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アスタナ国際フォーラム(AIF)とは

カザフスタン政府が首都アスタナで開く国際会議「アスタナ国際フォーラム」について、2023年の第1回からの経緯、2024年の中止と2026年の休止、回ごとの主題と出席者、会期中に示された政策発表、金融特区が開く専門会議との役割分担を整理する。

アスタナ国際フォーラム(Astana International Forum、略称AIF)は、カザフスタン政府が首都アスタナで開く総合型の国際会議である。第1回は2023年6月8日と9日に開かれ、トカエフ大統領が主宰した。外交・国際安全保障、エネルギー・気候変動、経済・金融という広い議題を一度に扱い、首脳、国際機関の長、企業経営者、研究者を同じ会場に集める形をとる。

掲げているのは「中堅国(middle powers)」という枠組みである。大国どうしの対立で多国間の仕組みが動かなくなったとき、中規模の国が対話を保ち、仲介し、枠組みを支えるという主張で、カザフスタンはこの立場から国連安全保障理事会の改革と拡大を繰り返し訴えてきた。会議の性格は経済の商談会というより外交の舞台に近く、投資の話題はその外交の枠の中に置かれる。

開催は毎年ではない。2023年に第1回、2024年は国内の大規模な洪水を理由に中止、2025年5月29日と30日に第2回が開かれた。2026年は開催されず、4月22〜24日にアスタナで開かれた地域生態サミット(RES 2026)がこのフォーラムの主催のもとで実施された。フォーラムの公式アカウントは2025年11月16日に、2027年に本体を再開すると告知している。2026年8月時点で、2027年の日程は公表されていない。

カザフスタンの首都では性格の違う国際会議が並行して開かれており、混同しやすい。金融の制度・商品・上場をまとめて発表する専門会議はアスタナ・ファイナンス・デイズで、こちらは政府ではなく金融特区のアスタナ国際金融センターが主催する。第1回のアスタナ国際フォーラムは、前日の2023年6月7日に開かれた同会議に続く日程に置かれていたが、金融側が2024年から9月開催へ移ったため、いまは時期も分かれている。政府が総合の場を、特区が金融の場を持つという二層の構えは変わっていない。

正式名称Astana International Forum(AIF)
主催カザフスタン政府。大統領の主宰のもとで開かれる
開催地カザフスタン・アスタナ。2025年の会場はヘイダル・アリエフ通り12のコングレス・センター
開催の頻度年1回を掲げるが、実際に開かれたのは2023年と2025年の2回。2024年は中止、2026年は本体の開催なし
議題の柱2023年は外交・国際安全保障、経済・金融、エネルギー・気候変動、国際開発とサステナビリティの4分野。2025年は3分野に整理された
第1回(2023年)6月8〜9日。主題は「Tackling Challenges Through Dialogue: Towards Cooperation, Development, and Progress」。全体会合の司会はCNNのリチャード・クエスト氏、国連が戦略パートナー、CNNがメディアパートナー
2024年6月13〜14日に予定されていたが、4月13日にトカエフ大統領が洪水対応への資源集中を理由に中止を表明。代わりに10月16〜17日、フォーラムの主催のもとで第1回アスタナ・シンクタンク・フォーラムが開かれた
第2回(2025年)5月29〜30日。主題は「Connecting Minds, Shaping the Future」。公式パンフレットは40超のパネル・関連行事、100人超の登壇者・司会、1,000人超の海外参加者、70か国超という規模を示していた
2026年本体の開催なし。4月22〜24日の地域生態サミット(RES 2026)がフォーラムの主催のもとで開かれた
2027年公式アカウントが2025年11月16日に再開を告知。日程は2026年8月時点で未公表
2025年の協賛一般パートナーおよびスポンサーはサムルク・カズナ、ERG、フリーダム銀行カザフスタン。公式スポンサーはカザフムィス、カラチャガナク・ペトロリアム・オペレーティング、KAZミネラルズ、ノース・カスピアン・オペレーティング・カンパニー、テンギスシェブロイル、アラタウ市、バイテレク・ホールディング、VISA、ステプノゴルスク軸受工場、カスピアン・オイル、カルメト、RGゴールド
公式サイトastanainternationalforum.org

