解説 · 2026年9月時点
パワーチャイナ(中国電力建設集団有限公司、英文名POWERCHINA)は、中国の国有建設・エンジニアリング企業である。水力発電を出発点に、太陽光、風力、火力、送変電、水利、交通インフラへ事業を広げ、130を超える国と地域で工事を請け負う。日本での知名度は高くないが、水力発電の建設では世界で突出した位置にあり、同社の説明では世界の水力発電建設の50%超を手がけている。
中央アジアでは、この会社の名前を知らずに再生可能エネルギーの案件を追うことが難しい。ウズベキスタン初の大規模太陽光発電所(ナヴォイ100メガワット)、中央アジア最大級の風力発電所(ザラフシャン500メガワット)、中央アジアで初めて着工した水素製造事業のいずれも、施工したのは同社である。カザフスタンでは水力と風力の主要案件を手がけてきた。開発事業者がUAEのマスダールやサウジアラビアのACWAパワーであっても、実際に建てるのはパワーチャイナ、という構図が繰り返し現れる。
同社の数字を読むときには、企業の階層に注意がいる。中国電力建設集団有限公司が国有の持株会社で、その傘下に上海証券取引所に上場する中国電建(601669)がある。「パワーチャイナ」として報じられる受注は、多くの場合この上場会社かその子会社が当事者であり、上場会社の連結財務諸表と集団全体の数字は一致しない。
| 正式名 | Power Construction Corporation of China(POWERCHINA、中国電力建設集団有限公司) |
|---|---|
| 設立 | 2011年9月29日 |
| 本社 | 中国・北京市海淀区 |
| 所有形態 | 中国の国有企業。国務院国有資産監督管理委員会の管理下にある |
| 前身 | 中国水利水電建設集団公司(シノハイドロ)と中国水電工程顧問集団公司。これに国家電網と中国南方電網の傘下にあった14の省・自治区の調査設計・施工・設備製造企業が加わった |
| 事業 | 水力・揚水発電、太陽光、風力、火力、原子力、送変電、水利・水環境、道路・鉄道・都市鉄道・港湾・空港、建築、鉱業、投資 |
| 上場子会社 | 中国電建(上海証券取引所、証券コード601669) |
| トップ | 丁焰章(Ding Yanzhang)。同社の英文サイトでは president と表記する |
| 展開 | 130を超える国・地域 |
| 番付 | フォーチュン世界500社104位、ENRの世界設計事務所トップ150で1位、ENRの国際設計事務所トップ225で10位(いずれも2026年、同社の公表) |
| 売上高 | 1,018億5,400万ドル(フォーチュンが2026年版世界500社番付のために集計した直近会計年度の値) |
| 従業員 | 17万9,815人(同) |
| 水力での位置 | 中国国内の大中規模水力発電所の65%超を施工し、計画・設計では80%超を担当。世界の水力発電建設で50%を超える市場占有率(いずれも同社の説明) |
| 中央アジア進出 | 1999年 |
成り立ち
同社の源流は、中華人民共和国の建国期に水力発電と水利事業を担った政府機関にさかのぼる。名称は水力発電工程局、水力発電建設総局、水利水電建設総局、水利水電建設総公司と何度も変わり、所管も燃料工業部、電力工業部、水利電力部と移った。全国の大中規模の水利・水力事業の調査設計と、直属の施工部隊の管理を担う組織である。
1986年10月、水利電力部の水利水電建設局と水利水電規劃設計総院が設けられた。1988年10月に中国水利水電工程総公司が設立され、2002年12月29日に中国水利水電建設集団公司(英文名シノハイドロ)へ改組された。もう一方の系統は、1994年8月に設立された中国再生可能エネルギー工程院で、1998年3月に中国水電・新エネルギー電力工程諮詢有限公司へ改組され、のちに中国水電工程顧問有限公司と改称し、2002年12月29日に中国水電工程顧問集団公司となった。
2011年9月29日、この2つの集団に加え、国家電網と中国南方電網の傘下にあった14の省・自治区の調査設計企業、施工企業、設備製造企業を土台として、中国電力建設集団が発足した。すなわち同社は、水力発電の「設計」を担ってきた系統と「施工」を担ってきた系統、そして電力網会社が抱えていた地方の技術部隊を、一つの持株会社の下に集めて作られた会社である。設計から資金調達、施工、運営までを一社で通せるという同社の強みは、この成り立ちに由来する。
