GUIDE · インフラ・地理2026年9月時点

アルマトイとアスタナとは(カザフスタンの二極)

カザフスタンの二つの中心都市について、人口と域内総生産の比較、首都と旧首都という法的地位の違い、人口移動の向き、アルマトイ周辺と新都市アラタウ、地震という制約、そして投資先としての性格の違いを、国家統計局と法令、政府の公表資料にもとづいて整理する。

カザフスタンの経済地図は、二つの都市に大きく寄っている。南東部の旧首都アルマトイと、北部の首都アスタナである。2026年1〜3月の域内総生産で、アルマトイは全国の22.1%、アスタナは12.5%を占めた。合わせて三分の一を超える。

二つの都市は役割が違う。アルマトイは人口でも生産でも国内最大で、企業の本社と金融機関、大学が集まる。アスタナは政府機関が置かれる首都で、憲法にもとづく特別な金融法制の区域、アスタナ国際金融センターを抱える。産業の集積で先に立つ都市と、制度の設計で先に立つ都市が別々にある、という構図である。

2020年代に入って加わった変数が二つある。一つはアスタナへの人口の集中で、転入超過の規模はアルマトイを上回る。もう一つはアルマトイの北東に置かれた新都市アラタウで、2026年に憲法的法律で独自の法制が与えられた。「二極」という言い方は、いま少しずつ形を変えつつある。

全国人口2,060万4,819人(2026年8月1日、国家統計局)
アルマトイの人口237万9,793人(同)。国内最大の都市
アスタナの人口169万605人(同)。国内第2位
第3の都市シムケント131万3,348人(同)
2026年1〜7月の人口増アルマトイ3万1,690人増(うち転入超過2万1,404人)、アスタナ5万1,429人増(うち転入超過3万9,550人)
域内総生産(2026年1〜3月)アルマトイ7兆5,426億テンゲで全国の22.1%、アスタナ4兆2,483億テンゲで12.5%。全国は34兆1,024億テンゲ
1人あたり域内総生産(同)アルマトイ320万4,800テンゲで全国2位、アスタナ257万3,300テンゲで4位。1位はアティラウ州の442万4,700テンゲ
成長への寄与(同)全国の伸び3.0%ポイントのうち、アルマトイが1.05、アスタナが1.02
アスタナの地位憲法第2条3項が「カザフスタンの首都はアスタナ市である」と定める。同条3-1項は、首都の区域内に金融分野の特別な法制を憲法的法律で置けるとする
アスタナ国際金融センター上記3-1項にもとづく制度。英国法系のコモンローと独自の裁判所・規制当局を持つ
アルマトイの地位1998年7月1日の法律第258号「アルマトイ市の特別な地位について」。共和国的意義を持つ市と定める
同法の位置づけ同法は前文でアルマトイを「科学、文化、歴史、金融、生産の中心」と記す
アラタウ市アルマトイ州、アルマトイとコナエフの間。西欧〜西中国国際輸送回廊の沿線にある
アラタウ市の法制2026年5月8日の憲法的法律第286-VIII号「アラタウ市の特別法制について」。「加速発展都市」の特別法制を定める
アラタウ市の投資(2026年8月26日時点)67件・総額およそ69億ドル、約5万5,000人の雇用創出の可能性(アラタウ市評議会での報告)
アルマトイ州の人口161万4,234人(2026年8月1日)。2026年1〜7月に1.11%増と、全国の州の中で最も高い伸び
地震非常事態省傘下の国立科学センター(1976年設立の地震学研究所が前身)が一般地震帯区分図とアルマトイの地震細分区図を作成。区分図は建築基準の一部

数字で見る二極

国家統計局によれば、2026年8月1日時点の人口はアルマトイ237万9,793人、アスタナ169万605人である。全国は2,060万4,819人で、第3の都市シムケントが131万3,348人。上位3市で全国のおよそ4分の1を占める。

