概況 · 2026年8月時点
アゼルバイジャンはカスピ海の西岸に位置し、アルメニア、ジョージア、イラン、ロシア、トルコと接する。人口は1,020万人(世界銀行、2024年)。バクー周辺は19世紀後半から石油を産出してきた世界最古級の産油地で、経済の骨格はいまも炭化水素にある。
依存の度合いははっきりしている。財の輸出に占める燃料の割合は88.0%(世界銀行、2024年)で、域内8か国のうち最も高い。付加価値でみた産業構成は農業5.6%、工業42.5%、サービス42.5%(世界銀行、2024年)である。国営のSOCARが探鉱開発からパイプライン、製油・石油化学、給油所網までを担い、2025年通期の売上高は863億マナトだった。
石油収入は国家石油基金(SOFAZ)に積み上げられてきた。同基金の資産は735億ドルで、対GDPでは97%にあたる(2025年、世界銀行の国別概況。金の評価替えが押し上げた)。産油国につきものの歳入の振れを財政から切り離す装置であり、この地域では政府系ファンドの代表例として引かれることが多い。
基本情報
| 正式名称 | アゼルバイジャン共和国(Republic of Azerbaijan) |
|---|---|
| 首都 | バクー |
| 人口 | 1,020万人(世界銀行、2024年) |
| 名目GDP | 744億ドル(世界銀行、2024年) |
| 一人あたりGDP | 7,295ドル(世界銀行、2024年) |
| 実質GDP成長率 | 1.4%(2025年)。2026年は2.0%、2027〜28年は平均1.8%の見通し(世界銀行の国別概況、2026年8月時点) |
| 消費者物価 | 5.5%(2025年)。政策金利は6.75%(2025年末、アゼルバイジャン中央銀行) |
| 通貨 | マナト(AZN、記号 ₼) |
| 産業構成 | 農業5.6%/工業42.5%/サービス42.5%(付加価値ベース、世界銀行、2024年) |
| 主な輸出 | 原油、天然ガス、石油製品。燃料が財の輸出の88.0%(世界銀行、2024年) |
| 国家石油基金(SOFAZ) | 資産735億ドル、対GDP97%(2025年、世界銀行) |
| 外貨準備 | 115億ドル(2025年、世界銀行) |
| 加盟する主な枠組み | テュルク諸国機構、独立国家共同体(CIS)、CAREC。ユーラシア経済連合(EAEU)と世界貿易機関(WTO)には非加盟 |
油田と、三本の管
バクー沖のアゼリ・チラグ・グナシリ(ACG)油田が原油生産の中心で、日量約35万バレルを産出する。BPが操業し、権益はSOCARが35.30%、BPが30.37%、ハンガリーのMOLが9.57%、日本のINPEX南西カスピ海石油が9.31%、ExxonMobilが6.79%などとなっている。生産分与契約は2049年までである(INPEXの公表資料)。
原油はバクーからトルコのジェイハンへ至る全長約1,770キロのBTCパイプラインで運ばれる。輸送能力は日量120万バレルで、2006年6月に本格稼働した。天然ガスはシャフデニズ・ガス田から南ガス回廊を通り、トルコを経て欧州へ届く。石油もガスも、ロシアとイランのどちらも通らずに市場へ出せることが、この国の地政学上の値打ちになっている。
輸送回廊としての顔もある。カスピ海を渡ってきた貨物はバクー国際海上貿易港(アラト)で陸に上がり、アゼルバイジャン鉄道(ADY)を経てジョージアへ抜ける。中間回廊のカスピ海西岸の結節点である。
石油の伸びが止まった年
2025年の実質GDPは1.4%増にとどまった。炭化水素部門は原油の減産で2%減り、非炭化水素部門も建設、輸送、農業の減速で2.7%増に落ち着いた。公共投資の縮小により、投資は実質で4.9%減っている(世界銀行の国別概況、2026年8月時点)。
インフレは2025年に5.5%へ上がった。食品が6.9%上昇し、電気・ガス・熱供給の公定料金の引き上げも効いた。年末に向けて物価上昇の圧力が和らいだため、アゼルバイジャン中央銀行は政策金利を7.25%から6.75%へ引き下げている。
経常黒字は炭化水素の輸出減により2025年1〜9月に対GDP5.4%へ縮んだ。連結ベースの財政黒字も対GDP2.6%へ縮小している。世界銀行は2026年の成長率を2%と見込み、地政学的な緊張を下振れ要因、地域の連結性の改善を上振れ要因に挙げている。
日本との関係
日本企業はカスピ海の上流と輸送の双方に権益を持つ。INPEXは1999年1月に子会社のINPEX南西カスピ海石油を通じてACG油田の権益9.31%を取得し、BTCパイプラインにも子会社INPEX BTC Pipelineが2.5%、伊藤忠商事が3.4%を出資している(INPEXの公表資料)。
