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バクー造船所

バクー造船所(Baku Shipyard)は、カスピ海沿岸のバクーにある造船・修繕の総合工場である。2011年に、アゼルバイジャン国営石油会社SOCAR、国有のアゼルバイジャン投資会社(AIC)、シンガポールのケッペル・オフショア&マリンの合弁として設立され、2013年9月20日に操業を始めた。カスピ海では最大級の近代的な造船設備を持つ。

Bakı Gəmiqayırma Zavodu
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

バクー造船所(Baku Shipyard)は、カスピ海沿岸のバクーにある造船・修繕の総合工場である。2011年に、アゼルバイジャン国営石油会社SOCAR、国有のアゼルバイジャン投資会社(AIC)、シンガポールのケッペル・オフショア&マリンの合弁として設立され、2013年9月20日に操業を始めた。カスピ海では最大級の近代的な造船設備を持つ。

カスピ海は閉じた海であり、外洋から大型船を回航して持ち込むことができない。域内で使う船は域内で建造・修繕するほかなく、この制約が同工場の位置づけを決めている。タンカー、フェリー、作業船、浮きドック、半潜水式の掘削リグまで手がけ、修繕は年間80〜100隻を扱う設計になっている。

正式名“Baku Shipyard” LLC(Bakı Gəmiqayırma Zavodu)
設立2011年5月10日に合弁会社として設立。起工は2010年3月19日、操業開始は2013年9月20日
設立時の出資SOCAR 65%、アゼルバイジャン投資会社(AIC)25%、ケッペル・オフショア&マリン(シンガポール)10%
本拠バクー。カスピ海沿岸、ヘイダル・アリエフ記念バクー深海ジャケット工場に隣接
事業各種船舶の新造・修繕・改造、海洋エンジニアリング
設備岸壁1,100m(平均水深7m)、浮きドック168m×40m(入渠能力2万5,000トン)、船舶昇降設備1万8,000トン
実績新造の完工13件、建造中13件、修繕の完了86件(2025年、AZCON集計)
運営2018年6月30日にケッペル系企業との運営・技術サービス契約を終了し、運営はSOCARへ移管
現在の帰属AZCONホールディングの傘下企業として紹介されている

沿革

2010年3月19日、大統領イルハム・アリエフが出席して起工式が行われた。計画では、金属構造物を年2万5,000トン、載貨重量1万5,000トン級のタンカーを年4隻(あるいは「カスピ・マックス」級6万〜7万トンのタンカー2隻)、AHTSやPSVといった作業船を建造し、各種の船舶80〜100隻を修繕できる規模とされた。SOCAR、AIC、ケッペル・オフショア&マリンの3者が工場の建設と運営に関する覚書を結び、建設は3年半で完了した。

合弁会社は2011年5月10日にアゼルバイジャン法にもとづいて設立され、2013年9月20日に大統領が出席して開所式が開かれた。設立時の出資比率はSOCARが65%、AICが25%、ケッペル・オフショア&マリンが10%である。

出資者のうちアゼルバイジャン投資会社(AIC)は、2006年の大統領令で設立された国有の株式会社である。非石油部門で活動する株式会社などの授権資本に出資し、長期の投資を確保することを目的としており、造船所への出資もその一例にあたる。SOCARは探鉱・開発から精製、輸送、販売までを手がける国営石油会社で、カスピ海の海洋事業の主要な発注者でもある。

立ち上げの局面では、ケッペル側の子会社カスピアン・オフショアが運営を、KSMマネジメントが技術サービスを請け負っていた。ケッペル・コーポレーションの開示によれば、両契約は2018年6月30日をもって終了し、運営はSOCARへ引き継がれた。ケッペル・オフショア&マリンはその後も間接的に8.5%の持分を保持すると同社は説明している。2026年8月時点では、工場の公式サイトも運輸通信持株会社AZCONも、同社をAZCONホールディングの傘下企業として紹介している。

設備と能力

岸壁の総延長は1,100mで、平均水深は7mである。浮きドックは168m×40m、2万5,000トンまでの船を入渠させられる。船舶昇降設備は1万8,000トンまでの船を陸上へ引き上げ、複数の船の修繕・改造を同時に進めることができる。カスピ海でこの規模の浮きドックを持つのは同工場だけだと会社は説明している。

生産工程には金属の切断、形鋼と鋼板の曲げ加工、3次元のパイプ切断といった数値制御の設備が入っており、機械はフィンランド、オランダ、ドイツ、日本、英国、韓国、シンガポールの製品を使っている。

設計・エンジニアリング部門は詳細設計、生産図面、技術支援、機器の試験を担当し、DNV、ABS、ロイズ船級協会、ビューロー・ベリタス、ロシア海事船級協会、中国船級社といった主要な船級協会の基準に沿って作業する。

建造した船

新造船の例としては、原油・化学品タンカーの「ザンギラン」と「ホシュバフト・ユシフザデ」がある。いずれもロシア海事船級協会の船級で設計・建造された単甲板の自航タンカーで、貨物タンク6基を備え、密度1.015t/m3までの原油・石油製品を2種類同時に運べる。二重船底・二重船殻で、氷海等級Ice1を満たす。

カーフェリー「ザリファ・アリエヴァ」のような鉄道車両と旅客を運ぶフェリーも建造している。カスピ海で唯一の多目的海底工事船「ハンケンディ」(DP3対応)も同工場の建造である。

近年では、オランダのダーメン・シップヤーズが設計し、アゼルバイジャン鉄道傘下のバクー港が発注した浚渫船「ムヘンディス・ソルタン・カズモフ」が浮きドックを使って進水した。緊急事態省向けの救難・消防兼用の特殊船の建造にも着手している。工場の公表によれば、2025年第1四半期のRo-Pax型船の工事進捗率は前年同期の17.52%から56.32%へ、タンカーは17.89%から66.97%へ上がった。

位置づけ

AZCONの集計では、2025年に完工した新造工事は13件、建造中が13件、完了した修繕工事は86件である。修繕の件数が新造を大きく上回る構成で、カスピ海の既存船隊を維持する役割が事業の中心にあることがわかる。

カスピ海船舶公社(ASCO)やバクー港といった国内の国有発注者が主要な顧客であり、中東回廊や中央回廊の貨物量が増えれば、フェリーやタンカーの更新需要がそのまま同工場の受注につながる。工場側も、国内需要への対応と国際市場への進出の両面を掲げている。

工場は安全と品質を経営方針の柱に掲げ、船級協会の基準に沿った検査体制と、従業員・請負業者の安全教育を重視すると説明している。廃棄物管理とリサイクル、供給網の構築、人材育成も方針に含まれる。

財務諸表は公表されていない。従業員数も公表資料からは確認できない。受注残や船種別の生産能力の稼働率といった、造船業を評価するうえで通常参照される指標も公表がなく、外部から追える数字はAZCONが年に一度示す件数の指標に限られる。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

バクー造船所とは | Caspian Intelligence