GUIDE · インフラ・地理2026年9月時点

ジョージアの黒海港湾とは(ポチ港とバトゥミ港)

ジョージアの二つの黒海港、ポチとバトゥミについて、それぞれの運営者と設備、扱う貨物の違い、取扱量の推移、鉄道との接続、そして中間回廊での役割分担を、港湾運営会社と経済持続可能発展省、統計局の公表資料にもとづいて整理する。

ジョージアが黒海に持つ商業港は、北からポチとバトゥミの二つである。中間回廊の話に出てくる「黒海側の出口」は、実務上はこの二港を指す。地図の上では100キロほどしか離れていないが、所有と運営の形も、扱う貨物の中身もかなり違う。

違いを一言でいえば、ポチはコンテナと一般貨物を大量に捌く総合港で、バトゥミは石油ターミナルを軸にコンテナとフェリーを併営する港である。ポチの運営はデンマークのA.P.モラー・マースク傘下のAPMターミナルズ、バトゥミは国有の港湾会社の管理権をカザフスタンの国営パイプライン会社系が握り、ターミナルの現場はフィリピンのICTSI傘下の会社が回す、という三層の構造になっている。

どちらの港も水深の制約から最大級のコンテナ船を直接受け入れられない。ジョージアが北隣に大水深港アナクリアを建設しているのは、この制約を外すためである。

所在ポチはジョージア西部サメグレロ・ゼモスヴァネティ州、バトゥミは南西部のアジャラ自治共和国。両港の間は約100キロ
ポチ港の運営APMターミナルズ・ポチ。デンマークのA.P.モラー・マースクの港湾部門で、2011年に同港を取得した
ポチ港の設備バース15、岸壁延長2,900メートル、岸壁クレーン29基、構内鉄道22キロ(運営会社の説明)
ポチ港の投資額取得以降1億8,000万ドル。同社の別ページは「2011年の取得以降1億6,600万ドル」と記す
ポチ港の取扱(2025年)コンテナ63万6,466TEUで過去最高
ポチ港の取扱(2026年1〜7月)コンテナ40万4,760TEU・前年同期比7%増、一般貨物27万446トン・60%増、フェリー貨物12万7,163トン
ポチ港の位置づけジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン向けの海上コンテナ貨物の約80%を扱う(運営会社の説明)
バトゥミ港の所有ジョージア国有のバトゥミ海港(BSP)。その持ち分100%の管理権を、カザフスタンのカズトランスオイル傘下バトゥミ石油ターミナル(BOT)が持つ
バトゥミのターミナル運営バトゥミ国際コンテナターミナル(BICT)がコンテナ・フェリー・一般貨物の各ターミナルを運営。2008年から操業し、フィリピンのICTSIの子会社
BICTの設備コンテナヤード3.6ヘクタール(全面開発時13.6ヘクタール)、移動式ハーバークレーン2基(各100トン)、ポータルクレーン2基、リーファー電源192口
バトゥミの6番バースフェリー・一般貨物用。長さ183メートル、水深8メートル、着岸位置2
国全体の港湾取扱(2026年上半期)貨物970万トン・前年同期比22%増、コンテナ40万9,397TEU・9%増。いずれも直近10年の上半期で最高(経済持続可能発展省、2026年7月27日)
入港船舶(2026年4〜6月)461隻。一般貨物船47.3%、液体バルク船24.9%、コンテナ船19.3%(国家統計局)
ポチ港の長期構想年300万TEUの取扱と、喫水13.5メートルの船の受け入れ(運営会社の記述)

ポチ港 — 運営者と設備

ポチ港を運営するのはAPMターミナルズ・ポチである。同社の説明では、同港はジョージア最大の港で、液体貨物、ドライバルク、旅客フェリーを扱い、国内のコンテナ貨物の80%がここを通る。設備はバース15、岸壁の総延長2,900メートル、岸壁クレーン29基、構内鉄道22キロという構成である。ルーマニアとの直行フェリー航路を持ち、道路網・鉄道網の双方に接続する。

同社が同港を取得したのは2011年である。以後の投資額について、会社案内のページは1億8,000万ドル、投資方針のページは1億6,600万ドルと記しており、公表値には幅がある。長期の構想としては、年300万TEUを扱い、喫水13.5メートルまでの船を受け入れられる港にすることを掲げている。2026年時点で公表されている直近の設備投資は、多目的の移動式ハーバークレーン1基の調達で、2026年末までに納入すればコンテナ処理能力は65万TEUを超え、コンテナと非コンテナを合わせた処理量はおよそ50万トン増えるという。

この65万TEUという数字は、2025年の実績63万6,466TEUをわずかに上回るにすぎない。能力の上限近くで動いている港が、目前の制約を外すために設備を足している、という読み方になる。

ポチ港の荷動き

2025年のコンテナ取扱は63万6,466TEUで過去最高だった。2026年に入っても伸びは続き、1〜7月の累計は40万4,760TEUで前年同期比7%増、月別では7月の6万5,759TEUが最高となった。コンテナ船の寄港は7か月で253隻と、前年同期の210隻を大きく上回っている。

伸び幅が大きいのはコンテナ以外である。1〜7月の一般貨物は27万446トンで前年比60%増だった。コンテナに載らない機械類、鋼材、大型のプロジェクト貨物がここに入る。フェリー貨物も12万7,163トンと、前年同期の9万7,761トンを3割上回った。カスピ海を渡ってきた貨物が黒海側へ抜ける経路の一部を、この港が担っている。

