解説 · 2026年8月時点
アルメニア原子力発電所は、首都エレバンの西方メツァモールにある同国唯一の原子力発電所である。1980年に運転を開始したソ連製のVVER-440を1基だけ運転し、国内発電量のおよそ3割を賄う。エネルギー資源を持たず陸路の一部を閉ざされたアルメニアにとって、この1基は電力自給の要であり、同時に高い地震活動域にある旧世代炉として国際的な懸念の対象にもなってきた。
| 正式名 | Armenian Nuclear Power Plant(メツァモール原子力発電所とも) |
|---|---|
| 所在 | アルメニア・メツァモール。トルコ国境から16キロ |
| 炉型 | ロシア型加圧水型炉VVER-440(モデルV-230)。2号機のみ稼働 |
| 出力 | 総出力40万7,500キロワット(正味37万6,000キロワット) |
| 運転開始 | 1号機1976年、2号機1980年 |
| 発電量 | 27億キロワット時(2023年、国内発電量の30%) |
| 所有 | アルメニア国有 |
| 運転期限 | 2036年まで延長する計画。2026年4月から5か月間停止して改修工事 |
歴史
総出力40万7,500キロワット(正味37万6,000キロワット)のV-230型2基が硬い玄武岩の岩盤の上に建設され、それぞれ1976年と1980年から送電を始めた。設計上の運転期間は30年で、高い地震活動域に建設されることを前提に設計された最初のロシア型炉でもあった。
1988年12月、北西アルメニアで少なくとも2万5,000人が死亡する大地震が発生した。震源から75キロの同発電所は損傷なく運転を続けたが、安全上の懸念から翌1989年に2基とも停止された。1号機はその後廃止措置に入っている。深刻な経済危機を受けて1993年に2号機の再稼働が決まり、6年半の停止を経て1995年に運転を再開した。以来、国際原子力機関(IAEA)が安全性向上に関与している。
運転期間の延長
2018年からロスアトム傘下のアトムエネルゴレモントがタービンの近代化を進め、出力を15〜18%引き上げた。2021年には140日間の停止を伴う大規模工事が行われ、運転期間の延長が図られた。同年10月、規制当局は運転免許を2026年9月まで延長し、政府は追加投資により2036年まで延ばしうるとの見通しを示した。
2024年12月、ロスアトム傘下のルサトム・サービスとの間で6,500万ドルの近代化契約が結ばれた。2036年までの延長を支える工事で、資金はアルメニア政府から発電所の運営主体への貸付で賄われる。2026年4月、この工事のために通常の45日程度ではなく5か月間の停止に入った。
トルコ国境からわずか16キロという立地もあり、欧州連合と近隣国は長く早期閉鎖を求めてきた。アルメニア側は代替電源が確保されるまで運転を続ける立場を崩していない。政府は2036年以降さらに10年延長する可能性に言及する一方、次世代炉あるいは小型モジュール炉(SMR)の導入も検討課題としている。
参考資料
- Nuclear Power in Armenia — World Nuclear Association ↗
- Armenia — World Nuclear Performance Report — World Nuclear Association ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。