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VEON

ナスダック上場の通信持株会社。バミューダ籍で本部はドバイ。カザフスタンとウズベキスタンでBeelineブランドの携帯通信を運営する。

VEON Ltd.
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

VEON(ヴィオン)は、新興国の携帯通信事業を束ねる持株会社である。ナスダックに上場しながら、事業はバングラデシュ、カザフスタン、パキスタン、ウクライナ、ウズベキスタンの5か国に限られる。この5か国の人口は世界人口の6%を超えると同社は説明する。前身は1992年にモスクワで設立されたヴィンペルコムで、ロシアで「ビーライン(Beeline)」ブランドを立ち上げた事業者である。2017年にVEONへ改称し、2023年にロシア事業を手放した。

中央アジアでの位置は大きい。カザフスタンではBeeline Kazakhstanが加入者1,180万人(2025年12月末)を抱え、ウズベキスタンではUnitelがBeelineブランドで770万人を持つ。両国の事業は2025年通期でグループ売上高の約4分の1を占める。上場企業として四半期ごとに国別の売上・EBITDA・加入者数・ARPU(利用者1人当たり平均収入)を開示しているため、両国の携帯市場を外部から数字で追える数少ない情報源でもある。

日本での知名度は低いが、旧ソ連圏の通信を語るうえでは避けて通れない。事業の重心は通信そのものから、決済・金融・娯楽・医療・教育といったアプリ群(同社の言う「デジタルオペレーター1440」戦略)へ移りつつあり、2025年通期のデジタル収入は7億5,900万ドルと前年比62.5%増えた。

正式名VEON Ltd.
法人格バミューダ法にもとづく免除会社。2009年6月5日設立。登記上の本店はバミューダ・ハミルトン
本部アラブ首長国連邦・ドバイ国際金融センター(DIFC)。2024年にアムステルダムから移した
前身1992年設立のヴィンペルコム(VimpelCom)。1996年にニューヨーク証券取引所に米国預託証券を上場、2013年にナスダックへ移り、2017年3月にVEONへ改称
上場ナスダック・グローバル・セレクト・マーケット(ティッカーVEON)。ユーロネクスト・アムステルダムには2017年4月4日から2024年11月22日まで上場していた
米国預託証券1ADS=普通株25株
発行済株式数18億4,919万667株(2026年3月1日時点)
主要株主LPEミドルイースト(レターワン系)45.46%、リンゴット・インベストメント・マネジメント8.17%、Stichting Administratiekantoor Mobile Telecommunications Investor 7.89%、シャー・キャピタル・マネジメント6.62%(2026年3月1日時点)
事業国バングラデシュ、カザフスタン、パキスタン、ウクライナ、ウズベキスタンの5か国(2025年末)
売上高43億9,900万ドル(2025年通期、前年比9.9%増)
EBITDA20億900万ドル(2025年通期、前年比18.8%増)
デジタル収入7億5,900万ドル(2025年通期、前年比62.5%増)
従業員1万8,938人(2025年末)。カザフスタン4,829人、ウズベキスタン2,005人
域内の事業会社カザフスタンはLLP KaR-Tel(ブランド名Beeline Kazakhstan、出資比率75.0%)、ウズベキスタンはLLC Unitel(同Beeline Uzbekistan、同100.0%)。いずれも2025年12月31日時点。キルギスのSky Mobile(同Beeline Kyrgyzstan)は2025年8月13日に売却済み
加入者カザフスタン1,180万人、ウズベキスタン770万人(いずれも2025年12月末の自社集計)

沿革

起点は1992年、ロシアで設立されたヴィンペルコムである。1996年に米国預託証券をニューヨーク証券取引所へ上場し、旧ソ連圏の企業として早い時期に米国市場へ入った。2013年にナスダック・グローバル・セレクト・マーケットへ移り、2017年3月にVEONへ改称した。同年4月からはユーロネクスト・アムステルダムにも上場していたが、2024年11月22日をもって取りやめている。

