解説 · 2026年8月時点
キルギスネフチガス(Kyrgyzneftegaz)は、キルギスの石油・天然ガスの探鉱と生産を担う国有支配下の企業である。本社は南部ジャララバード州のコチコルアタにあり、フェルガナ盆地の北縁に広がる油ガス田群を操業する。探鉱、掘削、採掘、精製、販売という全工程を自前で持つ同国唯一の事業者である。
キルギスは石油・ガスの産出が乏しく、燃料の大半をロシアとカザフスタンからの輸入に頼る。同社の生産量は国内需要のごく一部しか賄えないが、国内で唯一の上流事業者であることから、資源政策と燃料価格の議論では必ず名前が挙がる。株式はキルギス証券取引所に上場しており、四半期ごとの財務諸表を自社サイトで公表している数少ない国有系企業でもある。
| 正式名 | Kyrgyzneftegaz OJSC(ОАО «Кыргызнефтегаз») |
|---|---|
| 設立 | 同社は1952年を創立年とする。前身は1953年にコチコルアタに置かれた石油採掘管理局「キルギスネフチ」。1997年に株式会社へ改組 |
| 本社 | キルギス・ジャララバード州コチコルアタ市レーニン通り44番 |
| 事業 | 石油・天然ガスの探鉱、採掘、精製、販売。探鉱から販売までの全工程を担う国内唯一の企業 |
| 操業地域 | ジャララバード州とバトケン州 |
| 株主 | 国有財産管理国家庁86.17%、社会基金3.92%、法人1.18%、個人8.73% |
| 授権資本 | 44億8,310万ソム。発行済株式は24,202,862株 |
| 売上高 | 56億3,261万ソム(2024年通期)。2025年1〜9月は40億2,090万ソム |
| 純利益 | 26億2,022万ソム(2024年通期)。2025年1〜9月は17億7,276万ソム |
| 総資産 | 199億6,587万ソム(2024年12月31日)。233億9,241万ソム(2025年9月30日) |
| 従業員 | 2,733人(2025年6月1日時点、平均月額賃金49,280.2ソム) |
| 稼働坑井 | 石油857本、ガス19本(2025年7月1日時点) |
| 免許 | 開発用14件、探鉱用6件 |
| 配当 | 国庫へ6億1,820万ソム(2024年期。1株あたり29.6ソム) |
| 上場 | キルギス証券取引所カテゴリーB。株価260ソム、時価総額62億9,274万ソム(2026年8月時点) |
キルギスの石油の歴史と会社の成り立ち
キルギス領内で石油の産出が記録されたのは19世紀80年代で、マイリサイとキチクマイの谷でわずかな量の石油とオゾケライト(地蝋)が採られていた。産業としての始まりは1901年である。政府の資金でレオノフ技師の指揮のもとに掘られた「官営」第0号探鉱井がマイリサイ鉱床を掘り当て、5,000トンの石油を産出し、1915年まで生産が続いた。1909年には英国資本がマイリサイの鉱区を買い取ってフェルガナ石油業組合を設立したが、ロシア最大の石油独占体であるノーベル兄弟商会との競争に敗れ、1914年に活動を停止した。
本格化したのはソ連期である。1930年にマイリサイの探査が再開され、チャンギルタシュ・テケベリ地区でも探鉱が始まった。1932年にチャンギルタシュの第2号井が深度250メートルで工業規模の噴油を得て、古第三系第V層の含油性が確認された。1939年には油井が40本、産油量は3,800トンに達し、同年に鉱場は32キロの送油管でテンテクサイ駅に接続され、鉄道でウズベキスタンのアルティアリク製油所へ運ばれるようになった。1942年の産油量は2万8,200トンだった。
1948年にココタシュ鉱床が開発され、1950年にはイズバスケント地区の古第三系から工業規模の石油が得られた。1951年、チャンギルタシュ、マイリス、イズバスケントの各鉱場を基礎として掘削事務所第1号が設けられ、1952年からは石油労働者の街コチコルアタの建設が始まった。1953年にコチコルアタで石油採掘管理局「キルギスネフチ」が組織され、これが現在の同社の直接の前身にあたる。1997年5月に株式会社キルギスネフチガスへ改組された。
