トビリシの非営利研究機関、輸送回廊研究センター(TCRC)は8月19日、カザフスタンの原油がジョージアを経由して黒海へ抜ける動きが8月に急増したとする分析を公表した。テンギス油田を操業するテンギスシェブロイルが、ジョージア鉄道とバトゥミ石油ターミナルを使い、契約済みの10万トンを8月中に輸出するという。7月にバトゥミ石油ターミナルを通した2万トンの5倍にあたる。
引き金は、カザフ原油の主要輸出路であるカスピ・パイプライン・コンソーシアム(CPC)の混乱である。TCRCによれば、ノヴォロシースク近郊でタンカーがドローン攻撃を受け、CPCの運用に遅れが生じた。カザフスタンの原油輸出の82%は、カザフスタンとロシアを通るこのパイプラインが担っている。ノヴォロシースクの貯油タンクが満杯に近づくなか、テンギスシェブロイルはテンギス油田での生産停止を避けるために、割高な代替路を動かした。
使われているのはカスピ海の海上ルートではない。カスピ海を迂回する陸路で、ロシア経由の全区間を鉄道に置き換えている。原油はバトゥミ石油ターミナルで処理され、その後トルコへ向かう。ロシア鉄道は物流費を抑えるため、8月1日からこのルートのロシア区間に適用されるCIS標準鉄道運賃に15%の割引係数を適用した。
ジョージアが受け取る対価も示されている。TCRCの概算では、ジョージア鉄道のガルダバニからバトゥミ石油ターミナルまでの鉄道運賃がトン当たり18.5ドル、ターミナルでの保管・通過が22.8ドルで、鉄道と港湾を組み合わせた統合システムでの収入はトン当たり41.3ドルになる。一方、パイプラインと比べるとバトゥミ経由の代替路は2.4倍高い。運ぶ側には明確な追加負担だが、選択肢がないためにこの負担を受け入れている、というのがTCRCの見立てである。
ただし切り替わる量は現時点では限られる。中国向けのパイプラインという別の出口があるためだ。それでもTCRCは、カザフ原油の主な引き取り手が欧州諸国であることを重視する。CPCが止まればまず欧州の買い手が影響を受け、CPCターミナル経由で輸出しているシェブロンとエクソンモービルという米系企業の利益も損なわれる。組み上がった輸送体系を短期間で置き換えるのは難しい、とも書いている。
カザフスタン側の数字は厳しい。1〜7月の原油生産は8.9%減の5,320万トンで、7月単月では12%減まで落ちた。原油高で輸出収入は増えたが、それはCPCが動いている限りの話でもある。ジョージア側では第2四半期の鉄道貨物が19.9%増の390万トンとなり、うち59.8%がトランジットだった。8月のバトゥミ向け原油列車は第3四半期の統計に表れることになる。
この流れが戦争の産物であることは、TCRC自身が認めている。ジョージア方面への切り替えは戦闘の推移に完全に依存する、と分析は明記する。その戦闘の側にも変化がある。TCRCは分析の末尾で、出所を特定せずに「最近伝えられた情報によれば」と断ったうえで、米国の関与によりウクライナ当局が、ロシアの所有でないタンカーとCPCのインフラへの攻撃を行わないことに同意し、その結果、燃料を積むためノヴォロシースク近郊のCPC海上ターミナルへ向かうタンカーへの攻撃をすでに停止したと記している。攻撃の停止が続けば、2.4倍高いルートを使い続ける理由は薄れる。それでもTCRCは、地域の戦闘状況にかかわらず、カザフ産原油の輸送をこの回廊に定着させることがジョージアにとって優先課題だと結論づけている。ジョージアには過去にこの種の貨物を扱った経験があり、それを常設の商流に変えられるかどうかが問われる。
なお、輸送量と運賃・収入の数値はいずれもTCRCの分析と概算によるもので、当事者企業が公表した数値ではない。