生産で見ると差はさらに開く。2026年1〜3月の域内総生産はアルマトイが7兆5,426億テンゲ(全国の22.1%)、アスタナが4兆2,483億テンゲ(12.5%)で、シムケントは4.0%、アルマトイ州は4.7%だった。1人あたりでは、アティラウ州の442万4,700テンゲが最も高く、アルマトイが320万4,800テンゲで2位、ウルタウ州が3位、アスタナが257万3,300テンゲで4位である。資源州が1人あたりで上に立ち、二大都市は総額で圧倒する、という並びになる。

成長への寄与も二市に集中する。同じ四半期の全国の実質成長3.0%ポイントのうち、アルマトイが1.05、アスタナが1.02を占め、この二市だけで3分の2に達した。同じ期間、アティラウ州はマイナス1.33ポイント、西カザフスタン州はマイナス0.34ポイントと、資源州がマイナスに寄与している。石油生産の変動が資源州の数字を揺らす一方、二大都市のサービス業と建設が全体を支える構図である。

首都はアスタナ、法律上の別格はアルマトイにもある

アスタナの地位は憲法に書かれている。第2条3項は「共和国の行政・領域的構成とその首都の地位は法律で定める。カザフスタンの首都はアスタナ市である」と定める。同条3-1項は「アスタナ市の区域内では、憲法的法律にしたがって金融分野の特別な法制を設けることができる」と続く。アスタナ国際金融センター(AIFC)は、この一文を根拠とする制度である。英国法系のコモンローを土台に据え、独自の裁判所と規制当局を持つ区域が首都の一角に置かれている。

アルマトイにも独自の法律がある。1998年7月1日の法律第258号「アルマトイ市の特別な地位について」で、同法は前文で、科学・文化・歴史・金融・生産の中心という同市の性格を踏まえて特別な地位の法的な基礎を定めると述べ、第1条でアルマトイを共和国的意義を持つ市と位置づける。首都機能が移った後も、この都市が別格の扱いを受け続けていることが法律の形で残っている。

2004年の改正で追加された第1条の2は、アルマトイが独自の地域シンボルを持つと定める。文化・政治・経済・科学の中心としての性格と、地理的な位置・環境の特徴を反映させるという規定である。

人はどちらへ動いているか

2026年1〜7月の人口動態は、二市の性格の違いを映す。アスタナは5万1,429人増え、うち自然増が1万1,879人、転入超過が3万9,550人だった。増加率は3.14%で全国最高である。アルマトイは3万1,690人増で、自然増1万286人、転入超過2万1,404人、増加率1.35%だった。

国全体では話が逆になる。同じ期間に人口が減った州は少なくない。トルキスタン州は転出超過2万2,980人で4,212人の減、ジャムブル州は転出超過1万1,121人で3,951人の減、アバイ州は3,817人の減である。人が集まっているのは二大都市とシムケント、そしてアルマトイ州とマンギスタウ州に限られる。

アルマトイ州の伸びは注目に値する。2026年1〜7月に1万7,702人増(うち転入超過8,145人)で増加率1.11%と、州の中では最も高い。これに対し、2022年にアルマトイ州から分かれたジェティス州は6,523人の転出超過で0.54%減っている。同じ地域でも、アルマトイに隣接する側だけが伸びている。

アルマトイ周辺と新都市アラタウ

アルマトイの人口増加は市域だけでは説明できない。市に接するアルマトイ州側の郊外に住宅と工場が広がり、通勤と物流で一体の圏域を形づくっている。カザフスタン政府がこの圏域に新しい都市を置いたのが、アラタウ市である。

アラタウ市はアルマトイとコナエフの間、西欧〜西中国国際輸送回廊の沿線にある。市を運営する特別管理機構アラタウ・シティ・オーソリティ(ACA)は、同市を中央アジアとユーラシアの市場に直接つながる立地の「加速発展都市」と説明し、投資家向けに単一窓口方式の手続きを提供するとしている。同機構の所在地はアルマトイ州アラタウ市ジェティゲン地区である。