開発協力は発電と灌漑に集中している。円借款ではセヴェルナヤ・ガス火力複合発電所計画(1998年2月と1999年10月に借款契約)とシマル・ガス火力複合発電所2号機建設事業(2005年5月に借款契約)、無償資金協力ではバクー市ムシュビク変電所改修計画(2006年)、土地改良・灌漑機材整備計画(2004年、2013年)、バクー市緊急医療機材整備計画(2008年)などが実施された(JICA ODA見える化サイト)。
参考資料
- Azerbaijan Overview — 世界銀行(国別概況。2025年の成長率、インフレ、SOFAZ資産、外貨準備) ↗
- Azerbaijan — 世界銀行 Data360(World Development Indicators。人口・GDP・産業構成、2024年) ↗
- ACG油田の権益取得 — INPEX(権益比率と生産量) ↗
- BTCパイプラインプロジェクト — INPEX(権益比率と輸送能力) ↗
- ODA見える化サイト — JICA(アゼルバイジャン向け案件の一覧) ↗
このページの数字は2026年8月時点のものである。新しい統計が公表されしだい更新する。 日々の動きは下の記事一覧で追える。
先週の中央アジア・コーカサス:EBRDがウズベキスタンの2026年成長率予測を7.5%へ上方修正、シルダリヤ州の新設火力で1,600メガワットが緊急停止(9月21日〜27日)2026.09.28EBRDが9月24日に公表した地域経済見通しで、中央アジア・コーカサス8か国のうち6月版から予測が動いたのはウズベキスタン(2026年を7.5%へ)とジョージア(6.5%へ)の2か国だけだった。25日にはシルダリヤ州の試運転中の火力発電所で1,600メガワットが緊急停止したとウズベキスタン・エネルギー省が発表した。カザフスタンでも合計962メガワットの負荷が遮断されたと、KursivがKEGOCのデータとして伝えている。ウズベキスタン大統領府はカラカルパクスタンとアンディジャンの事業を相次いで公表し、カザフスタンの銀行部門の1〜8月の純利益は13.6%減った。
アゼルバイジャン、銅製ねじ・ボルト・ナットの輸出関税を1,000キログラムあたり300ドルへ。2029年末までの時限措置2026.09.22アゼルバイジャン閣僚内閣は9月22日、銅製のねじ、ボルトおよびナット(HS 7415 33 000 0)の輸出関税を1,000キログラムあたり15ドルから300ドルへ引き上げる決定第311号を採択した。2029年12月31日までの時限措置で、同じ欄に並ぶ従価15%(輸入関税)は変えていない。
アングロ・アジアン・マイニングの2026年上期、売上高1億4,120万ドル・税引前利益6,850万ドル。中間配当は1株6米セント、金の通期生産見通しを引き下げ2026.09.21アゼルバイジャンで銅・金・銀を生産するアングロ・アジアン・マイニングの2026年上期決算は、売上高1億4,120万ドル(前年同期4,090万ドル)、税引前利益6,850万ドル(同710万ドル)。中間配当は1株6米セント。金の通期生産見通しを2万8,000〜3万3,000オンスから2万6,000〜3万オンスに引き下げた。
先週の中央アジア・コーカサス:アゼルバイジャン中銀が8月に15億ドルの買い介入、ABBがダヴル銀行株51%の取得を完了(9月7日〜13日)2026.09.14アゼルバイジャン中銀は8月に15億ドルの買い介入を実施し、中銀によると外貨準備は過去最高の153億ドルになった。ジョージアの総国際準備も過去最高を更新した。ウズベキスタンでは、アゼルバイジャンのABBがダヴル銀行株51%の取得を完了し、国家資産の購入時の前払金を35%から15%へ下げる大統領令の内容も公表された。カザフスタンではKaspi.kzの臨時株主総会が、第2四半期の配当を1株1,000テンゲに増やす提案を承認した。
アゼルバイジャンのABB、ウズベキスタンのダヴル銀行株51%の取得を完了。取引所で5,100万株、総額1兆6,463億スム(約1億4,000万ドル)2026.09.11アゼルバイジャン国際銀行(ABB)は9月11日、ウズベキスタンのダヴル銀行の株式51%の取得を完了したと発表した。取引所の記録では、9月10日に同行株計5,100万株が1株32,281.28スムで6件約定し、総額は1兆6,463億スム。ABBによると、S&Pは同行の長期の信用格付けをBからB+に上げた。
