鉱山会社が「埋蔵量◯◯トン」と発表するとき、その数字がどれだけ確からしいかは、どの規準に沿って算定・報告したかで決まる。JORC規準(JORCコード)は、この公表報告の最低基準を定めた文書である。1971年に設立された合同鉱石埋蔵量委員会が1989年に初版を出し、現行は2012年版である。豪州証券取引所(ASX)とニュージーランド証券取引所(NZX)は上場規則にこれを取り込んでおり、探査目標・探査結果・鉱物資源量・鉱石埋蔵量に言及する公表報告はこの規準に従わなければならない。
JORCは豪州の規準だが、影響は世界に及ぶ。1994年以降、鉱物埋蔵量国際報告基準委員会(CRIRSCO)がJORCの定義を土台に国際的な標準定義をつくり、各国がそれに沿った自国の規準を整えてきた。中央アジアではカザフスタンがこの系列に加わっており、鉱業の投資判断で「JORC準拠」「CRIRSCO準拠」という言い方が使われるのはこのためである。
| 正式名 | Australasian Code for Reporting of Exploration Results, Mineral Resources and Ore Reserves(探査結果・鉱物資源量・鉱石埋蔵量の報告に関するオーストララシア規準) |
|---|---|
| 策定主体 | 豪州鉱業冶金学会(AusIMM)、豪州地球科学者協会(AIG)、豪州鉱業評議会による合同鉱石埋蔵量委員会(JORC) |
| 現行版 | 2012年版。2012年12月20日発効、2013年12月1日から義務化 |
| 三原則 | 透明性(Transparency)、重要性(Materiality)、専門性(Competence) |
| 資源量の区分 | 確信度の低い順に推定(Inferred)、概測(Indicated)、精測(Measured) |
| 埋蔵量の区分 | 確定可能(Probable)、確定(Proved) |
| 有資格者 | コンピテント・パーソン。当該鉱化様式・活動で最低5年の実務経験と、懲戒権限を持つ職能団体の会員資格が要る |
| 国際的な枠組み | CRIRSCO(鉱物埋蔵量国際報告基準委員会)。加盟する国別報告機関は2025年時点で16 |
| カザフスタン | KAZRC協会が2016年にCRIRSCOへ10番目の加盟。KAZRCコードは2016年からKASE、2019年からAIXの上場規則に取り込まれ、2018年からは国家機関への報告にも法制上採用された |
三つの原則
規準の運用は三つの原則に立つ。透明性は、読み手が報告を理解でき、情報の欠落によって誤導されないだけの情報が示されることを求める。重要性は、投資家とその助言者が判断のために当然求める情報がすべて含まれることを求め、含めない情報があるときはその理由の説明を要求する。専門性は、報告が、強制力のある職業倫理規程に服する適格な人物の責任のもとで行われた作業に基づくことを求める。
規準は「表1」として評価・報告の点検項目を並べ、初めて報告する重要案件や、前回から内容が大きく変わった場合には、各項目を「議論する。しないならなぜか(if not, why not)」の方式で説明することを義務づけている。項目を検討したうえで重要でないと判断したのか、そもそも未着手なのかが、読み手に分かるようにするためである。
資源量と埋蔵量の区分
鉱物資源量(Mineral Resource)は、経済的に関心のある固形物の濃集で、いずれ経済的に採掘できる合理的な見込みがあるものを指す。地質的な確信度の低い順に、推定(Inferred)、概測(Indicated)、精測(Measured)の3区分に分かれる。推定資源量は、地質的証拠が連続性を示唆するにとどまり検証されていない段階のもので、埋蔵量へ転換してはならないと明記されている。
鉱石埋蔵量(Ore Reserve)は、精測または概測の資源量のうち経済的に採掘可能な部分である。希釈材や採掘損失を織り込み、予備可能性調査(プレフィージビリティ)または可能性調査(フィージビリティ)の水準の検討で、報告時点において採掘が合理的に正当化できることを示す必要がある。概測資源量から導かれるものが確定可能埋蔵量(Probable)、精測資源量から導かれるものが確定埋蔵量(Proved)である。