2026年8月26日、首相オルジャス・ベクテノフが主宰するアラタウ市評議会が開かれ、ACA最高経営責任者のアリシェル・アブドゥカディロフが進捗を報告した。投資案件は67件・総額およそ69億ドルまで積み上がり、雇用の創出は約5万5,000人が見込まれる。実施段階に入っているのはペプシコとサニー・ペーパーで、マース・ペットケアKZ、グリフィン・ロゴパーク、ダナフレックス、G-トランス・サービスの生産・物流案件が着工した。旗艦事業とされる高層複合「アイコニック・コンプレックス」は着工準備の段階にある。330ヘクタール・延べ床530万平方メートルの一体開発の構想がまとめられ、基本計画と事業化調査は2026年末までに終える予定である。

インフラは26件が予定されている。電力ではコクパ1変電所の改築工事が始まり、上下水道は一部が工事の最終段階にある。道路は61.2キロの中規模補修と15キロの新設が計画されている。市はまた、国立銀行と共同で「トークン化を既定とする」構想をまとめ、2026年末までに合計1,000万ドル規模のトークン化事業の立ち上げを目指している。2040年までの戦略基本計画と2055年までの長期計画の策定にはARUPとBCGが加わる。

地震という制約

アルマトイの都市開発を規定してきたのが地震である。カザフスタン非常事態省傘下の国立地震観測研究科学センターは、同国南東部の高い地震活動に応える形で地震学が独立した学問分野になったと説明し、その出発点として都市を破壊したヴェルヌイ地震を挙げている。ヴェルヌイはアルマトイの旧称である。

同センターは1976年にカザフ・ソビエト社会主義共和国科学アカデミーの地震学研究所として設立され、地震予知の手法と地震危険度評価の研究、観測網の整備を担ってきた。同センターが作成した成果には、ユーロコード8にもとづく新しい方法論によるカザフスタン全土の一般地震帯区分図があり、これはカザフスタン共和国の建築規範(SNiP RK)の必須の構成要素になっている。同じ方法論で、アルマトイの発展計画を織り込んだ地震細分区図も作られた。

同センターが提供する業務には、敷地の初期地震動の精査、地震細分区分、詳細地震区分、建物・構造物の耐震性評価と公式の判定書の作成が含まれる。同センターは、これらの成果が施設の設計・建設・運用のほか、地域開発と地震リスク低減の判断に使われると説明している。アルマトイで不動産や工場に投資する際、耐震の要件と敷地ごとの地盤条件が費用に直結するのはこのためである。

投資先としての違い

二つの都市は、投資家から見ると必要な検討事項が違う。アルマトイは需要と人材の厚みで選ばれる都市である。国内最大の消費市場を抱え、企業の本社と金融機関が集まり、1人あたり域内総生産も資源州を除けば最も高い。制約は用地と地震で、市域は山と国境に挟まれて広がりにくく、建物には耐震の要件がかかる。郊外に出る動きがアルマトイ州の人口増とアラタウ市の設置につながっている。

アスタナは制度で選ばれる都市である。憲法の規定にもとづく金融分野の特別法制が置かれ、コモンローと独自の裁判所・規制当局が使える区域がある。政府機関と国営企業の本部が集まるため、許認可や政策対応を伴う事業では距離が短い。人口の伸びも全国最高で、住宅と社会インフラの需要が続いている。

アラタウ市は、この二つとは別の性格を持つ。既存の都市ではなく、法律で先に枠を作ってから投資を集める形の都市である。憲法的法律で特別法制が定められ、単一窓口の手続きと専用の管理機構が置かれた。一方で、都市そのものの基本計画は2026年末に完成予定、戦略基本計画は2040年までのものが策定中という段階にある。公表されている投資額は合意や意向を含む積み上げであり、稼働した施設の数とは別の数字である点に注意がいる。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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