金融・投資

パシニャン首相、アルメニアからアゼルバイジャンへの初の輸出取引は「すでに成立したと考える」。品目・企業・金額は非公表

アルメニアのパシニャン首相は2026年9月3日の記者ブリーフィングで、アゼルバイジャンへの最初の輸出取引について「すでに成立したと考える」と述べた。ARKA通信が伝えた。品目・企業名・金額は明かされていない。2025年10月の通過制限解除以降に伝えられた貨物は、アゼルバイジャン側からアルメニアへ入る方向だけだった。

資料写真:バクー駅/Press Service of the President of the Republic of Azerbaijan(CC BY 4.0)出典
この記事が扱う国。国境は Natural Earth(パブリックドメイン)。点は本文に出てくる場所(アララト、バクー)。

アルメニアのニコル・パシニャン首相は2026年9月3日、閣議後の記者ブリーフィングで、アルメニアからアゼルバイジャンへの最初の輸出取引について「すでに成立したと考える」と述べた。ARKA通信が伝えた。

首相府もこのブリーフィングを同じ日付で公表しているが、載っているのは写真と映像で、発言録は出していない。以下の文言はARKA通信の報道による。

ARKA通信によると、首相はこう語った。「最初の取引はすでに成立したと考えている。ただ、それが完了することを望みたい。そのうえで、企業自身が公表することになると思う」

取引の詳細を政府として明かす考えはないという。「この種の取引を細かく論じることはしない。我々の仕事は、ビジネス界どうしが協力でき、どこに相互の利益があるかを見出せるよう、政治的な条件を整えることだ」

合意も取引もすでに存在するが、企業側の内部手続きが残っている、というのが首相の説明である。「具体的には、合意も取引もすでに存在する。事実としてはすでに成立しているが、企業には内部手続きを終えてもらいたい。これに関する情報は出てくるだろう」

公表されていないことは多い。品目、企業名、金額、輸送の経路は、いずれも示されていない。首相は取引が成立したという認識を述べたうえで、それが完了することを望みたいとしており、完了したとは述べていない。

先行する発言もある。ARKA通信は、アララト・ミルゾヤン外務・国際貿易相が以前に、アゼルバイジャン企業がアルメニア企業から商品を購入したと述べていたと書いている。APAは、同外相が8月末に、アルメニアからアゼルバイジャンへの製品供給に関する情報が近く公表されると述べたと伝えている。

アゼルバイジャン領を通るアルメニア向けの貨物通過は、バクーが2025年10月21日にこの通過に対する制限をすべて解除すると発表したことで可能になった。ARKA通信がまとめた経過は次のとおりである。

時期内容
2025年10月21日アゼルバイジャンが、アルメニア向け貨物の通過に対する制限をすべて解除すると発表
2025年11月ロシア産・カザフスタン産の穀物が、アゼルバイジャンとジョージアを経由してアルメニアへ初めて鉄道で到着
2025年12月19日アゼルバイジャンからアルメニアへの直接の供給が始まる。アゼルバイジャン産A95ガソリン1,218トンを積んだ22両編成が、ジョージア経由の鉄道で到着。購入したのは民間2社
2026年5月中旬までロシア・カザフスタン・アゼルバイジャン産の貨物、累計およそ4万5,000トンがアゼルバイジャン経由でアルメニアへ(南コーカサス鉄道による集計)

経路については注意が要る。ARKA通信は2025年12月19日の列車について、ジョージア経由の鉄道で到着したと書いている。ここでいう「直接の供給」とは、第三国の貨物の通過ではなくアゼルバイジャン産の産品がアルメニアへ売られたという意味であり、両国の国境を直接またぐ鉄道が使われたとは書かれていない。

ここまでの流れは一方向だった。アゼルバイジャン領を通過してアルメニアへ運ばれた貨物は、APAの集計で2026年8月19日時点の累計が穀物およそ4万3,000トン、肥料およそ9,000トンなどに達し、アゼルバイジャンからアルメニアへのディーゼル輸出はおよそ1万5,000トン、ガソリンはおよそ5,000トンだった。和平の共同宣言から1年の節目に動いていたのも、ロシア産小麦のアルメニア向け輸送である。

今回の発言が意味するのは、この流れに逆方向が加わるということである。これまで確認されてきたのは、ロシアやカザフスタンからアゼルバイジャン領を通ってアルメニアへ入る貨物と、アゼルバイジャン産の石油製品のアルメニア向け販売だった。アルメニアの生産者がアゼルバイジャンの買い手を得たのは初めてだ、というのがパシニャン氏の言い分である。同じ会見でミルゾヤン外相の先行発言も伝えられており、どの取引を「最初」と数えるかは政府内でも一様ではない。

ただし規模は分からない。金額も品目も明かされない以上、この取引がアルメニアの輸出のなかでどれほどの重さを持つかは判断できない。1件で終わるのか、継続する取引の始まりなのかも、現時点では示されていない。

確かめる手だては二つある。一つは首相が言うとおり、当事企業自身の発表である。もう一つは、両国の貿易統計に相手国向けの数字が現れるかどうかである。

背景として、アルメニアの輸出企業は販路の組み替えを迫られている。ロシアは2026年5月以降、アルコール飲料、ミネラルウォーター、果実・野菜といったアルメニアの主要輸出品について、輸入と自国領内の通過に大きな制限を課しており、EUはアルメニア産品の関税を一時的に停止する規則案で対応しようとしている。もっとも、今回の取引がこの動きと関係するかどうかは、パシニャン氏の発言からは分からない。品目が明かされていないためである。

首相の言葉は、取引が成立したという認識を示したものであって、それが完了したと述べたものではない。企業が内部手続きを終えて自ら公表するのを待つ、というのが政府の立場である。

この記事の日付 2026年9月3日 は、出典が発表された日です。

本サイトでの初出 2026年9月8日 12:33

← 記事一覧へ戻る