カラチャガナクは、カザフスタン北西部の西カザフスタン州にある油ガスコンデンセート田である。テンギス、カシャガンと並ぶ同国三大鉱区の一つで、この三つで同国の石油生産の大半が決まる。ただし前二者と違って、ここは「油田」というより「ガス田に液体が伴う鉱区」に近い。原始埋蔵量は液体136億バレルに対しガス59.4兆立方フィートで、事業の設計もガスの扱い方を軸に組まれている。
そのガスの大半は売られずに地下へ戻る。2025年に産出したガスのおよそ65.8%にあたる166億2,500万立方メートルが、貯留層の圧力を保つために再圧入された。圧入用の圧縮機を1基ずつ増やしていくことが、この鉱区の投資の中心になっている。
硫化水素を高い濃度で含むサワーガスを、550バールという世界でも高い部類の圧力で押し戻す。設備は大きく、費用もかさむ。テンギスやカシャガンと同じく、扱いにくい流体をどう処理するかが事業の性格を決めている。
| 所在 | カザフスタン北西部の西カザフスタン州、アクサイ市の近く。ロシア国境に接する |
|---|---|
| 鉱区面積 | 280平方キロメートル超 |
| 発見と初生産 | 1979年に発見。1984年11月にソ連期の限定的な試験商業方式で生産を開始 |
| 原始埋蔵量 | 液体136億バレル、ガス59.4兆立方フィート。うち液体の約16.9%、ガスの約15.7%を回収済み(操業会社KPO) |
| 操業会社 | カラチャガナク・ペトロリアム・オペレーティングB.V.(KPO)。エニとシェルが共同オペレーター |
| 出資構成 | エニ29.25%、シェル29.25%、シェブロン18%、ルクオイル13.5%、カズムナイガス10% |
| 契約 | 1997年11月に署名された40年間の最終生産物分与契約(FPSA)。1998年に発効した |
| カズムナイガスの参加 | 2012年7月1日 |
| 累計投資額 | FPSA署名以降およそ344億3,500万ドル(KPO) |
| 生産(2025年) | 炭化水素1億3,645万3,000石油換算バレル |
| ガス再圧入(2025年) | 166億2,500万立方メートル。産出ガスのおよそ65.8%を貯留層へ戻している |
| ガス有効利用率(2025年) | 99.95% |
| 液体の生産維持目標 | 年1,000万〜1,100万トン(カズムナイガス) |
| 従業員 | およそ4,000人。西カザフスタン州最大の雇用主だと同社は説明する |
| 主な輸出路 | カラチャガナク・アティラウ輸送系統(KATS、24インチ、2003年から稼働)でアティラウへ送り、CPCで黒海へ |
| ロシア向けの経路 | カラチャガナク・オレンブルク輸送系統(KOTS、5本・全長140キロ)でオレンブルクのガス処理工場へ。ボリショイ・チャガンからサマラ方面へも接続 |
| 拡張事業 | KEP-1A(第5圧縮機)は2024年7月に初再圧入、KEP-1B(第6圧縮機)は2026年6月2日に初再圧入 |
発見から生産物分与契約まで
カラチャガナクが見つかったのは1979年である。1984年に最初のガス処理設備(現在のユニット3)が完成してガスの生産が始まった。カズムナイガスの記述によれば、この時期の生産はソ連で開発された限定的な試験商業方式によるものだった。
カザフスタンの独立後、1992年に政府がBGグループおよびエニと生産物分与契約の交渉を始め、1995年に生産物分与の原則に関する合意が署名された。1997年にシェブロンとルクオイルが加わり、同年11月に40年間の最終生産物分与契約(FPSA)が署名され、1998年に発効した。1999年に建設が始まり、2000年には主要工事の契約が発注されてKPOの経営陣がアクサイへ移っている。
2003年にはカザフスタン大統領が第2期の「ファーストオイル」を開いた。2004年にはCPCのノヴォロシースク海上ターミナルから最初の原油が積み出され、2006年にはCPCターミナル経由の累計が1億バレルに達し、サマラ・パイプライン経由の初出荷も行われた。国営のカズムナイガスが10%で参加したのは2012年7月1日である。
KPOは自らを「カザフスタン共和国に対するコントラクター」と位置づけている。生産物分与契約は費用を回収したうえで生産物を分ける仕組みで、どこまでを回収対象と認めるかが政府と事業者の関心事になる構造をもつ。契約本文と、政府・事業者間のやり取りの内容は当事者から公表されていない。
出資と操業の体制
2026年時点の出資構成は、エニ29.25%、シェル29.25%、シェブロン18%、ルクオイル13.5%、カズムナイガス10%である。エニとシェル(100%子会社のBGカラチャガナク経由)が共同オペレーターを務め、実際の操業は5社の合弁であるカラチャガナク・ペトロリアム・オペレーティングB.V.(KPO)が担う。