重要なのは、資源量と埋蔵量が包含関係にあり、同じ鉱体について両方の数字が存在しうる点である。規準は、資源量の記述に「鉱石(ore)」「埋蔵量(reserves)」という語を使ってはならないと定めている。数字を読むときは、それが資源量なのか埋蔵量なのか、どの区分なのかを確認する必要がある。
コンピテント・パーソン
規準は報告の責任を個人に帰する。コンピテント・パーソン(有資格者)と呼ばれ、AusIMMかAIG、または規準が認める職能団体(RPO)の会員であることが条件である。これらの団体は会員の資格停止や除名の権限を持つ懲戒手続きを備えていなければならない。
経験の要件は、対象となる鉱化様式または鉱床型と、自分が担当する作業の双方について最低5年である。探査結果を扱うなら探査の経験、資源量の推定を扱うなら資源量の推定・評価の経験、埋蔵量を扱うなら埋蔵量の推定・評価と経済的採掘の経験でなければならない。初回または内容が大きく変わった公表報告では、この人物の氏名と所属先を報告書に明記し、本人が掲載に同意した旨を記載する。
この仕組みは、数字の責任の所在を明確にするためのものである。会社の発表を読むときに、誰が有資格者として署名しているかを確認する意味はここにある。
CRIRSCOと各国の規準
CRIRSCO(Committee for Mineral Reserves International Reporting Standards)は1994年に活動を始め、JORCの定義を土台に国際的な標準定義をまとめてきた。1997年に豪州、カナダ、南アフリカ、米国、英国の各団体が暫定合意に達し、1998年にはその定義が国連欧州経済委員会の資源分類の枠組みへ取り込まれた。CRIRSCOは各国が自国の規準をつくるための「テンプレート」を用意しており、加盟するのは国別報告機関(NRO)である。
加盟の広がりは続いている。1994年からのオーストララシア(JORC)、カナダ(CIM)、欧州(PERC)、南アフリカ(SAMCODES)、米国(SME)に、チリ(2003年)、ロシア(2011年)、モンゴル(2014年)、ブラジル(2015年)、カザフスタン(2016年)、インドネシア(2017年)、コロンビアとトルコ(2018年)、インド(2019年)、フィリピン(2023年)、中国(2025年)が加わった。
カザフスタンのKAZRCコード
中央アジアで最も制度が整っているのはカザフスタンである。KAZRC協会が2016年にCRIRSCOの10番目の加盟機関となり、CRIRSCOテンプレートに沿ったKAZRCコードを運用している。同コードは2016年からカザフスタン証券取引所(KASE)に、2019年からアスタナ国際取引所(AIX)の上場規則に取り込まれた。
国家への報告にも使われる。KAZRC協会によれば、2018年以降、鉱物資源量と埋蔵量の評価に関する国家機関(産業建設省地質委員会)への報告にKAZRCコードが法制上採用されており、これまでに122件の報告が同コードに基づいて受理されている(2026年8月時点の同協会の記載)。
協会の構成は、2024年1月までが7会員(業界団体のAGMPとAPGO、独立地下資源専門家公共協会PONEN、カズジオロジー、カザフミス・コーポレーション、カズジンク、マイクロマイン・セントラルアジア)で、2024年1月からERGエクスプロレーション、ポリメタル・ユーラシア、カザフスタン鉱業会議所が加わった。CRIRSCOの一覧では、キルギスが加盟候補として挙げられている。
実務上の注意点は、旧ソ連圏では国家の分類体系(いわゆる国家埋蔵量委員会の区分)が長く使われてきたことである。カザフスタンの企業の発表や政府の統計に出てくる資源量・埋蔵量の数字が、CRIRSCO系列の規準に基づくのか、国家の分類に基づくのかは自明ではない。両者は前提とする確信度も経済性の検討も異なるため、同じ鉱床の数字でも一致しない。数字を比べるときは、まずどちらの基準によるものかを確かめる必要がある。
参考資料
- The JORC Code 2012 Edition(合同鉱石埋蔵量委員会) ↗
- CRIRSCO Members(鉱物埋蔵量国際報告基準委員会) ↗
- KAZRC Association(公式サイト、英語) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。