解説 · 2026年8月時点
タミズ・シャハル(Təmiz Şəhər、「清潔な街」)は、バクーの廃棄物処理を担う国有企業である。2008年の大統領令で設立され、2009年に事業を開始した。ごみの収集と運搬はバクー市執行権力の所管に残り、同社は処分と無害化を受け持つ。
中核となる施設は、いずれもバクー郊外バラハヌにある年20万トンの選別施設と、年50万トンの廃棄物発電所である。両施設は2012年12月19日に稼働した。同社はこのほかバラハヌ工業団地を運営し、2023年からは自動車リサイクル制度の運営者も務める。
| 正式名 | “Təmiz Şəhər” Açıq Səhmdar Cəmiyyəti(英語表記はTamiz Shahar OJSC、「清潔な街」の意) |
|---|---|
| 設立 | 2008年8月6日付の大統領令「バクー市の家庭ごみ管理の改善について」。2009年3月12日に国家登記され事業を開始 |
| 本拠 | バクー |
| 事業 | バクーの一般廃棄物の処分と無害化、バラハヌ選別施設と廃棄物発電所、バラハヌ工業団地の運営、自動車リサイクル制度の運営者 |
| 所有 | 国有。2021年9月22日付の大統領令によりアゼルバイジャン投資持株会社(AIH)の管理下 |
| 監督 | 監督理事会議長は生態・天然資源相ラシャド・イスマイロフ(2026年8月時点) |
| 選別施設 | 年間処理能力20万トン(2012年12月19日稼働) |
| 廃棄物発電所 | 年間処理能力50万トン(うち医療廃棄物1万トン)、発電量は年間最大2億kWh |
| 工業団地 | バラハヌ工業団地、総面積7ha、入居15社 |
設立の経緯
出発点は2006年に承認された「2006〜2010年のアゼルバイジャン共和国の環境状況改善のための総合行動計画」である。バクーとアブシェロン半島の環境問題を計画的に解決する枠組みで、廃棄物管理の整備もこの計画に位置づけられた。
これを受け、2008年8月6日付の大統領令「バクー市の家庭ごみ管理の改善について」によりタミズ・シャハル開放型株式会社が設立された。同社は2009年3月12日に国家登記され、近代的な基準に沿った廃棄物の処分・無害化の体制づくりに着手した。発生源を問わずバクー市内の一般廃棄物の収集と運搬はバクー市執行権力の権限にとどまり、処分と無害化が同社に割り当てられている。
2021年6月22日付の大統領令と2022年7月2日付の大統領令により2008年の大統領令が改正され、同社の業務範囲は占領から解放された地域における一般廃棄物の収集・運搬・処分にも広げられた。
施設
バラハヌの選別施設は年間20万トンの処理能力を持ち、2012年8月に試験運転を始め、同年12月19日に大統領が出席して本格稼働した。設計はアズテック・プロジェクト・コンストラクション、施工はM-Naf、設備の供給はアデルマンが担当した。紙、ガラス、プラスチック、非鉄金属、鉄などを選別し、電池や電子機器といった有害廃棄物を一般ごみから分けて適切な処理へ回す。
廃棄物発電所は、フランスのCNIMが設計から一括して請け負って建設した。2009年11月3日に起工し、2012年12月19日に稼働した。バラハヌの20haの敷地に建ち、年間50万トンの一般廃棄物(うち医療廃棄物1万トン)を焼却できる。発電量は年間最大2億kWhで、会社は年間の発電で10万世帯分の電力を賄える規模だと説明している。運転はフランス系のパプレック・エナジー・アゼルバイジャンが担う。飛灰は専用のフィルターで捕集し、焼却後の主灰は道路建設の資材として利用できるとしている。
バラハヌ工業団地は、2011年12月28日付の2本の大統領令にもとづいて設けられた。総面積は7haで、生産用地が2万3,460平方メートル、インフラ用地が3,000平方メートルである。リサイクル事業に取り組む企業を誘致する狙いで、埋立地と廃棄物発電所、幹線道路に近い立地を利点とする。2026年8月時点で15社が入居している。
その他の事業
ボユクショル湖の再生事業も同社が担当した。2013年12月の大統領令と2014年1月の国家プログラムにもとづくもので、経済産業省の調整のもと第1期を2015年5月に完了した。湖を1,570mの堤で二つに分け、対象区域を隔離したうえで底質280万立方メートルを浚渫し、湖に流入していた76か所の排水源を対象区域内で解消した。底質の汚染度は1kgあたり12万1,000mgから8万6,000mgへ下がったとしている。湖岸には2.5kmの遊歩道と公園が整備され、8万本の樹木と装飾用の低木が植えられた。
廃棄物管理の制度整備そのものも、世界銀行の「アブシェロン環境再生プログラム」の一部として支援を受けてきた。融資契約は2009年5月20日に締結され、制度改革と能力構築、バラハヌ埋立地の改修と管理、他の埋立地の閉鎖と管理、収集用機材の整備などが対象になっている。
自動車リサイクルでは、2018年12月27日付の大統領令852号で承認された「2019〜2023年の道路交通安全に関する国家プログラム」を受け、2023年7月27日付の大統領令2253号により同社がリサイクル制度の運営者に指定された。2024年1月27日付の大統領令4279号では自動車リサイクル基金が設けられた。登録されたリサイクル業者だけが車両の解体を扱うことができ、車両を引き渡した所有者は確認書を受け取って、国産の新車購入時の割引か、割引相当額の70%の一時金を選べる仕組みである。
所有とガバナンス
同社は国有で、2021年9月22日付の大統領令によりアゼルバイジャン投資持株会社(AIH)の管理下に置かれた。AIHの公表するポートフォリオでは、SOCAR、アゼルゴールド、アゼルアルミニウム、アゼルコットン、国際銀行(IBA)、アゼル・チュルク銀行と並んで、産業・農業の区分に置かれている。
2026年3月4日付の大統領令と同年5月26日付の大統領令により、監督理事会の構成が改められた。新しい構成での最初の会合は2026年8月5日に開かれ、生態・天然資源相ラシャド・イスマイロフが議長を務めた。会合には同社の執行役員会に加え、生態・天然資源省とAIHの代表が出席し、2025年の監査済み財務諸表が報告された。
財務諸表そのものは公表されていない。処理量や収入の内訳も公表資料からは確認できない。
参考資料
- About us(タミズ・シャハル 公式サイト、設立の経緯) ↗
- Waste-to-energy plant(タミズ・シャハル 公式サイト) ↗
- Balakhany Industrial Park / Residents(タミズ・シャハル 公式サイト) ↗
- Vehicle Recycling(タミズ・シャハル 公式サイト) ↗
- Portfolio companies(アゼルバイジャン投資持株会社 公式サイト) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。