解説 · 2026年8月時点
トビリシ・エナジー(Tbilisi Energy)は、ジョージアの首都トビリシで天然ガスの配給網を運営し、家庭と事業所にガスを売る配給事業者である。前身は2006年にカザフスタンの国営ガス会社カズトランスガスが取得した首都のガス配給会社で、2019年まではKazTransGas-Tbilisiという社名だった。フォーブス・ジョージアの「100大企業」(2021年決算)では売上高3億6,329万ラリで第26位に入っている。
同社の来歴は、ジョージアのエネルギー分野で外資の参入と債務、そして裁判所の管理下での運営が絡み合った典型例として語られることが多い。国営のジョージア石油ガス公社への延滞債務をきっかけに10年にわたって特別管理人の下に置かれ、国際仲裁を経てカザフスタン側が撤退したうえで、現在の体制に移っている。
| 正式名 | LLC Tbilisi Energy(შპს თბილისი ენერჯი)。2019年まではKazTransGas-Tbilisi LLC |
|---|---|
| 本拠 | ジョージア・トビリシ |
| 事業 | トビリシ市の天然ガス配給網の運営と小売供給 |
| 売上高 | 3億6,329万ラリ(2021年通期。フォーブス・ジョージア「100大企業」第26位) |
| 資産 | 1億6,100万ラリ(2019年12月末、EY監査の財務諸表) |
| 所有 | マーシャル諸島登録のWaltbay LLCが2018年10月に全持分を取得。フォーブス・ジョージアの2026年3月時点の整理では、フヴィチャ・マカツァリアとマムカ・トゴニゼがそれぞれ25%を保有 |
沿革
2006年5月、ジョージア政府は首都のガス配給会社トビルガジを売却する入札を実施し、カザフスタンの国営ガス会社カズトランスガス(カザフスタンの政府系ファンド、サムルク・カズナの傘下)が落札した。以後、トビリシのガス供給はKazTransGas-Tbilisiが担った。
その後、同社は国営のジョージア石油ガス公社に対して7,960万ラリの延滞債務を積み上げ、供給の継続に支障をきたした。エネルギー・水道規制委員会(GNERC)の提訴を受け、2009年3月16日のクタイシ市裁判所の決定により、同社は特別管理人の下に置かれた。債務は2010年7月14日にジョージア財務省へ移され、日歩0.05%の利息が付された。政府と株主の争いは国際仲裁裁判所に持ち込まれた。
2018年9月13日、ジョージア政府とカズトランスガスは紛争の平和的解決に関する仲裁合意に署名した。カズトランスガスは持分と請求権をWaltbay LLC(2016年8月30日にマーシャル諸島で登録)へ4,000万ドルで譲渡し、財務省に対する債務は帳消しとなった。持分の移転は2018年10月4日である。トランスペアレンシー・インターナショナル・ジョージアの調査によれば、2018年時点でWaltbayを最終的に支配していたのはジョージア国籍のフヴィチャ・マカツァリアで、2019年には英領ヴァージン諸島のWeco Investment and Finance S.A.がWaltbayの持分50%を取得した。
特別管理体制は2019年5月3日に解除され、経営権はジョージアの事業グループへ移った。同社は同年、社名と商標をトビリシ・エナジーへ改め、老朽化した首都のガス供給網の更新を最優先の課題に掲げて、年平均3,000万ドルの投資を計画していると発表した。
事業
トビリシ・エナジーは、首都圏のガス配給免許を持つ最大の事業者であり、中低圧の配管網を通じて家庭用と非家庭用の需要家に供給している。ジョージアの天然ガスはアゼルバイジャンのシャフデニズ・ガス田からの輸入とロシアからの輸入で賄われており、配給事業者は上流の価格交渉には直接関与せず、規制委員会が定める託送料と小売価格の枠内で事業を行う。
EYの監査を受けた財務諸表によると、2019年12月末の総資産は1億6,100万ラリで、前年比18%増だった。2019年の当期利益は8,100万ラリで、特別管理下にあった2018年の1,800万ラリの損失から転じている。特別管理の解除と債務の整理が業績に反映された年にあたる。
所有をめぐる論点
フォーブス・ジョージアが2026年3月に公表した「ジョージアで最も裕福な起業家100人」の一覧では、フヴィチャ・マカツァリアとマムカ・トゴニゼがそれぞれトビリシ・エナジーの25%を保有すると整理されている。同一覧はマカツァリアについて、テラシの12%と携帯電話事業者セルフィー・モバイル(旧ビーライン)も保有すると記している。
トランスペアレンシー・インターナショナル・ジョージアは2021年の調査で、トビリシ・エナジーをオフショア法人が保有するジョージアの主要企業の一つとして挙げている。同調査は、ジョージアの企業登記簿に登録された約3,200社の全部または一部がオフショア法人の所有下にあり、2011年から2020年にオフショア地域からジョージアに入った直接投資が52億ドル(同期間の外国投資の38%)にのぼると指摘した。首都のガス供給という公益性の高い事業の最終的な受益者が公開情報から追いにくいことは、この分野で繰り返し議論されてきた点であり、読み手はこの点を念頭に置く必要がある。
参考資料
- Offshore companies in Georgia: Business interests and corruption risks — Transparency International Georgia ↗
- KazTransGas-Tbilisi changes its name, Tbilisi Energy purchases 100% of company shares — InterPressNews(2019年) ↗
- Georgia's 100 Richest Entrepreneurs — Forbes Georgia(2026年3月25日) ↗
- The 100 Largest Georgian Companies by Revenue — Forbes Georgia(2024年1月9日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。