2000年代前半から旧ソ連圏と東欧へ広がった。カザフスタンには2004年、ウクライナには2005年、ウズベキスタンには2006年に入った。2019年にパキスタンとバングラデシュの事業を取り込み、南アジアが加わった。

その後は市場の絞り込みが続いた。2021年にアルジェリア事業を、2023年にロシア事業を、2025年にキルギス事業をそれぞれ売却している。2026年時点の法人はバミューダ籍で、本部はドバイ国際金融センター(DIFC)にある。取締役会をDIFCで開くことで実効的な経営と支配がDIFCにあるとし、アラブ首長国連邦の法人税の対象として登録している。

ロシア事業の売却とその後

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、同社は2022年にロシア子会社PJSCヴィンペルコムの売却契約を結び、2023年に完了した。「ビーライン」ブランドはロシアの旧子会社が引き続き使っており、同社の年次報告書はこの点を独立したリスク要因として記載している。旧子会社がブランドを使い続けることで、VEONが同じブランドを使う他国の事業と混同される可能性を挙げているためである。読み手も、ロシアの「ビーライン」と中央アジアの「ビーライン」がすでに別会社であることを前提に読む必要がある。

株主に関わる制裁の問題も残っている。同社の筆頭株主であるレターワン(LetterOne)の元・現受益者のうち複数が米国・欧州・英国の制裁対象になっている。同社は年次報告書で、レターワン自体は制裁対象ではないと説明しつつ、将来的に会社やレターワンが対象となる可能性を否定できないと記している。2026年3月時点でレターワン系のLPEミドルイーストが発行済株式の45.46%を保有する。

ウクライナ事業のキーウスターは、2025年3月に特別買収目的会社コーエン・サークル・アクイジションとの企業結合契約を結び、同年8月14日に完了して、キーウスター・グループ(ティッカーKYIV)としてナスダックに上場した。上場の時点でVEONの持分は89.6%だったが、2026年2月の売り出しにより83.6%へ下がっている。

カザフスタン事業

カザフスタンでは有限責任事業組合KaR-Tel(VEONの出資比率75.0%)がBeelineブランドで携帯・固定・デジタルサービスを提供する。同社は同国最大の民間通信事業者と位置づけられている。2025年12月末の携帯加入者は1,180万人で前年比1.7%増だった。同社が引く統計委員会などのデータでは、2025年12月末のカザフスタンの携帯接続数は約2,740万件、人口普及率は約134%である。競合はカザフテレコム傘下のKcellとTele2/Altelで、両ブランド合計の加入者は1,560万人とされる。2024年にカザフテレコムはTele2をカタールのパワー・インターナショナル・ホールディングへ売却した。

2026年に入って収益環境は厳しい。2026年第2四半期の売上高は1,073億8,800万テンゲで前年同期比3.8%増だった一方、EBITDAは423億4,500万テンゲと17.5%減り、EBITDAマージンは49.6%から39.4%へ下がった。同社は要因として、2026年1月からの付加価値税の標準税率引き上げ(12%から16%へ)が計上する純収益を押し下げたこと、人件費・広告費・IT費・光熱費・専門家費用が増えたことを挙げている。移動体のARPUは1,865テンゲと8.2%下がり、1人当たり月間データ通信量は22.9ギガバイトと13.4%増えた。

デジタル事業は伸びている。2026年第2四半期のデジタル収入は215億1,400万テンゲで前年同期比26.8%増、売上高に占める比率は20.0%になった。中身は、若者向けの娯楽・通信アプリIZI、モバイル専業銀行のSimply、動画配信のBeeTV、生活アプリのJanymdaなどである。2025年12月末でSimplyの月間利用者は約410万人、IZIは約110万人だった。2025年には現地の分類広告サイトOLXカザフスタンを7,500万ドルで取得する契約に署名しており、2026年8月時点で当局の承認手続きが続いている。固定通信では2025年に34万世帯を追加し、接続世帯数は240万を超えた。

