ORGANIZATION · COMPANY

パミール・エナジー

パミール・エナジー(Pamir Energy Company)は、タジキスタン東部のゴルノバダフシャン自治州(GBAO)で発電・送電・配電・小売のすべてを担う電力会社である。2002年にタジキスタン政府とアガ・カーン経済開発基金(AKFED)の官民連携(PPP)として設立された、同国で最初のPPP事業として知られる。

Pamir Energy Company

解説 · 2026年8月時点

パミール・エナジー(Pamir Energy Company)は、タジキスタン東部のゴルノバダフシャン自治州(GBAO)で発電・送電・配電・小売のすべてを担う電力会社である。2002年にタジキスタン政府とアガ・カーン経済開発基金(AKFED)の官民連携(PPP)として設立された、同国で最初のPPP事業として知られる。

GBAOはパミール高原の山岳地帯にあり、タジキスタンの国家送電網につながっていない。ソ連の解体で補助金付きのディーゼル燃料が絶たれ、内戦で送電設備も壊れたため、2002年の時点で州内で電気が届いていたのは13%にすぎなかった。同社の事業はこの状態からの再建であり、2025年までにほぼ全人口が電気を使えるようになった。タジキスタン全土の発配電がバルキ・トジクとその分割会社の担当であるのに対し、GBAOだけは同社の受け持ちである点は、国の電力制度を読むうえで押さえておきたい。

正式名Pamir Energy Company
設立2002年(タジキスタン政府とアガ・カーン経済開発基金=AKFEDの官民連携)
事業ゴルノバダフシャン自治州(GBAO)における発電・送電・配電・小売
コンセッションGBAO全域への電力供給に関する25年の独占コンセッション(2027年まで)
発電設備小中規模水力発電所11か所、合計出力4万3,400キロワット(130キロワット〜2万8,000キロワット)。2017年時点
年間発電量約1億7,000万キロワット時(2017年時点)
送配電網4,300キロメートルを改修。送配電損失を39%から12%へ低減(2017年時点)
新設セブゾル水力発電所(1万1,000キロワット、2025年6月26日運転開始)
供給人口GBAO内約22万人。ほかにアフガニスタン北部へ越境供給
出資・融資AKFED、国際金融公社(IFC)、世界銀行(IDA)、スイス経済省経済協力開発局(SECO)

設立とコンセッション

2002年、タジキスタン政府とAKFEDの官民連携として設立され、GBAO全域への電力供給に関する25年の独占コンセッション(2027年まで)を得た。資金はAKFED、国際金融公社(IFC)、世界銀行の国際開発協会(IDA)が拠出し、スイス経済省経済協力開発局(SECO)が支援した。

同社は11か所の小中規模水力発電所を改修・新設し、4,300キロメートルの送配電設備を更新した。この結果、送配電損失は39%から12%へ下がった。発電所の規模は130キロワットから2万8,000キロワットまでで、合計出力は4万3,400キロワット、年間発電量はおよそ1億7,000万キロワット時である(いずれも2017年時点)。10か所は同社の地域系統に接続され、2か所はミニグリッドにつながる。

セブゾル水力発電所(2025年)

2025年6月26日、GBAOのロシュトカラ地区で出力1万1,000キロワットのセブゾル水力発電所が運転を開始した。標高2,500メートル超に立地する流れ込み式で、約3.7メガワットの立軸ペルトン水車3台を備え、設計流量は毎秒12立方メートル、有効落差は110メートル超。年間発電量は7,600万キロワット時超、二酸化炭素の削減効果は年4万5,000トン超と見込まれている。

事業はドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)の資金にドイツ復興金融公庫(KfW)を通じた欧州連合の協調融資を組み合わせて実施され、施工と運営はパミール・エナジーが担った。同発電所は2023年3月、水力発電サステナビリティ基準(Hydropower Sustainability Standard)の認証を世界で初めてゴールド評価で取得している。

セブゾルの発電はGBAOの系統に同期して域内22万人の電力供給を安定させるほか、アフガニスタン北部への越境輸出にも回される。両国を合わせた受益人口は43万人を超えると見込まれている。

アフガニスタンへの越境供給

同社は2012年から、米国国際開発庁(USAID)の資金を得た越境電力事業により、パンジ川を越えてアフガニスタン・バダフシャン州のシュグナン地区へ送電線を延ばしてきた。2017年時点で顧客は3万3,000超、供給人口は約25万4,000人(タジキスタン22万人、アフガニスタン3万4,000人)だった。

電気が届いたことによる変化として、学校・診療所・商店の再開、薪の採取に費やす時間の減少、森林の消失の抑制が挙げられている。2002年以降の10年間で州内の森林の約70%が失われており、電化はこの流れを止める意味も持っていた。

料金制度

料金は法人・政府機関向けと家庭向けの2本立てで、家庭向けが安い。加えてタジキスタン政府が需要家支援制度(Customer Support Scheme)を設け、消費量が少ない世帯に対して冬季に最大68%の割引を適用している。電気代が払えずに家畜の糞・石炭・薪へ戻ることを防ぐための仕組みである。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

パミール・エナジーとは | Caspian Intelligence