解説 · 2026年8月時点
キルギスコメルツ銀行(Кыргызкоммерцбанк、KKB)は、日本の上場企業HSホールディングスが過半を保有するキルギスの商業銀行である。前身は1989年10月に登記された「キルギスアフトバンク」で、2002年から2015年まではカザフスタンのカザコメルツ銀行の子会社だった。2017年に当時の澤田ホールディングス(現HSホールディングス)が増資を引き受けて52.90%を取得し、現在に至る。日本の投資家が過半を持つ中央アジアの銀行は数が少なく、この点で特異な位置にある。
2025年12月期の連結総資産は76億6,850万ソムで、前年の83億5,063万ソムから縮小した。自己資本は6億6,132万ソム、累積損失は5億3,869万ソムに達しており、監査人は2025年度の監査報告書で継続企業の前提に関する注記へ注意を促す「強調事項」を付している。規模の面ではキルギスの銀行のなかで小さい部類にあたる。
| 正式名 | ОАО «Кыргызкоммерцбанк»(Kyrgyzkommertsbank OJSC、略称ККБ/KKB) |
|---|---|
| 創業 | 1989年10月に「キルギスアフトバンク」として登記。国立銀行の免許登録簿への記載は1991年12月13日(免許番号010) |
| 本店 | キルギス・ビシケク市ショポコフ通り101 |
| 支店 | 3(2026年8月14日時点、キルギス国立銀行の登録簿) |
| 筆頭株主 | 日本のHSホールディングス(HS Holdings Co., Ltd.)が52.904% |
| 総資産 | 76億6,850万ソム(2025年12月31日時点、IFRS連結) |
| 顧客貸出 | 42億9,450万ソム(同) |
| 顧客預金 | 56億9,304万ソム(同) |
| 自己資本 | 6億6,132万ソム(同) |
| 授権資本 | 12億ソム(2025年12月31日時点。前年は10億ソム) |
| 監査人 | ОсОО «Форвис Мазарс Аудит»(Forvis Mazars)。2025年度の監査報告書は2026年4月2日付 |
| 上場 | キルギス証券取引所(KFB) |
沿革
1989年10月、公開型株式会社「キルギスアフトバンク(АК «Кыргызавтобанк»)」として登記された。キルギス国立銀行の免許登録簿への記載日は1991年12月13日で、これは現存するキルギスの銀行のうち最も早い日付である。
2002年6月、カザフスタン最大級の金融機関だったカザコメルツ銀行がキルギスアフトバンクの株式72.35%を取得し、同行は子会社となった。同年12月に持分を73.8%へ引き上げるとともに、行名を「カザコメルツバンク・キルギスタン」へ改め、国立銀行から国内・外貨建て業務の新しい免許を受けた。2011年12月までにカザコメルツ銀行の持分は95.75%に達した。
2015年2月、カザコメルツ銀行は95.75%の株式を個人(ママケエフ氏)へ売却した。同年3月27日の株主総会の決定により行名は「キルギスコメルツバンク」となり、5月27日に法務省での再登記、6月17日に国立銀行の新しい免許交付が行われた。
2017年6月、東京証券取引所JASDAQに上場していた日本の澤田ホールディングス(Sawada Holdings Co., Ltd.)が、同行の第三者割当増資を引き受けて52.90%を取得した。同社はのちにHSホールディングスへ商号を変更している。2026年8月時点の株主構成は、HSホールディングスが52.904%、その他の法人・個人が47.096%である。
事業
同行は預金の受け入れ、消費者ローンの供与、法人・個人の決済と現金業務、有価証券・外国為替・デリバティブ取引、両替、クレジットカードと決済カードの発行を行う。国際決済ネットワークではVisa、Mastercard、UnionPay Internationalの各社で最上位のプリンシパル・メンバー資格を持ち、Visa、Mastercard、Maestro、American Express、UnionPay、そして国内カードのエルカルトを扱う。
2008年3月7日の預金保護法(2010年3月3日改正)に基づく国家預金保険制度の参加行で、2009年8月12日付の参加行登録簿に第03-09号で登録されている。2016年2月には国立銀行が発行する精錬済み計量地金を扱う貴金属業務の追加免許を得た。
2021年12月、カード決済の処理をキルギス国内の自社プロセシングへ移した。2022年には映像を使った非対面の口座開設・与信サービス(ビデオバンキング)を導入し、来店なしでカード発行、預金開設、融資と分割払いの契約ができる体制を整えた。国立銀行の登録簿によれば、2026年8月14日時点の支店数は3である。
財務
2025年12月31日時点の連結財政状態計算書(IFRS)によれば、総資産は76億6,850万ソムである。内訳は、現金と国立銀行預け金が14億9,305万ソム、他行への預け金が3億7,990万ソム、投資有価証券が6億5,477万ソム、顧客貸出が42億9,450万ソム、有形固定資産・無形資産が4億823万ソムなどである。前年(83億5,063万ソム)から資産は8%あまり縮んだ。
負債は70億718万ソムで、うち顧客預金が56億9,304万ソム、その他の借入が9億636万ソム、レポ契約が2億234万ソムである。資本は6億6,132万ソムで、授権資本12億ソムに対して累積損失が5億3,869万ソム立っている。授権資本は2024年末の10億ソムから2億ソム増資されたが、前年末の資本7億5,320万ソムからは減少した。差し引きで、2025年に約2億9,200万ソムの損失を計上した計算になる。
受取利息は8億6,978万ソム、支払利息は4億3,708万ソムだった(前年はそれぞれ8億4,377万ソム、5億2,788万ソム)。監査人のフォルビス・マザーズは、2025年度の監査報告書(2026年4月2日付)で無限定意見を述べたうえで、注記2「作成の基礎」の「継続企業の前提」の項に記載された条件が同グループの継続能力に疑義を生じさせうるとして、強調事項の段落を設けた。意見の修正ではないが、読み手が押さえておくべき点である。
参考資料
- О банке — ОАО «Кыргызкоммерцбанк»(公式サイト) ↗
- История — ОАО «Кыргызкоммерцбанк»(公式サイト) ↗
- Консолидированная финансовая отчетность ОАО «Кыргызкоммерцбанк» за 2025 год по МСФО(監査人Forvis Mazars、2026年4月2日) ↗
- Список коммерческих банков Кыргызской Республики — キルギス国立銀行(2026年8月14日時点) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。