ウズベキスタン事業

ウズベキスタンの事業会社は全額出資子会社のUnitelで、Beelineブランドと若者向けのデジタル専業ブランドOQを持つ。広告・データ事業はVeon AdTech、フィンテックは子会社Beelabとブランド名Beepulが担う。2024年にはUnitelの通信鉄塔を国家鉄塔インフラ(National Tower Infrastructure)という別会社へ切り出し、他社にも設備を貸す形にした。2025年12月末の携帯加入者は770万人超、うち77%が4G利用者で、デジタルサービスの利用者は930万人だった。

2026年第2四半期の売上高は1兆91億8,900万スムで前年同期比5.3%増、EBITDAは3,716億9,200万スムで2.3%増、EBITDAマージンは36.8%だった。移動体のARPUは3万5,296スムで4.7%増、1人当たり月間データ通信量は20.1ギガバイトで29.4%増えている。加入者数そのものは2.6%減っており、単価の引き上げとデータ利用の拡大で収入を伸ばす形になっている。デジタル収入は1,545億3,400万スムで21.0%増、売上高の15.3%を占めた。

設備投資は2026年第2四半期に1,933億2,400万スムと前年同期比47.2%減った。同社はこれを投資時期のずれと説明している。2026年6月には、タシケントIT公園に建設されるデータボルト社のデータセンター「TAS-1」の容量を確保する契約を結び、デジタルサービスの基盤と国内でのデータ保管に充てるとした。

免許は、GSM900/1800、3G、4G/LTEがいずれも全国免許で2031年8月7日まで有効である。データ伝送の免許は無期限、国際通信と長距離通信の免許は2026年、テレビ放送の免許は2028年8月18日までとなっている。2025年にUnitelが国庫へ納めた周波数の年間使用料は666万ドル、免許料は416万ドルだった。

キルギス事業の売却

キルギスでは子会社Sky MobileがBeelineブランドで営業していたが、2025年8月1日にメナクレストAGとエルディク銀行(Eldik Bank)との間で株式譲渡契約が結ばれ、必要な当局の承認を得て同年8月13日に売却が完了した。売却対価は4,500万ドルで、譲渡した純資産の帳簿価額は4,300万ドルだった。ただし外貨換算調整勘定の振替9,900万ドルを反映した結果、連結上は9,700万ドルの売却損を計上している。

キルギスは同社の報告セグメントではなく、2025年までの開示では「本社・調整・その他」の区分に含まれていた。2025年と2026年を比べるときは、キルギスを含む期と含まない期が混ざる点に注意が要る。同社自身、2026年第2四半期の加入者数の前年比について、キルギスを除いた基準では0.6%増になると注記している。なお、カザフスタンのデジタルブランドIZIは2025年にキルギス市場へ参入しており、通信事業の売却後もブランドとしての接点は残っている。

数字の読み方

加入者数の数え方は要注意である。同社はウズベキスタンの競合の加入者数について、GSMAインテリジェンスのデータを引いたうえで「ウズベキスタンでは規制当局による開示がなく、算定方法と定義の違いから出典によって数字が食い違うことがある」と明記している。実際、2025年12月末のUnitelの加入者は、同社の運用指標では770万人、GSMA基準の比較表では760万人と一致しない。同じ表ではUcellが1,160万人、UzMobile(ウズベクテレコム)が1,100万人、Mobiuzが370万人、Perfectumが10万人となっている。

通貨も分けて読む必要がある。グループの連結決算は米ドル建てだが、各国の事業はテンゲ、スム、フリヴニャなど現地通貨で開示され、成長率は現地通貨ベースで示される。テンゲやスムが対ドルで下落した年は、現地通貨で増収でもドル建てでは減収になる。2025年通期のカザフスタン事業は、テンゲベースの売上高が6.5%増だった一方、ドル建てでは4.4%減だった。

EBITDAマージンの比較にも制度要因が入る。カザフスタンでは2026年1月から付加価値税の標準税率が12%から16%へ上がり、これが計上される純収益を押し下げた。前年同期との比較では、この税制変更の影響と事業そのものの動きが混ざる。

地理的な範囲も年によって変わる。2021年にアルジェリア、2023年にロシア、2025年にキルギスの事業が抜けており、複数年の推移を追うときは対象国が揃っているかを確かめる必要がある。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。