何のために始まったか

トカエフ大統領は2023年2月7日にアスタナ・タイムズへ寄せた論考で、このフォーラムを「多国間主義の文化を世界規模で立て直すための道具になる新しい国際会議」と説明し、「しばしば小さく扱われる声を増幅する新たな手段にもなる」と書いた。会議の名称に「経済」ではなく「国際」を冠したのは、議題を経済に限定しない意図の表れである。

第1回の開会演説で大統領は、この場の役割を5つに整理した。世界情勢を率直に点検すること、直面する主要な課題と危機を特定すること、それらに対話と相互協力の精神で取り組むこと、共通の多国間主義の文化を新たに築き直すこと、そして平和・進歩・連帯を求める声を増幅することである。同じ演説で、国連が唯一の普遍的な国際機関であり続ける一方、安全保障理事会の包括的な改革なしには課題に対処できないとし、理事会における中堅国の発言力を高めるべきだと述べた。

カザフスタンにとってこの会議は、東西・南北の結節点という自国の位置づけを対外的に示す装置でもある。1992年に提唱したアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)、2003年から続く世界伝統宗教指導者会議、シリア問題のアスタナ・プロセスといった一連の会議外交の延長線上にあり、フォーラムはその最新の枠組みにあたる。

アスタナ経済フォーラムとの関係

アスタナでは2008年から2019年まで、アスタナ経済フォーラム(Astana Economic Forum、AEF)という別の年次会議が開かれていた。主催者の公式サイトによれば、11年間で150か国から5万人の代表が参加し、20人超のノーベル賞受賞者と30人の外国要人が登壇し、300件超の覚書・協定(総額200億ドル超)が結ばれたとされる。2018年5月の回からは「グローバル・チャレンジズ・サミット」という新しい形式に衣替えした。最後の開催は2019年5月16〜17日で、以後は行われていない。

両者の関係については見方が分かれる。カザフスタン政府側は、アスタナ国際フォーラムを新しい会議として提示している。トカエフ大統領は2023年2月に「我々はアスタナ国際フォーラムという新しい国際会議を立ち上げた」と書いており、2023年の回を「第1回」と数えている。一方で、タイムズ・オブ・セントラルアジアに寄稿した分析は、2008年に始まった経済フォーラムが徐々に外交の場へ性格を変え、その改称がアスタナ国際フォーラムであると位置づけている。

事実として確認できるのは、経済フォーラムが2019年を最後に途絶えたこと、アスタナ国際フォーラムが2023年に「第1回」として始まったこと、主催が政府であり議題が経済を超えて外交・安全保障へ広がったことである。読み手はこの二つを別の会議として数えるか連続したものとして数えるかで、開催回数の説明が変わることを念頭に置く必要がある。

第1回(2023年)——誰が来て、何が起きたか

第1回には、カタールのタミム首長、キルギスのジャパロフ大統領、ボスニア・ヘルツェゴビナ幹部会議長のツヴィヤノヴィッチ氏、ウズベキスタンのアリポフ首相が国の代表として出席した。国際機関からは国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事、ユネスコのアズレー事務局長、欧州安全保障協力機構(OSCE)のシュミット事務総長、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)のアリスジャバナ事務局長らが登壇した。国連のグテーレス事務総長はビデオメッセージを寄せた。欧州委員会の元委員長バローゾ氏、経済学者のヌリエル・ルービニ氏も加わっている。

投資家にとって重要なのは、同じ6月8日に外国投資家評議会の第35回総会がフォーラムと併せて開かれたことである。この評議会は大統領が議長を務め、カザフスタンに進出した大手外資が政府と直接向き合う常設の場で、2023年は設立25周年にあたっていた。フォーラムはこの種の既存の枠組みを引き寄せる器としても使われている。

演説の中で大統領は、中間回廊(カスピ海横断国際輸送ルート)が中国と欧州を結び、インド洋経由に比べて所要時間をほぼ半減させると述べ、一帯一路におけるカザフスタンの役割を強調した。気候については、中央アジアが世界平均を上回る昇温にさらされ、干ばつと洪水で年間の国内総生産(GDP)の1.3%相当の損害が生じ、2050年までに収穫が3割減り、約500万人の国内気候移民が生じうるという見通しを示した。そのうえでアルマトイに中央アジア諸国の事業事務所を置くこと、2026年に国連などの後援で地域気候サミットをカザフスタンで開くことを提案した。この提案が、2026年4月に実現した地域生態サミットにつながる。