テンギスがシェブロン50%と単独の主導者を持つのに対し、カラチャガナクは29.25%が2社並ぶ構造である。カズムナイガスの10%は三大鉱区の中で最も小さい持ち分で、同社が公表する生産量はこの10%に按分した数字になる。2026年上半期の同社持ち分の石油・コンデンセート生産は49万9,000トンで前年同期比12.9%減、再圧入前のガス生産は11億6,200万立方メートルで12.0%減だった。鉱区全体の数字と取り違えないよう注意がいる。
KPOによれば従業員はおよそ4,000人で、同社は西カザフスタン州最大の雇用主だと説明している。FPSA署名以降の累計投資はおよそ344億3,500万ドルである。
三つの処理設備と高圧サワーガス圧入
地上設備は三つの系統に分かれる。カラチャガナク処理コンプレックス(KPC)は44本の生産井とユニット2からのコンデンセートを処理する中枢で、スラグキャッチャーで油とガスを分け、4系列の安定化装置で処理した油をアティラウ向けの輸出パイプラインへ送る。2011年に完成した4系列目は、西側市場向けの安定化・脱硫処理量を増やすためのもので、既存の受入設備の拡張、13本の新規井、サワーガス輸出用圧縮機の追加などを伴った。
ユニット2は多機能の設備で、高圧サワーガスの分離・処理・再圧入と、油の生産を担う。21本の生産井がここへつながる。圧縮機3基は最大550バールでガスを圧入でき、硫化水素の含有率は最大9%に達する。この圧入によって圧力が保たれ、液体の回収率が上がるうえ、硫黄を取り出す必要がなくなるという環境上の利点もあるとKPOは説明する。
ユニット3は1984年から動いている最も古い設備で、28本の生産井から来るガスとコンデンセートを分離して部分的に安定化し、パイプラインでロシアのオレンブルクのガス処理工場へ送る。KPCで分かれたガスの一方は脱硫装置に入り、鉱区の発電所の燃料と国内向けの乾性ガスになる。もう一方はユニット2の再圧入か、ユニット3経由のオレンブルク向け輸出に回る。
このほか、掘削・生産で出る廃棄物を処理するエコセンターがある。熱機械式の掘削屑洗浄設備、液状泥処理設備、汚染水処理設備、ロータリーキルン式焼却炉、2011年12月に稼働した12区画の埋立処分場などで構成される。
輸出はどこへ向かうか
安定化した液体炭化水素の主要な輸出路は、カラチャガナク・アティラウ輸送系統(KATS)である。KPCからカスピ海沿岸のアティラウまで24インチの埋設パイプラインが走り、ボリショイ・チャガンとKPCに昇圧所、アティラウに受入・貯蔵設備がある。運転と保守はKPO自身が行う。アティラウでカスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)の系統に接続し、黒海のノヴォロシースクからタンカーで積み出される。稼働は2003年からである。
もう一つの出口がロシア方面である。カラチャガナク・オレンブルク輸送系統(KOTS)は全長140キロの5本のパイプラインで、うち28インチ2本がサワーガスをオレンブルクのガス処理工場へ送り、14インチ3本のうち1本が液体輸出専用、2本が未安定コンデンセートとサワーガスの兼用である。この配管群は第2期開発の前から存在していた。またボリショイ・チャガンでKATSがカズトランスオイルのパイプラインに接続し、ロシアのサマラを経てトランスネフチ系統へ入る経路もある。
KPOによれば、当初は生産のすべてがロシア向けに売られていたが、2004年6月以降は液体の大部分が西側市場へ向かい、現在はおよそ80%が原油として輸出される。未安定コンデンセートと未処理ガスは引き続きロシアへ流れ、一部の未安定コンデンセートと乾性ガスは国内で売られる。KPOは、精製製品の出荷や販売は行っておらず、そのための代理店も使っていないと注意喚起している。
生産の踊り場を延ばす拡張事業
ガス・オイル比が上がっていくため、液体の生産水準を保つには圧入能力を足し続けなければならない。KPOは2014年以降、この目的で一連の事業を実施してきた。2019年の第5幹線・ガス圧入井事業、2021年のKPCガス処理隘路解消事業(KGDBN)、2022年の第4圧入圧縮機事業、2024年の第6幹線・ガス圧入井事業である。
カズムナイガスが公表する各事業の規模は次のとおりである。KGDBNは事業費8億9,800万ドルで追加生産910万トン、2021年4月に稼働して同年12月に運転へ引き渡された。第4圧入圧縮機事業は5億7,800万ドルで追加生産680万トン、2021年12月10日に完工式が開かれ2022年4月に稼働した。第5圧入圧縮機(KEP-1A)は9億7,000万ドルで追加生産710万トン、第6圧入圧縮機(KEP-1B)は7億3,500万ドルで追加生産580万トンである。同社はこれら生産維持事業の全体を、液体炭化水素の年産1,000万〜1,100万トンの維持を目的とする総額32億ドルの事業群と位置づけ、KEP-1Aの建設期に4,000人、運転段階で124人の雇用を見込むとしている。