バトゥミ港 — 三層になった運営体制

バトゥミ港の権利関係は、ポチより込み入っている。港湾会社バトゥミ海港(BSP)はジョージア国が持ち分100%を保有する。その持ち分を管理する排他的な権利を持つのが、カザフスタンのカズトランスオイル傘下のバトゥミ石油ターミナル(BOT)である。

カズトランスオイルの沿革によれば、同社は2007年にナフトランスからバトゥミ・キャピタル・パートナーズの株式50%を6,400万ドルで取得し、2008年2月にターミナル・パートナーズからバトゥミ・インダストリアル・ホールディングスの株式100%を3億2,500万ドルで取得した。その後のグループ再編を経て、2017年8月22日にジョージアの登記が改められ、バトゥミ石油ターミナルの所有者はカズトランスオイルそのものになった。

現場でコンテナ、フェリー、一般貨物の各ターミナルを動かしているのは、バトゥミ国際コンテナターミナル(BICT)である。同社は2008年からバトゥミで操業し、六大陸に展開する独立系ターミナル運営者ICTSIの子会社である。設備はコンテナヤード3.6ヘクタール(全面開発時13.6ヘクタール)、625平方メートルの保税倉庫、移動式ハーバークレーン2基(各100トン)、ポータルクレーン2基、リーチスタッカー8台、リーファー電源192口。フェリーと一般貨物は6番バース(長さ183メートル、水深8メートル、着岸位置2)で扱う。同社は自社の発表で、操業区域を6ヘクタール拡張し、鉄道の引込線2本を備えた外部ターミナルを加えたと説明している。

ICTSIは同ターミナルについて、天然の深い泊地を持ち、満載のフィーダーマックス級船を通年で受け入れられると記す。同社は同港について、トルコ国境からおよそ20キロに位置し、カフカスを横断する鉄道と、バクーから伸びる石油パイプラインの終点にあたると記している。

石油ターミナルと鉄道

バトゥミのもう一つの顔が石油ターミナルである。バトゥミ石油ターミナルは鉄道で運ばれてきた石油・石油製品を受け入れて処理する設備で、たとえば重油の受入れには最大84両のタンク車を扱える鉄道荷卸し設備がある。同社は2026年1〜7月に電力消費を24.3%、天然ガス消費を41.4%減らし、およそ136万ドルの節減効果を得たと公表している。

この港が中央アジアと直結していることは、貨物の中身に表れる。カズトランスオイルの発表によれば、バトゥミ海港はカザフスタンのカズフォスフェイトとアンモホスの、カズアゾトと硝酸アンモニウムの、それぞれ積替量を増やす合意を結んでいる。2026年8月には、カザフスタン・アティラウ州のテンギス油田で採れた原油が、ジョージア鉄道経由でバトゥミ石油ターミナルへ運ばれる動きも表面化した。

2026年7月にはイラクリ・コバヒゼ首相らがバトゥミ港を視察し、コンテナターミナルと肥料ターミナルの現場を見ている。首相は同港の貨物取扱が着実に伸びており、2026年1〜7月の実績からみて同年が記録的な年になりうると述べた。ただし同港の年間取扱量そのものは、運営各社からは公表されていない。

国全体の数字と、二港の関係

港ごとの数字が揃わない一方、国全体の集計は経済持続可能発展省と国家統計局が出している。省の2026年7月27日の発表によれば、同年上半期に国内の海港・ターミナルで扱った貨物は970万トンで前年同期比22%増、扱ったコンテナは40万9,397TEUで9%増だった。省はこの両方が直近10年の上半期として最高だと説明し、すべての港・ターミナルで、またすべての貨物区分で増えたと述べている。前年同期には運ばれていなかった鋼材や各種の管、金・銅の精鉱、いくつかの液体貨物が新たに現れたことにも触れている。

国家統計局によれば、2026年4〜6月に国内の港湾・ターミナルへ入港した船舶は461隻で、一般貨物船が47.3%、液体バルク船が24.9%、コンテナ船が19.3%を占めた。前年同期比ではドライバルク船が39.1%増、コンテナ船が34.8%増である。

二港の関係を数字で捉えるときは、範囲の違いに注意がいる。APMターミナルズ・ポチが出すのはポチ1港の実績、省と統計局が出すのは国内すべての港・ターミナルの合計で、後者にはバトゥミの石油ターミナルなど、コンテナを扱わない施設も含まれる。ポチの1〜7月の累計と、国全体の1〜6月の合計を並べても、そのままでは引き算できない。

中間回廊での役割分担

中間回廊の黒海側の出口として、二港の役割は分かれている。コンテナ定期船の受け皿はポチで、同港のコンテナ取扱は国全体の大半を占める。バトゥミは石油・石油製品と肥料など、バルクに近い貨物の比重が高く、そこにコンテナとフェリーが乗る形になる。

いずれの港も水深に限りがあり、大型のコンテナ船を直接受けられない。この制約を外すために建設されているのがアナクリア深水港で、第1期の能力はコンテナ年60万TEU、泊地の水深は約17.5メートルとされる。ジョージア経済持続可能発展省は、アナクリアの狙いを「他の港が受け入れられないパナマックス級の船を受け入れること」と説明しており、既存二港との性格の違いを強調している。

ただし港の能力を広げても、回廊全体の通過量が同じだけ増えるとは限らない。カスピ海を渡る船腹、各国の通関、鉄道の輸送力がそろって伸びなければ、増えた岸壁は空く。ジョージア鉄道の輸送量が2026年上半期に690万トンと10%増えて直近10年の上半期で最高になった一方、港湾の伸びはそれを上回っている。回廊のどこが詰まり、どこが空いているかは、鉄道と港湾を並べて見ないと分からない。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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