ORGANIZATION · COMPANY

ザンゲズル銅モリブデン・コンビナート(ZCMC)

ザンゲズル銅モリブデン・コンビナート(ZCMC)は、アルメニア最大の鉱山会社であり、世界のモリブデン生産上位10社の一角を占める。南部シュニク地方のカジャランで銅モリブデン鉱床を採掘し、銅精鉱とモリブデン精鉱を輸出する。同国の最大の輸出企業であるとともに、多くの年で最大の納税者でもあり、一社の操業状況が国家財政に直接響く規模を持つ。

Zangezur Copper Molybdenum Combine CJSC(ZCMC)
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

ザンゲズル銅モリブデン・コンビナート(ZCMC)は、アルメニア最大の鉱山会社であり、世界のモリブデン生産上位10社の一角を占める。南部シュニク地方のカジャランで銅モリブデン鉱床を採掘し、銅精鉱とモリブデン精鉱を輸出する。同国の最大の輸出企業であるとともに、多くの年で最大の納税者でもあり、一社の操業状況が国家財政に直接響く規模を持つ。

正式名Zangezur Copper Molybdenum Combine CJSC(ZCMC)
所在アルメニア南部シュニク地方カジャラン。首都エレバンから約350キロ
事業銅・モリブデン鉱石の採掘と選鉱。銅精鉱とモリブデン精鉱を生産
処理能力年2,200万トンの鉱石(2023年時点)
従業員約4,600人
納税額417億ドラム(2026年1〜6月、国内首位。前年同期比104%増)
所有ジオプロマイニング系企業が過半。アルメニア政府が21.8%(2024年6月時点)
資金調達ユーラシア開発銀行(EDB)から1億2,000万ドルの与信枠(2026年6月)

事業

カジャランの銅モリブデン鉱床は、アルメニア南部シュニク地方、地方中心都市カパンの西30キロに位置する。2023年時点の処理能力は年2,200万トンの鉱石で、産出される銅とモリブデンは、電気機器、再生可能エネルギー設備、送配電、電動機、家電の材料として使われる。従業員は約4,600人で、カジャランとその周辺の地域社会は事実上この一社に依存している。

2026年6月、ユーラシア開発銀行(EDB)が1億2,000万ドルの非回転型与信枠を設定した。鉱石処理量の引き上げを目的とする投資計画に充てられ、資源基盤の効率化と銅・モリブデン生産量の安定、輸出供給の耐性強化を狙うとされる。

納税額と国家財政

国家歳入委員会の大口納税者リストでは、2026年1〜6月に417億ドラムを納めて首位に返り咲いた。前年同期比で213億ドラム、104%の増加である。2025年通期では521億6,000万ドラムで3位、2023年には約1億7,500万ドルを納めて単独で政府の税収の3%超を占めた。

2025年の第1四半期には上位10社から姿を消し、第2四半期に6位、第3四半期に3位へ戻るという異例の推移をたどった。これは同年初めの操業停止によるもので、一社の稼働がそのまま四半期の国庫収入に映る構図をよく示している。

2025年のストライキ

2025年1月31日、賃上げと労働環境の改善を求めて労働者がストライキに入り、採掘と選鉱が停止した。参加した約700人は、粉じんによる健康被害や経営陣との賃金格差を訴え、賃金水準に応じて20〜40%の引き上げを求めた。同社は違法なストとして退け、組織者を解雇したうえで20%の賃上げを提示したが、操業停止は10日を超えて続いた。

同社の最高責任者はこれを「一部の個人の行動」によるものとし、企業の支配権を狙う勢力の存在を示唆したが、労働者側の主張は労働条件と賃金にあった。アルメニア最大の企業で初めて起きた本格的な労働争議として、地域の経済と雇用の脆さを露わにした出来事である。

所有構造をめぐる争い

同社の所有構造は長く不透明である。2021年10月にロシアの実業家ロマン・トロツェンコが75%を取得し、直後に少数持分をアルメニア政府へ無償で譲渡した。政府の持分はその後21.8%まで増えている(2024年6月時点)。2023年11月に同社はトロツェンコとの関係を断ったと発表し、筆頭株主としてロシア国籍のスヴェトラーナ・エルショワの名を挙げた。

2024年2月、米国はジオプロマイニングと関連企業を制裁対象に指定した。ただしZCMCを直接操業する子会社群は対象に含まれておらず、同社は「いかなる国際制裁も当社には適用されない」との立場をとる。

2024年6月には、12.5%を保有するキプロス登録のウォルノート・ファイナンスが、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)に12億ドルの仲裁を申し立てた。アルメニア政府がこれまでに直面した最大の訴訟で、請求額は当時の政府予算の4分の1弱にあたる。同社は先買権の侵害を主張してアルメニア国内の裁判でも争ってきたが、いずれも退けられている。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

ザンゲズル銅モリブデン・コンビナート(ZCMC)とは | Caspian Intelligence