水力発電での位置
同社は自らを「水力発電の計画、設計、施工における世界の先導的企業」と位置づけている。公表している数字によれば、過去60年余りで中国国内の大中規模水力発電所の65%超を施工し、計画・設計では80%超を担当した。世界の水力発電建設に占める市場占有率は50%を超え、これまでに設計・施工した大中規模の水力発電所は200か所超、合計出力は200ギガワットを上回るとしている。いずれも同社自身の公表値であり、独立した第三者による検証はない点は念頭に置く必要がある。
代表例として同社が挙げるのは、総出力2万2,500メガワットで世界最大の三峡水力発電所(主要施工者の一社)、高さ305メートルのアーチダムを持つ錦屏一級、単機容量1,000メガワットという世界最大の水車発電機を備える白鶴灘、堤高295メートルの両河口である。海外ではマレーシアのバクン(2,400メガワット)、ラオスのナムウー川の階段式開発(1,272メガワット)、スーダンのメロウェ(1,200〜1,250メガワット、堤長9.8キロ)、ガーナのブイ(400メガワット)などがある。
水力の技術は揚水発電、灌漑、治水、河川管理と地続きである。中央アジアやコーカサスで水資源の管理が政治的な争点になるとき、施工能力を持つ相手として同社の名が挙がるのはこのためである。2025年6月にカザフスタンの副首相と同社系の企業が会談した際も、中国側は灌漑と水利分野への参加に関心を示している。
事業の広がり
現在の事業は水力にとどまらない。同社が公式サイトで事業区分として掲げるのは、電力(太陽光、風力、水力、揚水発電、原子力、火力、バイオマス、水素)、送変電、水利・水環境(上下水道、廃水・廃棄物処理)、交通(道路、鉄道、都市鉄道、港湾、空港)、建築、鉱業、投資である。「総合的な土木と大規模建設」という言い方で、都市開発や住宅にまで手を広げていることを説明している。
2026年時点で同社が公表する外部評価は、フォーチュン誌の世界500社番付104位、米ENR誌の世界設計事務所トップ150で1位、同誌の国際設計事務所トップ225で10位である。フォーチュンが同番付のために集計した直近会計年度の売上高は1,018億5,400万ドル、従業員は17万9,815人だった。設計と施工の双方で上位に入る点が、この会社の特徴である。
ウズベキスタンでの事業
ウズベキスタンは、同社が域内で最も多くの案件を持つ国である。同社の発表によれば、同国初の大規模太陽光発電所と初の大規模風力発電所は、いずれも同社が建設した。
ナヴォイの100メガワット太陽光発電所は、太陽光パネル29万8,928枚を並べ、年間2億7,800万キロワット時を発電する。2021年8月27日にミルジヨエフ大統領の立ち会いのもとで系統に接続された。
ザラフシャン風力発電所は出力500メガワットで、完成すれば中央アジアで稼働中の最大の風力発電所になると同社は説明している。50万世帯分の電力を賄い、年間110万トンの二酸化炭素排出を減らす規模である。最初の風車の稼働式は2023年11月25日にアリポフ首相が出席して行われ、同年12月27日にはタシケントで新設発電所の運転開始を祝う式典が開かれた。ミルジヨエフ大統領はこの式典で、新しい発電所の運転開始が冬季の電力不足を大きく緩和したと述べ、年内の初送電という約束を守った同社に謝意を示している。式典で取り上げられた風力事業はザラフシャンだけで、ナヴォイ州の現地には分会場が設けられた。事業主体はUAEのマスダールである。
2023年11月27日には、ウズベキスタン・サウジアラビア経済投資政府間サミットの場で、同国初のグリーン水素事業が起工した。ミルジヨエフ大統領、サウジアラビアのハリド・アルファリハ投資相、ACWAパワーのモハンマド・アブナヤン会長が出席した。同社がEPC(設計・調達・建設)方式で請け負うもので、毎時4,000立方メートルの水素製造設備と52メガワットの陸上風力発電所を建設する。完成すれば年間3,000トンのグリーン水素を製造し、50万トンのアンモニア肥料の原料に充てる。肥料生産で使う天然ガスを年3,300万立方メートル節約できる計算である。同社はこれを、中央アジアで初めて実施段階に入ったグリーン水素事業であり、自社にとって初の海外グリーン水素事業だとしている。
火力も手がける。同国南部で建設する出力約1,600メガワットのスルハンダリヤ複合火力発電所は、2024年4月に着工の通知が正式に出され、2027年の商業運転開始が見込まれている。
