解説 · 2026年8月時点
アゼルバイジャン鉄道(ADY)は、同国の国有鉄道会社である。カスピ海に面したバクーからジョージア国境、そしてトルコへ抜ける東西の幹線を運営し、中間回廊(カスピ海横断輸送ルート)のコーカサス側の入口を担う。2025年2月の大統領令でバクー国際海上貿易港が統合され、いまでは鉄道と港湾を一体で運営する会社になった。中国から欧州へロシアを迂回して貨物を運ぶ流れが太くなるかどうかは、この会社の輸送実績に最も直接的に表れる。
| 正式名 | Azerbaijan Railways CJSC(ADY) |
|---|---|
| 本社 | アゼルバイジャン・バクー |
| 事業 | 鉄道による貨物・旅客輸送。2025年からバクー国際海上貿易港の運営も担う |
| 貨物輸送量 | 1,680万トン超(2025年) |
| 通過(トランジット)輸送 | 650万トン超(2025年) |
| 旅客数 | 1,030万人超(2025年) |
| 港のコンテナ取扱量 | 10万7,000TEU超(2025年) |
| 起源 | 1880年に国内初の路線が開業 |
| 所有形態 | 全株式がアゼルバイジャン国有(AZCONホールディング傘下) |
沿革
起源は1880年にさかのぼる。バクー油田の原油を運ぶ輸送路として発達し、ソ連期はザカフカス鉄道の一部をなした。独立後に国有会社として再編され、軌間1,520ミリの旧ソ連規格の路線網を引き継いでいる。
転機となったのは2017年に開通したバクー・トビリシ・カルス(BTK)鉄道である。アゼルバイジャンからジョージアを経てトルコへ直結するこの路線により、カスピ海と欧州が鉄道でつながった。BTKは改修を経て輸送能力が年間100万トンから500万トンへ引き上げられている。
港湾との統合
2025年2月25日の大統領令により、バクー国際海上貿易港がアゼルバイジャン鉄道に統合された。鉄道の運行と港の荷役、そして物流の手続きを一つの会社で管理する狙いである。港湾側の責任者は、鉄道と港の作業を同期させたことで、大きな追加投資をせずに貨物処理が速くなったと説明している。
この統合は、中間回廊のボトルネックがどこにあるかを踏まえた措置と読める。カスピ海を渡る貨物は、鉄道から船へ、船から鉄道へと積み替えが必要になる。積み替え地点で待たされることが回廊全体の所要日数を押し上げてきたため、鉄道と港を同じ指揮系統に置くことが処理能力の実質的な増強につながる。
輸送実績
2025年の貨物輸送量は1,680万トン超、通過輸送は650万トン超、旅客は1,030万人超だった。港のコンテナ取扱量は10万7,000TEU超である。2025年1〜9月には296本のコンテナブロックトレインを受け入れ、うち115本超が中間回廊の通過列車で、前年同期比39%増だった。輸入と通過のコンテナ輸送量は10万3,134TEUと前年を20%上回っている。
同社の輸送実績は、隣国ジョージアの鉄道の数字と合わせて読むと精度が上がる。カスピ海を渡ってきた貨物がアゼルバイジャン領内を通り、ジョージアを経て黒海かトルコへ抜けるという流れが、二つの国有鉄道の統計に順に現れるためである。
参考資料
- Azerbaijan Railways — AZCON Holding(公式ポートフォリオ、2025年実績) ↗
- Baku Port Handles 37% More Containers in 2025 — Maritime Professional ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。