アゼルバイジャンのバクーでFabriora Groupの紙・衛生用品工場が開所。投資総額2,700万マナト、設備輸入のVATと関税で100万マナトの免除2026.09.10アゼルバイジャンのアリエフ大統領は9月10日、首都バクーのガラダグ地区でFabriora Groupの紙・衛生用品工場の開所式に出席した。大統領府によると、事業の投資総額は2,700万マナトで、同社は投資促進文書に基づき設備輸入の付加価値税と関税で100万マナトの免除を受けた。常時雇用は240人の予定。
カスピ海のクルク〜バクー航路、旅客輸送の再開へ両国の運輸当局が着手。停止前の利用は年間およそ1,500人2026.09.09在アゼルバイジャン・カザフスタン大使館は9月9日、カザフスタンがクルク港とバクー港を結ぶフェリー航路での旅客輸送の再開を提案し、アゼルバイジャン側が支持したと発表した。旅客輸送は2020年に新型コロナウイルスの流行で取りやめになり、停止前の利用は年間およそ1,500人だった。
アゼルバイジャンの戦略外貨準備、9月1日時点で907億6,970万ドル。前年同期比15.7%増2026.09.09アゼルバイジャン国家統計委員会は9月9日、戦略外貨準備が9月1日時点で907億6,970万ドル、前年同期比15.7%増になったと公表した。対外国家債務は45億5,950万ドルで7.8%減。表に戦略外貨準備の定義や内訳は示されていない。
アゼルバイジャン中銀、8月に15億ドルの買い介入。外貨準備は153億ドルで年初来33%増2026.09.07アゼルバイジャン中央銀行は9月7日、経常収支の黒字と金融部門の脱ドル化で外貨の供給が需要を上回ったため、8月に15億ドルの買い介入を実施したと発表した。この結果、中銀の外貨準備は年初来38億ドル増えて153億ドルになった。中銀は買い入れた外貨を再び市場へ振り向ける可能性も排除していない。
PASHAリアルエステートとマリオット、バクーとトビリシで3件のホテル・住宅開発に合意。客室計232室と新設レジデンス520戸、投資額は非公表2026.09.04PASHAリアルエステート・グループとマリオットが9月4日、アゼルバイジャンとジョージアで3件のホテル・住宅開発に署名したと発表した。バクーにリッツ・カールトンの客室80室とレジデンス282戸、既存レジデンスの増築棟238戸、トビリシにル・メリディアンの客室152室を計画する。投資額は非公表である。
パシニャン首相、アルメニアからアゼルバイジャンへの初の輸出取引は「すでに成立したと考える」。品目・企業・金額は非公表2026.09.03アルメニアのパシニャン首相は2026年9月3日の記者ブリーフィングで、アゼルバイジャンへの最初の輸出取引について「すでに成立したと考える」と述べた。ARKA通信が伝えた。品目・企業名・金額は明かされていない。2025年10月の通過制限解除以降に伝えられた貨物は、アゼルバイジャン側からアルメニアへ入る方向だけだった。
SOCAR、米ヘインズビル・シェール権益で意向書に署名。取得対価は現金16億5,000万ドル、逓減条件の説明が両社で食い違う2026.09.01アゼルバイジャンのSOCARと米コムストック・リソーシズが9月1日、ヘインズビル・シェールの権益をめぐる意向書に署名した。取得対価は現金16億5,000万ドル。ウェスタン・ヘインズビルの持分15%が7.5%へ下がる条件を、SOCARは関連する条件に従って収益率15%が達成されたときとし、コムストックはSECへの提出で5年経過を加えている。
先週の中央アジア・コーカサス:ウズベクが2030年GDP目標3,000億ドル、クルルタイ初選挙は得票率71.17%(8月24日〜30日)2026.08.31ウズベキスタンは独立35周年の週に163事業を稼働させ、式典で大統領が2030年のGDPを3,000億ドルにすると述べた。カザフスタンではクルルタイ初選挙の暫定結果でアディレット党が得票率71.17%で最多となり、2027〜29年の予算案の審議も同じ週に入った。物流ではザンゲズル回廊の完成を2030年と見込む分析が出た。
ザンゲズル回廊の完成は2030年とTCRC見通し。アルメニア領42キロが全体の工程を決め、中間回廊に残る時間は4年2026.08.27ジョージアの輸送回廊研究センター(TCRC)が8月27日に公表した分析は、ザンゲズル回廊の完成時期を2030年と見込む。回廊は7区間で、アゼルバイジャン領は2027〜29年、トルコ側224キロは2029年末が目標だが、未着工のアルメニア領42キロが全体の工程を決めるとみる。2030年は同センターの見立てである。