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トラフィグラ

シンガポールに登記する独立系の商品商社。原油・石油製品と金属を実物で取引し、物流と一体で運営する。

Trafigura Group Pte Ltd
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解説 · 2026年9月時点

トラフィグラ(Trafigura Group Pte Ltd)は、原油・石油製品と金属・鉱物を扱う独立系の商品取引会社である。シンガポールに登記され、主要な取引拠点はスイスのジュネーブにある。従業員が株式を持ち合う非上場企業で、日本での知名度は低いが、2025年9月期の売上高は2,402億ドル、扱った石油・石油製品(天然ガス・LNGを含む)は3億5,800万トン、日量換算で760万バレルに達する。

同社が営むのは、日本語で「商社」と呼ばれる業態のうち、実物の商品を買って運んで売る部分に特化した事業である。生産者から原油や精鉱を買い、自社で手配した船やタンク、パイプラインを使って動かし、製油所や製錬所へ届ける。1件ごとの利幅は薄いが、量と回転で稼ぐ。売上高2,402億ドルに対する純利益は26億6,600万ドル、比率にして1.1%である。

中央アジア・コーカサス8か国のなかでは、アゼルバイジャンでの活動が公表資料で確認できる。2023年には経済省およびアゼルバイジャン産業公社との間で協力の覚書を結び、2024年以降はアングロ・アジアン・マイニングの子会社から銅精鉱を買い取る契約と前払金の枠を設定している。

正式名Trafigura Group Pte Ltd
登記地シンガポール(オーシャン・フィナンシャル・センター、コリヤー・キー10番29-01/05号)。主要な取引拠点はスイス・ジュネーブ
創業1993年
所有形態非上場。従業員が保有する。株主は1,400人超
事業原油・石油製品、金属・鉱物、天然ガス・電力の実物取引と、それに付随する船舶・貯蔵・物流。産業資産の保有も行う
決算期9月末。2025年9月期の実績は2025年12月9日に公表
売上高2,402億6,800万ドル(2025年9月期。エネルギー1,669億8,000万ドル、金属・鉱物732億8,800万ドル)
純利益26億6,600万ドル(2025年9月期、前期比3%減)
基礎的EBITDA80億ドル超(2025年9月期。4期連続で80億ドルを超えた)
財務状態総資産794億9,400万ドル、資本合計161億7,200万ドル(2025年9月末)
取扱数量原油・石油製品(天然ガス・LNGを含む)3億5,800万トン、日量換算760万バレル(2025年9月期、前期比約10%増)
従業員約1万4,500人。150か国超で取引し、50超の拠点を持つ
経営ジェレミー・ウィアー会長、リチャード・ホルタム最高経営責任者、ステファン・ヤンスマ最高財務責任者
主な傘下・関連事業ナイスター(多金属生産)、プーマ・エナジー(燃料貯蔵・販売)、グリーンエナジー(輸送用燃料・バイオ燃料)、インパラ・ターミナルズ(合弁)、TFGマリン(合弁)、ナラ・リニューアブルズ(合弁)
中央アジア・コーカサスの拠点なし(2026年9月時点で公表されている拠点一覧に8か国の事務所はない。最寄りはイスタンブール、ドバイ、ジュネーブ)

実物商品の取引という業態

商品取引会社の仕事は、価格差ではなく「場所の差」と「時間の差」と「品質の差」を埋めることにある。産地で余っている原油を不足している地域へ運ぶ(場所)、収穫期に買って端境期に売る(時間)、性状の違う原油を混ぜて製油所の仕様に合わせる(品質)。この3つを、船・鉄道・タンク・パイプラインという実物の設備を押さえたうえで実行する。

同社は自らの役割を、供給の支援、海上・陸上輸送、貯蔵とブレンド、付加価値の付与、引き渡しの5段階に整理している。生産者への資金供与も業務の一部で、将来の引き渡しを裏づけとして前払金を出す「プリペイメント」は、資金調達手段の乏しい産地の企業にとって重要な選択肢になる。後述するアゼルバイジャンの案件はこの型である。

事業は大きく2部門に分かれる。2025年9月期のエネルギー部門(石油・石油製品、ガス、電力、再生可能エネルギーと関連する用船・操業資産)は売上高1,669億8,000万ドルでグループの70%を占め、減価償却前営業利益は60億9,100万ドルだった。金属・鉱物部門は売上高732億8,800万ドル(30%)、同20億1,600万ドルである。同期は金属取引が好調だった一方、非鉄金属の取扱量は11%、バルク鉱物は17%減っており、会社は採算のよい取引に絞った結果だと説明している。

沿革と所有構造

創業は1993年である。株式は従業員が持ち、2025年時点の株主は1,400人を超える。上場していないため株式市場を通じた資金調達はできず、代わりに銀行団のリボルビング融資、輸出信用機関の保証、私募債、資産担保証券などを組み合わせて運転資金をまかなう。

経営体制は2025年に変わった。ジェレミー・ウィアー氏が長く務めた最高経営責任者の職はリチャード・ホルタム氏が引き継ぎ、ウィアー氏は会長にとどまっている。最高財務責任者はステファン・ヤンスマ氏である。2025年7月1日には執行委員会を拡充し、操業資産とガス・電力・再生可能エネルギーの各統括を加えた。

