カザフスタンの石油生産は、事実上この二つの油田で決まる。西部の陸上にあるテンギスと、カスピ海北部の洋上にあるカシャガンである(これに西部のカラチャガナクを加えて三大油田と呼ぶ)。いずれも国際石油会社が主導する巨大プロジェクトで、国営のカズムナイガスは少数株主として参加する。同国の輸出、国家財政、通貨テンゲの相場まで、この2か所の生産量に左右される。
| テンギス — 所在 | カザフスタン西部アティラウ州(陸上) |
|---|---|
| テンギス — 原始埋蔵量 | 約255億バレル(シェブロン推計) |
| テンギス — 生産能力 | 拡張完了後で日量約95万バレル |
| テンギス — 参加企業 | シェブロン50%(操業)、エクソンモービル25%、カズムナイガス20%、ルクアルコ5% |
| カシャガン — 所在 | カスピ海北部(洋上) |
| カシャガン — 可採埋蔵量 | 約70億〜130億バレル |
| カシャガン — 位置づけ | 中東以外で最大級の油田。過去50年で最大の発見の一つ |
テンギス — 世界最深級の巨大油田
テンギスは1979年にソ連時代に発見された陸上油田で、1993年にシェブロンが参画した。原始埋蔵量は約255億バレル。地下4,000メートル超という深さと、硫化水素を多く含む「サワー原油」であることが技術的な難しさで、シェブロンは「世界で最も深い操業中の超巨大油田」と位置づける。
2025年、9年をかけた総額約490億ドルの拡張事業(FGP/WPMP)が完成し、生産能力は日量26万バレル増えて約95万バレルに達した。カザフスタンの原油生産全体を押し上げる一方、増えた原油をどの経路で運ぶかという輸出インフラの制約が、いっそう鮮明になった。
カシャガン — 難産だった洋上の巨人
カシャガンは2000年にカスピ海北部の浅海で発見された。可採埋蔵量は70億〜130億バレルとされ、中東以外では最大級、過去50年の世界の発見でも最大級の油田である。
ただし開発は極端に難航した。水深は浅いものの冬季は海面が凍り、海氷が動いて構造物を壊す。原油には高濃度の硫化水素が含まれ、地層の圧力も高い。人工島を築いて掘るという方式で、当初計画から10年以上遅れ、費用は膨らんだ。2013年にいったん生産を始めたものの、パイプラインの腐食が見つかって全面停止し、再開は2016年にずれ込んだ。
投資家にとっての意味
この2油田の生産計画は、カザフスタンのマクロ経済見通しの前提そのものである。増産局面では財政収入と経常収支が改善し、停止や減産があれば即座に成長率の下方修正につながる。
また、増えた原油をどう運び出すかという問題と常に一体である。両油田の原油はロシア領を通るCPCパイプラインを主な出口としており、この一極依存の解消が国家的な課題であり続けている。
参考資料
- Tengiz — Chevron ↗
- Chevron achieves first oil at Future Growth Project in Kazakhstan(2025年) ↗
- Background Reference: Kazakhstan — U.S. EIA ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。