2024年の中止と、シンクタンク・フォーラムへの振り替え

2024年の回は6月13〜14日に予定されていたが、4月13日にトカエフ大統領が自身のSNSで中止を表明した。理由は、国内で発生した大規模な洪水への対応と被災者支援に財政資源を振り向ける必要があることだった。年次会議として告知していた行事を国内事情で取りやめた例であり、この会議が政府予算に依存していることを示している。

同じ年の10月16〜17日、大統領付属カザフスタン戦略研究所(KazISS)が、フォーラムの主催のもとで第1回アスタナ・シンクタンク・フォーラムを開いた。主題は「変化する世界秩序における中堅国」で、22か国から45人超の専門家が参加した。トカエフ大統領は全体会合で、大国が対立や合意不能に陥ったときに対話を保ち、仲介し、協力の枠組みを支えるのは中堅国であると述べている。第2回は2025年10月15〜16日に9つのセッションで開かれた。

本体が開かれない年に専門家会合が代替として機能した形で、フォーラムの公式サイトは2024年と2025年のシンクタンク・フォーラムのページをいまも掲げている。

第2回(2025年)——中堅国論と首脳外交の重ね合わせ

第2回は2025年5月29〜30日、主題は「Connecting Minds, Shaping the Future」だった。議題の柱は外交・国際安全保障、エネルギー・気候変動、経済・金融の3つで、2023年の4分野から整理されている。全体会合ではトカエフ大統領のほか、ルワンダのカガメ大統領、北マケドニアのシリャノフスカ・ダフコワ大統領、欧州評議会のベルセ事務総長、国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉事務局長、元国連事務総長で地球環境戦略機関(GGGI)の潘基文氏が演説した。イタリアのメローニ首相は5月30日、トカエフ大統領との特別セッションに加わった。

この回はイタリアとの首脳外交と重なっていた。5月30日にアスタナで第1回中央アジア・イタリア首脳会議が開かれ、メローニ首相と中央アジア5か国の首脳が出席した。総合フォーラムに首脳級の日程を接続して同時に処理するという運び方は、この会議の使い方をよく示している。

大統領の演説には投資に直接かかわる発表が含まれていた。暗号資産で商品やサービスを購入できる実験区域「クリプトシティ」を設けること、今後5年で100万人にAIの訓練を施すこと、国内最強のスーパーコンピュータを導入したことを挙げ、ウランの世界生産の40%を占める立場から原子力を国家戦略の最重点に置くと述べた。また、2か月前に国連総会がアルマトイに中央アジア・アフガニスタン向け持続可能な開発目標(SDGs)地域センターの設置を正式に決めたこと、2026年に国連と共同で地域生態サミットを開くことを報告している。

セッションの構成も、この地域を追う読者には手がかりになる。FAOが「中央アジアの持続可能な未来への鍵となる投資としての水の安全保障」を、ユーラシア開発銀行が域内の成長を、経済協力開発機構(OECD)が経済の強靱性を、KAZENERGY協会がエネルギー安全保障を、それぞれセッションパートナーとして担当した。アラタウ市の開発を扱う単独のセッションが設けられ、アフガニスタンのアジジ商工相との一対一の対話も行われている。「Trade as a Weapon(武器としての貿易)」のパネルには、フリーダム・ホールディングのトゥルロフ最高経営責任者が登壇した。

何が決まり、何が決まらないか

この会議で署名される国家間の条約や拘束力のある合意は、いまのところ確認できない。会期中に出てくるのは、大統領の演説で示される国家の方針(クリプトシティ、AI人材育成、地域サミットの提案)、国際機関との協力の意思表明、併催される別枠組みの会合の結果である。2024年3月にはボアオ・アジアフォーラムとの協力覚書に署名しているが、これは会議どうしの提携であって政策の決定ではない。

実際に制度が動いたことが後から確認できる例はある。2023年の会期中に大統領が提案した地域気候サミットは、2023年12月19日の国連総会決議78/147で支持され、2026年4月にアスタナで地域生態サミットとして実現し、中央アジア首脳の共同宣言と国連機関との地域行動計画(2026〜2030年)の採択に至った。フォーラムは決定の場ではなく、提案が公の場に置かれ、その後に別の手続きで制度化されていく起点として働いている。

