アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が8月21日、トルクメニスタンとの間で交わした5つの文書を承認する大統領令に署名した。大統領府が公開した命令の原文によれば、いずれも2026年6月22日にバクーで署名されたもので、対象は経済協力、防衛、エネルギー、税関統計、食品安全の5分野にわたる。APAも同日に報じた。
5件の命令はいずれも憲法109条17項に基づくもので、文書ごとにアゼルバイジャン側で実施を担う機関を指定している。
| 承認された文書 | 形式 | 実施を担う機関 |
|---|---|---|
| 経済協力の発展・深化の主要方向に関する協定 | 政府間協定 | 経済省 |
| 防衛分野の協力に関する了解覚書 | 政府間覚書 | 国防省 |
| エネルギー分野の協力に関する協定 | 政府間協定 | エネルギー省 |
| 相互貿易の税関統計分野の協力に関する議定書 | 両国税関当局間の議定書 | 国家税関委員会 |
| 食品安全分野の協力に関する協定 | 政府間協定 | 食品安全庁 |
5件の命令はどれも、外務省がトルクメニスタン政府に対し、発効に必要な国内手続きを終えた旨を通知するよう定めている。今回の署名は発効そのものではなく、アゼルバイジャン側の手続きが済んだ段階を意味する。文書の本文は大統領府のページに添付されておらず、公開されているのは承認命令の文面だけである。
署名の場は、6月22日から23日にかけて行われたセルダル・ベルディムハメドフ大統領のアゼルバイジャン国賓訪問だった。大統領府の発表によると、22日の文書交換式では両大統領が共同声明に署名したうえで、12件の文書が交わされた。今回承認された4件のほか、貨物と車両の情報を初期段階で交換するための税関の技術仕様、スポーツ、労働・社会保障、保健の各覚書、2026〜2028年の産業協力プログラム、農業の覚書、アゼルバイジャン中央銀行とトルクメニスタン財務経済省の覚書、両国外務省の2026〜2029年協力プログラムが並ぶ。この一覧に防衛分野の覚書は入っていない。ただし一覧は式典の場で交わされた文書を並べたものなので、式典の外で署名された文書までは対象にしていない。承認命令のほうは、同覚書も6月22日にバクーで署名されたと記している。
同じ22日には、アゼルバイジャンがトルクメニスタンに贈った石油タンカー「ドストルク(友好)」の引き渡し式がオンライン形式で開かれた。大統領府によれば、同船はバクー造船所で建造され、全長141メートル、幅16.9メートル、喫水4.54メートル、載貨重量7,875トンである。同造船所はこれまでに14隻を建造し、170隻以上を修理した。受注残17隻のうち11隻が建造中、6隻が設計段階にあるという。
記者発表でアリエフ大統領は、輸送と物流の協力は長期的であり戦略的だと述べ、両国の取り組みで既に増えている貨物量をさらに増やし、第三国の貨物を呼び込むために調整を深めることで合意したと説明した。ベルディムハメドフ大統領は、エネルギー、輸送、化学、繊維の各分野を優先分野に挙げ、両国の領域を通る東西方向の輸送・通過回廊の整備で緊密に協力することで一致したとした。カスピ海沿岸5か国の枠組みでの協調を続けることにも触れている。アリエフ大統領は、アゼルバイジャンが中央アジア首脳協議会合に正式加盟する際にトルクメニスタンが支持したことにも謝意を示した。両国は中央アジア5か国とアゼルバイジャンによる枠組みに同席する関係でもある。
5件のうち、外から見て意味が大きいのは税関統計の議定書である。トルクメニスタンは対外貿易の詳細を自国から公表しておらず、同国の貿易額は取引相手側の統計から推し量るしかない。同国の1〜7月の対中貿易57億6,469万ドルという数字も、中国海関総署の通関統計から得られたものだった。両国の税関当局が相互貿易の統計で協力するというのは、少なくとも二国間では突き合わせのできる数字を作るという意味になる。トルクメニスタンはカザフスタンとの間でも税関の事前情報の電子交換を始めており、隣接国との通関の接続を個別に進めている。
一方、エネルギー協定の中身が公表されていない以上、カスピ海を挟んだエネルギーの取り扱いについて今回の承認から読み取れることはない。大統領府の発表にも具体的な事業名は出てこない。確認できるのは、アゼルバイジャン大統領府が公開した命令の文面と、同府の発表に記された文書名と署名者までである。トルクメニスタン側の発表は国営通信を通じたものが中心で、同国が関わる数字を第三者が確かめる手立ては限られる。