カザフスタンでの事業
カザフスタンでは、同社傘下のパワーチャイナ・成都エンジニアリング(Power China Chengdu Engineering Corporation)が主体になっている。カザフスタン首相府の発表によれば、2025年6月3日、カナト・ボズムバエフ副首相と、同社の取締役会長であるヘ・イエンフォン(He Yanfeng)が会談し、エネルギーと水資源の分野での協力拡大について話し合った。
同じ発表は、パワーチャイナ・成都エンジニアリングがこれまでにカザフスタンでモイナク水力発電所、ジャナタス風力発電所、シェレク風力発電所を完成させ、フロムタウとアルカルィクの2つの風力発電所の稼働に向けた準備を進めていると記している。中国側はこの会談で灌漑と水利事業への参加に関心を示し、カザフスタン側はアラタウ市の建設や公益・エネルギー部門の近代化に関する国家プロジェクトを説明した。
2025年6月16日には、第2回中国・中央アジア首脳会議に合わせてアスタナで開かれた電力フォーラムで、丁焰章がカザフスタンのエネルギー省と戦略的協力協定に署名した。同席上の演説で丁は、同社が1999年に中央アジア市場へ入って以来、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどで水力、風力、太陽光の主要案件を手がけてきたと述べ、今後の重点として、中央アジアのエネルギー計画・基準策定・コンサルティングへの関与、各国に合わせた再生可能エネルギーの解決策、スマートエネルギーと生態保全、現地化による現地の供給網と産業連鎖の育成の4点を挙げた。
数字を読むときに
第一に、市場占有率の数字はほとんどが同社の自己申告である。「世界の水力発電建設の50%超」「中国の大中規模水力発電所の65%超」といった値は、母数の定義(金額か件数か出力か、対象期間はいつからか)が示されていない。桁として大きいことは確かだが、他社と厳密に比較できる数字ではない。
第二に、財務の数字は出所によって対象が違う。フォーチュンの番付が使うのは国有持株会社である集団の連結値で、上海証券取引所に上場する中国電建の連結値とは範囲が異なる。個別の受注を報じる資料が「パワーチャイナ」と書くとき、契約の当事者が集団本体か、上場会社か、成都エンジニアリングのような子会社かも明示されないことが多い。カザフスタンの案件のように、政府側の発表で初めて子会社名が分かる場合がある。
第三に、出力の数字は交流と直流、設備容量と正味出力で変わる。スルハンダリヤの1,600メガワットは正味出力(net output)として公表されている。太陽光は直流の設備容量で書かれることが多く、系統に流せる交流出力はこれより小さい。同じ発電所が資料によって違う出力で書かれるときは、この区別を疑う。
参考資料
- Who We Are(POWERCHINA公式、2025年8月26日更新) ↗
- History of POWERCHINA(同、沿革) ↗
- Hydro(同、水力発電事業。2025年5月19日更新) ↗
- Uzbekistan president praises POWERCHINA for its commitment to alleviating electricity shortage(同、2024年1月2日) ↗
- Uzbekistan gas-fired power plant breaks ground(同、2024年4月2日。ナヴォイ太陽光とザラフシャン風力の諸元を含む) ↗
- Uzbekistan's first green hydrogen project breaks ground(同、2023年12月1日) ↗
- POWERCHINA seeks further cooperation at Power Central Asia-China Forum(同、2025年6月17日) ↗
- Канат Бозумбаев обсудил с Power China Chengdu реализацию инфраструктурных проектов(カザフスタン首相府、2025年6月3日) ↗
- PowerChina — Fortune Global 500(フォーチュン誌の集計。売上高・従業員数) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。