投資家がこの会議の記事を読むときに要るのは、その区別である。会期中の発言は方針の表明であって、税制・許認可・法域の変更は大統領令や政府決定、規制当局の規則によって別に行われる。会議で語られた数字や目標がそのまま確定した政策ではない。

2026年の扱いと、今後の予定

2026年はフォーラム本体が開かれていない。公式サイトの行事一覧にも2026年の回は載っておらず、掲載されているのは4月22〜24日の地域生態サミットである。同サミットは生態・天然資源省が国連などと共同で運営し、約1,500人が参加、58の行事が行われ、トカエフ大統領が出席する高官級の全体会合で開幕した。フォーラムの側は4月22日付で、同サミットで自らが持ったセッション「世界の気候協力の将来」の要旨を公表している。

フォーラムの公式アカウントは2025年11月16日に、2026年はアスタナ国際フォーラムの主催のもとで地域環境サミットを開き、フォーラム自体は2027年に再開すると告知した。2026年8月時点で、2027年の具体的な日程・主題・会場は公表されていない。

結果として、2023年から2026年までの4年間で本体が開かれたのは2回にとどまる。「年次会議」という説明と実際の開催頻度にはずれがあり、次回の確定情報が出るまでは開催を前提にした予定の組み方はできない。

カザフスタンの外交と投資誘致における位置づけ

この会議の狙いは二重である。ひとつは、ロシアと中国に挟まれた内陸国が、どちらの陣営にも属さない多方位外交の担い手として認知されること。もうひとつは、そこへ集まった要人と企業に投資先としての国内を見せることである。2023年に外国投資家評議会の総会を、2025年に中央アジア・イタリア首脳会議を同じ日程に重ねたのは、後者の狙いを効率よく果たすためである。

協賛の顔ぶれも、この会議が国内の主要企業と国家資本の支えで成り立っていることを示している。2025年の一般パートナーは国家福祉基金サムルク・カズナ、一般スポンサーはユーラシア資源グループ(ERG)、公式銀行はフリーダム銀行カザフスタンで、公式スポンサーには石油・鉱業の大手(テンギスシェブロイル、ノース・カスピアン・オペレーティング・カンパニー、カラチャガナク・ペトロリアム・オペレーティング、カザフムィス、KAZミネラルズ、カルメト、RGゴールド)や、国営持株会社バイテレク、新設の経済特区であるアラタウ市が並んだ。資源とインフラが会議の費用を支え、その会議が資源とインフラへの投資を呼ぶという循環である。

中央アジア・コーカサスを見る側にとっては、この会議は各国の首脳・閣僚が短期間に一か所へ集まる機会でもある。2023年にはキルギス大統領とウズベキスタン首相が、2025年にはアフガニスタンの商工相が登壇した。域内の合意や共同宣言そのものはより実務的な首脳協議で出るが、その前段の議論がどこへ向かっているかは、この会議の議題の並びから読み取れる。

資料と数字の読み方

参加者数は発表元によって大きく食い違う。2023年の回について、アスタナ・タイムズは開催前に「100か国超からの代表が出席予定」と報じ、フォーラム自身が6月23日に出した総括は「40か国超から5,000人超の代表」とし、同じ会議を報じた別の発表文は「70か国から1,000人超の参加」としている。中堅国に関する論考は「4,000人超の参加者」と書いた。いずれも一次に近い資料だが、数え方(登録者、入場者、オンライン視聴を含むか)が明示されていないため、そのまま年次比較には使えない。

2025年の規模の数字は、開催前に配られた公式パンフレットに載っているものである。40超のパネルと関連行事、100人超の登壇者・司会、10人超の閣僚、100人超の大使・外交官、1,000人超の海外参加者、70か国超という内容で、これらは実績ではなく計画値にあたる。会期後の集計は2026年8月時点で確認できていない。

一次資料の所在は分かりやすい。大統領の演説の全文は大統領府のサイト akorda.kz に英語で載る。プログラム、登壇者、協賛の一覧は公式サイトのパンフレット(PDF)にまとまっている。公式サイトはニュースと行事の一覧をJSONで返す仕組みを持っており、過去の発表を日付順に追える。日本語・英語の報道だけでは開催の有無すら分かりにくいので、開催年を確認するときはこの行事一覧を見るのが早い。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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