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CPC(カスピ・パイプライン・コンソーシアム)とは

カザフスタンの原油輸出の大半を担うCPCパイプラインについて、経路と設備、株主構成、拡張の経緯、輸送実績、2025年以降に相次いだ攻撃と停止、代替ルートの限界を整理する。

CPC(カスピ・パイプライン・コンソーシアム)は、カザフスタン西部の油田群から黒海岸のロシア領ノヴォロシースク近郊ユジナヤ・オゼレエフカまで原油を運ぶ全長1,511キロのパイプラインである。1999年に着工し、2001年10月に最初のタンカーへ積み込み、2003年4月に商業運転へ移った。株主はロシア連邦政府、カザフスタンのカズムナイガス、シェブロン、モービル、ルクオイル、Eni、シェルなどの混成で、ロシアとカザフスタンの二国間事業でありながら欧米メジャーが過半の持ち分を握るという、この地域では珍しい構造を持つ。

カザフスタンの三大油田であるテンギス、カシャガン、カラチャガナクは、いずれもこの1本を主な出口にしている。CPC自身は「カザフスタンの輸出原油の3分の2超」と説明し、トビリシの輸送回廊研究センターなどは82%という数字を使う。どちらの数え方でも、同国の輸出収入と国家財政がこのパイプラインの稼働状況に直結している点は変わらない。積み出し港がロシア領内にあり、その海域が2025年以降に繰り返し攻撃を受けてきたことが、この一極依存を投資家にとっての具体的なリスクへ変えている。

正式名Caspian Pipeline Consortium(CPC)。運営はロシア法人CPC-Rとカザフスタン法人CPC-Kの2社
経路カザフスタン西部テンギス → アティラウ → ロシア領(アストラハン州、カルムイク共和国、スタヴロポリ地方、クラスノダール地方)→ 黒海のノヴォロシースク近郊ユジナヤ・オゼレエフカ
全長1,511キロ
運転開始1999年5月12日着工。2001年3月にテンギス産原油でラインフィル、同年10月13日に初のタンカー積み込み。2003年4月29日に商業運転
能力初期2,820万トン/年 →(抗力低減剤の使用で3,500万トン)→ 2018年の拡張完了で6,700万トン → ボトルネック解消計画(2019〜2025年)で年8,300万トン超(CPC)。内訳の表記は資料により幅がある
輸送実績2024年は6,300万9,481トン(タンカー584隻)。2025年の積み出しは約7,050万トン(CPC、2026年7月)
累計2025年9月1日に海上ターミナルからの積み出しが累計10億トンに到達
株主ロシア連邦24%(トランスネフチが受託管理)、カズムナイガス19%、シェブロン・カスピアン15%、ルクオイル・インターナショナル12.5%、モービル・カスピアン7.5%、ロスネフチ・シェル・カスピアン・ベンチャーズ7.5%、IC CPCカンパニー7%、BGオーバーシーズ2%、Eniインターナショナル2%、カザフスタン・パイプライン・ベンチャーズ1.75%、オリックス・カスピアン1.75%
海上ターミナル沖合の一点係留ブイ(SPM)3基。原油タンクの総容量130万立方メートル
積み込み能力ボトルネック解消計画の完了後で毎時3万3,000立方メートル
原油の銘柄CPCブレンド。品質バンク(2002年〜)でAPI度と硫黄分に応じて出荷者間の精算を行う

経路と設備

原油はテンギスの受入設備から入り、アティラウを経てカザフスタンとロシアの国境を越え、アストラハン州、カルムイク共和国、スタヴロポリ地方、クラスノダール地方を通って黒海岸へ抜ける。カザフスタン領内の揚油所は2019年10月にイサタイ、クルマンガズィへ改称された。ロシア側では2004年5月にカラチャガナク産、同年11月にロシア産原油の受け入れが始まり、以後はカザフ産を主としながらロシアの生産者の原油も同じ管に流れている。

終端の海上ターミナルには沖合に一点係留ブイ(SPM)が3基あり、大型タンカーは岸壁に着けずに沖合で積み込む。ターミナルのタンク総容量は130万立方メートルで、ボトルネック解消計画の完了後の最大積み込み能力は毎時3万3,000立方メートルである。SPMが1基でも欠けると計画どおりの引き渡しが難しくなる構造で、CPCは「年間計画に沿って出荷者の要求に応えるには最低2基の稼働が必要」と説明している。

