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バクー・トビリシ・カルス鉄道(BTK)とは

アゼルバイジャン、ジョージア、トルコの3国が結んだ鉄道BTKについて、2007年の合意から2017年の開業、2026年6月の全面稼働までの経緯、区間ごとの長さ、軌間が変わる場所、輸送力の引き上げ、実際の輸送量、そしてカルスから先の接続を、3国政府の公表資料にもとづいて整理する。

バクー・トビリシ・カルス鉄道は、アゼルバイジャンの首都バクーから、ジョージア南部を抜けて、トルコ北東部のカルスに至る鉄道である。頭文字をとってBTKと呼ぶ。中間回廊を語るときに「黒海に出ずに欧州へ抜ける陸路」と言われるのがこの線で、カスピ海を渡ってきた貨物は、ジョージアの港で船に積み替えるか、この線でトルコへ入るかを選ぶことになる。

一本の会社が全線を持つ路線ではない。アゼルバイジャン、ジョージア、トルコの3国がそれぞれ自国区間を保有し、運行と料金は国境ごとの取り決めで動く。区間ごとに事情が違うため、「BTKの能力」「BTKの輸送量」という数字は、どの区間の、いつの時点の話かを見ないと意味が取れない。

2017年の開業から2026年までの9年間、この線の実際の輸送量は構想に遠く及ばなかった。ジョージア側の工事が続いていたことが大きい。その工事が終わって全面稼働に移ったのが2026年6月で、年間の輸送力は500万トンとされる。

正式名バクー・トビリシ・カルス鉄道(BTK)。3か国の都市名を並べた呼称で、単一の事業会社が全線を保有するわけではない
経路アゼルバイジャンのバクーからジョージアのトビリシ、マラブダ、アハルカラキ、カルツァヒを経てトルコのカルスへ
全長およそ850キロ。うち500キロ超がアゼルバイジャン領内(アゼルバイジャン大統領府
ジョージア側の工事区間マラブダ〜カルツァヒ間180キロ。うち153キロを改修・再建し、27キロを新設(ジョージア経済持続可能発展省、2026年6月2日)
建設合意2007年2月7日、トビリシで署名
起工2007年11月にジョージアのマラブダ地区で定礎。2008年7月にトルコのカルスでジョージア国境までの区間の起工式
開業2017年10月30日
開業から2021年半ばまでの累計輸送量100万トン超(アゼルバイジャン・デジタル発展運輸省、2021年9月)
年間輸送力500万トン。アゼルバイジャン大統領府は2024年の改修による引き上げと記し、ジョージア経済持続可能発展省は2026年6月の全面稼働による引き上げと記す
全面稼働2026年6月2日。ジョージアのアハルカラキで3国の関係者が出席する式典が開かれた
合弁会社2024年、アゼルバイジャン鉄道とジョージア鉄道がBTKI鉄道有限会社を設立。マラブダ〜カルツァヒ区間の輸送はジョージア鉄道が独占的に行う
2025年の伸びジョージア経由の中国・カザフスタン向けコンテナ輸送は33%増。BTK上を運ばれたコンテナ数は前年のほぼ6倍(ジョージア経済持続可能発展省)
軌間アゼルバイジャンとジョージアの本線は1,520ミリの広軌、トルコ側は1,435ミリの標準軌。ジョージア領内で軌間が変わる
積替の拠点ジョージアのアハルカラキとトルコのカルス。両地にターミナルが建設された
中間回廊全体との関係中間回廊は鉄道4,256キロと海上508キロからなる(アゼルバイジャン大統領府)。BTKはその陸路側の西の出口にあたる

合意から開業まで

アゼルバイジャン大統領府の記述によれば、BTKの建設に関する合意はアリエフ大統領の提唱により2007年2月7日にトビリシで署名された。同じ年の11月にジョージアのマラブダ地区で定礎式が行われ、2008年7月にはトルコのカルスで、カルスからジョージア国境までの区間の起工式が開かれた。全長はおよそ850キロで、そのうち500キロ超がアゼルバイジャン領内を通る。

開業は2017年10月30日である。アゼルバイジャン大統領府はこの路線について、中間回廊の一部として東西を結び、中国から欧州へ運ぶ日数を海上輸送の半分以下にすると説明している。同時に、ジョージア領を通ってトルコと直接に鉄道でつながったことを、この事業の主要な利点として挙げている。

アルメニア領を通ってトルコへ抜けるソ連期の路線も存在するが、BTKはそれとは別の経路である。アルメニアのパシニャン首相は2026年8月24日の国民議会での説明で、ソ連期にはナヒチェバンからアララト地方のエラスフを経てシラク地方のアフリクへ抜けてトルコへ入る鉄道があったが、この区間はアルメニアの所有でありながらロシアの鉄道の管理下にあり、対ロシア制裁を踏まえて投資家や荷主が避けようとしていると述べている。

区間ごとの中身

最も長いのがアゼルバイジャン区間で、500キロ超がバクーからジョージア国境まで続く。

ジョージア区間の中核はマラブダ〜カルツァヒ間である。ジョージア経済持続可能発展省の2026年6月2日の発表によれば、この区間の総延長は180キロで、事業の中で153キロに改修・再建工事を行い、27キロは欧州基準の新線として建設された。運営の枠組みも整えられ、この区間の効率的な管理のために合弁会社が設立された一方、区間上の輸送業務はジョージア鉄道が独占的に行うと同省は説明している。

アゼルバイジャン大統領府によれば、2024年にはアゼルバイジャン鉄道とジョージア鉄道がBTKI鉄道有限会社という合弁を設立している。線路が国ごとに分かれているという構造上の弱点を、共同の事業体で補う試みである。