KEP-1Aは2020年12月に承認され、第5圧入圧縮機、スラグキャッチャーと受入設備、集油・再圧入網の拡張などからなる。最初のガス再圧入は予定より1か月早い2024年7月に達成された。KPOによれば同事業の現地調達率は全体で54%に達し、建設段階で7,000人近い地元の雇用を生んだ。
KEP-1Bは2022年11月に承認され、第6圧入圧縮機、ガス脱水装置、集油網と再圧入網の拡張などを含む。KPOは2026年6月2日、同事業が予定より早く最初のガス再圧入を達成したと発表した。延べ700万時間超の作業のうち、直近の休業災害以降550万時間が無災害だったという。新しい圧縮機はガス処理能力と再圧入量を大きく増やし、貯留層の圧力を保って液体生産の踊り場を延ばすと同社は説明する。現地調達率は39%で、全体目標の45%へ向けて進んでいる段階であり、建設期に2,000人超の地元雇用を生んだ。
カザフ経済との関わり
KPOは現地調達の取り組みを重視しており、ゼネラルディレクターのマルコ・マルシリは2026年6月の説明で、2025年の物品・役務の調達総額が11億ドル、そのうち現地調達分が7億ドル超で全支出の61%を占めたと述べた。国内生産の物品の調達額は2024年比で45%増えている。物品区分に限った現地調達比率は2022年の7%から2025年の18%へ上がり、金額では2022年の1,700万ドルから2025年の5,500万ドルへ増えた。社会・インフラ事業では、1998年から2025年末までに268件・総額9億198万ドルの施設が建設されている。
国のガス政策との関係も深い。エネルギー相エルラン・アッケンジェノフは2026年7月7日の閣議で、商品ガスの生産量を2025年の234億立方メートルから2032年に355億立方メートルへ増やす見通しを示し、その伸びをカラチャガナクとカシャガンでのガス処理能力の拡大などで賄うと説明した。追加分は2027年以降に出てくる見込みで、2027〜2030年に16億立方メートル、2031年に23億立方メートル、2032年に66億立方メートルとされる。再圧入に回っているガスをどれだけ商品として取り出せるかが、同国のガス需給を左右する構図である。
数字を引くときの注意は、テンギス・カシャガンの場合と同じである。KPOが出す生産量は鉱区の100%、カズムナイガスが出すのは持ち分10%に按分した数字である。またKPOの2025年の「炭化水素生産1億3,645万3,000石油換算バレル」は再圧入分を含まない値であり、産出ガスの総量とは別の概念である。
参考資料
- About KPO — Karachaganak Petroleum Operating B.V.(出資構成、原始埋蔵量、累計投資、2025年の生産と再圧入、現地調達と社会事業) ↗
- Parent companies — KPO(エニとシェルが共同オペレーターであること、各社の持ち分) ↗
- Milestones of Karachaganak Field Development — KPO(1979年の発見から2024年のKEP-1A稼働までの年表) ↗
- Facilities — KPO(KPC、ユニット2の550バール圧入、ユニット3とオレンブルク向け、エコセンター) ↗
- Export Routes — KPO(KATS、CPC、KOTSの構成と口径) ↗
- Development projects — KPO(2014年以降の生産維持事業、KEP-1AとKEP-1Bの範囲と進捗、現地調達率) ↗
- Karachaganak: KEP-1B sour gas introduction — KPO(2026年6月2日。初再圧入の達成、作業時間と現地調達率39%) ↗
- Karachaganak Production Rate Maintenance Projects — КазМунайГаз(各事業の事業費と追加生産量、年1,000万〜1,100万トンの維持目標、投資32億ドル) ↗
- JSC NC KazMunayGas 1H of 2026 Trading Update(2026年8月18日。持ち分10%に按分した2026年上半期の生産) ↗
- Казахстан расширяет ресурсную базу товарного газа(カザフスタン首相府、2026年7月7日。商品ガスの見通しとカラチャガナクの処理能力拡大) ↗
- Operations — KPO(生産物の販売先の構成、精製製品を扱わない旨の注意喚起) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。