複数の油田の原油を1本の管に混ぜて運ぶため、CPCは2002年から品質バンクを運用している。混合後の共通銘柄はCPCブレンドと呼ばれ、11油種の指標バスケットを基準に、出荷者が入れた原油と抜き取った原油のAPI度・硫黄分の差を2週間ごとに金銭で精算する。軽質で低硫黄の原油を入れた出荷者が受け取り、重質・高硫黄の原油を入れた出荷者が支払う仕組みで、品質の異なる原油を1本の管で運ぶための前提になっている。

1992年の合意から年8,300万トン計画まで

起点は1992年、カザフスタンとオマーンがコンソーシアム設立で合意し、1か月後にロシアが加わったことにある。1996年12月の再編で欧米の石油会社が株主として参加し、事業は現在の形になった。1999年5月12日にユジナヤ・オゼレエフカ近郊で着工、2000年11月に管の接続が終わり、2001年3月26日にアティラウでテンギス産原油によるラインフィルが始まった。同年10月13日にテンギスシェブロイルの傭船したタンカーへの試験積み込みが行われ、2003年4月29日に両国の受入委員会の承認をもって商業運転に入っている。

能力は段階的に引き上げられてきた。2004年半ばに初期設計の年2,820万トンに達し、その後は抗力低減剤の使用で2010年に3,500万トン規模まで伸ばした。2009年12月に株主が年6,700万トンへの拡張計画を承認し、2010年12月15日に最終投資決定、2011年7月にアティラウで着工、2018年10月22日にモスクワで完了式を行っている。

拡張に続くのがボトルネック解消計画(DBNP)である。2019年5月21日の年次株主総会で承認され、2022年末にはカザフスタン側から年7,250万トン、ロシア領で年8,150万トンを流せる機械的な準備が整ったと株主に通知された。CPCはロシアとカザフスタンでの実施費用を5億9,990万ドルとし、営業利益から生じる自己資金で賄うと説明している。財務面では2020年9月30日に株主向け債務3億4,101万ドルを完済し、2021年6月10日に創業以来初となる配当6億6,500万ドル(2020年10〜12月期と2021年1〜3月期分)を支払った。

累計の積み出しは2017年8月に5億トン、2022年7月に8億トン、2024年4月に9億トンを超え、2025年9月1日に10億トンへ達した。

カザフスタン経済にとっての重み

累計9億トンに達した2024年4月時点で、カザフスタンの出荷者の分は7億9,168万9,626トンだった。CPCの内訳では、テンギス油田が約4億5,430万トン、カラチャガナクが1億7,340万トン、カシャガンが1億50万トンである。3油田の生産がそのままこの管の稼働率になる関係にある。

直近の実績は次のとおりである。2024年は海上ターミナルで6,300万9,481トンを584隻に積み込んだ。2025年の積み出しは約7,050万トンで、CPCによればその75%超が国際的な出荷者の原油であり、最大手はテンギスシェブロイル(シェブロン)で、エクソンモービル、カズムナイガス、Eni、シェルが続く。

2026年に入って流れは細った。カズムナイガスの上半期実績によれば、CPCの輸送量は100%基準で3,334万9,000トン、同社持ち分では692万トンと前年同期比7.4%減った。同社はテンギスの生産が14.7%減、カラチャガナクが12.9%減となった理由として、CPCの受入制限と一点係留ブイの稼働制限を挙げている。カザフスタンのアッケンジェノフ・エネルギー相は8月25日、2026年の石油・ガスコンデンセート生産計画を9,800万トンから9,600万トンへ引き下げ、CPCへの攻撃による生産の逸失を約350万トンと述べた。

パイプが止まれば油田が止まる、という関係も押さえておきたい。油田側の貯蔵能力は限られており、ターミナルが受け入れを止めればタンクはすぐに満杯になる。輸送の問題がそのまま生産の問題へ転化するため、CPCの停止は数日でも生産統計に表れる。

2025年から続く攻撃と停止

2025年2月17日、クラスノダール地方のクロポトキンスカヤ揚油所が無人機の攻撃を受けた。復旧工事を経て運転に戻ったのは5月23日である。3月24日にも同じ揚油所へ向かう無人機が迎撃されたとCPCは発表している。8月29日には海上ターミナルでSPM-2のホースから原油が海面へ流出する事故が起き、ロシアの監督官庁が水域への損害を算定して和解金の支払いに至った。

