超という数字は、国家安全保障委員会の発表を伝えた報道に載ったもので、同社自身の開示ではない点に注意が必要である。
証券取引所の情報開示欄への提出が2024年で止まっていることは、それ自体が同社の状態を示す情報にあたる。上場企業には四半期ごとの開示義務があり、提出が滞れば区分の引き下げや上場廃止の対象になりうる。所有権の移転を挟んで開示体制が整っていない可能性がある。
参考資料
- ОАО Кыргыз Тоо-Таш — Кыргызская фондовая биржа(上場情報と情報開示欄) ↗
- На баланс государства передан завод по производству керамо-гранитных плит в Токмоке — Акчабар(2025年4月22日。国家安全保障委員会の発表を伝えた記事) ↗
- Листинг — Кыргызская фондовая биржа(KFB、2026年8月21日時点) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。