現在の事業
現在の操業はジャララバード州とバトケン州で、既存の油ガス田の生産に加え、未開発鉱床の開発準備と探鉱を進めている。2025年7月1日時点で稼働している坑井は石油857本、ガス19本、保有する免許は開発用14件と探鉱用6件である。
同社は自社サイトで、直近10年間の産油量が年およそ7万トンで推移してきたと説明している。生産の維持には老朽化した坑井の補修と新規掘削が欠かせず、2024年からは民間のKNG・ハイドロカーボンズと契約を結び、マイルースーIV・東イズバスケント鉱床の第III〜XXIII層で新規坑井の掘削、休止・放置坑井の大規模補修、増産法の適用に取り組んでいる。
2026年には、バトケン州でキルギス・タジキスタン国境の画定が進んだことを受けて、同州での掘削作業を活発化させる方針が示された。国境未画定を理由に長く手が付けられなかった地域である。
所有と財務
発行済株式は24,202,862株で、国有財産管理国家庁が86.17%、社会基金が3.92%、法人が1.18%、個人が8.73%を保有する。授権資本は44億8,310万ソムである。株式はキルギス証券取引所のカテゴリーBに上場し、株価260ソムに基づく時価総額は62億9,274万ソムだった(2026年8月時点)。
2024年12月期は、売上高56億3,261万ソム(前期57億2,043万ソム)、売上総利益35億9,841万ソム、営業利益30億2,934万ソム、当期純利益26億2,022万ソム(前期26億2,131万ソム)だった。同年末の総資産は199億6,587万ソムで前年末の128億9,733万ソムから急増しており、有形固定資産の帳簿価額が77億3,123万ソムから128億644万ソムへ、長期投資が55万ソムから27億4,447万ソムへ増えたことが主因である。自己資本は169億4,917万ソム、負債合計は30億1,670万ソムで、負債の比率は低い。2024年期の配当は国庫向けに6億1,820万ソム、1株あたり29.6ソムだった。
2025年1〜9月は売上高40億2,090万ソム(前年同期42億80万ソム)、当期純利益17億7,276万ソム(同21億9,473万ソム)と減収減益で、9月末の総資産は233億9,241万ソムだった。四半期報告と年次の会計報告は同社サイトで公開されており、2024年12月期の財務諸表には独立監査人「ウラン・ヌル・アウディト」の意見が付されている。
読むときの注意
同社が公表しているのはキルギスの会計基準に沿った様式の財務諸表であり、国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表ではない。埋蔵量についても、国際的な分類(JORCやSPE-PRMS)による評価は公表されていない。他国の上場エネルギー企業と横並びで比較するには限界がある。
また、同社の産油量はキルギスの燃料需要のごく一部にとどまる。国内の石油製品供給を左右するのは輸入と、中国資本などが運営する製油所の稼働状況であり、同社の生産量の増減がそのまま国内価格に反映されるわけではない。
参考資料
- «Кыргызнефтегаз» ААК(公式サイト) ↗
- Акционерлерге — «Кыргызнефтегаз» ААК(株主構成、授権資本、坑井数、従業員数) ↗
- Биз жөнүндө — «Кыргызнефтегаз» ААК(事業概要と産油量) ↗
- Бөлүмдөр — «Кыргызнефтегаз» ААК(キルギス石油業の沿革) ↗
- 2024年年次会計報告(貸借対照表・損益計算書) ↗
- 2025年第3四半期会計報告 ↗
- 2024年度独立監査人の意見 ↗
- Инвесторлор — «Кыргызнефтегаз» ААК(KNG・ハイドロカーボンズとの契約) ↗
- Листинг — Кыргызская фондовая биржа(上場銘柄と時価総額) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。