解説 · 2026年8月時点
テグート(Teghout CJSC)は、アルメニア北部ロリ地方のテグート銅・モリブデン鉱床を開発する鉱山会社である。同国で二番目に大きい銅・モリブデン鉱床を持ち、鉱石埋蔵量は4億5,000万トン、承認された埋蔵量は銅160万トン、モリブデン約10万トンとされる。1,000人を超える雇用を抱え、国内でも上位の納税者である。
この会社は、アルメニアの鉱業が抱える二つの論点――環境への影響と、ロシア資本の関与――が交差する場所にある。開発にあたって357ヘクタールの森林を含む700ヘクタール超の土地が転用され、環境団体の反対運動が続いた。所有は建設資金の債務不履行を経てロシアの国有VTB銀行に移り、2022年の対露制裁で操業が滞った後、2026年に別の所有者へ移った。
| 正式名 | «Teghout» CJSC(Թեղուտ ՓԲԸ) |
|---|---|
| 設立 | 2006年 |
| 所在 | アルメニア・ロリ地方(テグート鉱床) |
| 事業 | 銅・モリブデン鉱の露天採掘と選鉱 |
| 鉱量 | 鉱石450百万トン。承認埋蔵量はモリブデン約10万トン、銅160万トン(自社公表) |
| 雇用 | 1,000人超(自社公表) |
| 納税額 | 約144億ドラム(2025年) |
| 所有者 | 2026年7月にロシアのVTB銀行が持分を売却。新たな支配株主にコンスタンチン・ソコロフ氏と関連会社 |
開発の経緯
テグート村の南東にあるマンステフ渓谷の石英脈にモリブデンの産出が確認されたのは1930年代後半で、1956年から1959年の探査で銅・モリブデン鉱の大きな集積が確認された。鉱床の発見につながる地質調査は1970年代に始まり、20年にわたって続いた。
2006年、この鉱床を開発するためにテグートCJSCが設立された。2006年から2013年にかけて選鉱場を含む主要な建設工事が行われ、357ヘクタールの森林を含む700ヘクタール超の土地が事業用地として払い下げられた。この森林伐採は同国の環境問題として大きく取り上げられ、現在も操業の是非をめぐる議論が続いている。同社は677ヘクタールの緑地を復元したと説明している。
所有権の移動と操業の中断
開発は、実業家ヴァレリ・メジルミャン氏のヴァレックス・グループが主導した。建設資金として借り入れた約4億ドルの返済ができなくなり、2018年に鉱山はロシアの国有VTB銀行の管理下に移った。
この時点で、選鉱くず(テーリング)貯留施設の安全性への懸念から操業はすでに止まっており、1,000人以上が職を失っていた。生産はVTBの所有下の2019年に再開したが、2022年にVTBが西側の制裁対象となると、輸出と決済が滞って再び操業が中断し、1年ほどして再開した。
2026年4月、VTBのアンドレイ・コスチン頭取は持分売却が最終段階にあると述べ、同年7月、RFE/RLアルメニア語部が法人登記の記録をもとにVTBの離脱を報じた。新しい所有構造には、ロシア生まれで米国籍の実業家コンスタンチン・ソコロフ氏と同氏の関連会社が含まれる。ソコロフ氏は移動体通信のヴィヴァ・アルメニアの親会社の共同所有者でもある。取引の金額は公表されていない。
現状
同社は2025年に約144億ドラムの税を納めており、アルメニアの主要な納税者の一角にある。自社の集計では、これまでに掘削した岩石の総量は1億6,000万トン、地域社会への支援は280万ドルに達する。
生産量、売上高、精鉱の販売先といった経営数値は公表されていない。ロシア資本の下で滞った輸出が新しい所有者の下でどう変わるかは、2026年8月時点では外部から確認できない。
参考資料
- Teghout CJSC — About us(公式) ↗
- Russian bank exits Armenia's Teghut mine as investigation identifies new controlling owners — CIVILNET(2026年7月13日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。