解説 · 2026年8月時点
O!バンク(ОАО «О!Банк»)は、キルギスの携帯通信ブランド「O!」と同じ名を冠する商業銀行である。前身はカザフスタン最大手ハルィク銀行のキルギス子会社「ハルィク・バンク・キルギスタン」で、2024年に国際投資グループVisor International DMCCへ売却されたのを機に改称した。
銀行としての免許登録は1999年4月13日にさかのぼり、キルギスの26行のうち古い部類に入る。支店は10、資産規模はエコノミストの区分で200億〜800億ソムの階層にあたる。モバイルバンキングは携帯通信事業者「O!」の公式アプリ「Мой О!」のなかで提供されており、通信と銀行を一つのアプリに束ねる構造をとっている。
| 正式名 | ОАО «О!Банк»(O!Bank OJSC) |
|---|---|
| 前身 | ОАО «Халык Банк Кыргызстан»(カザフスタンのハルィク銀行のキルギス子会社) |
| 売却 | 2024年4月18日、キルギス国立銀行がVisor International DMCCへの売却の完了を承認 |
| 改称 | 2024年9月12日に法務省で再登記。2024年9月17日に国立銀行が新しい免許第044号を交付 |
| 免許登録 | 免許登録簿への記載は1999年4月13日 |
| 本店 | キルギス・ビシケク市オロズベコフ通り45 |
| 支店 | 10(2026年8月14日時点、キルギス国立銀行の登録簿) |
| SWIFT | MAKAKG22 |
| 経営陣 | 2026年8月11日、国立銀行がサイモン・アンドレアス・ミュンター氏の頭取就任を承認 |
| 資産規模 | 200億〜800億ソムの階層に属する(2026年6月末、Economist.kgの集計) |
沿革
キルギス国立銀行の免許登録簿によれば、同行の免許第044号の登録日は1999年4月13日である。長らくカザフスタンのハルィク銀行のキルギス子会社「ハルィク・バンク・キルギスタン」として営業していた。
2024年4月18日、キルギス国立銀行はハルィク・バンク・キルギスタンの国際投資グループVisor International DMCCへの売却が完了したことを承認した。同年8月12日、株主が行名を「O!Bank」へ変更することを決議した。
2024年9月12日、同行は商号変更に伴いキルギス共和国法務省で再登記を受けた。新しい名称は、国家語で「О!Банк» ачык акционердик коому」、公用語で「открытое акционерное общество «О!Банк»」、英語で「The open joint-stock company «O!Bank»」である。同月17日、国立銀行は改称と再登記を受けて新しい免許第044号を交付した。同行はハルィク・バンク・キルギスタンの権利義務の承継者として、顧客と取引相手に対するすべての義務を引き続き履行するとしている。
「O!」ブランドとの結びつき
「O!」はキルギスの携帯通信事業者ヌール・テレコム(NurTelecom)が使うブランドである。同行のモバイルバンキングは独立したアプリではなく、この通信事業者の公式アプリ「Мой О!(マイ・オー)」のなかで提供されている。同行のウェブサイトが案内するアプリのインストール先も、Google Playのパッケージ識別子がヌール・テレコムのものである。
通信事業者のアプリに銀行機能を組み込む形は、加入者基盤をそのまま金融サービスの顧客基盤に転用できる利点がある。キルギスは携帯電話の普及率が高い一方で銀行口座の保有率が相対的に低いため、通信を入口にした金融サービスの拡大余地は大きい。
コルレス網ではカザフスタンのハルィク銀行、米国のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン、ドイツのランデスバンク・バーデン=ヴュルテンベルク、中国工商銀行アルマトイ支店などを経由する経路を維持している。前身がハルィク銀行の子会社だった名残が、決済網の構成に残っている。
経営
2026年8月11日、キルギス国立銀行はサイモン・アンドレアス・ミュンター(Саймен Андреас Мюнтер)氏の頭取(правление議長)就任を承認した。取締役会が同氏を頭取に選ぶ決定をしたのは2026年春である。それまで同行を率いていたアリヤ・チヌィバエワ氏は頭取を退き、取締役会に入った。
ミュンター氏はノルウェー経済高等学院(NHH)のMBAを持ち、銀行・金融サービス・技術管理の分野で30年以上の経験がある。HSBCでキャリアを始め、ノルウェー、英国、トルコ、チェコ、チャネル諸島、インド、カザフスタンで管理職を務めた。ANZでは4か国のオフショア・サービスセンターを統括して1万人超の組織を率い、ノルデアではリテール部門の最高執行責任者として1,000万人超の顧客を支える基盤、不正防止、リスク管理を担当した。同行の取締役会には独立取締役として加わっており、2026年3月30日の年次株主総会でその任を解かれたうえで執行側に移った。
同行は取締役会の下に監査委員会、リスク管理委員会、指名・報酬委員会を置き、コーポレート・ガバナンス局が取締役会の議事運営を担う体制を整えている。
規模
経済専門紙エコノミストの集計によれば、2026年6月末時点で同行は資産200億〜800億ソムの階層に属する。同じ階層にはデミル・キルギス・インターナショナル銀行、コンパニオン銀行、FINCA銀行、ユーラシア貯蓄銀行が入る。上位3行(エルディク銀行、Aバンク、Mバンク)とは一桁の差がある。
総資産、貸出残高、預金残高、純利益の絶対額は公式サイトでは公表されていない。「Финансовая отчетность(財務報告)」の欄はあるが、規模を示すまとまった数字は掲示されていない。
読み方の注意
同行の免許登録日は1999年4月13日だが、これは前身から引き継いだものである。ハルィク・バンク・キルギスタンとして営業していた期間、Visor International DMCCへの売却、O!Bankへの改称という三つの段階を分けて理解する必要がある。2024年9月17日に交付された免許も、番号は第044号のまま引き継がれている。
また、通信ブランド「O!」と銀行が同じ名を使うことは、両者の資本関係を直接に示すものではない。同行の公表資料が明らかにしているのは、モバイルバンキングが通信事業者ヌール・テレコムのアプリのなかで提供されているという事実である。持株構造の詳細は公表されていない。
参考資料
- Официально — «Халык Банк Кыргызстан» теперь O!Bank — ОАО «О!Банк»(公式サイト、2024年) ↗
- Нацбанк согласовал Саймена Мюнтера на должность главы правления O!Bank — Economist.kg(2026年8月12日) ↗
- Список коммерческих банков Кыргызской Республики — キルギス国立銀行(2026年8月14日時点) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。