トルコ区間はジョージア国境からカルスまでで、カルスには積替と物流のためのターミナルが設けられた。アゼルバイジャンのデジタル発展運輸省は2021年9月の発表で、アハルカラキとカルスの両方でターミナルの建設が進んでいることを、3国の協議の議題として挙げている。

軌間が変わる場所

この路線を理解するうえで外せないのが軌間の違いである。アゼルバイジャンとジョージアの鉄道は旧ソ連圏の1,520ミリ広軌、トルコの鉄道は欧州と同じ1,435ミリ標準軌で、線路の幅が合わない。国境をまたぐ貨物は、どこかで台車を履き替えるか、貨物そのものを積み替える必要がある。

BTKでこの切り替えが起きるのはジョージア領内のアハルカラキである。標準軌の線路はトルコ側からアハルカラキまで延び、そこから東は広軌になる。2026年6月2日の全面稼働の式典がアハルカラキで開かれたのも、ここがこの路線の技術的な結節点だからである。

積替は時間と費用を生む。中間回廊全体でみると、中国国境、カスピ海の両岸に続いてここが4か所目の結節点にあたり、コンテナ列車の所要日数はこうした結節点の処理速度で決まる。

輸送力の引き上げと2026年の全面稼働

2026年6月2日、アハルカラキでBTKの全面稼働の式典が開かれた。トルコの運輸インフラ相アブドゥルカディル・ウラルオールは同日、ジョージア区間のインフラ工事の完了により、路線をより効果的かつ効率的に運営する新しい段階に入ると述べ、輸送力の増強がこの時期に完了したことに意味があるとした。同相は「今日の世界はBTKの能力ではなく実績を見ている。われわれの成功は建設した距離ではなく、提供する役務の質、通過時間、利用者の信頼で測られる」とも述べている。

ジョージアの経済持続可能発展相マリアム・クヴリヴィシヴィリは同じ日、全面稼働により事業の通過能力が年500万トンまで増えると説明した。同相はまた、直近1年にわたって同省がマラブダ・カルツァヒ鉄道有限会社およびジョージア鉄道とともに、アゼルバイジャンの関係機関と稼働に向けた調整を進めてきたと述べている。

この500万トンという数字は、発表元によって結びつけられている出来事が違う。アゼルバイジャン大統領府は「2024年に行われた改修工事の後、輸送力は年500万トンに引き上げられた」と記し、アゼルバイジャンのデジタル発展運輸省も中間回廊の施策の一つとして「BTKの年間能力を500万トンへ引き上げたこと」を挙げている。一方でジョージア側は2026年6月の全面稼働によって500万トンに達すると説明する。同じ数字が2024年の工事の成果とも2026年の稼働の成果とも書かれているので、引用するときは時点をそろえる必要がある。

実際にどれだけ運ばれているか

構想と実績の差は大きい。アゼルバイジャンのデジタル発展運輸省が2021年9月に公表した説明によれば、2017年10月の開業から2021年半ばまでにこの路線で運ばれた貨物の累計は100万トンを超えた程度だった。年500万トンという能力に対して、4年近くの累計が100万トン台という水準である。

2025年に入って動きが変わった。ジョージア経済持続可能発展省によれば、同年にジョージアを経由する中国およびカザフスタンとのコンテナ輸送は33%増え、BTKの経路で運ばれたコンテナの数は前年のほぼ6倍になった。伸び率は大きいが、出発点が低いことも同時に意味する。

回廊全体の数字も参考になる。アゼルバイジャン大統領府によれば、2024年に中国の各港から中間回廊経由でアゼルバイジャンへ送られたブロックトレインは358本で、アラト港までの平均所要は8〜10日、黒海の港までは12〜14日である。同国のデジタル発展運輸省は2026年1〜7月の通過貨物を910万トン超(前年同期比11.6%増、東西回廊は16.5%増)とし、中国〜欧州の通過日数がかつての38〜53日から平均12日に短縮したと説明している。

カルスから先と、周辺の新路線

カルスはトルコの鉄道網の東端にあたり、そこから西へ向かえばアンカラ、イスタンブールを経て欧州へ抜ける。ウラルオール運輸インフラ相は2026年6月の演説で、BTKに加えてマルマライ、ハルカル〜カプクレ間の鉄道事業、そしてイスタンブール海峡を越える貨物列車の輸送力を大きく増やすINRAIL事業を、同じ連結性の構想の一部として挙げた。INRAILが完成すれば、アジアと欧州の間に24時間途切れない貨物用の鉄道接続ができるという。

カルスの周辺では別の新線も動いている。アゼルバイジャン大統領府によれば、トルコ側でカルスとナヒチェバン方面を結ぶディルジュ〜カルス鉄道の起工式が8月に行われ、4年以内の完成が予定されている。これが完成すれば、アゼルバイジャンはジョージアを通らずにトルコと鉄道でつながる二本目の経路を持つことになる。

荷主を集める取り組みも進む。アゼルバイジャン鉄道は2025年7月10日に中国国家鉄路集団と、BTK経由でトルコ、さらに欧州へ向かう輸送を発展させる覚書を結び、翌11日には中国の西安自由貿易港の運営会社と覚書を結んで、年間2万TEUを扱うコンテナヤードを設けた。2025年9月30日には、アゼルバイジャン、カザフスタン、ジョージアの3国鉄道が、カスピ海横断国際輸送回廊上の隘路を解消する行動計画に署名している。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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