11月25日にはノヴォロシースクへの夜間攻撃で海上ターミナル付近の管理棟が破片で損傷し、11月29日午前4時6分には水上ドローンによる攻撃でSPM-2が大きく損傷して使用できなくなった。CPCは2026年1月、SPM-3の定期補修の時期と範囲をこの被害を受けて組み直したと説明し、1月25日に補修を終えてタンカーの係留を再開している。

2026年7月には積み込み中のタンカーそのものが狙われた。7月19日、SPM-1とSPM-2で積み込み中だったASIA(テンギスシェブロイルの原油、リベリア船籍)とNISSOS IOS(カシャガンB.V.とカズムナイガスの原油、マーシャル諸島船籍)が無人機の攻撃を受け、ASIAで火災が発生した。CPCはこれを自社の民間施設に対する5件目の攻撃と説明している。積み込みは7月27日に再開されたが、7月30日午前1時48分には再びSPM-3で積み込み中のNISSOS SIFNOSが攻撃され、6海里沖でCPCへ向かっていたMARATHIも攻撃を受けた。

CPCは一連の発表で、同社が制裁や制限措置の対象になったことは一度もないと繰り返している。ロシア、米国、カザフスタン、西欧の企業が同じ資産を共有しており、攻撃はカザフスタン経済と西側株主の利益を同時に損なう、というのが同社の主張である。

代替ルートとその限界

カザフスタンが実際に動かした代替路は、いずれも規模が小さい。アクタウ港からカスピ海をタンカーで渡り、アゼルバイジャンのバクー・トビリシ・ジェイハンへ積み替える経路が本命とされるが、量はまだ限られている(詳細はBTCの解説に譲る)。エネルギー相は2026年8月25日、失った350万トンをバクー・スプサのパイプライン(通過能力は年約500万トン)へ振り向ける余地があったと述べたが、アゼルバイジャンとの直接交渉はまだ行われていないとしている。

2026年8月には、ロシア領を鉄道で抜けてジョージアのバトゥミ石油ターミナルへ運ぶ経路が動いた。輸送回廊研究センターの概算では、ジョージア側の鉄道と港湾の収入はトン当たり41.3ドル、費用はパイプライン輸送の2.4倍にあたる。割高でも代替がないために選ばれた経路であり、価格が経路選択の理由でないことをよく示している。

恒常的な出口としては、アティラウ・サマラ(カズトランスオイル)と、アタス・アラシャンコウを通る中国向けのパイプラインがある。カズムナイガスの2026年上半期実績では、この2つの経路の輸送量はいずれも増えており、CPCの落ち込みを部分的に埋めた。ただしCPCが年6,000万〜7,000万トンを運ぶのに対し、他の経路は桁が1つ小さい。分散は進むが、置き換えは起きていない。

数字を読むときの注意

第一に、能力の数値は出典によって違う。CPCの会社概要は「年8,300万トン超」、ボトルネック解消計画のページは「カザフスタン領内で年7,250万トン、ロシア領内で年8,200万トン」、株主向け通知を引く沿革のページは「7,250万トンと8,150万トン」とする。いずれもCPC自身の記述であり、どの区間のどの条件での能力かで数字が動く。

第二に、「海上ターミナルでの積み出し量」と「パイプラインの輸送量」は別の指標である。年間実績としてよく引かれる6,300万トン(2024年)はターミナルでの積み込み量で、タンカー隻数と併記される。

第三に、企業の開示は基準が二重になる。カズムナイガスはCPCの輸送量を100%基準と自社持ち分基準の両方で開示しており、前者は3,334万9,000トン、後者は692万トン(いずれも2026年上半期)と5倍近い開きがある。どちらを引用しているのかを確認しないと、規模を誤って伝えることになる。

第四に、カザフスタンの輸出に占めるCPCの比率は分母で変わる。CPCは「輸出原油の3分の2超」、輸送回廊研究センターは82%とする。総輸出で見るか、パイプライン輸出で見るかによる差である。

第五に、株主構成の書き方が2通りある。CPCの公表する一覧は企業ごとの比率だが、政府とその関係会社の持ち分をまとめて「ロシア側31%、カザフスタン側20.75%」と表記する資料も多い。合計は同じでも、どの会社をどちらに数えたかが示されないことがある。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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