傘下には産業資産もある。多金属生産のナイスター、燃料の貯蔵・販売を行うプーマ・エナジー、輸送用燃料とバイオ燃料のグリーンエナジー、港湾・物流の合弁インパラ・ターミナルズ、船舶燃料の合弁TFGマリンなどである。2025年9月期には、ナイスターのオーストラリア事業やマイラ・フォールズ鉱山などについて合計3億4,050万ドルの固定資産減損を計上した。

アゼルバイジャンでの活動

2023年9月20日、バクーでミカイル・ジャバロフ経済相とSOCARのロヴシャン・ナジャフ社長がウィアー氏と会談し、経済省とトラフィグラ、およびアゼルバイジャン産業公社(Azerbaijan Industrial Corporation)とトラフィグラの間で、それぞれ協力の覚書が署名された。対象は再生可能エネルギーと脱炭素、アルミ生産などである。アゼルバイジャン経済省の発表による。

実際の取引としては、アゼルバイジャンで金・銅・銀を産出するアングロ・アジアン・マイニング(ロンドンAIM上場)との関係が公表されている。2024年6月11日、同社の子会社アゼルバイジャン国際鉱業(AIMC)はトラフィグラと総額500万ドルの前払契約を結んだ。うち300万ドルを即時、200万ドルを浮選処理の再開時に受け取り、銅精鉱の引き渡しで決済する取り決めで、あわせてトラフィグラはデミルリ鉱山の初年度生産の50%を優先的に購入する権利を得た。

2025年11月3日には、デミルリ鉱山で産出する銅精鉱をトラフィグラへ販売する契約を締結したと発表された。上限2,500万ドルの回転型前払枠が付いている。デミルリ選鉱設備の運営リースは2025年10月1日に始まり、初回の精鉱販売は同年11月中旬に見込まれていた。

前払枠は融資に近い機能を持つが、返済は現金ではなく現物の引き渡しで行われる。生産の立ち上げ期に銀行融資を得にくい鉱山にとっては、運転資金と販売先を同時に確保する手段になる。

カザフスタン産原油との距離

カザフスタンの原油と同社の関係は、公表資料からは限定的にしか見えない。同社は年次報告で国別の取扱量を開示しておらず、2026年9月時点で公表されている拠点一覧にも、中央アジア・コーカサス8か国の事務所はない。

背景として、カザフスタン産原油の輸出には既定の経路がある。国営石油ガス会社カズムナイガスの100%子会社であるKMGトレーディング(スイス・ティチーノ州パラディゾ)が、同社資源分の原油を年1,600万トン超輸出する唯一の取扱主体であると自ら説明している。扱う銘柄はCPCブレンド、KEBCO、エス・シデル、アゼリ・ライトなどで、輸送経路はCPC(カスピ海パイプライン・コンソーシアム)、アトゥイラウ〜サマラ、ドルジバ、バクー・トビリシ・ジェイハンの各パイプラインである。テンギズやカシャガンなど大型鉱区の外国パートナー各社も、それぞれ自社分を自社の販売部門で売る。独立系の商品取引会社が関与するのは、その先の買い手・転売の局面が中心になる。

このため「どの商社がカザフスタンの原油を扱っているか」という問いに公表資料だけで答えるのは難しい。報道で名前の挙がる取引会社は複数あるが、出荷主体が公表するわけではないため、確定した数量やシェアを示す一次資料は存在しない。

ロシア関連事業の縮小

2022年3月2日、同社はウクライナでの戦争を非難する声明を出し、ロシア国内に操業資産を持たないこと、ロシアへの投資を凍結したこと、ロスネフチ主導のヴォストーク・オイル計画に持つ受動的な少数株主持分の扱いを検討していることを明らかにした。当時ウクライナには事務所と常勤の従業員がいた。

ヴォストーク・オイルの10%持分は2022年7月12日に売却が完了した。相手は香港に登記された独立系の取引会社ノード・アクシス、価格は非公表である。

インドのナヤラ・エナジー(ロスネフチが出資する製油・石油化学会社)への24.5%の間接的少数持分についても、2023年1月11日に売却の完了を公表した。売却先はマレテラ・グループ傘下のハラ・キャピタルである。

法令順守と、進行中の案件

2024年12月、旧持株会社トラフィグラ・ベヒール(Trafigura Beheer B.V.)がスイスの裁判所で、2009年から2011年にかけての不正な支払いを防ぐ組織的措置を欠いたとして審理を受けた。裁判所は同社に法令順守部門と規程が存在したことを認めつつ、それが要件を満たしていなかったと判断し、300万スイスフランの罰金と利益の没収を科した。同社は2025年9月期の終了後に控訴しており、判決は確定していない。

モンゴルの石油製品供給事業をめぐる個人の重大な不正については、外部レビューが継続している。2025年9月末時点で、同事業に関して7億890万ドルの貸倒引当金が計上されている(2024年9月末は5億6,640万ドル)。会社はリスク管理と内部統制の強化を2025年9月期の最優先課題と位置づけ、全従業員向けの研修と規程・手続の見直しを実施したと説明している。

取引会社の財務を読むときは、この種の引当金と減損が利益に直接効くことに注意がいる。2025年9月期の固定資産・金融資産の減損は8億4,300万ドル(前期は10億7,400万ドル)で、純利益26億6,600万ドルとの比較では小さくない金額である。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。